心と体

2017年3月29日 (水)

地域枠の義務違反に対し厳しい目線

先日こんなニュースが出ていたことを御覧になったでしょうか?

都市圏で暮らしたい…「地域枠」医師、3%離脱(2017年03月26日読売新聞)

 地域で働く医師を育成する大学医学部の「地域枠」を昨春卒業した1060人のうち、3%強に当たる35人が地域医療から離れていたことが文部科学省の初調査でわかった。

 「地方では専門性を高められない」「都市圏で暮らしたい」などが理由。地方の医師不足が深刻になる中、全国の71大学が地域枠を導入しており、厚生労働省の検討会が改善に向けた議論を進めている。

 地域枠は、卒業後の一定期間、大学の地元などで医療に従事することを条件に一般枠とは別に募集、選抜するのが一般的。「一定期間の地元勤務」などを条件に奨学金を返済免除とするケースも多い。一般枠で入学後、同様の奨学金を出す自治体もあり、文科省はこれらを含めて「地域枠」と総称している。今回の調査で判明した離脱者35人のうち30人は条件付き奨学金を受け取り、卒業時に返済するなどしていた。

こうしたニュースをどのように受け止めるべきかは人それぞれなのだろうと思いますが、個人的に感じたこととしては地域枠学生のわずか3%しか離脱しなかったのかと言う驚きで、今どきの学生はやはり相当に真面目なのだろうなと思いますね。
興味深い点としては離脱者35人のうち5人は奨学金を返済していなかったように読めると言う点ですが、通常こうした場合返済義務が生じるはずですから今後働きながら返済していくことになるのか、場合によっては勤務先が立て替えて払ってくれるというありがたい話もあるように聞きますね。
いずれにしても契約でこうした場合にはこうなると言うことを明記し双方納得して契約しているのであれば、それに従って対処していくと言うことでしかないと思うのですが、世間的にはこの種の行為に対してあまり良い感情がないと言うことなのでしょうか、先日はこんな記事も出ていました。

「地域枠」義務違反の病院に罰則を検討、臨床研修部会(2017年3月24日医療維新)

 厚生労働省の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会(部会長:桐野高明・東京大学名誉教授)が3月23日に開催された。地域枠で医学部に入学した研修医が指定地域外の病院で初期臨床研修を行う問題に対応するため、医師臨床研修マッチングに当たって、研修医に地域枠であることを申告することを義務づけたり、病院に対して罰則を設けたりするなどの対策を議論した。
 近年、地域枠で入学しながらも、大都市部の病院で初期臨床研修を行ったり、その際に病院側が、義務を果たさない場合に生じる奨学金返済を肩代わりするなどの事例があるという。改正案は、参加者(研修医)向けの規約に以下の2つの条項を追加するというもの。マッチングは医師臨床研修マッチング協議会が実施しており、厚労省がとりまとめた改正案を同協議会と協議する。

規約に追加される条項案
・参加者は、地域医療等に従事する明確な意志を持った学生の選抜枠、いわゆる「地域枠」の入学者であって、臨床研修期間中に指定された地域や病院での従事要件が課せられている場合は、選考過程において参加病院にその旨を伝えること。
・地域枠を設けている都道府県は、参加者のうち、地域枠入学者であって、臨床研修期間中に指定された地域や病院での従事要件が課せられている者の情報(氏名、大学及び従事要件)を、厚生労働省を経由して参加病院に通知する。参加病院は、得た情報を選考過程での参考情報としてのみ用い、また、該当する都道府県に紹介する場合がある。

 規約の改正については大筋で合意された。
 併せて、厚労省は、臨床研修病院が義務履行要件に反する研修医を採用している場合、病院に対し研修医1人当たり60万円程度になるとされる臨床研修補助金を減額するなどの罰則を設ける方針。また、翌年以降の募集定員を削減することも検討している。ほとんどの委員が罰則を設けることに賛成を示したが、社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷浜松病院顧問の清水貴子氏は「ペナルティを科したいのは重々分かるが、これまでやっていなかったので、まずは周知のみとすべきでは」と指摘。罰則に関する議論は次回に持ち越された。補助金は省令施行通知で実施されており、罰則の適用は早くても2018年度からとなる。
(略)

実際にやるやらないは別にして、地域枠の義務違反を犯した学生当人ではなくそれを雇う側の病院にペナルティを科そうと言うのはなかなかよく考えた手段で、確かに罰金はともかく研修医の募集定員削減などは地道に効きそうなペナルティだなと感じるのですが、その背景には当然ながら返済奨学金の肩代わりなど病院側のバックアップが違反を増長させていると言う気持ちもあるのでしょう。
もう一つ、例えばこれが医師・医学生ではなく他の業種であればどのように報じられていたのかで、例えば一昔前まで当たり前に行われていた看護学生のいわゆる御礼奉公を進歩的なメディアがどれだけバッシングしていたかを思い出していただければ、まさか彼らが医師だけは当然の権利を認められないなどと言い出すはずもありませんよね。
要するに違反とは言っていますがこうしたペナルティが表沙汰になるほど制度そのものやペナルティを科す側にとっても必ずしもありがたくない話であるとも言えるわけで、それが故に少しでも立てる波風を小さなものにしようと言う工夫の表れなのだろうと思うのですが、しかし97%が普通に制度を遵守しているのだから何も大騒ぎするほどのことでも…と思ってしまうのは不肖管理人だけでしょうか。

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2017年3月27日 (月)

免疫療法ガイドラインが専門家に与えた葛藤

かねて何かと(余り好意的ではない意味で)話題になることも少なくなかった免疫治療につき、先頃その一種とされる免疫チェックポイント阻害薬が保険収載されたことが知られていますが、それと関連して昨年末に免疫療法全般に関してのガイドラインが登場し話題になっています。

あらゆる癌免疫療法に言及した日本初のガイドライン発行 その免疫療法、本当に推奨できますか?(2017年3月21日日経メディカル)

 2016年12月に日本臨床腫瘍学会は、日本がん免疫学会、日本臨床免疫学会の協力を得て、「がん免疫療法ガイドライン」を新たに発行した。ポイントは、有効性が示されて保険収載された免疫チェックポイント阻害薬だけでなく、自由診療で行われているものやまだ有効性が証明されていないものなど、現時点で知られているあらゆる免疫療法に言及したことだ。

 近年、癌の薬物治療に関わる医師の間で必ず話題に上がるのが、免疫チェックポイント阻害薬だ。もともと免疫系には、免疫応答を活性化させる仕組みがある一方で免疫応答を抑制する仕組みが存在し、それを免疫チェックポイントと呼んでいる。癌はこの免疫チェックポイントを悪用することで、T細胞などからの攻撃を回避して増殖していることが明らかになってきた。そこで開発が進められたのが免疫チェックポイント分子を標的とする免疫チェックポイント阻害薬で、ニボルマブ(商品名オプジーボ)やペムブロリズマブ(キイトルーダ)、CTLA-4を阻害するイピリムマブ(ヤーボイ)が先陣を切って使用可能になった。しかも悪性黒色腫を皮切りに、肺癌や腎癌、ホジキンリンパ腫など横断的に様々な癌で有効性を示し、薬事承認を経て保険診療で使われるようになってきた。今後も頭頸部癌、胃癌など、様々な癌に適応を拡大すると見込まれている。

日本臨床腫瘍学会ガイドライン委員長を務める室圭氏は「免疫チェックポイント阻害薬の登場でペプチドワクチンなどを再評価しようという研究も始まっている。今回、全ての免疫療法を定義できたことは今後のためにいい機会だった」と語る(写真撮影:森田直希)
 「標準治療と同等もしくはそれを凌駕する効果が臨床試験でしっかりと証明された。標準治療に組み込まれる初めての免疫療法だ」──。愛知県がんセンター中央病院薬物療法部部長で、日本臨床腫瘍学会ガイドライン委員長を務める室圭氏は免疫チェックポイント阻害薬をこう評する。

 免疫チェックポイント阻害薬そのものは抗体医薬だが、免疫系に作用する薬剤であることから免疫療法の一種とも言える。一方、従来から言われている免疫療法は、患者由来のリンパ球を体外で刺激して輸注したり、患者の癌細胞由来ペプチドを投与して免疫系を刺激するもの。世界中の研究者が研究に取り組んできたものの、これまで既存治療を上回ったり、既存治療への追加効果を示した免疫療法は存在しない
 にもかかわらず、一部に自由診療で患者に実施されている免疫療法が存在する。「癌の薬物治療に関わる医師にとって、効果が証明されていない免疫療法は標準治療になり得ず、はなから念頭になかった。効果が証明されていないのに一般診療で提供している一部の動きに『うさん臭いもの』『相手にする必要がない』と切り捨ててきた」(室氏)。
(略)
 これに対し、がん免疫療法ガイドライン作成ワーキンググループ長を務めることになった和歌山県立医科大学第三内科(呼吸器科・腫瘍内科)教授の山本伸之氏は、世の中に存在する全ての癌免疫療法に言及するガイドラインにするという方針を宣言した。
 「こちらは承認されているから良い、あちらは怪しいものだから相手にしない、というのはいわば先入観。ガイドラインだからこそ恣意性を排除する必要がある。存在する全ての免疫療法を対象にして、それぞれに有効性を証明する知見(エビデンス)があるかどうかを科学的に調査した上で推奨できる免疫療法を示すべきだと考えた」と山本氏は言う。
(略)
 山本氏は、「当たり前だが、我々は根拠のある治療を患者に対して示す必要がある。だから、全ての免疫療法と名の付く治療をリストアップし、現時点でどんな根拠があるか、推奨される免疫療法はどれか、ということを明示したガイドラインは、癌治療に関わる医師、ひいては医師の説明を受けて受ける治療を考える患者さんの役に立つはずだと考えた」と語る。

 文献検索については、定義に基づいたキーワードを設定し、2000年1月1日以降に発表されているもので、フェーズ2もしくはフェーズ3試験で、ヒトを対象とした論文を抽出した。そしてフェーズ1試験や単群フェーズ2試験などの非ランダム化試験、本体試験の付随研究などを除外して残った文献を吟味して推奨治療を決めている。
 その結果、ガイドラインに掲載されている18の癌腫を見てみると、何らかの免疫療法が推奨された癌は、造血器腫瘍、肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、尿路上皮癌、悪性黒色腫の6つだ(表2)。
 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之氏は、「網羅的に免疫療法を紹介していることはとても重要なことだ」とガイドラインを評価する。「文献を網羅的にしっかりと調べた上で、推奨される知見がある免疫療法を推奨している。逆に、このガイドラインで推奨されていない免疫療法は患者に提供すべきではないと言えるだろう」(勝俣氏)。
 勝俣氏は、「効果が証明できていない免疫療法を一般診療として患者に提供するのは、科学的にも倫理的にも問題だ。有効だと思う治療法ならば、患者に説明し、同意を得た上で臨床試験として実施するべき」と指摘。「このガイドラインの内容こそ患者にも伝わってほしい。患者向けガイドラインも作るべきではないか」と語る。
(略)

非常に多くの免疫療法が網羅的に掲載されていると言う点が特徴として挙げられますが、注目されるのは全ての免疫療法について推奨される、されないと言うことを明示してあると言うことで、勝俣教授らのコメントからもうかがわれるようにやはり本音の部分では後者に相当な力点が置かれているのではないかと言う気もします、
この点で免疫療法に限らず代替医療の類全般に言えることですが、これまで明確なエヴィデンスも存在しないものは専門家としてスルーしてきたことが彼らの布教活動を助長してきた側面も否定出来ませんから、公的な見解として「患者に提供すべきではない」ものを定義したと言うことの意味は小さくはないように思います。
山本教授がこのガイドライン作成作業に関してインタビューを受けていますが、免疫チェックポイント阻害薬が今まで行われてきたいわゆる免疫療法とは違うものではないかと言う考え方もある一方で、そうした違いの明確化と言う意味でもガイドライン作成が必要であったのではないかと言う印象を受けます。

がん免疫療法ガイドライン作成WG長の山本信之氏に聞く 手のひら返しをしてでも免疫療法に注目するワケ(2017年3月21日日経メディカル)

(略)
 我々に「今まで存在してきた免疫療法が悪くて、今回新しく登場した免疫チェックポイント阻害薬という免疫療法はいいものなんだ」という先入観があるのかもしれない。だからこそ、そもそも免疫療法そのものを真摯に見直して、その上で患者さんに提示できるもの、まだ有効性が証明されておらず、患者さんに提示すべき段階ではないものを、整理すべきだと考えたのです。

 当初、「(新たに登場した免疫チェックポイント阻害薬を)保険適応のないような治療と一緒くたにされてはたまらない」という考えがあったことは否定しませんが、作成時にはそういう考えさえも先入観と考え、排除して取り組んできました。
(略)
 なお、効果や安全性を明らかにするためにしっかりと検証された結果があるものの、日本で保険償還の対象となっていない治療が文献検索で明らかになったらどうするかという課題がありましたが、これについては患者さんに大きな負担を掛けることはできないので、原則として保険償還の対象となっていない治療は標準治療として記載しないという方針を定めました。ただ当たり前の結果ですが、効果があることを証明した知見があるのに保険償還の対象になっていない治療はほとんどありませんでした。

──この「がん免疫療法ガイドライン」を、免疫チェックポイント阻害薬だけを対象としたガイドラインとして作成するという選択肢はなかったのでしょうか。

山本 我々、いや、ひょっとしたら私だけかもしれませんが、「免疫療法のことを十分理解しているわけではない」というスタンスから始めました。以前は免疫療法のことをよく知らなくても癌治療はできました。免疫療法は標準治療の選択肢の中になかったので、免疫療法の知識がなくても一番よい治療を提供できたからです。
 今回、免疫療法を整理するにあたり、保険償還の対象になっていないものというだけで排除していいのかと考えました。例えば、水道水を飲んだら治療効果があるという知見が、自分が知らないだけで世の中には存在するかもしれない。調べもせず、先入観だけで排除するのはよくないだろうと。しっかりと定義した上で、その定義に基づいて情報を集めたら、我々が知らなかっただけで、しっかりと検証された知見があるかもしれない。だからまず免疫療法と呼ばれるものを全てしっかりと定義し、ガイドラインに明示したのです。

──質の担保された情報さえあれば、ガイドラインで推奨されるというということですか。

山本 そうです。第三者が見ても妥当だと評価された知見が文献として示されていればガイドラインに掲載するという方針で作成しました。
(略)
 我々、作成ワーキンググループ委員は利益相反(COI)を抱えています。お金の面だけでなく思い入れという面でもです。COIがあるからこそ基準を決めて、その基準に基づいて客観的に作るということに腐心しました。
(略)
──一般的に、今まで特に内科医は「免疫療法なんて(怪しい治療だ)」と考えて、相手にしてこなかった傾向がありませんか。むしろ外科医は、手術をして、でも再発したり切除しきれないことも多く、だからこそ患者検体を持っていることを生かしてペプチドワクチンや体外でリンパ球を刺激して輸注する免疫療法の開発に取り組んできたような気がします。内科医、外科医というのはあくまで印象ですが。今になって内科医が手のひらを返したように「これからは免疫療法だ」と言っている感じも受けるのですが。

山本 その通りです。手のひらを返しました。極端な言い方かもしれませんが、患者さんにとってよい治療であれば治療方法は何でもいいのです。治療方法にこだわりがあるわけではありません。こだわりがあるとしたら、一番よい治療を提供しようというこだわりです。
 もし今までに「免疫療法なんて」と言っていたとしたら、それは今までの免疫療法には有効だという証拠がなかったからです。しかも中にはまだ有効性を客観的に評価できていないのに、臨床試験、臨床研究ではなくて日常診療として提供されているものがあります。有効性が客観的に示されていないのに“治療”を行うことは問題でしょう。もちろん標準治療の選択肢がなくなり、まだ有効性が示されていない開発中の治療法を試すことはあります。その段階で保険償還されていないような治療法を試すという選択肢を患者さんが選ぶことを否定するものではありません。
 でもそれは最低限の安全性を確認した上で、臨床試験として行われるべきものです。試験ではない診療として提供されるのは言語道断でしょう。
(略)

思い入れという面でも利益相反を抱えているとはなかなかに言い得て妙だと思いますが、言葉の端々に様々な葛藤があったことを伺わせる一方で、幸か不幸か古典的な意味でのいわゆる免疫療法に関しては有効であるというエヴィデンスは示されなかったと言うことで、ガイドラインにおいても躊躇なく推奨されざるものとして扱い得たと言うことですね。
この種のガイドラインにこうしたものをどこまで取り上げるべきなのかは当然様々な考え方があるのだろうし、当然今回のガイドラインがこうしたものにまで言及していることに諸手を挙げて賛同する人ばかりではないのでしょうが、いわゆる代替医療や似非医療による健康被害がしばしば報じられる現状を考えると、専門家集団として見解を示してもらいたいと言う声が少なくなかったのも事実でしょう。
今後は癌診療に限らず○○は高血圧に効くだとか、△△は糖尿病にいいと言ったものに対して専門家が見解を求められる機会も増えてくるのではないかと言う気もするのですが、この辺りに話が及んでくると免疫療法など比較にならないほど巨大な商売にも関わってくるだけに、それこそCOI的なしがらみも増えてくるのかも知れませんね。

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2017年3月23日 (木)

飲酒運転の車にぶつけられた結果

先日久しぶりに心が僻地ネタが出ていましたので、紹介してみましょう。

島で唯一の医者が脅迫され避難 沖縄・北大東島 常勤医が不在に(2017年3月18日沖縄タイムス)

 沖縄県北大東村(人口約600人)の県立北大東診療所の常勤医師が2月上旬から1カ月以上、不在となっていることが17日までに分かった。常勤の女性医師が村内で男に脅迫される事件が起き、村外へ避難したのが理由。診療所は現在、本島の県立病院からの代診派遣でやりくりしているが、県病院事業局の伊江朝次局長は「やる気のある医師がこんな形で島を離れざるを得なかったことを、もっと重く受け止めてほしい」と村に要望する。村は役場や駐在所と連携した医師の安全確保策などに取り組むとし、常勤配置を求めている。

 那覇署によると事件は2月7日夜に発生。男が酒気帯び状態で運転する車が対向車線に進入し、医師の乗る車と正面衝突した。男は「通報したらどうなるか分かるよな」などと医師を脅し、後に脅迫の疑いで逮捕された。「示談にしたかった」と供述したが、医師は事件翌日に村外へ避難し、その後に離任が決定した。
 現在は県立南部医療センター・こども医療センターや中部病院の医師らが数日ずつ代診を務めている。航空機の手配や医師確保が間に合わない日があり、患者の経過を継続して診られないなどの影響も出ている。

 病院事業局は事件後、村が村民に対し、常勤医師不在の理由について十分な情報を提供せず、危機感が薄いことなどを指摘。後任を4月から配置する方向で調整中だが「赴任後の安全が担保できなければ、延期もあり得る」とする。
 宮城光正村長は「事件は診療時間外の発生。県警が捜査していることもあり、村としても対応が難しい面があった」と説明する。
 事業局には「島の医療を守る連絡会議(仮称)」を立ち上げて医師住宅への防犯カメラ設置を含めた安全確保策を講じ、村議会で飲酒運転撲滅決議を提案することなどを提示。村長は「関係機関との調整が必要な部分もある。常勤医師がいてこそ住民の安心が得られるので、県や地域と連携しながら再発防止に取り組みたい」と語った。

医師が脅迫受け離島 常勤不在に、村が安全策(2017年3月19日琉球新報)

 北大東村(宮城光正村長)の県立南部医療センター・子ども医療センター付属北大東診療所では2月上旬から常勤医師が不在となっている。常勤だった女性医師が交通事故にあい、相手方の男性から脅迫される事件が発生し、その後島外へ避難したためだ。現在は県立南部医療センター・子ども医療センターと県立中部病院の医師が代診で島へ派遣されているが、日程確保ができないなどの理由で継続的に患者を診られないなどの影響も出ている。

 那覇署によると事件は2月7日に発生。男性が運転する車が反対車線に飛び出し、医師と同乗者が乗る車に正面衝突した。医師と同乗者は軽傷だったが、男性から「通報したらどうなるか分かるよな」などと脅された。事故当時、男性から基準値の2倍のアルコールが検知された。
 事件後、医師は身の危険を感じたとして村外へ避難。男性は1日に脅迫の疑いで逮捕された。医師は来年度も続投する予定だったが、離任が決定した。
 事態を重くみた県病院事業局は村に安全対策を要求。4月から後任を配置する方向で調整している。

 県病院事業局によると、北大東村は「島の医療を守る連絡会議(仮称)」を設置し、医師住宅に防犯カメラを設置するなどの安全確保や村議会で「飲酒運転撲滅宣言」決議を提案するなどの対策をとるとしている。
 病院事業局は「医師の安全を守る体制ができ、安全を担保できる状況でないと医師配置の延期などになる可能性もある」としている。

聞くところによれば若い女医さんで夫婦揃って離島診療に従事していた方なのだそうで、夫の方も近隣の南大東島で働いていたと言いますから北大東村と言わず僻地離島にとって大変な財産であるはずですが、どこからどう見ても全面的に飲酒運転の上でぶつかってきた相手の方が悪いだろうと言うものですし、脅迫するなど言語道断ですよね。
夜にこうした事故に遭遇し翌日には島を離れたと言うくらいですから余程身の危険を感じられたのでしょうが、こうした不心得者自体はどこの世界でも一定確率で存在するもので仕方がないとも言えますが、問題は記事にもあるように村長が何ら積極的な関与をしようとしていないように見えると言うことで、制度上のことはどうあれ地元のトップがこうした態度ですととても不安が解消されるようにも見えません。
医師派遣元の病院事業局では4月からの医師派遣延期も示唆しているそうですが、地元の最高責任者が対応は難しいと言っている以上また同じような事件が起こっても何ら不思議ではないわけですから、そもそも誰が行くにしても喜んで赴任すると言う状況にはならないようにも思いますね。

ちなみにここから先は全くの余談ですけれども、自動車保険の保険料率は都道府県によって違いますが、沖縄県は「沖縄料率」と言う言葉があるくらい全国でも突出して保険料率が安いことが知られていて、何故こうまで安く出来るのかと言えば、任意保険に入っている車が半分ほどしかないため保険会社にとって支払いが少なくてすむからだそうです。
しかし沖縄県は鉄道がないこともあり車の数は決して少なくなく、事故率などは全国中位程度であるのに任意保険にも入らないで大丈夫なのか?と思えるのですが、沖縄独自の習慣として狭い島内で血縁地縁の強い地域が多いせいか、交通事故が起こった場合にも大抵は当事者同士の話し合いで解決してしまうのだそうですね。
今回の事故にしても当事者はそうした感覚で「話し合い」で解決しようとしたとも言っているようですが、今回のニュースを見てその昔僻地医療の専門家の先生が何よりもまず地域内の血縁関係を理解しないと仕事にならないと言っていたことを改めて思い出しました。

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2017年3月21日 (火)

必要のない薬を患者に大量投与した理由とは

医療機関で不正行為が行われると言うことは残念ながらしばしばあることですが、先日それなりに珍しい形での不正が発覚したと報じられていました。

在庫処理で薬を投与…患者6人に、通常の8倍も(2017年3月17日読売新聞)

 精神科治療を行う、広島県福山市の福山友愛病院(361床)が昨年11~12月、統合失調症などの患者6人に本来は必要のないパーキンソン病の治療薬を投与していたことがわかった。

 病院を運営する医療法人「紘友(こうゆう)会」の末丸紘三会長の指示による投薬で、病院側は取材に「使用期限の迫った薬の在庫処理がきっかけの一つ」と説明。患者の一人は投与後、嘔吐(おうと)し、体調不良となっていた。

 病院によると、末丸会長は病院で精神科医としても勤務しており、昨年11月28日~12月6日、主治医に相談せず、パーキンソン病の治療薬「レキップ」の錠剤(2ミリ・グラム)を統合失調症などの患者6人に投与するよう看護師に指示し、複数回、飲ませた。また末丸会長は、通常の8倍の投与量を指示していた。

 レキップは統合失調症を悪化させる恐れがあり、昨年12月の院内の医局会では、一部の医師がレキップ投与を批判。末丸会長は「在庫はどうするんじゃ。病院経営も考えろ」などと言って、聞き入れなかったという。

 当時、病院では使用期限(昨年11月末)の迫ったレキップが70錠残り、うち62錠が6人の患者に投与された。投与後、1人は体調を崩し、残り5人に体調不良は起きなかったという。

 末丸会長は今月、読売新聞の取材に「薬は経験則で使った」と話し、在庫処理については否定。病院は調査委員会を設置、行政側への報告などを検討している。

小売業界全般でこの賞味期限切れ間近な商品への対応をどうするかと言う議論はあり、特にスーパーやコンビニなどから大量の廃棄食品が出ることはしばしば話題になっていて、コンビニ本部との契約内容がその原因になっている、コンビニ各店舗でスーパーのような期限切れ間近な商品の値引き販売が出来ないのは本部からの圧力が理由だと言った報道も出たのは記憶にあるところです。
ただいずれにしてもこうした問題の大前提として、少々期限が切れようが別にすぐ体に悪いと言うわけでもないよね?と言うコンセンサスがあるはずで、実際に賞味期限の類はあまりに余裕を持って設定され過ぎていて、これが廃棄食品増加の一因であると言う声も根強くあります。
医療における不正請求などの問題も様々なものがありますが、例えば受診していない患者を受診したように見せかけ請求すると言った行為でも患者に特に実害があるわけでもないので、今回明らかに患者に実害が出る形での不正行為が行われたと言う点が医療人として批判される大きな理由とはなりそうですね。
記事にもある通り事件は同病院の会長による指示で行われていたのだと言い、風の噂に聞くところでは同院と言いますか同会長は以前からこんな調子であるのだそうで、別に意外性のある話ではないと言う声も聞くのですが、いわば従業員である他の医師からも批判されていたと言うくらいですから、余程に目に余る行為ではあったのでしょう。

この種の期限切れ問題はどこの病院でも起こり得る話で、通常は期限が切れてしまえば仕方ないよねと廃棄するしかない話ではあるのですが、特に稀にしか使わないが使用時には緊急性があり、そしてそれなりに高価であると言った薬の期限切れが迫ってくると、院内でも何とか使い切れないものかと工夫することはあるでしょうし、この辺りは飲食店などでその日使いたい食材からメニューを考えると言った話と似た感じなのでしょうか。
病院などによって使う薬の差はあるはずですから、病院間でうまく在庫のやり繰りが出来れば廃棄率は下がるのでしょうが、残念なことに現状でこうした行為は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で禁止されていて、大規模震災時などに例外的に許可が出る程度であると言うことです。
ただ院外薬局では自前で在庫のない薬を他の薬局から融通してもらうと言うことは認められているので、この辺り卸会社なり薬局なりが仲立ちをしてうまくやり繰り出来るような抜け道が出来ないものかですが、そもそも法律を改正して正当な行為として認めていただければそんな面倒もないのでしょうけれどもね。

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2017年3月17日 (金)

「舌をしびれさせるのは、多量の化学調味料ですよ」は正しいのかも知れませんが

お食事会系を自称する当「ぐり研」としては以前から漠然と気になりながらも特に深く追及することなく放置していたのですが、先日こんなニュースが出ていたことで改めて真偽が気になったのがこちらの話題です。

化学調味料が「頭痛の原因」になるという都市伝説(2017年3月15日MAG2ニュース)

健康を損なうものとして第一に槍玉にあげられるのが、食品添加物。「味の素が頭痛の原因になる」などという都市伝説めいた話を聞かれたことがある方も多いかと思いますが、信憑性はあるのでしょうか。無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』の著者で科学者のくられさんは、偏頭痛のメカニズムを紹介しつつ、「添加物と頭痛の関係」の真実を記しています。

味の素が頭痛の原因になるという伝説
(略)
ともあれ、味の素が頭痛の原因になるという話は、味の素のグルタミン酸が原因というより、塩分のほうが原因だとも言われています。頭痛自体のメカニズムが複雑なので、どれがどうしてこういう頭痛が起きるということが正確に判明していないところで、これこれの成分は頭痛を引き起こす毒であるということもハッキリ言えないわけです。そういうハッキリしないのが頭痛の話なので、さも中華料理症候群を添加物の害悪の典型例みたいに紹介してる人は、だいたいトンチキなインチキだと思っていいでしょう。

もちろん食品による頭痛というのは日本頭痛学会の発表する資料にもあり、代表的なのはチラミンを含むチーズや、赤ワインや、ザワークラウトなどの発酵食品のヒスタミン、柑橘類の皮に多く含まれるシネフェリンのようなフェネチルアミン系の化合物などなど、血管を一時的に収縮と拡張と影響を与えることで、偏頭痛の引き金となるとされています。その中にグルタミン酸ナトリウムという記述があるのですが、どちらかというと、ナトリウム過剰による血管の収縮(浸透圧の変化)のほうが大きい気がします。またハムやソーセージに含まれる亜硝酸塩は、亜硝酸ですから血管拡張能力が微量でもけっこうあるので、それが引き金で頭痛を起こすこともあるようです。ただハムやソーセージも同様に塩の含有量が多いので、具体的にどちらが犯人かはなんともいえません。

ようするに些細なことで頭痛を起こすような人は、塩分の濃い食事をあまり取らない方がいいでしょう。

そしてなにより食品由来の頭痛は「気にしなくて良い」と毒性はそれ以外は無いと明言されているということです。故に頭痛を起こすような毒だから体に悪いなんていうロジックは存在しないわけです。頭痛が起きる量を自分で知っておき、起こるようならそれを避けるようにしようね…という話です。
(略)
頭痛が続くようであれば、その原因を発見し、治療していくことが大事なので、少しでもおかしいなと思ったら医師の診断を受けて、そのために健康管理をするのが当たり前で、食品添加物ごときを悪者にしたところで解決する問題ではないのです。無意味なスケープゴートで満足して病気の本体を取り逃がすようなことにもなりえません。故にただのフードホラーといっても、立派なニセ化学なわけです。

この化学調味料の過剰摂取が頭痛等の症状につながる説、もともとは1960年代のアメリカ発祥であったようで、ちょうど1950年代からアメリカでもグルタミン酸ナトリウムが大々的に流通するようになったこともあって化学調味料との関連が示唆され、特にその使用量が多いと言うことで「中華料理店症候群(Chinese Restaurant Syndrome:CRS)」などと言う呼称が知られていますよね。
特に日本ではひと頃大いに(そして後に別な意味でも)話題になった某グルメ漫画でこの言葉が登場して注目を集めた経緯もありますが、同漫画の原作者は化学調味料アレルギーを公言していて、外出先でもずいぶんと食べるものに苦労しているのだそうですが、風の噂に寄れば同氏が「無化調」と大絶賛したお店も実は(少ない量なのでしょうが)化学調味料は使っているのだそうですね。
ただ疫学的調査によればCRS経験者のうち中華料理店と関係がありそうだと言う人の比率は1割程度で、メキシコ料理やイタリア料理よりも少なかったと言いますから何とも奇妙な呼称にも思えるのですが、各種調査でも終始グルタミン酸過剰摂取と発症との関連は否定的であり、結局のところグルタミン酸大量投与によってもCRSを発症させることは出来ないのだそうです。
グルタミン酸と言うよりも含有されているナトリウム過剰がCRSの各種症状の原因になると言う説もある一方、単純に化学調味料の味が過剰な料理がまずいせいで気分が悪くなった人もいるのではないかと思うのですが、この点でグルタミン酸系のうまみに普段あまり慣れていなかっただろうアメリカで日本などアジア諸国に先駆けてこうした症状が認められたと言うのは、何かしら味覚との関連もありそうな気がします。

ちなみに最近では化学調味料と言う言葉を使わずうまみ調味料と言う言葉を使うようですが、これに対して蛋白加水分解物と言うものも良く目にする言葉で、一体何が何やら判らないと言う方も多いのではないかと思うのですが、前者は微生物を用いて大量生産したうまみ成分を結晶化して精製したものであるのに対して、後者は蛋白質を分解して作ると言う違いがあります。
当然ながら単一成分である前者に比べて後者の方が多種多様なアミノ酸を含有するだけ複雑な味になると言うことで、単一のうまみが突出して尖った味になると言うことがなく不自然さが薄らぐと言う評価もある一方で、天然だしと比べると独特の後味の悪さを感じる人も少なくないようですから、いずれにしてもこれらだけで出汁の代用とするのは無理があり、出汁の味を補完する程度の使い方がいいのだと思いますね。
料理のたびに出汁を取るのは面倒だと言う人もいるかも知れませんが、市販の出汁パックを材料を入れた鍋に放り込んでおくだけでも簡単にそれなりの味に仕上がりますし、料理によってはお好み焼きなどに使う鰹節粉などを仕上げに加えても簡単ですので、天然出汁の使い方にも色々と工夫をしてみていただければと思いますね。

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2017年3月15日 (水)

厚労省がついに医療行為と刑事責任について研究を開始

先日こんな話が出ていたことをご存知でしょうか。

「医療行為と刑事責任」の関係、厚労省研究開始(2017年3月10日医療維新)

 厚生労働省は3月10日、「医療行為と刑事責任」に関する研究に着手、同日にその「準備会」を開催した。座長は、東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授の樋口範雄氏が務め、医療や司法の専門家ら10人前後で構成、近日中にもう1回開催し、2017年度からの本格的な研究につなげる。医療事故が業務上過失致死罪に当たるのか否か、当たる場合にはどんな医療事故が該当するのかなど、刑法の本質に踏み込んだ研究になる見通し。厚労省医政局医事課によると、異状死体の警察への届出を定めた医師法21条とは別問題として、研究を進める。

 準備会は厚生労働科学研究として開催。2017年度からの本格的研究に備え、過去に医療事故で刑法211条に定める業務上過失致死罪に問われた判例、関連の研究、海外の事例などの収集が目的だ。樋口氏のほか、日本医師会常任理事の今村定臣氏、虎の門病院顧問の山口徹氏、東京大学大学院法学政治学研究科教授の佐伯仁志氏のほか、弁護士、裁判官OB、検事OB、警察OBらがメンバー。10日は、樋口氏が医事法関係、佐伯氏が刑法の専門家の立場から過失論について概説したほか、自由討議などを行った。オブザーバーとしては、厚労省医政局、法務省刑事局、警察庁刑事局が参加。

 2017年度からは、医療行為と刑事責任の関係について、学術的な視点から研究を進める。体制は未定だが、準備会のメンバーを中心に検討する予定。また厚生労働科学研究あるいは厚労省の委託研究など、いかなる形で進めるかは未定。取りまとめの時期や方針なども未定。1年ではなく数年にわたり研究を続けたり、途中の段階で、中間的な取りまとめを行うことも想定し得るという。「医療行為と刑事責任の関係については、これまであまり議論されてこなかった。今後議論に資する資料等を取りまとめになればと考えている」(厚労省医政局医事課)。

 2015年10月からスタートした医療事故調査制度の根拠法である、医療介護総合確保推進法附則では、法の公布(2014年6月25日)から、2年以内に必要な見直しをするとされた。自民党の「医療事故調査制度の見直し等に関するワーキングチーム」で検討した結果、2016年6月の取りまとめで、「医療行為は一定のリスクを伴うものであるにもかかわらず、全ての医療事故が業務上過失致死罪等の捜査対象となり得る状況では、医師が医療を提供するに当たって萎縮しかねない。このような状況を解消するため、医師法第 21 条の見直し、医療行為と刑事責任との関係等について、更に検討を深めていく必要性について、意見の一致をみた」という意見が出たことが書き込まれたことが、今回の研究につながっている。

今からようやく研究に着手すると言うことは今まで何も考えていなかったのかと言われそうな話なのですが、そもそも医師とは唯一合法的に他人に傷を付けることが許される職業であるなどと言われることもあり、一般的な意味での刑事責任をそのまま適用しては医療そのものが成り立たない部分があります。
医療崩壊の危機が盛んに叫ばれた21世紀初めの頃には医療には刑事免責が必要であると言った主張が盛んに為された時期もありましたが、さすがに他の職業と比較してあまりに特権的過ぎると言う批判が避けられなかったこともあるのでしょうか、近ごろではあまり大きな声で主張されることはなくなったように思えるのは何事にも厳罰主義を求める傾向が広まってきたこととも関係しているのでしょうか。
厳罰主義の反動として指摘されているのがいわゆる萎縮医療であったり、JBM(司法判断に基づく医療)であったりするわけですが、ここで注目したいのはこうした状況を解消するための手段として真っ先にいわゆる異状死体の届け出義務を定めた医師法第21条の見直しがあげられていると言う点なのですが、個人的には医師法第19条に定める応召義務などの方が影響が大きい気もします。

ともあれ処罰されるべき医療行為とは何かと言う議論もなかなか難しく、様々な異論反論もあるところですがひとまずその点は置いて、一般に処罰のあり方としては刑事罰、民事賠償、行政処分と言う三つの方法論があり、医療の側からは民事賠償や行政罰は仕方ないとしても、特に刑事責任を問われることに対する忌避感が非常に強いと言えます。
ただこの点に関しては医療の側からの視点と司法の側からの視点で考え方にかなり違いがあり、司法側からは医師に鍵っての刑事責任免除はあり得ないと言う見解が一般的であるようですが、航空機事故調に関わる議論などにおいてもたびたび出てくるように、海外では処罰を前提としては正しい証言は得られず、再発防止のための教訓を得ることが出来ないと言う考え方であるようです。
他方で一般に日本において司法が被害者の復讐として機能している側面が強いと言う指摘もありますが、実質的な刑事免責のために迅速に行政罰を下すべきだとか、強制力を持つ医師の自律的組織を作るべきだとか言った意見もあり、医療業界内部でもコンセンサスが得られていない中で厚労省がどのような結論をまとめてくるのか注目されるところですよね。

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2017年3月13日 (月)

未だ世間に広まっているらしいあの学説

まともな医療関係者からはほぼ相手にされていないにも関わらず、世間的にそれなりに力を得ている一見医療っぽい何かと言うものは相応にあるもので、日本でも数年前に砂糖玉を舐めさせておけば病気が治ると主張して多くの犠牲者を出したホメオパシーの実態などが話題になったことがありました。
こうした類のものの中でも根強い支持者がいるのが元慶応大学放射線科の某先生を中心とした俗に言うガンモドキを主張する方々ですが、先日はこんな記事が出ていました。

がん検診で見つかるガン 放っておいても自然に治る例多数(2017年3月10日NEWSポストセブン)

 がん検診を受けると、「命を奪わないガン」をたくさん見つけてしまうことになるのだという。それが最も多いと考えられているのが、「前立腺がん」だ。「PSA(前立腺特異抗原)」という血液を調べる検診が普及した2000年頃から、新規患者が激増した。
 京都大学医学博士の木川芳春氏は、このような命を奪わない病変を「ニセがん」と呼ぶ。

「新規患者がうなぎ上りに増えているのに、死亡者の数が横ばいなのは、命を奪わない『ガンに似た病変』をたくさん見つける『過剰診断』が多いことを意味しています。日本では検診によって『ニセがん』をたくさん見つけることで、新規患者の水増しが行なわれているのです。私は、前立腺がんの半分以上は『ニセがん』だと考えています」

 前立腺がんでは、検診で見つかる早期がんのほとんどが、いわゆる「ニセがん」なので、それで死ぬことはない。つまり、1~3期の10年生存率が100%と異常に高いのは、早期に見つけて治療した成果ではなく、元々命を奪わない「ニセがん」ばかりを検診で見つけている結果といえる。
 こうした「ニセがん」は、「乳がん」「子宮頸がん」「甲状腺がん」などでも多いと指摘されている。これらのがんも、全症例の10年生存率が80~90%台と軒並み高い。数字がよく見えるのは、「早期発見、早期治療によりガンが治った」というよりも、前立腺がんと同様に、命を奪わないニセがんが多く含まれているからなのだ。

医師で医療統計が専門の新潟大学名誉教授・岡田正彦氏もこう話す。
「がん検診で見つかるガンの中には、放っておいてもいいガンや、自然に治るガンが、かなりの割合で含まれています。このようなガンばかりを見つければ、当然、生存率は高くなります。昔に比べて生存率が高くなったように見えるのは、治療が進歩したからとは断言できないのです」
 一方、命を奪う「本物のガン」は進行が非常に速いため、定期的にガン検診を受けても、早期で発見することは難しい。そうしたガンは、周囲に広がっている3期や、転移のある4期の状態で見つかることが多いので、必然的に10年生存率が低くなる。
「食道がん」「肝胆膵がん」「肺がん」「卵巣がん」などで全症例の10年生存率が低いのは、進行が速い悪性度の高いガンが多いからだ。これらのガンは早期発見することも、完全に治すことも、まだまだ難しい。
 10年生存率からは、このような厳しい現実も読み取られるべきだろう。
●鳥集徹(ジャーナリスト)と本誌取材班

しかし○○大学医学博士とはあまり聞かない表現だなと興味深く拝見したのですが、こうした主張に対する反証としては、かなりの割合で含まれていると言うガンモドキなりニセがんを、本物の癌とどうやって区別するのか?と言う一点を指摘すればすむ話だと思います。
そもそも論として癌とは上皮性の悪性腫瘍であり、自然に消えてなくなるようなものを悪性腫瘍と言っていいのか?と言う疑問もあるかと思いますが、この辺りは組織学的悪性度と臨床的悪性度の違いであるとか様々な議論がある得る部分ですし、実体験でそうしたケースを多数知っている臨床医ほどガンモドキ理論を一刀両断しにくいと言う事情は理解できます。
ガンモドキ論で言うところのガンモドキなるものを一般的に言うところの良悪性境界病変などに置き換えて読んでみればさほどの違和感は感じない場合もありますが、こうした場合どういった所見があれば悪性を疑うと言った議論を長年のデータの積み上げによって検証が続いている場合がほとんどであり、逆に言えばそうした地道な作業なくして話が進まないと言うことですよね。
本物か偽物か区別出来ないものを根拠もなく偽物と考えて放置しろでは単なるトンデモ理論となってしまいますから、ひとまず何をもってガンモドキだと判断するのかと言う明確な基準を提示いただかないことには話が進まないと思うのですが、残念ながらこの種の主張をされる先生方の多くはこの最も重要な点には全く興味がないように見えて仕方がありません。

ところで興味深いことにこの種の主張に与される方々には多くの場合、医療界は患者が減れば損をするからどんどん患者を増やそうとしているのだと言った主張が見られるのですが、癌診療に携わっている臨床医の多くは基幹的医療機関に勤務しているものと思われ、日々激務に追われ過労死の心配をしこそすれ患者をどんどん増やそうなどあり得ないと言う素朴な反発もありそうですよね。
またガンモドキ論一派とされている方々の中にも、これこれの場合急激に悪化することは稀で、自然に軽快する場合もあるから少し経過を見ましょうと言った妥当な患者説明をしていらっしゃる方もいるのかも知れませんし、場合によってはマスコミバイアス等によって発言を切り貼りされ誤解を受けていると言う不幸なケースもあるのかも知れません。
ただそうした場合であるほど言えることですが、ともかくも世間的にかくも「誤解」され患者に不利益を与えている現実に対しては認識を新たにしていただきたいものですし、患者がガンモドキ論を信じて悪化してしまった場合、他人に尻ぬぐいだけ押しつけたりせずにちゃんと最後まで面倒をみろと考えている臨床医はそれなりに多いのではないかと思います。

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2017年3月10日 (金)

病院から消えた高齢者が一ヶ月後に遺体で発見

先日報じられたこちらの事件ですが、まずは記事をそのまま紹介してみましょう。

<パーキンソン病患者>病院に配車断られ…男性遺体で発見(2017年3月7日毎日新聞)

 千葉県柏市内の老人ホームに入居していたパーキンソン病患者の男性(72)が昨年12月、市立柏病院で介護タクシーを呼ぶよう頼んだところ断られ、約1カ月後に別の場所で遺体で発見されていたことが病院関係者らへの取材で分かった。男性は要介護3で歩行にはつえが必要だったが、直線距離で約3キロあるホームまで歩いて帰ろうとした可能性があるという。

 病院関係者らによると、男性は昨年12月下旬に同病院で診察を受けた後、介護タクシーを呼んでホームに帰ろうとした。電話をかけるのに必要な現金を持ち合わせていなかったため、病院案内窓口で電話を依頼したが看護師から「対応は難しい」と断られたという。

 男性は「そうですよね」と言って立ち去ったがその後行方が分からなくなり、ホーム側はその日のうちに病院と警察に連絡。1月下旬になって病院から約1.5キロ離れた川の近くで遺体で見つかった。死因は凍死で、行方不明になった日が死亡日とされたという。現場は空き地や草むらが広がる道路からは少し離れた場所だった。

 病院の対応と男性の死亡の因果関係はわからないものの、6日にあった市議会一般質問では病院の対応を疑問視する声が上がった。市保健福祉部の佐藤靖理事は「男性には個々の患者の要望に応えるのは困難と伝え、理解もいただいた」と説明。質問に立った末永康文市議(護憲市民会議)は取材に「1人で帰るのが無理と気づかないのは問題。丁寧に対応すれば命は奪われなかった」と批判した。

 病院は取材に「外来患者は1日500人以上おり、対応には限界がある」と話している。【橋本利昭】

毎日の記事しかないので情報が限られており、電話をかけるお金も持たずどうやって帰るつもりだったのかだ、ホーム入所中で要介護3の高齢患者が何故一人で病院に来ていたのか、案内窓口で何故看護師が対応しているのか、タクシーに乗って帰ってホームでお金を払えばいいではないか等々、様々な疑問があげられています。
患者は生活保護受給者であったと言う推測もあり、この場合タクシー又は介護タクシーは無料で利用出来ることも多いのですが、この辺りはどういう補助になっているのかは地域によっても実情が異なると言い、例えば介護タクシーは補助するが一般のタクシーは不可と言った条件もあったのかも知れないと言う推測も成り立ちます。
ただ介護タクシーの場合はその性質上、送りと迎えの時間を決めて依頼すると言うのが一般的ですから、たまたま今回電話をしなければ迎えに来ないような話を付けていたと言うことなのか、記事からは少し非定型的な状況であったと推察されるところですね。

いずれにしても要介護3のパーキンソン病の高齢男性が一人で病院を受診している状況で、帰りの手段に困っているのであれば電話の一つくらい貸してやるなりすればいいではないかと言う声が非常に多いのですが、記事で見る限り病院側のコメントも今ひとつ要領を得ず、日常的に受診しているだろうこの種の患者に対して病院としてどう対処するのかと言う疑問は感じますよね。
聞くところでは同病院では施設老朽化もあり近く移転新築する予定であったものが、諸事情からゼロベースで見直しが決定されたのだそうで、長年の慢性的な赤字と言う自治体病院共通の課題も抱えていたと言いますから、至れり尽くせりの万全な対応と言うことは難しい状況ではあったのかも知れませんが、ではこうした一人で帰られない患者をどう見つけ出し、誰がどう対応すべきなのかです。
当然ながらこうした患者を介助者もなく一人で送り出すホーム側の対応はどうだったのかと言う批判もあり得るわけですが、こうした事故防止のためにいつでもスタッフが付き添えるかと言えば現実的に不可能であるだけに、この種の患者の病院受診についてはかなり綱渡り的な運営がなされているのだろうと改めて思い知らされた事件だとも言えそうです。

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2017年3月 8日 (水)

風邪に抗生剤投与は御法度に

医療現場で長年議論されていたことが、意外な方面から解決しそうだと言うニュースが出ていました。

「風邪に抗生物質投与は控えて」 厚労省が手引書(2017年3月6日日本経済新聞)

 厚生労働省の有識者委員会は6日、軽い風邪や下痢の患者に対する抗生物質(抗菌薬)の投与を控えるよう呼びかける手引書をまとめた。抗生物質を使いすぎると薬剤耐性菌が増え、治療に有効な抗生物質が将来なくなる事態が懸念されているため。早ければ今月中にも、日本医師会などを通じて全国の医療機関に配る。

 手引書では、一般的な風邪の原因となるウイルスには抗生物質が効かないことから、「投与を行わないことを推奨する」とした。医師が患者に説明する際に「抗生物質は効かない」と告げた上で、症状が悪化する場合は再受診するよう指示しておくことが重要だとしている。

 一方、ふだんより排便回数が1日3回以上増える急性下痢症は、ウイルス性、細菌性にかかわらず自然と良くなることが多い。そのため安易に抗生物質を使わないよう呼びかけている。

 厚労省によると、薬剤耐性菌への対策を取らなければ、2050年には同菌によって世界で年1千万人が亡くなるとの推計もある。

風邪と呼ばれる疾患も単一の感染症を示すものではなく、当然ながら抗生物質の効く細菌性のものも含まれているはずですが、症状などからこれはまず確実にウイルス性だろうと推察される場合も多いのは事実であり、その場合抗生物質を投与しても効果がないことは明白に見えます。
ただ医師の間にも未だにこうしたケースでも抗生物質が有効であると主張する方はいて、ウイルス性の風邪で痛んだ呼吸器に最近が二次感染する恐れが云々だとか様々な理屈は考えられているようですが、どのみちそうした場合風邪症状が長引き重症化しているわけなのですから、記事にもあるように初診時の処方で軽快しなければ再診をと指導するのが筋でしょうね。
むしろアレルギーや薬剤耐性菌のリスクを考えるとほとんどの場合、抗生剤の使用による不利益の方がずっと大きいと考えるべきですし、実際に米国小児科学会も風邪に抗生剤は(無益ではなく)有害である(”Unnecessary Antibiotics CAN Be Harmful”)と明言しているわけです。

ただまあ、そうした当たり前の理屈は全て理解した上で、現場の臨床医を悩ませているのは結局のところ「抗生剤を下さい」と言う患者にどう対応するのかと言う一点で、こうした理屈を片っ端から説いたとしても理解が得られる場合ばかりではないですよね。
むしろ忙しい外来の時間をその種の手間がかかる患者の対応によって無駄に浪費されてしまうくらいなら、さっさと抗生剤を処方してやった方がよほどにいいと言う声も決して少なくことが、医学と言うより医療におけるこの問題の所在を示しているように思います。
今回の厚労省の手引き書はそうした患者への対処の一助となるのかどうかですが、医学的に妥当でもなければ推奨もされない治療を患者希望で敢えて行うと言う場合は保険診療の範疇ではなく、全額自費の自由診療で対応させていただくと言うのが本来の筋道ではあるのかも知れません。

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2017年3月 6日 (月)

手術の立ち会い人を求められたが誰も頼める人がいない場合

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、2012年にスタートし2015年頃から何かと取り上げられる機会の増えたネットサービスとして「おっさんレンタル」なるものがあって、1時間1000円で中年男性をレンタルできると言うなかなか興味深いサービスなのですが、これが意外に人気があるのだそうです。
料金を考えてもほとんど儲けは出ないだろうと思いますし、実際に仕事と言うよりは限りなくボランティア的性質のものだと言うことですが、そのおっさんレンタルのかなり意外性のある利用法として先日こんな記事が話題になっていました。

子宮摘出の立会人に「おっさんレンタル」。衝撃の結末に…(2017年3月1日BuzzFeed Japan)

Twitterユーザーのめんたい。さんが話題だ。彼女は45歳にして子宮筋腫が見つかり、「全摘出」を選んだ。女性として大きな決断ではあるものの、彼女は子宮を失うことに対して、何も感慨がなかった。ただひとつだけ、課題があったのだ。それは立会人が必要であること。両親はいない。兄弟とは疎遠。友人にも頼りづらい……そこで選んだのが「おっさんレンタル」だった。【BuzzFeed Japan / 嘉島唯】

生理痛もなく、周期も順調だったが、膀胱炎で病院に足を運んだところ、子宮筋腫が見つかった。卵大の筋腫は3つもあった。
急いで摘出する必要もない。しかし、めんたい。さんは全摘出を選んだ。
「恋人もいないし結婚の予定もない、この年令から妊娠出産育児とか無理。そしてそれを実現できる奇特な男性は存在しないと思うので全摘でいいです。あと生理なくなって便利。しかも卵巣残るなら更年期ないんでしょ? だったらお願いします」
担当医は、彼女の言葉をカルテに記した。しかし、問題が一つだけあった。友人でも問題ないが立会人が必要だというのだ。

身寄りのない彼女は、「おっさんレンタル」というサービスを使うことを選んだ。
「おっさんレンタル」とは、その名の通り「中年男性」をレンタル予約できるサービスだ。立会人が必要でもあるが、単純に興味もあった。サービスの創業者、西本貴信さんの著書『「おっさんレンタル」日記』を読み、ここに頼もうと決めた。
手術の30分前におっさんは現れた。予備知識もなく

婦人科の手術立ち会い。なかなかハードな内容だったが、メールで問い合わせをしたところ、レンタルできるおっさんが見つかった。
予約は一ヶ月前。手術の30分前にベッドサイドで会話をし、術中および全身麻酔から醒めるまで5時間の待機。これがめんたい。さんの依頼だった。
現れたのは、青白い顔をした47歳のおっさんだった。手にはキティちゃんのぬいぐるみを持っていた。友人の設定で軽く挨拶をし、手術の説明をその場で初めてした。ある単語を聞いた瞬間、顔色が変わる。
「子宮全摘出」
自分が手術をうけるわけでもないのに、おっさんは明らかに落ち込んでいた。「子宮とっちゃうんですか?」、「結婚はしないんですか?」彼は真剣に聞いてきた。めんたい。さんは後悔した。「事前に手術の話をしておけばよかった」。
めんたい。さんは、彼の真摯な姿勢に心を打たれた。「婦人科手術」というハードルの高い依頼を受けるプロなおっさんだ。一体どんな人なのだろう? 手術の直前に話を聞いてみた。
(略)
めんたい。さんは、おっさんに追加料金を払いたいと申し出たが、「ボランティアですから」と言って帰って行った。退院後、彼女はおっさんにメールにて追加料金を支払う旨を送った。おっさんレンタルという一見、奇妙なサービスについてこうツイートした。
「本当に身寄りがなかったり頼める人がいなかった私には感謝してもしきれない。そして今後わたしのような人間は増えるだろう、おっさんレンタルがあってよかったしこれからも繁盛してほしい」
(略)
「ひとりでは生きていけないという当たり前のことを痛感しました。商店街のお店の息子さんが荷物運んでくれたり、階段を昇れない時は、近所ご夫婦が手を引いてくれたり。ふとしたことに涙しました。私は立派な人間ではないけれど、悩んでいるひとになにかできる人になろうって決めました。おっさんもそうだったかもしれません」
「時間って本当に心の傷に効く薬なんですよ、そして今では思いもつかないけれど先々びっくりするような幸せがあったりします。おばちゃん、これ自分の体験から保証します」

めんたい。さんにとってもかなり予想外だったおっさんの正体については記事の続きを読んでいただきたいものとして、ボランティア的活動ですと確かにこういうこともあり得るのだろうなあと感じてしまうような話でもあったでしょうかね。
いずれにしてもひとまず無事に手術が終わったと言うのは良かったのでしょうし、ここでおっさんレンタルと言うサービスの存在に気がついたと言うことも運が良かったと言えるかも知れませんが、ここで注目したいのは独身で実質的に身寄りのない方々にとって、社会のあちこちで当たり前のように求められる保証人や立会人と言ったものへのハードルの高さです。
数年前から各地の自治体で同性婚のパートナーを結婚に相当すると認め証明書を出す動きが広まっていたり、保証人代行サービスなどが存在するのもこうした社会のあり方から孤独な人々にとっては何事も面倒が非常に多いと言う現実を示していますが、特に以前からたびたび問題になっているのが医療現場におけるそれです。

そもそも入院などにあたって何故保証人が必要になるのかと言う声は根強くあって、もちろん救急車で運ばれてきた重症患者に保証人がいないからと入院拒否するようなことはないにせよ、究極的な個人の問題とも言える医療において場合によっては赤の他人かも知れないのに保証人などを求めるのはおかしいのではと言う意見も理解出来るものですよね。
もちろん病院側にとっては入院費用の取りっぱぐれと言う心配もあるにはあるのでしょうが、今の時代では特に患者本人と意思疎通が出来ない場合の代理人と言う意味合いが非常に大きく、誰かに話を聞いてもらい同意書を書いてもらわないことには何も始まらないと言う局面は多々あるわけです。
また仮にお亡くなりになった場合誰に引き取ってもらうかと言った問題もあり、その点からも高齢者の多い回復期・慢性期を担当する病院であるとか、介護施設などで未だに保証人を求められる場合が多いと言うのはそれなりに理解出来るとも言えるのですが、実際におひとり様が今後ますます増えて行く世の中にあって次第に現実的ではなくなってきているのも確かでしょうね。
入院費用や亡くなった場合の始末などはあらかじめ保証金なりの形でお金を納めておいて、何かあればそれでお願いしますと言ったやり方も考えられるのでしょうが、いずれにせよ病院それぞれで方針や対処法も違うことですので、困った時には病院側の担当者にまず相談していくことが必要だと思います。

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