心と体

2017年11月22日 (水)

終末期高齢者への施設内での看取りを国が推進

世の中には命の価値は地球より重い等々と絶対視する考え方もあるのだそうで、そうした価値観が広まっていたならばこの種の記事もなかなか世に出なかったのだろうと思うのですが、本日まずはこちらのニュースを紹介してみましょう。

延命治療は愛情? 家族のエゴ? 残酷な最期を強いる「長生き地獄」の現場(2017年10月21日週間女性)

(略)
 和男さん(仮名)の父親は80歳のとき、脳出血に見舞われ、救急搬送された。ICUに運ばれ、すぐに手術が行われたが、父親が一般病室に戻ってきたときは、意識のない状態だった。
 現在は、日本尊厳死協会にも加入し延命治療の知識もある和男さんだが、当時は延命に関する知識もなく、自分の無知さに腹が立つと話す。
「親父が倒れたことだけで、わたしたち兄弟は動転してしまい、すべての判断は医師任せでした」
先生! 親父を助けて! 助けてください!!」。兄弟そろって、医師にそう懇願した。まさか、父親が植物状態のまま生かされ続けることになるとは……。
 父親の鼻から入れられたチューブは、2年後の死ぬときまで外されることはなかった。鼻からの栄養注入だけでなく、腕には点滴も行われ、和男さんはそのときの様子を思い出し顔を伏せた。点滴は延命治療と捉えにくいが、実は点滴も延命治療の一つなのだ。父親の手は2年間に及ぶ点滴の針のせいで、真っ黒でまるで炭のようになり、針を刺す1点の場所もなく、ついには最も神経過敏で痛い場所、手の甲や足の甲にまで刺したと言う。
(略)
 声も発せず、ただ生きているだけのようだった父親。家族の延命に対する無知と病院にお任せしたとことによる、父親の悲惨な最期と言わざるをえない。もし、自分が逆の立場だったら? こんな最期を望むだろうか。良かれと思って頼んだ延命治療が、父親を苦しめた。生きていてほしいと家族が望んだこととはいえ、残酷な最期を父に強いてしまった。愛情のつもりだったか、家族のエゴだったのか……。
(略)
 終末期医療に詳しい、宮本顕二医師と宮本礼子医師は、スウェーデンを視察した際に、日本との終末期医療の差に愕然としたと、その著書のなかで語っている。欧米には寝たきり老人がいないと言われているが、その理由について、医師らはこう示している。

     その理由は、高齢者が終末期を迎えると食べられなくなるのは当たり前で、(中略)延命を図ることは非論理的であると、国民みんなが認識しているからでした。逆に、そんなことをするのは老人虐待という考え方さえあるそうです。
     日本のように、高齢で食べられなくなったからといって経管栄養や点滴はしません。肺炎を起こしても抗生剤の注射もしません
    (『欧米に寝たきり老人はいない』より引用)

 日本と欧米の医療現場の差と患者側の知識の差に、わたしは腹立たしくなった。
 日本人は欧米人とは真逆だ。自分の命なのに、医師にお任せ、家族にお任せ。「先生にこんなこと言ったら失礼だ」と、自分の希望を言わない。先生の言いなり。自分の命を守るのは自分でしかないはずなのに。つまり、生死の勉強をしていないから自分の意見がなく、言えないのだ。延命治療の知識は、医師のものではなく、私たちが学ばなくてはならない大事なこと。勉強して自分の意見を持たないと、自分も家族も苦しむことになるのだ。
 自分が寝たきりにさせられないために、そして家族を寝たきりにさせないためにも、今の元気なうちに勉強しておく必要があるだろう。良い死に方を考えること。それは、超高齢社会を突っ走る、わたしたち日本人一人一人に突きつけられている大きな課題だ。
(略)

さすがに現在の医療現場では回復の見込めない患者に延命的処置が自動的に行われると言う状況ではなくなってきていますが、未だに家族からひたすら患者の救命を請われ、無意味と思いつつ延命的処置を行っている先生もいらっしゃることでしょう。
ただようやく意識改革も進んできたのか、先日も進歩的論調で知られる朝日新聞系列のメディアでさえもが「「生かし続けるのはかわいそう」終末期医療で進む「自然な看取り」の実情」なる記事を掲載していました。
ソースがソースだけに実際のところどうなのかと言うことは何とも言えませんが、医療費削減と言う国の方針などもあって一昔前と比べると延命的処置と言うものに対して、医療関係者だけでなく国民の側にも理解が広まってきた印象です。

食事が取れない人に栄養を与えないのは虐待や保護責任放棄に問われないか等々、様々な疑問点にも少しずつ対策も講じられている中で、昨今話題になるのが高齢者用の入居施設での看取り問題です。
家族が施設で看取りたいと希望しているにも関わらず、いざその時になると救急車で病院に運ばれた…と言ったケースもたびたび報じられていますが、窮迫する救急のリソースが死亡確認目的で浪費されるのも困りますよね。
当然ながらこうした搬送のたびに相応のコストも消費されていくわけで、医療費削減を至上命題とする国としてもこうした状況を是とするわけにはいかないのでしょう、制度的な対応を検討しているようです。

特養の「みとり」報酬増 厚労省、多死社会に対応(2017年11月16日共同通信)

 厚生労働省は来年4月の介護報酬改定で、特別養護老人ホーム(特養)が夜間に訪問してくれる医師を確保するなど、利用者を施設内でみとる体制を整えた場合に、報酬を引き上げる方針を明らかにした。
 15日開いた社会保障審議会の分科会で案を示した。終末期の高齢者が増える「多死社会」を迎え、病院などでの受け入れには限界があるとして、施設でのみとりを促す。

 特養が地域の病院と協力し、利用者の容体が急変したら早朝や深夜でも医師の訪問を受けられるようにしたり、実際に利用者をみとったりした場合、報酬を手厚くするよう提案。医療処置にも対応できるよう、夜勤の看護師を配置した施設の加算を増やすとした。
 現在、高齢者の8割弱が医療機関で死亡しており、住み慣れた施設や自宅で最期を迎えたいという高齢者の希望がかないづらいとの指摘がある。委員からは「本人や家族が望まないのに病院に搬送されて医療を受けることのないよう、意向をくみ取る仕組みが必要だ」などの意見が出された。
 有料老人ホームについては、病院を退院した入所者が多く医療的なケアの必要性が高いとして、たんの吸引などが必要な利用者を多く受け入れる施設への加算を新設することを提案した。

ちなみに同分科会では他にも特養に関して様々な案が示されたそうですが、総じて医療スタッフ配置に対する報酬を手厚くし特養の医学的対応能力を高める方向で報酬を改定していく方針であるようです。
その背景としては当然ながら病院から特養等の介護施設へ患者の移動を促すと言う政策的な理由が挙げられますが、特に終末期対応に関しては救急医療の疲弊の一因ともなりかねず、対策が急がれるところですよね。
ちなみに日本では死亡の確認は医師にしか行えないことになっていますが、今回の看取り報酬増と関連し、入所者急変時に医師がどう対応するか事前に決めておくよう義務づけると言うことも挙げられていますが、これも実は諸刃の剣ですよね。
もちろん何かあれば医師がすぐにやってくれば理想的でしょうが、入居者が夜間に亡くなったにせよ死亡確認だけなら翌朝でも構わないはずなのに、すぐ何とかしなければと考えたが故に死亡確認のための救急搬送などと言う馬鹿げた行為が蔓延したとも言えます。
この点に関しては看取り方をどうするのかを予め決めるだけではなく、こうした場合に急ぎ対応する必要は何もないのだと言う点についても、家族にもスタッフにも予め意識漬けを徹底しておくことが重要でしょうね。

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2017年11月20日 (月)

労基署から残業上限100時間の是正勧告をされたら何故か残業上限150時間に変更されてしまった件

このところ国が推進する働き方改革の実践の一環と言うことなのか、これまで野放し状態だった医療機関における違法労働行為に関しても労基署が積極的に介入するようになってきたことが報じられています。
当然ながらその結果病院当局としては労働環境の改善を図らざるを得ないはずなのですが、中には思わず首をかしげたくなるような奇妙な「改善」で事足れりと考えている病院もあるようです。

<岐阜市民病院>残業上限150時間に増 是正勧告受け改悪(2017年11月19日毎日新聞)

 時間外労働に関する労使協定(36協定)で定めた月100時間の上限を超えて医師に残業させたとして岐阜労働基準監督署から是正勧告を受け、岐阜市民病院(同市鹿島町)が、上限を150時間とする協定を結び直していたことが18日分かった。「労働基準法の趣旨に反し、ナンセンスだ」と批判の声が上がっている。
 上限150時間とする協定が結ばれていることは毎日新聞の情報公開請求で分かった。

 病院によると、2016年5月に「(年)6回を限度として1カ月100時間まで」の時間外労働を可能とする労使協定を結んだ。しかし、上限を超えて働く医師が複数人いることが労基署の調査で11月に判明。労基署から即時是正を求められた。そこで今年5月に上限150時間の協定を結んだという。
 同病院によると、時間外勤務が多い救急診療部ではベテラン医師2人以外は、他の診療科目の医師から応援を得て24時間365日対応している。当直勤務は午後5時から翌日午前8時半までだが、その前後もさまざまな業務をこなし帰宅できないことも多く、急患対応などに伴い残業時間が増えるのが現状という。副院長で、同部で診療もする上田宣夫医師は「非常にストレスが高く、夜中もいつ呼ばれるか分からない」と話す。

 厚生労働省の定める「過労死ライン」は月80時間とされる。政府は3月、働き方改革実行計画をまとめ、残業時間は「繁忙期でも月100時間未満」などの上限規制を盛り込んだ。しかし、医師は医療行為を施すことを正当な理由なく拒めない「応招義務」があるとして規制適用を5年間猶予している。
 冨田栄一院長は「患者にかかりつけ医を紹介したり、文書業務を支える補助者を増やしたりし、医師の負担を減らす仕組みを整えてきたが、医師の増員は予算上容易でない」と話している。
 日本医療労働組合連合会(東京都台東区)の森田進書記長は「月150時間は異常な協定だ」とし、労基署の指導方法も「(協定改定で)違法でないように見せるだけの結果になっている」と批判。「過労死ラインを超えて働く医師の過重労働は、応招義務を拒める『正当な理由』に当たらないのか」と政府の規制適用猶予にも疑問を投げかけている。
 岐阜労基署は取材に対し、「個別の案件には答えられない」としている。【高橋龍介】

しかしネタのような本当の話と言うのでしょうか、これで事足れりと考えてしまう方々がいて、それで問題なしと流してしまう方々がいると言う事実にも驚くのですが、同様の話は恐らく全国各地に存在しているのではないでしょうか。
それにしても医療業界にあっては医師は労働者ではないとか、研修は労働時間に含めない等々、他業界であれば進歩的マスコミ諸社を挙げて袋だたきにされそうなことを平気で口にするエライ方々が未だにいらっしゃるようです。
もちろん厚労省としてもそんな当たり前の常識に反する得手勝手な解釈を許容するはずもないので、今後この種の行為は今まで以上に摘発されていくのだと思うのですが、何しろ医療機関の側が必死に抵抗しているのですから改善も進まないはずです。
「過労死ラインを超えて働く医師の過重労働は、応召義務を拒める『正当な理由』に当たらないのか」とはなかなか重要な問いかけだと思いますが、仮に厚労省解釈なりで正当な理由に該当することとなったとして、根本的な意識改革への道は遠そうですね。

先日は四病協など医療系団体が医師勤務実態調査の結果を厚労省に報告したそうですが、労働基準法上の宿日直許可なく宿直勤務をしている施設が19.2%、36協定を締結していない施設も14.9%あったと言います。
当然ながらこれらは労基法上の基本的ルールとして義務づけられているものですが、興味深いのは医療法人協会副会長が「実態に合った仕組みが必要」と、さもルールの方が悪いと言わんばかりのコメントを出している点です。
日医理事からも労働時間短縮が病院機能低下や救急医療への影響などに影響があるとのコメントがあったそうですが、だから法律無視で好き勝手な奴隷労働をさせていいと言う理屈は当然ながら成り立ちません。

昭和大学病院では労基署の立ち入り調査を契機に、シフト制導入など働き方改革を進めているそうですが、この際同時に診療体勢が変更されることを患者に周知徹底するなどまずは病院機能低下についての理解を求めたそうです。
その上で医師の勤務時間短縮を図る一方で、患者ニーズの高い土曜午後にも外来を開設するなど診療を拡大した部分もあるそうで、働き方改革が単純に患者にとっての不利益変更だけに留まらなかったと言うことですね。
無論1300人の医師を抱える大学病院だから出来ることも多々あるのでしょうが、旧来の慣習から一度離れて抜本的なシステム変更を行うには、労基署の立ち入りがよい契機になったと言うのも事実なのでしょう。
医療現場の労働環境が効率化されれば結果的に労力、時間当たりではより多くの患者を捌けるようになる可能性もあるわけで、現状を変更しないことを第一に考えるのもそろそろ終わりにしないと仕方ないですね。

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2017年11月17日 (金)

人手が足りなければ営業時間を短縮すればいいんだと言う発想

このところどこの業界でも人手不足が報じられていて、人手不足が原因の倒産が4年前の約3倍にまで増加していると言いますが、倒産にまでは至らなくとも業務が回らないで四苦八苦と言ったケースは全く珍しくないようです。
そんな中で考えてみれば当たり前と言えば当たり前なのですが、身近な飲食業界において人不足だから営業を短縮しますと言うお店が増えてきていると言うことが報じられていました。

“人手不足”で休みます…(2017年11月13日NHK)

カレーにアイスクリームにタピオカ…。これ、「人手不足」が起きているお店のことなんです。私たちの身近なところにまで広がりを見せる「人手不足」。臨時休業も相次ぎ、ネット上には「嘆き」の声が投稿されています。先週末には、低価格のラーメンチェーン「幸楽苑」を運営する会社が人手不足で人件費が上昇し採算が悪化しているとして、全体のおよそ1割に当たる50店舗余りを今年度中に閉鎖すると発表しました。何が起きているのか、調べてみました。(ネットワーク報道部記者 佐藤滋 野田綾)
(略)
「最近3人辞めちゃって人手不足です。おかげで日曜・祝日が休みになって僕の収入減って困ってます」
記者は、ツイッターの投稿を頼りに、アイスクリームチェーンの関東地方のある店舗を訪ねました。訪ねたのは10日の夜。シャッターには「都合により13時開店とさせていただきます」という張り紙が。
紙に書かれた営業時間を見ると「翌11日は13時から18時。12日は10時から18時」。ホームページにあったこのお店の営業時間より短縮されていました。

どういうことなのか。
運営会社に取材したところ、この店舗では数か月前からアルバイトやパートの「人手不足」のため、臨時休業や営業時間の短縮が続いているということでした。
広報担当者によりますと、全国に1000店以上あるほかの店舗では今のところ同様のケースはないということですが、「本社としてアルバイトやパートの募集のサポートをしているが、この店舗に限っては集まらない」と話していました。
(略)
企業がアルバイトやパートを募集する際の時給は今、過去最高水準となっています。求人情報会社の「リクルートジョブズ」の調査では、首都圏と関西、それに東海の3大都市圏の平均は過去3年間、ほぼ右肩上がり。
ことし8月には1014円と、調査開始以来、最高を記録したほか、直近の9月も1013円でした。
リクルートジョブズは「前の年の同じ月と比べた場合、時給の上昇は当面続く見込み。人手不足の中、時給の引き上げだけでなく、短時間でできる業務の“切り出し”など、働きやすい環境づくりに取り組む企業も増えているようだ」と分析しています。

その一方で相次いでいるのが企業の倒産です。民間の信用調査会社 東京商工リサーチによると、先月、人件費の高騰や求人難など「人手不足」が理由となって倒産した企業の数は39件と、この4年間で最も多くなりました。
会社の代表者や幹部の引退などに伴う「後継者難」が最も多かった要因で、必要な人手を確保できず事業の継続に支障が生じた「求人難」も目立ちました
この「求人難」による倒産件数は、ことし1月から10月までを見ると合わせて31件。去年の同じ時期の2.2倍にまで増加しています。
東京商工リサーチは「今後、人手不足が深刻化した場合、人材難による倒産がさらに増えるおそれがある。倒産に至らなくても休業に追い込まれる企業も増えてくるのではないか」と話していました。

前述した大和総研の長内シニアエコノミストは、こうした現状を「クライシス」=「危機」と表現しています。
人手不足がさまざまな業種に広がっているのに加え、人件費が上昇して企業の収益を圧迫する。その両面で「危機」だというのです。
高齢化が進む地方で深刻になっていた人手不足は今や都市部にも広がっていて、長内さんは「企業は時給を上げることなどで対応してきたが、外国人や主婦の労働参加がかなり進んでいるので短期的には改善は難しい」と見ています。
(略)
「便利さの裏返しではないか」 長内さんは人手不足の背景を別の視点からも捉えています。
「あの店の、あの商品を、今、ほしい」
際限のない私たち消費者の願望に応えるべく激しい競争にさらされる企業。それとともに身近にまで広がってきた人手不足の波。
ロボットの活用やパートで働く人の働き方を制約しているとも言われる税金の仕組みの改善など抜本的な対策も必要なのではないか。
解決の糸口は簡単には見いだせそうにありませんが、取材を通して、社会の構造が今、「過渡期」に来ていると感じました。

不肖管理人も先日都内で何軒かコンビニに入った際、どこのお店でもレジに立っている店員さんが外国人だったと言う経験がありますが、数多くの業界で今や外国人労働者は全く珍しいものではなくなっていますよね。
安定的持続的な労働力確保と言うことはもちろん喫緊の課題ではあるのですが、ここで注目したいのは労働力が足りない場合に法規無視の違法労働をさせて対応していると言う事例も少なくない一方で、労働力に合わせて営業を縮小している事例もあると言う点です。
一見すると売り上げが落ちて経営が苦しくなるのでは?などと考えてしまうのですが、割り増しの人件費を払ってでも長時間営業を続ける方がいいのか、営業時間を短縮して身の丈に合った営業をするのがいいのか、どちらが得なのかはケースバイケースでしょうか。
ただ固定客がついていればさほど大きな影響はないのかも知れずですし、何より数少ないスタッフに過労死水準の労働を課して逃散を招くくらいなら、無理のない範囲での営業に留めた方がずっと健全に安定的な営業が続けられそうに思えますね。

記事を見ていて考えたのが、過労死水準の奴隷労働が常態化している一方で経営者達が「彼らは労働者ではないのだから幾ら働かせてもいいのだ」と開き直っている某業界のケースなのですが、さて同様のやり方が通用するのかどうかです。
ただでさえ診療報酬がぎりぎりで経営が厳しいのに営業時間を短縮するなどあり得ない!と言う声もあるでしょうが、少なくとも常時超勤手当を出すような仕事をスタッフに強いているのであれば、顧客の多いコアタイムでの営業に集中するのも一考かなと思いますね。
週6日のフルタイム勤務に加えて当直までさせると言えばほぼ自動的に労基法違反の労働環境と言うことになってしまいますが、実際に近ごろでは民間病院でもスタッフ不足のため土曜診療を取りやめますと言った話を聞くようになっています。
ましてや親方日の丸の公立病院ではどうなのかですが、田舎の小さな自治体病院などで外来はパラパラと少数のみ、それでも高給で医師を呼んで万年赤字垂れ流しと言ったケースであれば、いっそ週3日くらいの診療にしてしまった方がいいのではないかと言う気もします。

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2017年11月15日 (水)

医療のコスパ分析、分析結果に大きなバラツキ

世界的には広く用いられている医療の費用対効果と言う評価軸に関して、日本でも数年前からようやく語られることも多くなり、今年は厚労省が命一年分の値段について世論調査したと話題になっていました。
試験的に行われた費用対効果の評価について先日厚労省からこんなことが公表されたのですが、改めて医療効果と言うものの評価はなかなか容易ではないと言うことが明らかになってきたようです。

費用対効果評価、企業と第3者の分析に開き(2017年11月11日医療維新)

 中央社会保険医療協議会の費用対効果評価・薬価・保険医療材料の各専門部会の合同部会が11月10日に行われ、試行的導入の対象13品目のうち一部で、企業による分析と第3者による再分析の結果が大きく異なっていることを、厚生労働省が明らかにした。どちらが妥当かを判断するのは困難な場合もあるとして、一定の条件を満たす場合に総合的評価(アプレイザル)による評価結果に両方の分析を併記し、価格の変動が少なくなる方を採用して2018年度改定での価格調整を行うことを提案し、了承された(資料は、厚労省のホームページ)。
 会議後、「取り扱うデータに秘密情報が含まれる」として非公開で開催した11月8日の前回合同部会でどのような議論を行ったのかについて、厚労省保険局医療課企画官の古元重和氏は「13品目の企業データについてやり取りした。非公開の会議で何らかの意思決定を行ったわけではない。本日(10日)の範囲を超える議論はしていない」と述べた。

 10日に厚労省が提示した内容は次の通り。

    企業分析と再分析の結果が異なる場合は、費用対効果評価専門組織において両者の分析内容を検証した上で、より妥当性が高いと考えられる分析結果を評価結果としてとりまとめることが基本。ただし、以下の条件を満たす品目については、現時点では、費用対効果評価専門組織で、いずれの結果がより妥当性が高いかの判断が困難な場合もあると想定されることから、総合的評価による評価結果に、両分析の結果を併記することを可能とする。
    【条件】以下の両方の条件を満たす品目
    ・両分析の結果が異なっている品目
    ・両分析ともに「中医協における費用対効果評価の分析ガイドライン」に沿って行われている品目
    評価結果で両分析の結果が併記された品目については、引き続き、より妥当性の高い分析のあり方を検討するために、原則として、検証(検証作業としての分析)を行う。
    上記を前提に、試行的導入の作業として総合的評価の過程まで到達したこれらの品目については、直ちに総合的評価の結論として単一の結論を得ることは困難であることから、まずは両分析のうち価格の変動のより少なくなる方の結果を採用して、2018 年 4 月の価格調整を行うこととする。
    検証(分析)期間については2018年中を目途とし、企業側からの意見も踏まえながら、事前相談の充実、より妥当性の高い分析手法の検討、臨床の専門家からの意見聴取など必要な対応を行い、当該検証(分析)を通して得られた評価結果に基づき最終的な価格調整を行う。なお、最終的な価格調整結果が、今回の価格調整結果と異なることとなった場合には、2018年 4 月に遡って価格調整が行われたと仮定した結果を踏まえ、最終的な価格調整を行う。

委員の主な意見は次の通り。
【診療側】
日本医師会常任理事・松本純一氏:分析の枠組みについて事前相談をし、見解が一致したと考えた上で分析したのか。「見解の違いが残ったまま分析を行った」とあるが、見解が違ったままやれば結果が違うのは当たり前だ。話し合いをもう少しきっちりやるべきだったのではないか。
(略)
【支払側】
全国健康保険協会理事・吉森俊和氏:最終段階の取りまとめに向かう中で、今回のような基本的な課題が出てくること自体、はなはだ遺憾と言わざるを得ない。ある程度再分析の結果が出た段階で、「これはおかしいのでは」となったときに、費用対効果評価専門組織で議論して、「中医協で問題にするべきだ」という話にはならなかったのか。今村委員や私がこれまで、専門組織の議論がどうなっているのか、途中経過がほしいと発言してきた。今こうして出てきて、いかんともしがたいので、提案の方向性は了承する。
(略)

まあしかしお粗末な仕事と言う印象が残る話で、もう少し事前に調整した上でやればよかったのにと誰しも思うところですが、逆にブレのある数字を恣意的に解釈出来る余地があった方が好都合であったとも言えるのでしょうか。
ちなみに実際の資料に関しては厚労省のホームページから参照いただきたいと思うのですが、今回試験的に評価が行われた対象品目としては以下の品目が挙げられていて、まあ見たような名前が並んでいますよね。

医薬品:オプジーボ 、カドサイラ 、ダクルインザ 、スンベプラ 、ヴィキラックス 、ハーボニー 、ソバルディ
医療機器:カワスミ Najuta 胸部ステントグラフトシステム、アクティバ RC、 バーサイス DBS システム 、Brio Dual8 ニューロスティミュレータ 、サピエン XT 、ジャック

評価の指標となるのは増分費用効果比(incremental cost-effectiveness ratio: ICER)と言う数値ですが、ざっくり言えばQOLも考慮した生存年数1年の延長にどれぐらいの追加コストがかかるのか、ですね。
費用が高くついても効果も大きければ意味のある治療であり、逆に安上がりでもほとんど効果がないなら意味がないと言うことを同じ一つの基準で評価出来るのは便利で、特に医療費の有効活用を図る上では重要です。
今回の評価では倫理的、社会的影響等に関する考慮要素なるものも設定し、1項目該当する毎にICER値を5%割引くと言う調整も行ったそうですが、この考慮要素としては次の各項目が挙げられています。

①感染症対策といった公衆衛生的観点での有用性
②公的医療の立場からの分析には含まれない追加的な費用(ガイドラインにおいて認められたものに限る)
③重篤な疾患でQOLは大きく向上しないが生存期間が延長する治療
④代替治療が十分に存在しない疾患の治療

こうした基準を設けた上でも何故企業と第三者で評価が大きく分かれたのかですが、その理由としては①そもそも対象集団など前提条件が異なる、②データの選択基準が異なる、の2点が挙げられています。
例えば新たな手術法などは最初は結果がバラついても、技術に習熟するにつれ安定的に好成績が出るようになると言う現象が知られていますが、どの時点からのデータを採用するかで評価が変わってくるのは当然ですね。
こうしたこともあまり度が過ぎれば恣意的なデータ集めだと批判されかねませんが、逆に最も新しいデータに基づいて評価しているのだと言う言い分もあり、結局事前の摺り合わせが不十分であったと言うことでしょうか。

世界的には単に医療費が高い、安いだけで議論するのではなく、ICER値を用いて有効性も加味したコスト評価をする国が主流になっていて、日本などはこの点でかなり周回遅れだと言いますね。
ちなみに日本同様皆保険制度を持つイギリスでは許容されるICERの上限は3万ポンド(450万円)だと言い、医療費が高いとされるアメリカでは5万ドル(550万円)と言う数値が目安となっているそうです。
これに対してイギリス人の平均年収が2.7万ポンド、アメリカ人では4.4万ドルだと言いますから、おおむね平均年収より1割ほど高いのが余命を1年延ばすのに許容される金額の上限だと考えていると言うことですね。
日本の平均年収が420万ですから換算すれば450万~500万弱くらいになりますが、皆保険制度のおかげで患者自己負担の上限が低い日本では、余命延長にかかるコストも実感しにくいと言うきらいはありそうです。

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2017年11月13日 (月)

実質的な医師強制配置の方法論に関する議論始まる

今も賛否両論ある医師の計画的配置と言うものについて、新専門医制度がその景気となるのでは等々様々な声がありますが、こちら厚労省が制度的に医師の計画的配置を考えているようだという記事が出ていました。

「医師少数区域」の勤務医師、厚労省が「認定」を検討(2017年11月9日医療維新)

 厚生労働省は11月8日の「医療従事者の需給に関する検討会」の第14回医師需給分科会(座長:片峰茂・長崎大学前学長)で、医師偏在対策として「医師少数区域」での一定期間以上の勤務経験を有する医師を厚労省が認定し、「認定医師であること」を広告可能としたり、地域医療支援病院等、一定の病院の管理者になる際に評価するなど、義務ではなくインセンティブで「医師少数区域」での勤務を促す仕組みを提案した。
 認定自体には異論はなかったものの、インセンティブではなく管理者要件として「医師少数区域」での勤務義務化を求めたり、地域医療支援病院以外にも臨床研修病院や診療所など、対象範囲をどこまで広げるかなどさまざまな意見が出た(資料は、厚労省のホームページ)。

 外来医療については、無床診療所が都市部に偏在する傾向を是正するため、厚労省は地域の疾病構造や患者の受療行動など、外来医療の現状を「見える化」して情報提供することを提案、構成員の了承を得た。
 一方で外来医療における医師偏在対策として、これまでの医師需給分科会では、病床規制と同様に、無床診療所についても開業制限や保険医療機関の指定制限を設けるべきだとの意見が挙がっていた。しかし、厚労省は憲法上の「営業の自由」との関係や、制度導入前の「駆け込み開業」など法制的・政策的な課題をクリアしなければ、制度的に無床診療所の開業制限等を行うのは、「実現は困難」と説明。
 「医師少数区域」での勤務を管理者要件とすることと、外来医療での偏在対策、無床診療所の開業制限等は関連する問題。いずれも強制力をもって進めるか、インセンティブを設けて医師の選択に委ねるかという視点で、構成員の意見は分かれた。
 日本医師会副会長の今村聡氏は、「あくまで医師の自主性を尊重すべきだ」とし、インセンティブを中心とした施策を重視し、仮に開業制限等を導入すれば「駆け込み開業」が起きると懸念した。
 一方で、岩手医科大学理事長の小川彰氏は「強制力を設けないと、実質的に動かない」、全日本病院協会副会長の神野正博氏も「偏在対策には、規制的な手法が必要」とし、「医師少数区域」での勤務を管理者要件にすることは「あり」との見解を示した。
(略)
 認定医師の「医師少数区域」の勤務経験について、厚労省は、臨床研修や専門研修の期間に限らず、診療所開業前など、医師のさまざまなキャリアの時期での勤務を想定している。「どの時期で経験するのかは、まさに医師の選択による。若い時期、あるいはある程度経験を積んだ時期など、どこでも可能という意味」(厚労省医政局総務課長の榎本健太郎氏)。
 主に議論になったのは、「地域医療支援病院等、一定の病院の管理者としての認定医師の評価」の解釈だ。小川氏は、「認定医師でないと管理者になれないという理解でいいのか。『一定の病院』とは何か」と質問。厚労省医政局総務課は、「これまでの議論で、管理者要件として導入すべきとの意見があった一方、医師の自発的な意思に働きかけるべきだという意見もあった」と述べ、「一定の病院」の範囲と併せ、医師需給分科会で議論することを求めた。小川氏は、医療は税金や保険料など公的資金で成り立っているとし、「地域医療支援病院のみではなく、診療所の管理者要件まで入れないと効果はほとんどない」と提案。
 神野氏も、「強い医師偏在対策は必要。管理者要件を医師不足地域での勤務経験で縛ることは、私はありだと思う」と述べ、公的・公立病院、診療所までを対象に含めるかどうかを検討する必要性を指摘した。

 一方で、「管理者要件」とするなど、強制力を持った施策をけん制したのが、今村氏。「医師少数区域」での勤務を評価することには賛成したものの、「あくまで医師の自主性を尊重すべきだ」とし、医師のキャリアの中で、地域医療を知る機会の一端として、この仕組みを活用することが想定されるとした。さらに、強制的な仕組みを入れ、診療所の開設者の要件とすると、要件導入前に「駆け込み開業」が起きる恐れがあるとし、「相当慎重に検討した方がいい。まずはこの仕組みをはじめ、どんな効果があるかを見て、次のステップに進むべきだ」とした。
 国立がん研究センター中央病院呼吸器内科病棟医長の堀之内秀仁氏も、若手医師に「一つの足かせのコースができた」と受け取られるのを懸念し、医師の生涯のキャリアパスの中で、「医師少数区域」での勤務経験を取り入れていくことを求めた。
 ハイズ株式会社代表取締役社長の裴英洙氏は、「『行かされる』のではなく、『行きたい』と思わせることが必要」と指摘し、医師を受け入れる側の地域の体制づくりのほか、インセンティブとして管理者要件だけではなく、「非常に魅力的な学びの場がそこにある」という視点での検討が必要だとした。
 医療法人ゆうの森理事長の永井康徳氏も、「医師が行きたくないのに、行かされたのでは、医師と患者、お互いが不幸になる」とし、「学びの場がある、というメリットがある」を提示する必要性を指摘した。

 外来医療機能の偏在・不足対策については、情報提供の実施は支持されたものの、無床診療所の開業制限については、賛否が分かれた。
 神野氏は、「フリーダムでやっていくのではなく、偏在対策には、規制的な手法が必要」とし、「診療所開業についても、地域の情報を見ながら、地域の医療審議会で、開業の是非を話し合うスキームがあってもいいのではないか。新規開業医の保険医としての活動を規制するのもあり得る話」とコメントした。小川氏も、過去に何度も医師需給に関して議論してきたものの、医師の偏在は悪化しているとし、「強制力のある提言をしないと、問題は解決しない」と指摘。小川氏と神野氏は、「自ら望んだ地域赴任でなくても、実際に経験することにより、地域医療への興味、関心を高めた」という自身の経験も語った。
 これに対し、今村氏は、過去とは異なり、今はエビデンスを基に議論しているとした上で、「医師偏在対策のメニューは多ければ多いほどいいのかもしれないが、(メニューによっては)リスクもある。新規開業については、まず情報提供することが一つの大きな前進」と述べ、「開業制限」的な議論をすると、「医師少数区域」の勤務を管理者要件とする場合と同様に、「駆け込み開業」の懸念があることから、まずは情報提供から開始して様子を見るべきと主張した。永井氏や堀之内氏も、今村氏の考えを支持。
 慶應義塾大学商学部教授の権丈善一氏は、「地域医療を経験した人は、そこに根付いてくれる。『地域医療を、1回経験したらどうか』という機会を、なるべく多くの人に無理強いにならないように提供できる体制を作っていくことが必要ではないか」と語った。

この僻地医療勤務経験の有無を管理者の要件として関連づけると言う話、以前から断続的に出ている話なのですが、今回は厚労省側からの提案として今後の医療政策に反映されるかどうかを決める、かなり具体的な議論が求められる状況だと言えます。
医療系団体の中でも意見が別れていると言う点に注目いただきたいと思いますが、しかしそもそも論と言えば制度改変で影響を受ける当事者たる現場の若手医師を抜きにしてのこうした議論もどうなんだと言う考え方もあるでしょうね。
特に強制配置と言うことには拒否感が根強い以上、管理者に成りたければ自主的に僻地診療に従事しなさいと言うことですが、街の大病院などで院長になるのは一般に大学からの天下り人事などが多かったわけで、実現すれば困ると言う人も出てくるかも知れません。
この場合数年間を名義だけ田舎病院勤務にすると言う手もありますが、週一回だけの名前だけ常勤医であっても勤務経験として認めるべきなのかどうか、言葉の定義についてももう少し議論する必要がありそうに思いますね。

むしろ後段の開業制限の方がいわゆる逃散の結果としての開業を規制すると言う意味合いもありそうですが、偏在是正と言う観点で言えばこれだけ弁護士余りになっても田舎に行った弁護士がいなかったのと同様、やはり収入面で僻地は不利だと言う現実もあるでしょう。
もともと勤務医の世界では多くの他業界の慣例と逆に、田舎や僻地に行くほど給与が高くなると言う傾向があるわけですから、僻地医療従事加算なりを設けて診療報酬を割り増しで支払う等のやり方で僻地への開業誘導のインセンティブとすることも考えられるでしょう。
逆に医師過剰地域では診療報酬を減額し…などと言い出すとさすがに反対意見が圧倒しそうですが、全国何処でも同一料金でサービスを提供すると言う皆保険制度の大前提をどこまで重視するかによって、この辺りの政策上の柔軟性もかなり左右されそうですよね。
今後都道府県が主体となって地域医療計画の実現を目指していく上でも、診療報酬などの面である程度裁量の余地があればかなり地域性豊かな医療も可能になりそうなのですが、やるとしてもまずは特区なりで実験的にやってみてからの話になりそうです。

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2017年11月10日 (金)

お産と赤ん坊に関わる最近のニュース三題

周産期医療を扱った「コウノドリ」と言う漫画を愛読しているのですが、最近そのドラマ版もなかなか評判が良いのだそうで、珍しく真面目に作られた医療ドラマとして一度御覧になってみてもいいのではないかと思います。
産科や小児科と言えば日本では訴訟に巻き込まれるリスクが高いだとか、人手不足で激務と言った理由で近年敬遠される傾向にあるようですが、先日周産期を巡るトラブルに関してこんな記事が話題になっていました。

奇形の顔「受け入れられない」…家族が手術拒否、ミルク飲めず赤ちゃん餓死(2017年11月5日読売新聞)

(略)
 産科から小児外科に連絡が来ました。先天性食道閉鎖症の赤ちゃんが生まれたのです。食道閉鎖とは文字通り食道が途中で閉じている先天奇形です。当然のことながら、ミルクは一滴も飲めませんから、生まれてすぐに手術をする必要があります。食道は胸の中にありますので、赤ちゃんの胸を開く、難易度の高い手術です。
 そして、赤ちゃんの奇形は食道閉鎖だけではありませんでした。 口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)という奇形があったのです。口唇裂とは上唇が鼻まで裂けていることです。口蓋裂とは口腔と鼻腔を隔てている上あごが裂けていて、口と鼻の中がつながっている状態です。口唇口蓋裂は、形成外科の先生が何度か手術をすることで、最終的には機能だけでなく、美容の面でもきれいに治すことができます
 私は赤ちゃんの家族に食道閉鎖の説明をし、手術承諾書をもらおうとしました。ところが、家族は手術を拒否しました。赤ちゃんの顔を受け入れられないと言うのです。私は驚き慌てて、どうしても手術が必要なこと、時間の猶予がないことを懸命に説明しました。ところが家族の態度は頑として変わりません。

 何とかしないと大変なことになります。とにかく時間がない。産科の先生たちを交えて繰り返し説得しても、効果はありませんでした。私は最後の手段として、児童相談所(児相)に通報しました。児相の職員たちは、聞いたことのない病名にかなり戸惑っている様子でしたが、その日のうちに、3人の職員が病院を訪れてくれました。私は両親の親権を制限してもらい、その間に手術をしようと考えたのでした。
 児相の職員と赤ちゃんの家族で話し合いがもたれました。私はその話し合いが終わるのを、ジリジリしながら会議室の前で待ちました。
 話し合いは不調に終わりました。児相の説得も失敗したのです。では、「親権の制限はできますか」と職員に尋ねると、彼らは首を横に振って「あとは先生たちで解決してください」と言って病院を去りました

 ここから先、何ひとつ話は進展しませんでした。赤ちゃんには点滴が入れられていましたから、最低限の水分は体内に入ります。しかし、ミルクを一滴も飲んでいませんから、日ごとに赤ちゃんの体は衰えていきます。やがて、家族は面会にも姿を現さなくなりました
 児相の人たちの判断は、あれで正しかったのか。警察に通報した方がいいのか。いや、警察は何もしてくれないだろう。21世紀の現代にこんなことがあってもいいのか……と私は暗澹(あんたん)たる思いでした。
 もうあとは、餓死するだけです。小児外科と産科で話し合い、結局赤ちゃんは産科の新生児室で診ることになりました。したがって、私は直接赤ちゃんの最後の日々を目にしていません。のちに聞いた話では、一人の産科医が、時間さえあれば赤ちゃんのそばに寄り添っていたそうです。
(略)

想像するに少し以前の話ではないかと言う気がするのですが、宗教的思想信条を理由に子供の輸血を拒否する親の問題などで親権に関しての議論がかなり進んだ現在においては、もう少し違った結果になっていたのかも知れませんよね。
とは言え色々と考えさせられるケースだと思うのですが、これが新生児ではなく重症患者や寝たきり高齢者であっても同様な置き去り問題はしばしば経験されるものですから、決して産科小児科に限った話でもないように思いますね。
親と子の関わり方と言うものは人により家庭により様々なものがあり、放置にしろ過干渉にしろそれぞれに重大な結果を招くことがありますけれども、こちらもしばしば見かけるケースだけに何が正しかったのかと考えさせられる事例です。

【海外発!Breaking News】「授乳中だから」抗生剤を拒否した母、髄膜炎で死亡(2017年10月13日テックインサイト)

授乳中の息子に悪影響を及ぼしてはいけないという思いがあった母親。尋常ではない耳の痛みがあったにもかかわらず抗生剤の処方を拒否したことで、不運にも髄膜炎を引き起こし死亡するという悲劇が起こった。『Mirror』『The Sun』などが伝えている。

英チェシャー州ウィルムスローに暮らす大学講師のリアン・スタトム=バーネットさん(30歳)は2015年12月、パートナーのロス・ノーマンさんとの間にジョージ君をもうけた。母乳で育てていたリアンさんに異変が起こったのは翌年3月のことだった。
リアンさんの母で看護師のビバリーさん(55歳)は3月27日に娘から「具合が良くない」という連絡を受け、30日に会いに行った。「耳と頭がすごく痛い。出産を上回る痛み」と訴えた娘の耳をビバリーさんが見ると、出血し耳だれが出ていたためGP(一般診療)に診察の予約を入れた。
3月31日、リアンさんはGPで「ウイルスによる耳の感染症」と診断された。しかし薬を処方された様子もなく、ビバリーさんはリアンさんを連れて自分の家に帰った。
ところが4月2日の午前5時頃、ジョージ君の泣き声を聞いたビバリーさんが寝室に様子を見に行くと、リアンさんは嘔吐して意識不明になっていた。呼びかけても応答がなくすぐに救急車を呼び、マンチェスターのウィゼンショー病院へ搬送されたが、中耳の感染症が原因で起こる乳様突起炎から髄膜炎を発症していることがわかった。リアンさんの脳の機能が停止していると言われた家族は突然の事態にショックを受けたが、事実を受け入れる間もなくリアンさんは息を引き取った

マンチェスターで行われたリアンさんの死因審問では、診察したマシュー・ジョーンズ医師が「検査をすると鼓膜が破れていた。しかし患者に熱はなくこの時点では乳様突起炎の症状は見られなかった」と述べ、抗生剤を何回か処方しようとしたが、リアンさんは「3か月の息子に授乳しているので影響があると困るから」と言い拒否していたことが明らかになった。この時、医師は「症状が悪化したらすぐに診察に来るか、病院のER(緊急治療室)へ行くように」と指示していたという。
また、パートナーのロスさんは「リアンはよく風邪のような症状で頭痛がすると訴えており、そのたびに痛み止めを飲んでいました。今回も同じような症状かと思いましたが、亡くなる3日前に彼女の耳を見たらネバネバしたものがあったので、『深刻な病気では』とも思っていました」と振り返っている。
マシュー医師は死因審問で、乳様突起炎が発症するのは1万人に4人ほどの確率だと述べ、リアンさんを検死したリーナ・ジョセフ病理学者は「出産後の女性は感染症にかかりやすい。今回は細菌感染にウイルス感染が重なってしまうという非常に珍しく複雑なケースで、進行が早く対応は困難だったとされる」と語った。さらにジョン・ポラード検死官助手は「医師らもベストを尽くしたと思うが、進行が早かったため救いようがなかった。突然の死による悲劇は遺された家族にどれほどの衝撃を与えただろうか。しかしこうした悲しいケースは起こり得るものだ」と話している。

なお、イギリスのNHS(国営医療サービス)のサイトには「母親が授乳中であっても、ほとんどの抗生剤は投与可能であるが、常にGP医師や助産師、薬剤師などのアドバイスを得ること」と記されている。

日英の医療制度の違いも関係している話でもありますが、授乳中だからと投薬を拒否するケースは日常診療でも決して珍しくはないだけに、こうした比較的稀な疾患に限らずいつ何時重要な事態に陥るかも知れないと言うリスクはあるのでしょうか。
国立成育医療研究センターでは授乳中にも使える薬を公表していますので参照頂ければと思いますが、特に長期投薬を要する慢性疾患の治療薬などは担当医ともよく相談した上で判断すべきで、素人の自己判断で可否を決めるべきではないでしょう。
とりわけ医療上必要である治療までも授乳を理由に拒否すると言うのは馬鹿げた話で、いくら薬を飲まなくても母親の健康が損なわれたままでは育児にも良いはずがありませんので、子供のためにもきちんと治療を受け早く良くなっていただくべきだと思いますね。
もう一つ、最近日本でもどちらかと言えばネガティブな事件が報じられることの増えている無痛分娩と言うことに関して、国によってはこんな意味で問題になることもあるのだと言うニュースを紹介してみましょう。

中国 無痛分娩の是非めぐり大論争 産婦の自殺受け波紋(2017年10月19日AFP)

(略)
 中国で分娩中の女性が自殺したニュースは、なぜ出産時の疼痛(とうつう)管理、すなわちペインコントロールを選べる余地がほとんどないのかという問題をめぐり、国内で議論を巻き起こした。
 陣痛を和らげる硬膜外鎮痛法を用いた分娩は、米国では自然分娩の約80%を占めるのに対し、中国では10%以下。その理由は、特に公立病院における麻酔医の不足によるものが大きいと、広州母子医療センター(Guangzhou Women and Children’s Medical Center)のソン・シンロン麻酔科長は現地の英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)の取材に答えている。中国には2016年時点で8万5000人の麻酔科医がいるが、中国国家衛生計画出産委員会(National Health and Family Planning Commission)によると、医療機関で必要とされている数は30万人だという。
「麻酔科医は、慢性的に不足しています。当院では複数の診療科を掛け持ちしている状態で、国内の他の医療機関の多くでも同じ状態です」と、広東省(Guangdong)汕頭市(Shantou)の汕頭大学医学院(Shantou University Medical College)第2病院で産科主任を務めるチェン医師は話す。
「当院の分娩室は5床あり、このうち三つはたいてい使用中です。理論上は、1床ごとに1人の麻酔科医が(無痛分娩が行われる)全過程で必要とされます。つまり、勤務シフトを考慮すると少なくとも9〜10人の麻酔科医が必要になってくるわけですが、この目標は達成不可能ですよ」
(略)
 中国のソーシャルメディア(SNS)や産科医の専門家会議などで議論になっているのは、こうしたペインコントロールの技術を、特に民間病院に金もうけの小道具に利用されることなくどうすれば普及させていけるのかという問題だ。一方、公立病院の場合は、ペインコントロールを用いた医学的介入は政府の規制によって割増料金を請求できないため、大半の医療機関が患者側にこうした選択肢を積極的に提供しない現状を生んでいる。
「2003年に息子を出産したとき、無痛分娩、つまり硬膜外鎮痛に3000元(約5万円)払いましたが、料金はこの14年間であまり変わっていません」と、北京の国営出版社社員のバオ・ヤンさんは話す。しかしインターネットで検索したところ、いくつかの民間病院が同じ処置に5万〜7万元(約85万〜120万円)の料金を示す広告を出していた。
 汕頭大学医学院のチェン医師は、ペインコントロールは、すでに資金不足の公立病院への負担を上乗せするだけだと指摘する。「正直なところ、私たちの病院では推奨していません。ほとんど民間病院が金もうけをするための宣伝材料ですよ」
(略)
 陝西省(Shaanxi)で26歳の妊婦が分娩中に自殺した後、中国では痛みの少ない出産方法を選ぶ人が急増した。しかし、ウェイボー(微博、Weibo)のあるコメントにはこう書かれていた。「今や出産にすら格差がある。余裕がある者は米国に行って無痛分娩を行い、片や、そうでない者は歯をくいしばって叫ぶのをこらえなければならない」

麻酔科医の不足が無痛分娩の普及に大きく影響していると言う点では日本とも共通の課題が浮かび上がりますが、その結果高い料金を支払える経済力の有無によって分娩の負担にも格差が生じていると言うのは興味深いですよね。
日本においても分娩料金に高い安いの差はありますが、純粋な経済的負担能力で格差が生じるほどの料金格差はないようで、需要と供給に従って料金設定を行うとこうしたことになってしまうのかと改めて考えさせられます。
個人的に興味深いのは麻酔科医のシフトが組めないから無痛分娩に制限があると言うチェン医師のコメントで、日本で麻酔科医なしで産科医が無痛分娩を行い事故が起こったケースが報じられているのを見ると、医療安全上はこれが正しい考え方なのでしょうね。
今後日本でも長期的には無痛分娩は増えて行くのだと思うのですが、そうなりますと医師一人でやっている開業産科医などは対応が難しくなりそうで、他の医療と同様お産においても今後設備とスタッフの揃った大病院志向が強くなっていくことになるのでしょうか。

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2017年11月 8日 (水)

医療経済学的側面から再び注目されそうなあの問題

ちょうど診療報酬を巡る議論が為されているところですが、その中で以前から指摘されている問題に改めてツッコミが入ったと報じられていました。

健保連幸野氏、ARBの使用実態を問題視 費用対効果を考慮したGL、フォーミュラリーを提言(2017年11月3日医療維新) (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、11月1日の中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)で、健保連の提言として、国が主導して費用対効果を踏まえたガイドラインの作成や、医療機関等における採用医薬品リストに当たる「フォーミュラリー」の作成を推進するよう求めた。幸野氏は、英国のNICE(国立医療技術評価機構)では、有効性と安全性が同等の場合、最も安価な降圧薬を使うことを求めている一方、日本のガイドライン等では、費用対効果を踏まえた医薬品使用の優先順位が書かれていないと問題視した(資料は、厚生労働省のホームページ)。

 幸野氏が提言の根拠として挙げたのが、高血圧治療におけるARB(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)の使用実態だ。健保連が2014年10月から2016年9月まで2年間のレセプトを対象とし、高血圧症以外の傷病名がなく、かつ1分類の降圧薬が処方されたものを分析した結果、最も多く処方されていたのはCa拮抗薬で57.0%、次がARBの37.9%だった。しかし、金額ベースでは、薬価の高さからARBが63.1%を占め、Ca拮抗薬は33.5%。「ARB、もしくはCa拮抗薬のみを処方されている患者群を比較すると、入院の発生率に有意な相関関係は認められなかった。ARBをCa拮抗薬に置き換えたと仮定すると、日本全体では年間約830億円を削減できると推計される」(幸野氏)。

 幸野氏は、ARBの使用が医療費が高騰する一因になっているとし、「高血圧の患者が多い中で、第1選択薬をどう考えるのか」と問いかけ、国が学会に働きかけ、費用対効果を考慮したガイドラインを策定する必要性を指摘。各医療機関にも「フォーミュラリー」を作成し、「費用対効果の観点から、医薬品の選択順位を定めてもらいたい」と求めた。

 これに対し、日本医師会常任理事の松本純一氏は、「Ca拮抗薬は効果の発現が早く、急激に血圧を下げる作用がある一方、ARBは緩徐に持続的に効く」などと述べ、ARBが高齢者などに使用される理由はあると説明。「ガイドラインで、第1選択薬として、ARBを使ってはいけないとすることはできないだろう。保険者、またわれわれ医療者にとっても医療費の高騰は問題だが、患者のために処方している現状も考慮してもらいたい」と述べた。

 日医副会長の今村聡氏も、「降圧薬にはそれぞれ特徴がある。現場の医師の裁量で薬剤を選択していることを理解してもらいたい」と述べ、その上で「日本の診療ガイドラインでは、費用面に触れていないのは現実。一定程度、そうした考えを入れていくことは必要だろうが、国が学会に指導するのは問題。学会が自ら取り組んでいくように、日医としてもお願いしていく」と付け加えた。

記事に添付されている健保連提供の資料によれば「高血圧症以外の傷病名が記載されておらず、かつ1分類の降圧剤が処方されたレセプトに対し、4割弱(約28万件)ではARBが処方されている」のだそうで、これは金額ベースにすると約63%に相当すると言うことですが、降圧薬の中でも最も高価なARB処方が突出して多いと言うのは如何なものかと言う問題提起です。
ちなみに高血圧治療ガイドライン2014によればエヴィデンスに基づいた第一選択薬として利尿薬、カルシウム拮抗薬(CCB)、ACE阻害薬(ACEI)およびARBが挙げられていますが、それぞれに性質が異なることから特に基礎疾患を持つ場合には適宜使い分けが行われるのが一般的で、その意味でCCBとARBを単純比較すると言うことには違和感を覚える先生も多いのではないでしょうか。
そうした視点で見るとむしろ同じRA系阻害薬に属するARBとACEIこそ比較対象になるべきで、特にACEIの方が安価であり諸外国でもARBよりACEIの方がより頻用されているにも関わらず、日本においてはまずARBありきでの処方が行われていると言う点を問題にすべきなのかなとも思いますね。

この点については昔からACEIの保険診療上の上限用量が不当に低く抑制されていて、強力な降圧療法を行う場合ARBを使わざるを得ないと言う特殊事情があるからだとも言うのですが、それでは何故諸外国並みの高用量で安価なACEIを使わせようと言う話にならないのかと誰しも疑問に感じるところでしょう。
ARBについてはひと頃臨床研究に絡んで諸問題が指摘され、論文が撤回されると言う騒ぎもありましたが、安価な類薬であるACEIの副作用を殊更言い立ててARBへ処方変更させようとするMRの振る舞いも多くの先生が経験されているようで、製薬会社的にはどうせならお高い薬を使ってもらいたいと言うのも本音なのでしょうが、医療経済学的に問題があると言う指摘は以前から散見されるところです。
この辺りは循環器等の専門家の先生にはまたそれぞれに御意見やこだわりもあるところだと思いますが、とりあえず新薬が出ればMRに勧められるまま処方を切り替えると言う先生も未だそれなりの数がいらっしゃるようで、地道な営業努力が積み重なった結果がこれだけの差になって現れたのだと考えると、案外営業努力と言うものも馬鹿に出来ないものなのだなと思いますね。

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2017年11月 6日 (月)

高齢ドライバーからの免許証取り上げ、予想よりも低調

今春改正された道路交通法の結果、高齢認知症ドライバーの免許取り消しが規定されましたが、施行後半年で認知症検査に引っかかった高齢者のうち7000人が自主的、強制的に免許を失うことになったそうです。

「認知症のおそれ」ある高齢者ドライバー 半年で3万人(2017年11月2日NHK)

75歳以上の高齢者ドライバーへの医師による認知症の検査が強化された改正道路交通法が施行されてから、9月末までのおよそ半年間に「認知症のおそれがある」と判定されたドライバーは、およそ3万人に上ったことが警察庁のまとめでわかりました。

ことし3月に施行された改正道路交通法では、75歳以上の高齢者ドライバーについて3年に1度の運転免許証の更新の際に受ける認知機能の検査で「認知症のおそれがある」と判定された場合には、医師による診断が新たに義務づけられ、診断で認知症と判断されると運転免許証の取り消し、または停止の処分となりました。
警察庁によりますと、施行後9月末までのおよそ半年間に「認知症のおそれがある」と判定されたドライバーは3万170人に上り、診断の結果、697人が取り消しなどの処分を受けたということです。
また、診断前に運転免許証を自主的に返納した人も6391人いたということです。

警察庁によりますと、ことしに入って9月末までに運転免許証を自主返納した75歳以上のドライバーは、18万4897人と返納者が過去最多となった去年を、すでに2万人以上上回っているということです。
警察庁は、高齢者ドライバーが運転できる車や時間帯などを限定した運転免許証を導入するかどうかなどについて検討を進めています。


高齢ドライバー「認知症の恐れ」3万人 判定半年で(2017年11月2日日本経済新聞)

 75歳以上の認知機能検査を強化した改正道路交通法が3月に施行されてから9月末までの半年間で、認知症の恐れがある「第1分類」と判定された人が3万170人に上ったことが2日、警察庁のまとめ(暫定値)で分かった。
 第1分類は医師による診断を受けることが義務付けられている。これまでに7673人が受診し、697人が免許取り消し、停止などの行政処分を受けた。

 警察庁は認知症の診断による免許取り消し、停止が年間1万5千人程度に上ると見込んでいた。人数が同庁の予想を下回っているのは免許取り消しなどの処分を受ける前に自主返納する高齢者が多いことが要因。
 第1分類とされた人のうち、6391人が医師のアドバイスなどで自主返納した。有効期限切れで免許が失効した人も1267人いた。
 自主返納した場合、身分証明書として使える「運転経歴証明書」を申請でき、商店などで優遇サービスを受けられるメリットがある。75歳以上の自主返納は認知機能検査を受けていない人も含めて今年1~9月に18万4897人と、年間で最多だった16年の16万2341件を既に超えている。

 認知機能検査で、認知機能の低下がある「第2分類」は30万165人、問題がない「第3分類」は78万7541人。検査の機会は、105万6779人が免許の更新時。6万1097人は信号無視などの交通違反をした際の臨時検査だった。

自主返納も含めて年間20万人程度の高齢者が免許を失っていると言うことですが、75歳以上の免許保有者がざっと500万人余もいることから考えると、むしろ大多数の高齢者は免許を所持し続けていると解釈するべきなのでしょう。
この免許取り消しに関しては代替交通機関のない地方を中心として、生活に支障を来すと未だに根強い反対意見もあるのですが、医療の世界においても他人の人生を左右する判断を強いられることにストレスを感じる先生方が少なくないようです。
特に長年のかかりつけとして機能している開業医の場合、患者に対していわば不利益な判断を下すことで関係が破綻すると直接的に顧客減になるわけですから、一切その種の判断はしない、専門医療機関に紹介すると言うのも仕方のないところですよね。
現実的に毎年100万人の高齢者が75歳になり、またその後も数年おきに同様の認知症判定が繰り返されるとなればこれは大変な業務量で、認知症専門医にとってもこのままでは遠からず手が回らなくなると悲鳴を上げたくなるのも当然でしょう。

高齢者の免許の更新自体をこうやってどんどん厳しくハードルの高いものにしていく意義がどうなのかですが、逆に考えると免許所持年齢に下限があるなら上限もあってしかるべしで、そもそも何故高齢側だけ年齢無制限に所持を認めるのかと言う考え方もあります。
またNHKの記事にもあるように、警視庁としても一律免許没収だけではなく運行制限を課した上である程度認める考えもあるようで、特に田舎の農道だけをのんびり走る程度であれば周囲の住民が注意すれば何とかなるだろうと言う意見もありますね。
他方で少なくとも高速道路への乗り入れは禁止すべきだと言った声が根強いのも昨今の事件による影響でしょうが、地域内でのローカルな移動手段に限定するならそもそも車である必要があるのかと言う疑問もありますよね。
最近は免許返納した高齢者に電動自転車が人気なのだそうで、セニアカーなど高齢者向けの近距離移動手段には事欠かない時代ですが、自治体などが補助金を出して各人所有の自家用車と引き替えにこうしたものに乗り換えをしてもらうと言った道もあるでしょうね。
高齢者にしてもせっかく長年維持してきた資格を失い生活が不便になるわけですから、何かしら相応のインセンティブを用意してどんどん自主的に返納してくれるようにした方が社会にとっても本人や家族にとってもありがたいと言うことになりますよね。

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2017年11月 1日 (水)

地域枠をさらに強化、卒後の進路にも都道府県が影響力を発揮

今後地域医療計画に基づいて地域内での医療供給体制を都道府県が主体になって構築していくことが求められているのは周知の通りですが、そのための手段の一つとしても大いに役立ちそうなこんなニュースが出ていました。

医師確保、都道府県権限強化へ…医学部に地元枠(2017年10月30日読売新聞)

 地方の医師不足解消に向け、厚生労働省は、都道府県が医師確保のため行使できる権限を強化する方針を固めた。
 地域の事情に通じた都道府県が主導し、卒業後に地元で働く医師を増やす方策を医学部に求めたり、地域の研修病院の定員を決めたりできることを法律に明記する予定だ。来年の通常国会へ医師法と医療法の改正案提出を目指す。

 厚労省によると、医療機関などで働く医師数(2014年)は、人口10万人あたりで最も多い京都府の308人に対し、最も少ない埼玉県は153人と約2倍の差がある。同じ都道府県内でも、都市部に医師が集中する傾向にある。
 厚労省は地元出身の医師ほど地域に定着しやすいことに注目。医学部入学定員に「地元出身者枠」を設けるよう、都道府県が大学に要請できることを医師法に定める方向だ。


医学部定員の「地元出身者枠」、地域枠とは別に設置を マッチングも別枠に、専門医制度での国・県の役割法制化を検討(2017年10月25日医療維新)

 厚生労働省は、「医療従事者の需給に関する検討会」の第13回医師需給分科会(座長:片峰茂・長崎大学前学長)に対し、医師の地域偏在解消に向け、医学部入学定員には「地域枠」とは別に「地元出身者枠」を設けるほか、卒後の臨床研修では、地域枠の医師や地元出身者枠等については、地元定着を図るために一般のマッチングとは別枠にしたり、都道府県が臨床研修病院の指定・募集定員の設定を行うことなどを提案した。
 専門医制度については、国と都道府県が、地域医療の観点から日本専門医機構に対し、意見を述べることができる仕組みを法律上、位置付ける。さらに診療科偏在の解消に向け、将来の診療科別の医師ニーズを都道府県ごとに明確化し、国が情報提供し、研修医等が専門を決める際のデータとして活用してもらう方針。
 医学部入学、臨床研修、専門研修という医師養成の3つの過程で、さまざまな仕組みを組み込むことにより、医師の地域と診療科偏在の解消を目指すのが、厚労省の狙い(資料は、厚労省のホームページ)。

 厚労省の提案に対しては、「見直しの方向性についてはおおむね賛成する」(日本医師会副会長の今村聡氏)など支持する意見が大勢だった。しかし、自治医科大学と防衛医科大学校の卒業生と同様に、地元枠等のマッチングを別枠とすることについては、それ以外の学生との平等性等の問題から、全日本病院協会副会長の神野正博氏が反対。「地域枠の学生を早いうちから都道府県がフォローして、マッチングの段階で県と相談しながらどこで研修するかを相談すれば、別枠を設ける必要はないのではないか」と述べた。
 津田塾大学総合政策学部教授の森田朗氏は、「日本の医療システムは、医師の自主性を尊重し、供給のコントロールも、経済的インセンティブでやってきた」と述べた上で、厚労省提案を次のように総括した。「被保険者や国民皆保険制度の視点がこれまでの議論に欠けており、医師が偏在すれば、医療が受けられなくなる懸念がある。一方で、医師には職業選択の自由はある。両者のマッチングはどうすればいいのか。従来の方法ではうまくいかない場合、もう一段の仕組みが必要ではないか。プロフェッショナルオートノミーとは、一定の公的ミッションを持った専門職集団が(サービスなどの)提供をコントロールし、問題があれば対応する仕組み。プロフェッショナルオートノミーがうまく機能しないので、行政に出てきてもらわないといけない状況かと思う」。

 なお、「医療従事者の需給に関する検討会」は、2016年9月の段階で、医師偏在対策として14項目を挙げていた。うち、「管理者要件」(特定地域・診療科で一定期間診療に従事することを、臨床研修病院、診療所等の管理者要件にする)については、厚労省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」で、同報告書は「規制的手段」は否定しており、医師需給分科会では議論されない見通しだった(『医師偏在対策、5月から集中的議論、医療計画に盛り込む』を参照)。
 しかし、第13回会議で「管理者要件」についての議論を求める声が上がり、厚労省医政局の担当者は、「若手医師に強制的に地方に行ってもらうことについての懸念がある。その辺りに配慮しながら、どんな工夫ができるか次回以降、議論する」と述べ、強制以外の何らかの方法を検討するとして引き取った。
 医学部入学、臨床研修、専門研修の3段階で、厚労省が提示した案と主な意見は以下の通り。

【医学部入学】
◆地元出身者の取り扱いについて(見直しの方向性)
○医師偏在の度合いに応じて医師が少ない都道府県と判断された場合には、地域医療対策協議会の意見を聞いた上で、都道府県知事が大学に対し、入学枠に地元出身者枠を設けることを要請する仕組みを設けることとしてはどうか。
○また、地域枠ではない地元出身者枠の医師についても、地域医療支援センターが働きかけを行い、積極的にキャリア形成プログラムの策定等の支援を行ってはどうか。
(略)
【臨床研修】
◆臨床研修における地域枠・地元出身者枠の医師確保について(見直しの方向性)
○研修医の臨床研修修了後における、出身地や出身大学の都道府県への定着を図るために、地域枠の医師や地元の出身者等を対象とした選考を、一般のマッチングとは分けて実施してはどうか。
○ その際、医師偏在の度合いに応じて医師が多いと判断された都道府県については、一律ではない慎重な検討が必要ではないか。
(略)
◆臨床研修への都道府県の関与について(見直しの方向性)
○ 都道府県が管内の臨床研修病院の指定・募集定員設定に主体的に関わり、格差是正を進めていくために、地域医療対策協議会の意見を聞いた上で、臨床研修病院・大学病院の指定・募集定員設定を都道府県が行う、または関与を強めることとすること等について、どう考えるか。
(略)
◆臨床研修病院の募集定員について(見直しの方向性)
○ 地域医療の確保の観点から臨床研修医の都市部への集中をさらに抑制していくために、臨床研修病院の募集定員をさらに圧縮させるとともに、特に大都市圏の都府県については、募集定員をより圧縮することとしてはどうか。
(略)
【専門研修】
◆新専門医制度における都道府県協議会について(検討の方向性)
○新専門医制度において、専門研修体制が地域医療に影響を与える場合や研修の機会確保が十分でない場合に、国や都道府県が地域医療の観点や研修の機会確保の観点から意見を述べることができるような仕組みを法律上設けることとしてはどうか。
○ なお、都道府県において意見の内容を協議する場としては、地域医療対策協議会に統合するが、都道府県によって特別の事情がある場合には、専門医の協議会を地域医療対策協議会のワーキンググループなどとして存続させることも可能としてはどうか。
(略)

今のところ議論のとっかかりレベルの話ではありますが、地域枠と言っても入学だけではなく卒業後の進路に関しても別枠で取り扱うだとか、専門医制度に関しても言及していたりだとか、要するに医師の地域配分是正のための手段を列記した形ですよね。
この点に関しては医師強制配置と言う話とも関係することで、以前から医師の主体性を阻害すると言った根強い反対がありますが、逆に過激な?意見となると医師免許も都道府県別、あるいは地域別にしてはどうかと言う声もあるほどです。
地域枠などは少なくとも一定年限はこうした地域内専従の医療を義務づけるものですが、注目すべきはマッチングでも特別枠を儲けると言う点で、現状の地域枠でもそうですが地域の難関研修病院に一般入学組よりも容易に入り込めるとも解釈出来る話ですね。
かねて地域枠なるものが得られる利益に対して制約が大きすぎると言う声もありましたが、今後地域枠であれば卒後の進路選択においても有利な点が増えてくるとなれば、学生側にも積極的にこれを選択する意味が出てくると言えるかも知れません。

専門医制度に関しても今回何とも微妙な表現で言及されていますが、この専門医資格に関しても診療科毎に定数を決めるべきだとか、いっそ地域毎に上限を設けて配置をコントロールしてはどうかと言う意見もあるようです。
諸外国を見てみるとイギリスのようにGPの配置を決めている国はあっても、専門医に関して地域指定を行っている国はあまりないようで、この辺り長年の修練と努力の結果専門医資格を取ったのに余計な制約が増えるのではやっていられないと言うものでしょうね。
ただ今後新専門医制度となり専門医資格も今までと異なった位置づけになっていく中で、当然ながら診療報酬に資格の有無をリンクさせようだとか、実質的な医師のコントロールに利用すべきだと言った意見も出てくる可能性はありそうです。
いずれの制度変更が行われたにせよ、今現在専門医資格を持っている大ベテランの先生方に今さら別な地域に行けなどと言い出すはずもありませんから、結局は発言力の弱い若い先生達が泣く泣く地方巡りをすることになると言うことにもなるのでしょうか。

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2017年10月30日 (月)

財務省筋は診療報酬の大幅な引き下げを提案

来年度診療報酬の議論が進んでいますが、今回も医療費削減が大きなテーマとなってきそうな気配のようです。

来年度予算 診療報酬引き下げなどを提案(2017年10月25日NHK)

財務省は来年度の予算編成に向けて、高齢化で膨らみ続ける医療や介護などの社会保障費を抑える見直し案を明らかにしました。医師の収入などになる「診療報酬」について、一般の賃金や物価の伸びを上回る上昇が続いてきたとして引き下げを提案し、今後、厚生労働省などと調整を進めることになりました。

見直し案は、25日開かれた財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会で財務省が示しました。来年度の予算編成では歳出の3分の1、32兆円余りを占める医療や介護などの社会保障の伸びを抑えることが引き続き最大の課題になっています。
このため、医療分野では病院などに支払われる「診療報酬」を来年度、2%台半ば、金額に換算して1兆円以上引き下げるよう提案しました。民間企業の賃金や物価の水準がほぼ横ばいで伸び悩む中、医師の収入などになる報酬は上昇が続いてきたと指摘し、引き下げが必要だと指摘しています。
また、再来年度以降に行う見直し案として、75歳以上の高齢者の追加の負担を打ち出しました。病院にかかった際窓口で支払う自己負担を、今の原則1割から段階的に2割に引き上げるべきだとしています。

介護の分野でも、介護サービスを提供する事業者に支払われる「介護報酬」について、引き下げを提案しました。
さらに、子育て支援の分野では、中学生までの子どもがいる世帯に支給される「児童手当」について、所得が高い世帯への支給を廃止するよう提案しました。
また2020年度末までに32万人分の保育の受け皿を新たに整備するため、企業が負担している拠出金の引き上げも提案しました。
財務省は、これから年末にかけて厚生労働省などとの調整を進めますが、報酬の引き下げは日本医師会などからの反発が予想され、来年度の予算編成の大きな焦点になる見通しです。

診療報酬と介護報酬

財務省が示した社会保障費の見直し案の柱になるのは来年度、2年に1度の改定が行われる「診療報酬」です。
「診療報酬」は、医療機関や薬局が受け取る「収入」にあたります。患者が窓口で支払う自己負担や、国民健康保険や健康保険組合が徴収する保険料、それに税金で賄われています。
(略)
財務省によりますと、デフレの影響などで賃金や物価水準が、この20年余りの間、ほぼ横ばいで伸び悩む中、診療報酬の「本体部分」は15%程度、上昇しています。
医療制度を持続させるためには是正が必要だと指摘しています。
高齢化や高度な医療機器の導入などで医療費は、毎年2.6%程度、金額にして1兆1700億円の増加が見込まれることから、財務省は来年度の診療報酬改定で1兆円以上引き下げたいと提案しています。
このとおり決まれば3.16%引き下げた平成18年度以来、12年ぶりの大幅な引き下げとなります。
(略)

安倍政権の医療制度改革 診療報酬「マイナス2%台」に、財政審(2017年10月25日医療維新)

 財務省の財政制度等審議会財政制度分科会(分科会長:榊原定征・経団連会長)は10月25日、2018年度の診療報酬改定について、医療費の伸びを高齢化の範囲内にするためには、診療報酬改定1回当たり、「2%台半ば以上のマイナス改定が必要」との考えを示した。会見した成城大学経済学部特任教授の田近栄治分科会長代理は「財政審としては、診療報酬本体をマイナス改定すべきという方向だった」と紹介した。薬剤師の技術料に当たる調剤報酬についても多くの議論が割かれたと説明。「調剤報酬全体として、水準を十分に引き下げる」ことを求めた(資料は財務省のホームページ)。

 この日の資料は計144ページで、2時間の会議は主計官の説明1時間、議論が1時間だったと説明。資料では、過去10年間で国民医療費は年平均2.5%のペースで増加しているが、このうち高齢化等による要因は年1.2%と指摘。「医療費の伸びを高齢化の範囲内にするためには、1回の改定あたり2%台半ば以上のマイナス改定が必要」とした。社会保険料の引き上げを抑えるためにも「制度の持続可能性を確保するためにも、少なくともこの程度のマイナス改定とすることが求められる」と強調している。
 田近会長代理はこの日の議論の方向性について、(1)来年度に向けて診療報酬本体のマイナス改定、介護報酬についても下げるべき、(2)児童手当の特例給付は見直していくべき、(3)高齢者の自己負担についても考えるべき、(4)事業主拠出金による子育て支援は拠出率を引き上げるべき、積極的に活用すべき――と説明した。
 委員の意見としては「開業医と勤務医では働き方が違うので、両者の診療報酬のバランスを考えるべき。開業医にインセンティブを与えすぎ」「予防にインセンティブをつけるべき」「薬剤師の数が国際的に見ても多い。市場原理が機能しているのか」などの意見があったと紹介した。
(略)
 財務省は2018年度予算編成では、社会保障関連費の自然増6300億円から1300億円の削減を見込んでいる。2016年度改定では、診療報酬本体は0.49%引き上げる一方、薬価(1.22%)と材料(0.11%)を通常改定で1.33%、加えて薬価の市場拡大再算定で0.19%、合計1.52%引き下げだった。

医療から介護に高齢者を移していこうと言う時代に介護報酬引き下げを提唱するとはなかなか挑戦的な提案だとも感じるのですが、もちろんこれは財務省筋の見解がこうだと言うだけであって、今後厚労省での議論がどうなるかも見守らなければならないでしょう。
しかしいつも思うのですが、診療報酬における医師の取り分など1割強とごく一部であるにも関わらず、相変わらず医師の収入などになる云々と言う非現実的な記載をしているのは報じるマスコミとして、何かしら意図でもあるものなのかと勘ぐってしまいますね。
一般に○○社の社員収入などになる売上高は幾ら幾らなどと言う言い方はまずもって聞いたことがないし、会社の売上高が幾らあろうが社員の待遇がどうかは全く別問題なのですが、何故か医療の世界に限ってこれらを混同した議論をしたがる人が多い印象があります。
大企業は儲けすぎだと各企業の内情を盛んに暴きたがるマスコミ諸社が、医療機関の経営的内情について全く無関心なのが以前から不思議で仕方がないのですが、毎回これだけ報酬が多すぎると言われているのですからきちんとその辺りも調べて報じるべきでしょうね。

また医療の高度化による自然増を抑制し、医療費の伸びを高齢化分相当程度に抑え込もうとすれば、当然ながら今まで以上に不採算医療の切り捨てを推進しなければならず、また高度で高価な医療はなるべく行うべきではないと言う結論になります。
ガイドラインなどによる定型的な医療がますます進むのはJBM(司法判断に基づく医療)の普及もあり仕方ない側面もありますが、その結果ここまではやっておかなければ訴えられた時に負けると言う水準も引き上げられると言うことで、現場はこのバランスをどう取るべきなのかですね。
ガイドラインを策定する側もようやく高齢者などに対しては別枠で議論しようとか、医療にもコストパフォーマンスの考えを導入しようと言う動きが出てきているようですが、命はお金にかえられない式の旧来の考え方からどれだけ発想が転換出来るのかが問題でしょう。
また当然ながら患者側としては最新最良の医療を受けたいと言う欲求もあるはずで、国策上それは出来ないと言う医療機関との間に軋轢も増すのだろうし、それでも敢えて医療費削減推進すべしとなれば応招義務の免除とセットで議論する必要がありそうですね。

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