熱戦続くW杯の陰で早くも次回大会へ向けた準備が始まる日本
今日は少しばかりサッカーの話を取り上げてみようかと思いますが、しかし注目のグループ最終戦で空気を読まずに勝ってしまうところがドイツ人らしさなのかも知れませんが、ともかく好チームのアメリカも揃って勝ち上がりになって結果はよかったですかね。
さて、ブラジルで開催中のW杯もいよいよ今週末から一発勝負の決勝トーナメントが始まるわけですが、今回大会の特徴としてW杯常連で優勝経験もあるような強豪国が相次いで一次リーグで敗退してしまったと言う点も挙げられるかと思います。
特に前回大会優勝のスペインがあっさりと敗退したのは直前の主力メンバーの負傷などもあってあっさり敗退した2002年大会のフランスを思い出させますけれども、毎回上位に進出するのは優勝経験のある一部の強豪国ばかりと言うのではマンネリ化しますから、今回は意外な国が勝ち進むところも見てみたいですね。
さて、そんな中で一部では「期待はずれ」と言う失望の声も上がるほど良いところなく敗退してしまった日本代表については新監督との交渉も始まっていると言うことでもちろん今後の成り行きも要注目なのですが、過去の監督選定の経緯もあってかまずはこの四年間の総括こそが必要なんじゃないかと言う意見は根強いものがあります。
アジア限定ではなくW杯本番で通用するサッカーとはどんなものなのか、結局のところ日本はどのようなサッカーを目指すべきなのかと言う点が明確にならない限りは次期監督も選びようがないと言うのは監督を選ぶ判断材料として当然と言えば当然なのですが、本日まずはこちらの記事を紹介してみましょう。
ザッケローニと岡ちゃんの違い 監督マネジメントから見るW杯(2014年6月27日日経ビジネス)より抜粋
(略)
「指定席」を作らない前回、岡田監督は大会直前に戦術の変更を決断した。W杯直前の国際大会を経て「ある程度、守らなければ勝てない」と判断したためだ。その結果、攻撃にひらめきはあるものの、守備が弱い選手が先発から外された。
その好例が、中村俊輔と内田篤人だった。
中村は攻撃の要であり、内田は当時22歳で勢いに乗っていた。にもかかわらず、岡田監督はあくまで戦略を優先し、勝てるサッカーを実現できる選手を先発に選んだ。
岡田監督の先発に“指定席”はなかったのだ。
(略)
反対に、ザッケローニ監督は自分が信じた選手を最後まで信じていた節がある。基本的に先発メンバーは12、13人のなかで決まっていた。
選手が積み上げてきた実績、ヨーロッパのトップクラブでプレーする選手たちをリスペクトしていた。本田圭佑、香川真司のふたりに関しては、所属クラブで出番がなく、ゲーム・フィットネスが万全でなくとも、先発で起用するのがザッケローニ監督の方針だった。最後は選手と“心中”したザッケローニ
予選グループ突破がかかった最後のコロンビア戦に関していえば、監督就任から信用してきた選手と心中しようとしているようにさえ見えた。“指定席”の選手たちと、最後まで戦うと覚悟を決めたのだろう。
その観点からみると、第2戦のギリシャ戦で、香川を先発から外したのは、かなり思い切った采配だったと思う。
選手たちのコンディションがよければ、この考えでも成功を収めたかもしれない。しかし、監督の選手起用が硬直化してしまうと、チーム全体の活気が失われてしまうケースが出てくる。
「登録メンバー全員が戦う気持ちでないと勝てない」
というのは岡田監督の持論だが、日本人がチームを作る場合、個人ではなく、チーム全体の雰囲気作りが重要になってくるのだ。
(略)
岡田監督時代のサッカーに対する好き嫌いはともかくとして、日本代表指揮官として歴代最大の実績(初出場を含め2大会に出場決定、中立地でベスト16進出)を挙げた監督であることは言うまでもありませんけれども、その特徴として二度の登板機会共に前任者の退任に伴う途中交代で登場したと言うことで、近年の4年を1サイクルとして仕事をしている他の代表監督と比べてチーム作りの時間は短かったと言えるでしょう。
そうした状況的制約もあってかチーム作りはやはり現実路線重視に舵を取らざるを得なかったこともあるのでしょうが、岡田監督の場合本人がDF出身と言うこともあって守りの構築には相当の自信を持っているようで、実際にW杯本番でも1998年のアルゼンチンやクロアチア、2010年のオランダと言った強豪国を相手にも敗れたとは言え1点差の接戦に持ち込んでいることは注目されますよね。
一方で選手起用に関しては1998年の三浦選手や2010年の中村選手のように非常に大胆な決断を下すことでも知られていますが、この点で「自分達の理想的なサッカーのイメージをもつことは大切だが、チームづくりにおける理想のサッカーとは、今いるメンバーの力をうまく組合せ最大限のパフォーマンスを引き出すこと(2002年)」と言う発言が注目されます。
これは単純に選手個々よりも組織優先と言った捉え方よりも、コンディションや戦術理解、相互の相性も含め一番結果の出せる確率の高い11人の組み合わせを選ぶと言うことだと思いますが、その一環として2010年大会に向けて平素からメンタル面の専門家に協力を仰ぎ心理面の強化を図ったほか、試合場ごとの季候差、高低差の大きい本大会に向け直前のコンディション調整にも細心の注意を払い成功したと言いますね。
一方で今回のザッケローニ監督、そして2006年ドイツ大会のジーコ監督に共通してしばしば言われる点として組織よりも選手優先で固定的な組み合わせを偏重する、そしてコンディション面にあまり注意を払わないと言うことが言われていますけれども、ザックジャパンにしても先年のコンフェデ杯を見ても短期間の連戦にも関わらず同じメンバーを起用し続けたことがパフォーマンス低下につながったことが明確に見て取れたものです。
この点で両者に共通するのが日本選手の能力に対する信頼であったとも言えるのは興味深いのですが、同様に外国出身でユースや五輪、アジアカップでの成績に自信を持っていたはずのトルシエ監督がサンドニでの大敗以降は守備にも重点を入れた現実的な方向に舵を切ったように見えることと併せて考えると興味深いものがあります。
結局のところ日本はアジア内では強豪国であり個々の選手能力も勝っていて攻撃に重きを置いたポゼッション重視のパスサッカーで勝っていられるのですが、W杯のような世界の強豪とのガチンコ勝負になると選手の能力でも上回れないだけに、きちんと人数をかけた堅守に手数と時間をかけすぎない速攻、そして走り負けない体力、コンディションの向上を目指した方が勝率は高くなりそうです。
そう考えると世界レベルで通用する強固な守備力を持ち、豊富な運動量で強豪相手にもしぶとく喰らいついて勝ち点をもぎ取る何とも嫌らしいチームと言うイメージが浮かんでくるのですが、世界でも通用するチームがすなわち日本人が思い描く「日本サッカーのイメージリーダーとしての日本代表」なのかどうかはまた別の話です。
「日本のサッカーとはパスサッカー」と看破したのは「日本サッカー史」を著した後藤健生氏であったと思いますが、その後藤氏が下部リーグを見ればその国のサッカーが分かると言う観点から日本のJFLを評して「3部リーグでこれほどパスサッカーを追及している国はない」と言い、そして「パスをつないできれいに、戦術的にチャンスを作り出すわりに、最後のフィニッシュの精度を欠いて決めきれない」と指摘している点は何とも示唆的ですよね。
選手層の割に今回成績が振るわず狙い目だと思われているのか、幸いにも代表監督に手を挙げる名のある指揮官は少なくないと言う報道もありますが、遠くない将来に新監督の人事も明らかになるものとして、そこにはサッカー協会の思い描くあるべき代表の将来像が否応なしに現れることにもなるのでしょうね。
無論そんなものは何一つ考えておらず、またしてもどこかの偉い人の鶴の一声で長期戦略も将来展望も何も無しに決まってしまうと言う可能性も少なからずあることは否定出来ないのですが…
| 固定リンク
| コメント (3)
| トラックバック (0)
最近のコメント