心と体

2020年3月30日 (月)

自粛すれば確実にあるデメリット、それを上回るメリットとは?

世の中何でも自粛自粛と言うご時世の中で、先日プロ格闘技団体が大規模会場での試合を予定通り開催したことが各方面から(主に批判的に)報じられています。
ただ格闘技関係者が口をそろえて証言するように、開催をしないと直ちに潰れてしまうほど金銭的に逼迫した業界事情もあるようで、難しい問題提起となっています。

格闘技K-1が政府と埼玉県の自粛要請を拒否してイベント決行 専門家は「感染が全国に広がる」と批判するが...(2020年3月23日J-CASTニュース)

きのう22日(2020年3月)、さいたまスーパーアリーナで格闘技K-1のイベントが埼玉県と政府の数回にわたる自粛要請を振り切って開かれ、6500人がつめかけた。大野元裕知事も「心配だから」と会場に駆けつけたが、それを拒否する形で開催が強行された。
主催者は、入場時にマスクを配布、万一に備えて入場者全員にチケット半券の裏に氏名や連絡先を記入してもらった。当初は1万5000人の観客を見込んだが、間隔をあけるため客席を9000人分に減らした。

しかし、順天堂大学大学院の堀賢教授は「マスクがあれば十分というわけではない。大規模なイベントには全国から人が来るので、ウイルスを持ち帰り、感染が地方に飛び火する恐れがある。大きなイベントはそれだけでリスクと考えた方がいい。専門家会議の緊張感が伝わっていない。けっして楽観できない」と警告する。
橋本五郎(読売新聞特別編集委員)「6500人はいくらなんでもリスクが大きい。一方で開催しないと倒産するイベントもあるから自粛要請を受けた当事者は大変だ」
安倍晋三首相は20日「イベントは主催者がリスクを判断して慎重に」と求めたが、中止しても何かしら補償するわけではない
(略)

風邪でもひいたと言えば未だに何か罹患した人間が悪いと言う風潮があるように、日本社会では未だに感染症も自己責任であると言う考え方が少なからずあるようです。
個人としての罹患リスクを受け入れるかどうかはある程度自己責任の側面もあるかも知れませんし、実際今回の試合を観戦した人々の多くもそう言っているようです。
ただ他人にもうつす可能性のある感染症は生活習慣病などとは異なり、自分だけではなく周囲の人間に対しても一定の責任を負っていることは忘れてはならないでしょう。
ほぼ完全確実な予防策があるならともかく、現状でそれがない以上は自己責任と言うだけではすまないので、下手をすれば民事賠償責任くらいは問われかねませんね。

今回の件に関連して、諸外国では外出禁止令と言う罰則も伴った公的な命令の形で出されているものが、日本では自粛と言う曖昧な話で終わっていると言う指摘があります。
命令であればそれを出した側が責任を問われるし、場合によっては公的補償をする必要もあるはずですが、自粛であれば当事者が勝手にやったことと言えると言うことです。
自粛と言われれば素直に自粛してしまう国民性を利用した小狡いやり方だと言う批判もありますし、現実的に収入源などデメリットがある以上、出来ない人もいるでしょう。
この点は後日どのような手段や名目であれ、自粛を求める側が何かしらお金を出すべきだと言う意見には一理あるし、そうでなければ社会不安が大変なことになりそうです。

一連のコロナ騒動の中で、某プロスポーツ選手が非常に判りにくい初期症状の段階で自己申告し、コロナ陽性と診断されたことが勇気ある行為だと賞賛する声も出ていました。
もし感染していると確定すれば自分だけでなく周囲にもデメリットばかりが大きい状況で、自ら可能性ありと申告すると言うのはなかかな出来ないことではありますね。
お隣中国では感染が発覚すれば厳しい隔離をされる一方で、発熱があると自己申告し診断が確定すればお金が出るそうで、隠すよりも公表することが利益になると考えれば感染実態の把握もしやすい理屈です。
人間誰しも損得勘定で動く部分がありますから、不利益を強いるなら利益も用意しなければ行動をコントロール出来ず、結局社会全体の不利益につながるのは当然ですね。

自粛をいつまで続けるべきなのか、基本的には確実な予防法なり有効な治療法が確立し、社会がコロナに対応可能になるまでのいわば時間稼ぎの戦略と言えます。
ただ現状では個人にしろ企業や団体にしろコロナ感染が発覚すれば不利益はありますが、中にはコロナを恐れて営業自粛をするよりリスクを甘受して営業を続ける方が損が少ないと言う判断も出てくるはずです。
自粛すれば感染の不利益を避けられるだけでは不十分な動機付けにしかならないとすれば、今後はそれに変わるどんな動機付けを用意出来るかでしょう。
また自粛自粛で倒産続出ともなればコロナは抑制出来ても国民は食っていけないと言うもので、自粛させる側にも利益不利益の見極めをした上での判断が求められるのは当然ですね。

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2020年3月23日 (月)

なくなることで不要であることがはっきりするもの

このところのコロナ騒動の影響は全世界的に広がっていますが、先日イタリアでは医師国試を省略し医学生全員を半年以上前倒しで現場に投入すると言う「学徒動員」の方針が報じられ話題になっていました。
引退した医師にも復帰を呼びかけているそうで、それだけ根こそぎ動員が必要な情勢だと言うことですが、振り返って我が国では国試合格率が過去10年で最高であったと報じられていたのも出来すぎた偶然でしょうか。
転売禁止など世間を賑わせているマスク不足もますます深刻化し、神戸大では大学病院のマスクが枯渇し各人3日に1枚だけ配給されている状況だそうで、消毒薬不足なども含めて早く解消を願いたいものです。
そんな中で今回のコロナ騒動が思わぬ方向に影響していると言う事例があちこちで見られていますが、中にはむしろ歓迎すべき変化ではないかと言う話もあるようです。

ファイザー日本法人、MRら2000人が病院訪問自粛(2020年2月28日日本経済新聞)

米製薬大手ファイザーの日本法人は28日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ社員の安全を確保するため、医薬情報担当者(MR)を含む全ての外勤社員約2000人が医療機関への訪問を自粛し、原則、在宅勤務に移行すると発表した。

ファイザー日本法人は肺炎球菌ワクチンや疼痛(とうつう)治療薬などを販売。外勤社員のうちMRは1971人と外資系製薬の中では大所帯だ。これまでは医師らに対面して医薬品情報を提供してきた。今後はメールやウェブ会議システムを活用して対応していく。
外勤社員以外にも内勤社員も含めた全社員(4513人)が基本的に在宅勤務に移行するといい、全社的な対応となる。期間は3月13日までの2週間だが、場合によっては延期も検討する。ただし医療機関から要請を受けた場合や緊急性がある場合には訪問する。

新型コロナの感染拡大は製薬大手にとって、製造や臨床試験などへのマイナス要因となり得る。今後の製薬事業への影響が不透明な中で、MRによる営業への制限を強いられている状況だ。
米アッヴィの日本法人も一部地域で在宅勤務を実施。米メルクの日本法人であるMSDも医療機関から訪問自粛の要請があれば従うとしており、柔軟に対応する。
国内製薬企業では、武田薬品工業が約2100人いるMRに対して在宅勤務を推奨。医療機関や特約店への訪問を控えるように呼びかけている。

製薬会社側が自粛すると言うケースもあれば、医療機関側から訪問自粛を要請している事例もあると言い、個別に見れば対応は様々ですが、総じて院内でMRを見なくなったと言う状況が広まっているようです。
表向きの理由としては各地を広範囲に飛び回っているMRがコロナウイルスを媒介し、医療機関内に広めてしまうリスクを懸念してと言うことですが、当然社内の感染防止対策なども考慮してのことでしょう。
病院側としてもせっかくウイルス持ち込み防止に四苦八苦しているところに、無遠慮に土足で入り込まれても迷惑でしょうが、MR側としては当然ながら商売あがったりであるとも言えますね。
結果的にMRから医師へのメールが通常の3倍にまで急増しているそうですが、これを機会に従来の足を使った売り込みからネット主体の宣伝広報戦略に移行していきたいと考える製薬会社もあるそうです。

今回の騒動でMRを見かけなくなった結果、改めてMRなど必要なかった、いない方がよほどすっきりすると考えている先生方も少なくないようですが、製薬会社の側としてもMR不要論はあるとのことです。
以前から治験などにおいて医師と製薬会社との不適切な関係が問題視され、ガイドラインに基づき商品説明会と称する接待や学会での飲食の提供などが次々と制限、廃止されてきたことは知られるところですね。
製薬業界としても広告宣伝コストの削減は課題であり、こうした一連の流れはコスト削減の観点からも歓迎すべき面もあることから、各社横並びであれば推進したいと言う思いが前提にあったと聞きます。
今回のコロナ騒動によるMRの訪問自粛も、MRの待機、移動のコストや人件費などを考えると歓迎すべき側面も少なくないと言えますから、一過性で終わらない可能性も少なからずありそうです。

医師の側からすれば尋ねたいことがあればその都度薬剤師なりに問い合わせればすむことであり、医局の外などで立ち待ちされても鬱陶しいだけであるとMR不在を歓迎する向きが少なくないようです。
無論MRに様々な便宜を図ってもらっていた先生などがもし存在するとすればまた別な意見もあるでしょうが、今の時代そうした先生方が決して多数派ではないでしょうし、社会的にも聞こえは悪い話でしょう。
そもそもMR最大の役割とは薬剤がらみで緊急性のある情報を確実に医師に届けることとされているそうですが、今の時代個別に訪問して伝えるよりも他の手段の方がよほど迅速性がありそうだとは思えます。
それだけに医療現場でMRの不在を嘆く声はほとんど聞こえてこないのも当然と言えば当然ですが、いずれにせよMRの役割も20世紀の頃とは変わって行かざるを得ないのだろうとは思いますね。

 

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2020年3月16日 (月)

疲れていればミスも増える、何の不思議もない話です

極めて当たり前と言えば当たり前の話なのですが、先日こんなレポートが出ていたことを紹介してみましょう。

研修1年目の勤務時間制限で医師の安全性を改善(2020年3月13日専門誌ピックアップ)

 米国で2002-07年または2014-17年の1年目研修医1万5276人を対象に、研修1年目の連続勤務時間を16時間に制限する2011年米国卒後医学教育認定評議会(ACGME)勤務時間規定による医師の安全性向上効果を前向きコホート研究で検討した。

 その結果、規定施行後に1カ月当たり24時間以上のシフト勤務の平均回数は施行前の3.9回から0.2回に低下した。自動車事故リスクは24%(相対リスク0.76)、経皮的損傷リスクは40%(同0.54)、注意力散漫の発生率は18%(発生率比 0.82)低下した。シフト勤務時間延長および週当たりの勤務時間延長は、2002-07年群と2014-17年群ともに有害安全性リスクと関連を示した。

どのような職業であれ16時間以上の連続勤務を強いられれば集中力も落ち、ミスも頻発するだろうとは容易に想像出来ますが、医師の場合その結果が問題です。
患者とすれば疲れ果ててふらふらの医師に自分の命を預けたくないだろうし、ましてミスが増えると判っていればなおさらで、頼むからしっかり休んでくれでしょう。
無論ごく一部のモンスターと言われる患者や家族のように、24時間365日いつでも医師は働いていて当たり前と言う心得違いをしている方々もいないではありません。
ただ特に日本の場合、ともすれば同業の先輩であるベテラン医師を中心に、若いうちは疲れ果てるほど働いて当然と言う考えが未だに蔓延して見えるのが問題です。

例えばスポーツの世界では、かつてはスポ根と言う言葉もあったように、ひたすら厳しいトレーニングを精神力でこなすことが良い成績をあげる道だと信じられていました。
無論スポーツも科学的に解析された結果、間違った方法や過度に過酷なトレーニングは成績を引き上げるどころか成長を阻害し、故障のリスクを高めるだけと判っています。
今時試合に負けたらウサギ跳びでグラウンド10周などと言うコーチもいないでしょうし、仮にいたとしても誰の支持も得らず指導者を続けられないだろうと思います。
ところが医療業界ではそれに類することを、未だに医療は特殊だから、自分たちがそうだったからと、後進に強いようとする先達が生き残っていると言うことですね。

医療の世界も久しく以前からエビデンスを重視する科学として発展している以上、若いうちの激務を推奨する人々はそれが何故優れているか根拠を示す必要があります。
現実的にはその真逆のエヴィデンスが数多いと言えますが、必死に新しいことを覚えようと頭が混乱しているのに、体まで疲弊していて学習効率が高まるはずがありません。
そんな当たり前のことが当たり前に通用しないのは、医療の場合若い先生方を研修の名の下にただ同然でこき使うことで成立している部分が少なからずあるからでしょう。
今後医療の世界も働き方改革を進めていかなければならないところですが、一部の人々の犠牲を前提にしなければ成り立たない医療はそろそろ終わらせるべきでしょう。

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2020年3月 9日 (月)

コロナウイルス、自ら拡散する人が話題に

コロナ騒動の最中、先日から主に否定的な意味で大いに話題になっているのがこちらのニュースです。

自宅待機を要請されたのに…「陽性」判明の男性、外出し飲食店へ(2020年3月6日読売新聞)

 愛知県蒲郡市は5日、県が4日に新型コロナウイルス感染を発表した三河地方の50歳代男性が市内在住で、検査の結果、陽性と判明し、自宅待機を要請されたにもかかわらず、飲食店に出かけていたと明らかにした。

 発表によると県が3~4日に三河地方の男女として発表した4人の感染者は市内在住の同居の家族で、50歳代男性と、その両親の80歳代男性と70歳代女性、息子の30歳代男性。80歳代男性に呼吸困難の症状があるが、他の3人は軽症。
 50歳代男性は、発熱などの症状はなかったが、先に陽性と判明した両親の濃厚接触者として、4日に医療機関を受診。同日夕に検査結果を伝えられ、自宅待機を求められていた。飲食店について同市は「様々な影響を考慮した」として店名を発表していない。
(略)

「ウイルスばらまいてやる」新型コロナ“陽性”知りながら居酒屋・パブに…男性の法的責任は?(2020年3月6日FNN)

各地で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、陽性と確認された男性が自宅待機の要請を無視して外出したことが波紋を呼んでいる。

ウイルスをばらまいてやる」
感染確認後に家族そう言い残して自宅を出たのは愛知・蒲郡市(がまごおりし)内に住む50代の男性。
男性は3月4日に感染が確認され、受け入れ先の医療機関が見つかるまで自宅に待機するよう要請を受けたが…
(略)
市の関係者によると、男性はタクシーで自宅を出た後市内の居酒屋へ。
さらにその後歩いて女性が接待するパブへ。
その店内では、
「自分は陽性だ」と話したという。

この驚きの告白を受け、店に防護服を着た警察官が駆けつける騒ぎになったが、警察官が到着したのは男性がタクシーで帰宅した後だった。
地元保健所は男性が立ち寄った飲食店の消毒をするとともに営業の自粛を要請、また店内で男性と濃厚接触した店員と客には自宅待機を求めている
(略)
自分の感染を知りながら飲食店に行く行為の法的責任について専門家は…
山田・尾﨑法律事務所 今井靖博弁護士:
「ばらまいてやるぜ」という宣言自体が故意があるだろうというところになってくるので、お店の人やお客さんが実際に咳などを浴びて新型コロナウイルスに感染してしまった場合には、傷害罪に当たります。お店が休業をせざるをえなかったとか業務が妨害された場合には威力業務妨害罪に当たる可能性があります。

その後、男性は翌5日に愛知県内の医療機関に搬送された。愛知県警は男性の詳しい行動について確認を進めてる。

自ら状況を認識し故意に感染を広めようとしていたことが明らかですから、傷害罪など刑事罰はともかく少なくとも民事賠償には十分問われる事件でしょうね。
当然ながらお店の経営者は怒り心頭で言葉も出ないと言う状況だと言うことなのですが、法的には強制力がなくあくまで要請に過ぎないと言うことが原因だったと言えます。
この種の意図的に感染症を広める行為は一定程度起こりえることで、有名なところでは一時は死病と恐れられた性行為感染症などもたびたびニュースになっています
中には殺人のために手段として感染症を利用すると言う珍しい場合もあるようですが、多くは迷信や自暴自棄、個人的復讐などによって為されると言いますね。


当然ながらこうした行為は社会的に迷惑と言うしかなく、進歩的な方々の懸念を振り払ってもある程度私権を制限し強制力ある対応が必要だと言う声も少なくありません。
結核など感染症については強制的な措置を執れる法的裏付けがあるのですが、問題となるのはコロナの感染力が非常に強い割に、重症化する事例は案外少ない点です。
軽い症状であるのに行動を制限される、それも少人数ではなく社会の相当多数がそうした制約を受けるとなると、実際問題困るのは感染者本人より周囲のほうでしょう。
その点で法的制約が強まるのかどうかは、今後短期間でコロナ感染症が社会にどの程度広がっていくかと言うこととも関連して論じられるべき問題と言えそうです。

もう一つ、法的制約以外に当然自粛や職場ルールに基づく休業や自宅待機が少なからず起こっている中で、その間の給与など収入確保をどうするかの問題があります。
会社員であれば様々な補償や手当の手段もあるようですが、自営業の場合休めば収入が減る上に、下手をすれば風評被害でその後の客足が途絶えることになりかねません。
それくらいならいっそ単なる風邪と言うことにして誤魔化しながらでも営業を続けよう、と考える人が増えるほど、社会的にコロナが蔓延していくことになります。
補償財源の確保など国にとっても頭が痛い問題であるはずですが、隠すのは損になると言う認識が広まらなければ感染拡大の防止など出来るはずはないことですね。

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2020年2月25日 (火)

どうやら地域枠は壮大な失敗であったらしいことが次第に鮮明に

ちょうどこの時期は大学受験のシーズンですが、今年は久しぶりに医学部定員が大幅削減されることが話題になっています。
国が旗を振って長く続いてきた医師大量養成の方針転換とも取れる話なのですが、当の大学からはもう少しぶっちゃけた話も出ているのが興味深いところです。

入学定員減は 医学生の学力低下が背景に?(2020年2月19日日経メディカル)

 12年ぶりに定員が大幅に減ることになった2020年度入試。背景には、学生の質の低下と教員の負担が重い参加型臨床実習の導入が関係していた。

 「地域枠を作るのが地域医療を守るために有効だという話をしていたのに残念だ」――。2019年11月27日。厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会では、事務局からの2020年度入試定員に関する報告に不満の声が相次いだ。医師の偏在が指摘される中、その解決策と期待されていた地元出身者枠や地域枠の学生を中心に全国で90人の定員減となったからだ(表1)。
 だが、地域枠を削減した大学からは、地域枠の再開に対する抵抗感は強い。15人を減らし、地域枠を撤廃した山形大学医学部長の山下英俊氏は、「別枠の地域枠入試では、入学者の能力を担保できない」と主張する。

 これまで地域枠は、入学試験時に地域枠と一般枠とを完全に分ける「別枠方式」と、一般枠と地域枠を一体的に扱う方式があった。山形大がとってきたのは後者だ。だが、医学部の定員増は、そもそも医師の偏在対策が目的だったことから、医師需給分科会が一般枠と地域枠の一体的な管理を問題視。2020年度入試からは別枠方式が義務付けられることになった
 「地域枠で問題なく合格する受験生は10人中2、3人。残りは一般枠では不合格だが、地域枠ならば合格というレベルだ。最低点に届いているとはいえ、学力的には一段劣っている」と山形大脳神経外科教授で同大の医学部入試を担当する園田順彦氏は話す。園田氏が県内の各高校の教師と情報交換をする中で、「山形県のような人口が少ない県では、優秀な受験生は10人はいるが15人はいない」と園田氏。優秀な受験生たちが一般枠で受験することになれば、地域枠のレベルはさらに落ちる。「そこまでして入学してほしくない、というのが教授会の総意だ」(園田氏)。
 地域枠の学生の質に疑問を抱くのは地方の大学だけではない。大都市圏の私立大学のA教授も、「地域枠の学生の指導は大変だ」とこぼす。「地域枠は公的に履かされた点数の“下駄”。現場は、できれば地域枠の設置は断りたいというのが本音だ」。

 学力の問題は地域枠の学生だけにとどまらない。現在行われているのは少子化が進む中での医学部定員増。2006年の新医師確保総合対策以降、地域医療を守ったり研究を行う医師を増やすことを目的に、2007年度には7625人だった医学部の定員は、2019年度には9420人と約2割増えた。
 旧帝国大学のある大学で基礎医学の教育を担当するB教授は、「地域枠とは関係なく、この15年、学力は右肩下がりだ。そもそも医学に興味がない子が多い」と嘆く。前出のA教授もこう話す。ある私立大学医学部で留年を繰り返し、国家試験の受験すらできないまま退学した学生が学費返還を求める訴訟を起こした。A教授が勤務する大学ではこの訴訟を受け、正答の理由を説明しにくい記述式の問題を出せなくなった他、極力留年させずに6年生まで進級させるように指示が出されたのだ。

 また、B教授が純粋な学力以上に気に掛けるのは、学生が勉強の方法を知らないこと。「昔は成績は勉強方法と記憶力の掛け算だったが、今は記憶力だけ」とB教授。受験戦争が激化する中で、幼い頃から合格するための必勝パターンを叩き込まれる。パターン認識だけを学んで医学生となるため、定期試験の際に学内に出回る過去問の回答と一字一句同じ回答が書かれていることも珍しくないという。
 しかも数年前をピークに、「大学入試における医学部バブルは収束しつつある」という見方は強い。同年代のトップが入学しなくなれば、さらに学生のレベルは落ちる可能性がある。
(略)
 国は現在、医学生が医行為を手掛けるスチューデントドクターを公的な仕組みにする準備を始めている。2021年にも法的な整備が整う見込みだ。だが、現在の学生の質と教員数で社会から認められるスチューデントドクター制度を始められるのか。教育現場の苦悩は続く。

医学部医学科と言えば理系学生のトップが集まる場所とも言われていましたが、特に近年有資格職で食いっぱぐれがないとして人気が高まり、特に医師志望でもない学生が成績だけで進学することも多いそうです。
当然そうした学生は勉学へのモチベーションにも欠けドロップアウトしやすい傾向にあると言う声が教育の現場からも聞こえてきますが、本来地域枠学生などは一般枠より医療に対する情熱が期待されていたはずです。
ところが実際には地域医療に貢献するために地域枠を選んだ学生などはごく少数で、単に合格しやすいから、学費の免除があるからと言った理由で受験してくる学生が少なくなかったとも聞きますね。
さらに近頃では地域枠自体の人気も急落しているのだそうで、医学部自体のレベルが落ちているのだから何も地域枠でなくても一般枠でいいと、地元学生もあまり志望したがらなくなってきているそうです。

この地域枠と言うもの自体、もともと医師が地元に定着しない地方の大学で人材確保の手段として期待されていたものですが、最近では地域枠よりも卒後の研修・教育プログラム充実の方が売りになるそうです。
若手の先生に限らず医師と言う職業は一生勉強を続けなければならない以上、卒業後どれだけきちんとした教育機会があるのかが重要であり、まじめに医療に取り組む先生ほどその充実が訴求力を持つのでしょう。
この点でも患者や医師の多い都会の大学の方が有利な気がしますが、地方の大学も競合相手がいない中で広大な圏域の診療を担当してきた実績があり、有利な部分も決して少なくはないように思います。
今の学生は長期的な人生設計を堅実に考えている方々も多いだけに、若手時代だけでなく医師人生全般にわたって安心して働ける環境を用意出来るかどうかも進路選択を考える上で影響力がありそうですね。

いずれにせよ学生数が減少する中で、医学部定員だけは急増させていたのですから学生のレベルが落ちるのは当然ですが、同様に定員増がレベル低下を招いた例として同じ医療職である歯学部の事例があります。
すでに地方の不人気な歯学部では定員も埋まらないそうですが、聞くところによればこれも歯科医はまだまだ足りないと主張する一部のエラい先生方のせいで、現場の歯科医は食っていくのにも苦労しているそうですね。
同様に大量育成方針をとったロースクールなども不人気校閉鎖など今や大変な惨状だそうで、当然医学部もこのままではいずれ同様に破綻を来しかねないだろうとは、久しく以前から言われているところです。

無論まだまだ医師は足りない、OECD平均にも達していないと言う方々はいらっしゃいますが、国が医療費抑制政策を堅持している以上、数が増えるほど今後は一人あたり取り分が減るのは当然の理屈でしょう。
要するに職業としての医師は今後は次第に魅力が乏しいものになっていく可能性があると言うことで、先が見え目端の利く優秀な学生ほど医学部を選ばなくなるだけの構造的な理由はあるとは言えそうです。
B教授と同様地域枠とは無関係に昔とは学生の質が違うと言う大学の先生の声はしばしば聞きますが、今更地域枠廃止や多少の定員削減で大きく質が改善するのかで、むしろ否定的ではないでしょうか。
とするとそうした学生の質を前提でどのような教育が出来るのかですが、まずは教育機関である大学でスタッフの持つ教育のスキル自体を正しく評価する仕組みが必要になるのではないかと言う気がしますね。

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2020年2月17日 (月)

全国自治体がいよいよ医師の確保と管理に乗り出す

地域医療計画に基づき今後国から自治体へ大きく医療整備の主体が移り変わっていくことになりますが、先日こんな記事が出ていました。

「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」、岩手、新潟など6県で発足(2020年2月1日医療維新)

 青森、岩手、福島、新潟、長野、静岡の6県知事が発起人となり、「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」が1月31日に発足、医師不足と地域偏在の解決に向けた設立記念シンポジウムと記者会見を都内で開催した。6月には各県の医師確保計画を踏まえ、共同で政府に対して予算要望する方針。
 岩手県知事の達増拓也氏は記者会見で、発起人を代表して、「国の医療政策は、三位一体改革と言われているが、地域医療構想・働き方改革の推進のためには、医師の確保が大前提。医師不足を解消しないまま働き方改革を続けると、地域医療は崩壊する」と知事の会設立の背景を説明。医師不足県が連携して、全国の医療関係者や行政関係者への理解促進、国民の機運醸成、国への政策提言という3つの柱で活動する方針を表明した。

 医師確保計画は、2019年度中に各都道府県で策定を終える。6月上旬に開催予定の全国知事会の辺りで6県の知事が集まり、各計画の内容を踏まえ、提言、決議を行い、共同で政府へ予算要望するほか、8月には全国病院事業管理者・事務責任者会議でも提言内容を説明するなどの活動を予定している。
 新潟県知事の花角英世氏は記者会見で、「医師不足に悩む県として意義のある会だと思っている。医師を確保するため、これまでもいろいろな努力をしてきたが、県の努力には限界がある。国でなければできないことがたくさんある。共通の危機感を持つ県が連携して、共同して行動することで、影響を及ぼすことができるのではないか」とあいさつ。

 達増知事は、6県でスタートする経緯への質問に、「まず(医師少数の)全国47位から46位の県に声をかけた。賛同いただいた6県でスタートとなった。こうした取り組みが広がればいい、という思いはある」と回答。厚生労働省がまとめた都道府県別の「医師偏在指標」は、47位が岩手県、46位が新潟県(厚労省の資料を参照)。
記者会見には、岩手県知事の達増拓也氏と新潟県知事の花角英世氏が、他の4県は知事の代理がそれぞれ参加。
(略)
 達増知事と鈴木氏は、岩手県や新潟県での医師偏在対策などを紹介。「地域の取り組みのみでは偏在解消は難しいのではないか。『どの地域で何をやってもいい』ということでは、医学部定員を増やしても医師は足りなくなる。(医師の何らかの)地方病院勤務の義務化は必要ではないか」(達増知事)。

 田村氏は、読売新聞が2008年に公表した医療改革提言で「医師を全国に計画配置」を打ち出したことを紹介。同提言の基盤にあるものは、「医療は公共財」の視点であるとした。
 医師確保・偏在解消には、一定の強制力を持った施策が必要だとするパネリストの発言を受け、小熊氏は「プロフェッショナル・オートノミーではもはや解決しない。(地方勤務の)“義務化”という言葉が悪ければ、“必修化”とすればいい」と述べ、地域に医師が循環するシステムを構築する必要性を指摘した。

達増知事と言えば数年前に岩手県内の公立病院再編計画を強力に推進した経緯でも知られている方で、今回も主導的にこうした会の発足に尽力されたようです。
医学部は全国各都道府県に最低1つずつはありますが、医師免許は全国共通の1種類だけであり、卒業後の勤務地などをどうするかも一部の例外を除いて自由に選択出来る建前となっています。
この点では実質的にほとんどの医師が卒業後は大学医局に所属し、強力な大学の権限のもとに各地域に派遣されてきた二昔前とは大きく変わっている点で、医師の側からすると自由度が高まっていると言えますね。
ただその結果地域医療の破綻や崩壊が言われるようになったのも一面の事実で、かつて白い巨塔などと大学医局を批判してきた進歩的なメディアですら、かつてのような大学批判はしなくなってきています。

大学の医局人事と言うシステムを旧弊と取るか必要悪と取るかは人それぞれ意見もあるでしょうが、自治体にすれば医師を集めたい際にどこに頼めば良いのか判らないと言うのは苦労する点だろうなとは思います。
地道に公立病院の医師待遇を改善したり、各種医師発掘策を用意する自治体も無論あるのでしょうが、失礼ながら今回のような最下位水準の医師過疎県には少々のことでは医師が来るようにはならないでしょう。
そのため国に強制力を発揮してもらい、各地域に医師強制配置をと言う声が未だ根強いのですが、ただ各県に医師を一定数配分されたとしてそれをうまく管理、活用出来る力量が自治体にあるのかも問題です。
医療政策は国任せでろくにノウハウも持っていないだろう各地の自治体が今後どんな独自性ある方針を打ち出してくるのかも要注目ですが、一部自治体からはすでに興味深いアイデアも登場しているようですね。

【岡山】外来医療の課題解決へ県が素案 新規開業医に在宅医療など求める(2020年2月4日山陽新聞)

 岡山県は診療所を新たに開業する医師に対し、地域で不足している在宅医療や夜間・休日診療の機能などを担うよう求める「外来医療に係る医療提供体制計画」の素案をまとめた。それらを開業時に掲げない場合、ペナルティーとして診療所名などを含め、その旨を公表する。7日までパブリックコメント(意見公募)を受け付けている。

 素案では、県南東部、県南西部、高梁・新見、真庭、津山・英田の五つの二次保健医療圏域のうち、真庭圏域以外は国の基準で外来医師の多数区域とされていることを説明。多数区域での新規開業者には、在宅医療▽夜間や休日診療▽学校医や予防接種、乳幼児検診▽介護保険認定審査―などを求めるとした。
 これらの業務を全て拒否する場合、各圏域の病院や自治体関係者らによる地域医療構想調整会議で聞き取りや協議を行い、やむを得ない事情がない場合は各保健所のホームページで公表する。
(略)

新規の開業に際して一定の規制を設けると言うのは、不足がちな勤務医確保策としても検討される方法ですが、今回は開業するなら一定の義務を果たせと言う話です。
一般論として新規開業を締め付けると新規参入が減り、年々施設もスタッフも老朽化していく既存施設がいつまでも淘汰されないなど、問題も多いかとも思いますね。
ただ岡山県の場合人口200万弱の中規模県でありながら医学部を2つ持つなど、もともと医師のマンパワーに関してはかなり恵まれた環境であったと言えます。
要するに前述の医師過疎県などに比べれば、まだしも人材を選択出来るだけの余地があると言うことで、ある程度強気な方針を掲げられると言うことなのかも知れません。

今回求める義務的業務の範囲が妥当なのかどうかは今後現場の意見も聞いて判断することになるかと思いますが、気になるのは既存の開業医に対してもこれら業務を義務として求めていくのかです。
無論多くのクリニックでは地域の医師会などを通じて従来からこうした業務も行ってきたのでしょうが、夜間休日診療などはマンパワーの限界などもあり、現実的に出来ないと辞退するクリニックも多いと聞きますね。
罰則として保健所のホームページで公表すると言うのも微妙なペナルティですが、これに関しても今後実際に運用されることになれば現場の意見等も聞きながら、より強い罰則もあり得るのではないかと思います。
今後各地域で様々なアイデアが登場してくるはずで、うまくいくものもあればそうでないものもあるはずですが、あまりやり過ぎると現場の反発を招くもので、現場との意思疎通をしながらの微妙なさじ加減が重要ですね。

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2020年2月10日 (月)

2020年度診療報酬改定の目玉は働き方改革に

2020年度診療報酬改定内容が決まったと報じられていますが、その内容がかなり特徴的なものであるようでうs。

救急医療の診療報酬手厚く(2020年2月7日共同通信)

 厚生労働省は7日、治療や薬ごとの価格である診療報酬について、2020年度の改定内容を決めた。医師らの働き方改革推進が柱。特に勤務が過酷な救急医療で、患者受け入れ実績の高い病院への報酬を手厚くし、労働環境の改善を後押しする。その分、患者の負担は上乗せされる。大病院とかかりつけの診療所との役割分担を強化し、症状に応じた受診を患者に促す。4月から実施する。

 働き方改革では、地域の救急医療を担う病院に限り、患者の入院時に5200円を上乗せする。患者の窓口負担はそのうち1~3割。救急車とドクターヘリによる患者搬送件数年2千件以上が条件で、対象は最大約900病院。

2020年度診療報酬改定、加藤厚労相に答申(2020年2月7日医療維新)

 中医協総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は2月7日、2020年度診療報酬改定を加藤勝信厚労相に答申した(資料は、厚生労働省のホームページ)。

 病院勤務医の負担軽減策の一環として新設される、今改定の注目点数である「地域医療体制確保加算」は、入院初日に520点。医師事務作業補助体制加算も、加算1と2ともに一律50点アップするなど、今改定の「重点課題」となった「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」関係の点数に手厚い改定となった。
 一方で、初再診料は点数据え置き。かかりつけ医機能を評価する機能強化加算、地域包括診療加算も、要件見直しはあったものの、点数はやはり据え置き。診療所にとっては、目を引く増点に欠ける。
(略)
 今改定の改定率は、2020年度予算編成の段階で2019年末に決定していた。診療報酬本体部分は0.55%の引き上げ、薬価は0.99%、材料価格を0.02%それぞれ引き下げ、全体では、0.46%のマイナス改定(『2020年度診療報酬改定、全体で0.46%マイナス』を参照)。

 今改定の特徴は、本体部分の0.55%のうち、0.08%が「消費税財源を活用した救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」として充当される点。改定の基本方針でも、(1)医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進、(2)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現、(3)医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進、(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上――の4項目のうち、(1)を「重点課題」とした(『「医師等の働き方改革」が重点課題、2020年度改定の基本方針案了承』などを参照)。

 「救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」として新設されるのが、「地域医療体制確保加算」。年間2000件以上の救急搬送件数などが施設基準で、入院初日に520点を加算できる(『救急搬送「年2000件以上」で加算新設、働き方改革で』を参照)。その他、働き方改革への対応として、医師等の従事者の常勤配置や専従要件に関する要件の緩和、医師事務作業補助体制加算の評価の充実などを行う。

【働き方改革】医師・看護師からのタスクシフトを強力に推進(2020年2月7日日経メディカル)

 2月7日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、2020年度診療報酬改定案の答申が行われ、詳細項目が明らかになった。医師の働き方改革に関しては、2024年4月から始まる時間外労働の上限規制適用を見据え、医師の労働時間短縮への取り組みを評価する項目が盛り込まれた。

 この分野における報酬改定の目玉になるのが、院内のタスクシフト・シェアを評価する各種項目。看護職員夜間配置加算(一律10点引き上げ)や急性期看護補助体制加算(一律30点引き上げ、表1)、夜間急性期看護補助体制加算(一律30点引き上げ)、看護補助加算など、コメディカルを手厚く配置すれば算定できる報酬を引き上げる
 入院後14日まで算定できる「急性期看護補助体制加算」と「夜間急性期看護補助体制加算」をともに算定していれば、一律で60点の引き上げと病院経営への影響は大きい。例えば300床の急性期病院で、病床稼働率が80%、平均在院日数が12日で入院14日目までの患者が全体の8割を占めると仮定すると、人員構成を変えずに約4200万円の増収になる。この財源で新たな看護補助者を雇用し、体制を充実させる病院も出てきそうだ。
 メディカルクラークなどの配置を評価する医師事務作業補助体制加算は、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、結核病棟、有床診療所、精神科急性期治療・療養病棟、認知症治療病棟など算定できる病棟を一気に拡大した上で、報酬も一律で50点引き上げる(表2)。
(略)
 救急医療体制の充実を図る観点では、年間2000件以上の搬送受け入れをする病院に地域医療体制確保加算(520点、入院初日)が新設。算定要件として、(1)タスクシフト・シェア、(2)連続当直の防止、(3)勤務間インターバル、(4)予定手術前日の当直・夜勤に対する配慮、(5)複数主治医制──などの導入を検討する「病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」を作成することなどが盛り込まれる。「300床、平均在院日数12日、病床稼働率80%」の病院では、約3800万円の増収だ。なお、報酬の対象とならない受け入れ件数1000~1999件の医療機関や、離島・へき地の病院も地域医療介護総合確保基金で支援する旨が示されている。

 高度な急性期医療を提供する病院を評価する総合入院体制加算の算定要件の1つである「多職種による役割分担(タスクシフト・シェア)を推進する会議」には、年1回、必ず院長(管理者)が出席することとする。また、勤務医の業務負担軽減を行うための体制として、現行では5項目中2項目を満たせばよいが、改定後は「特定行為研修を終えた看護師の複数名の配置」「院内助産または助産師外来の開設」を含めた7項目中3項目を満たすことを要件にする。

 麻酔科医師の業務負担軽減を図る目的では、麻酔管理料IIの要件を見直す。麻酔の維持や導入の際のライン確保など一部の行為に関しては、特定行為研修を修了した常勤看護師が行った場合にも算定できるようにする。ただし、同管理料IIの担当医の要件として「常態として週3日以上かつ週22時間以上の勤務を行っている医師」という文言が追加。複数の医療機関を渡り歩くいわゆる“フリーランス麻酔科医”が担当した場合は、同管理料IIを算定できない

 このほか、(1)医療安全管理の委員会を対面ではなく、テレビ会議で行ってよいとする、(2)抗菌薬適正使用支援加算に関する院内研修を院内感染対策の研修と一緒に行ってよいとする、(3)在宅療養指導料、糖尿病合併症管理料、糖尿病透析予防指導管理料について、医師が看護師などへの指示内容をカルテに記録することを算定要件から外す、(4)文書による患者同意を要件とする報酬について、電磁的記録でよいとする──など、診療行為以外の業務の軽減も図られる。

クローズアップ:診療報酬改定答申 勤務医の負担減なるか 人件費増・業務分担で(2020年2月8日毎日新聞)

 4月から行われる診療報酬の改定内容が固まった。救急や周産期医療で長時間の残業を余儀なくされる勤務医の労働環境改善のため、大病院への報酬を手厚く配分したのが大きな柱だ。一方、それ以外は小幅な改定にとどまり、医療費が急増する超高齢化社会を前に、給付と負担の本格的な見直し論議は、次回以降の改定に持ち越された。【原田啓之、阿部亮介】
(略)
 今回の診療報酬改定は残業時間を減らす内容が柱となる。この報酬とは、医療行為や薬の対価として医療機関が受け取るお金を指す。厚労省は、報酬の増額分を原資に新たに医師を配置し、仕事を分担できる看護師や補助者を雇う人件費にも充ててもらう方針だ。

 具体的には、救急搬送が年間2000件以上の病院を対象に、1回の入院で5200円(自己負担は3割で1560円)の報酬を加算する。対象は800~900病院で収入は計約400億円増える。事務補助の職員を雇う病院への加算を450~500円引き上げ、看護師が麻酔の一部を担っても収入が入るよう改めた。これらで医師の労働時間の短縮を図る構えだ。

 病院団体幹部は「一定の効果があるが、長時間労働を抜本的に解消する人件費としては額が少ない」と話す。特に地方では医師が集まらず、慢性的な人員不足に悩まされており、「焼け石に水」(ある県の医師会幹部)との声もある。
(略)

今回の改定最大の目玉が医療現場の働き方改革であることは諸方面の見方が一致しているところですが、そのために財源の手当を行ったと言う点が目新しいところですね。
メディカルクラークの手配などタスクシフトで専門職の業務量が減らせることに関しては、近年現場を中心に一定程度のコンセンサスが得られてきていると言えます。
その原資となる診療報酬上の手当がなかったことで導入に二の足を踏んできた施設も、今回幅広く加算が認められたことで導入に踏み切りやすくなったはずです。
医師の仕事が減らせる分を時間外の削減に回すか、別の稼げる仕事をしてもらうのかは各施設の状況次第ですが、医療行為以外の雑務が減るだけでも助かるでしょうね。

救急医療の充実に関しても相応の手当があるものの、こちらは急性期の看板を掲げていながら実際には救急をとらない、名ばかり急性期は減らす方向であるようです。
要は実際に多忙な急性期には手厚く、そうでない施設は慢性期に移行いただくか病床を削減していくと言うことで、医療の効率を引き上げるもくろみだと思われます。
ただそれが成立し機能するには医療スタッフの施設間移動がきちんと行われる必要がありますが、施設間でスタッフの多忙さや負担感に格差があることは事実ですよね。
忙しい施設にリソースを集約し業務負担を緩和すると言う理屈は正しいのですが、そうなると医療と言うものの位置づけをどう捉えるべきかと言う問題になりそうです。

いわゆる医師強制配置論などに代表されるように、医療は公共性の高い社会資本的性格を持つ以上、必要性に従って計画的に整備されるべきだと言う意見があります。
他方で病院の多くは民間経営であり、医師も公務員でも何でもない以上、どこでどう働くかは個人の自由であり制約されるいわれはないと言う意見も根強くありますね。
今後は都道府県が主導する地域医療構想に従い、少なくとも病床数など物理的な部分に関しては医療資源の計画的配置、再編が進んでいくものと思われます。
その中で今のままの方が楽だからいい、忙しい急性期になど今更行きたくないと言う方々もいるはずで、人員の再配置の方はどこまで進むのかは未知数と言えるでしょうか。

医療の逆説として知られることに、一般に多忙な急性期の施設ほど給料が安く、暇な施設の方が給料はいいと言うケースが珍しくないと言う伝統がありました。
それだけ働き者の先生方が多かったと言うことでしょうが、近年では医療の世界も多様な考え方が広まってきていて、暇で給料がいい施設は埋まってきたとも言いますね。
長期的に多忙な施設には診療報酬を手厚く、そうでない施設にはそれなりにと言う方針を進めていけば、より多く働いた人がより多くのお金を受け取る方向に進む道理です。
ただ多忙でないから仕事として重要ではないと言うことでも全くないので、今後もコンマ数パーセントの微妙な調整による緩徐な政策誘導が行われていくのでしょうね。

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2020年2月 5日 (水)

愛知県で高齢者の置き去り事件が発生した背景

先日来話題になっているのが愛知県で発生したこちらの事件ですが、まずはニュースから紹介してみましょう。

いったん保護した高齢男性を深夜、雨の公園に放置 愛知県職員 受け入れ先見つからず(2020年2月4日毎日新聞)

 愛知県の職員が身元不明の70代男性をいったん保護した後、管轄地域外へ連れて行き、深夜に公園に放置したまま立ち去っていたことが3日、関係者への取材で分かった。男性は脳梗塞(こうそく)を発症した疑いがあり、現在病院で治療を受けているという。

 県などによると、1月中旬の夕方、キャッシュカードを持たずに現金自動受払機(ATM)を操作していた男性を県警津島署が保護し、県海部福祉相談センター(同県津島市)が引き継いだ。当時、男性は筆談や会話ができない状態だったという。
 20~50代の男女3人のセンター職員が簡易宿泊所などの受け入れ先を探したが見つからず、地元消防などに病院への搬送を依頼したものの救急搬送の必要がないなどとして拒否されたという。

 対応に困った職員はこの日深夜、管轄外の名古屋市中村区の公園へ男性を連れて行き、公衆電話から偽名で119番をして、男性を公園に放置した。男性は駆けつけた市消防局の救急隊に保護されたという。名古屋地方気象台によると、当時の気温は6・4度で雨が降っていた。
 センターで保護したはずの男性が中村区にいたことを不審に思った県警がセンター側に指摘し、上司が担当者に真実を話すよう説得した結果、公園に放置して立ち去った事態が明らかになった。脳梗塞の発症時期は不明だが、家族の話では数日前には元気な状態だったという。

 県によると、身元不明の高齢者を保護した際は、各市町村の施設か医療機関などに滞在させることになっている。県地域福祉課の緒方武俊課長は「調査中でコメントできないが、事実だとしたらあってはならない対応だ」と話した。【高井瞳、竹田直人】

愛知県職員 保護された70代男性を公園に置き去りに 上司が指示(2020年2月4日NHK)

愛知県津島市にある県の福祉相談センターの職員2人が先月、警察が保護し引き渡しを受けた70代の男性を、管轄外の名古屋市の公園まで連れて行き、置き去りにしていたことが分かりました。県によりますと2人の上司が、管轄外の場所まで男性を連れていくよう指示していたということです。大村知事は「ゆゆしき事態で厳正に処分したい」としています。

愛知県によりますと先月17日、愛知県大治町でキャッシュカードを持たずにATMを操作していた70代の男性を警察が保護し、津島市にある県の海部福祉相談センターが引き渡しを受けました。
男性は身元が分からず会話などもできない状態で、センターの50代の男性職員と20代の女性職員の2人が、上司と相談しながら宿泊先などを探しましたが、見つからなかったということです。

このため職員2人は対応に困り、センターの車を使って深夜に管轄外の名古屋市中村区にある公園まで男性を連れて行き、置き去りにしたということです。
その際に偽名を使って公衆電話から119番通報し、その後、男性は警察に保護されました。
職員2人は警察に対し「男性を見失った」などと、うその説明をしましたが、その後、置き去りを認めたということです。

県によりますと2人の上司で福祉相談センターの50代の職員が、男性を管轄外の場所まで連れて行き、名前を名乗らずに消防に通報するよう指示していたということです。
さらに当初、男性を置き去りにしたことを隠すよう指示もしていたということです。
一方、70代の男性は体が衰弱しているため、現在も病院に入院し、治療を受けているということです。

大村知事は「ゆゆしき事態でおわびしたい。こうしたことは二度とあってはならず、関係の職員を厳正に処分したい」と話しています。

何にしろ無事に保護され良かったと言うことですが、こちらの事件があった2020年1月17日は金曜日で、同日深夜まで行き先を探していた時点で週末の休日期間に突入していたと言う点に留意頂きたいと思います。
知事はかなりご立腹の様子で関係職員の処分をと言っていますが、一見すると上司と部下が相談して組織的に行った行為のようにも見え、世間的にもあってはならないケシカラン行為であったとの声が多いようです。
無論御説ごもっともなのですが、すでに職場の人間も帰宅した週末深夜に誰に相談しどう対処するべきか決めかねた中で、最低限なんとかしようと言う努力を払った形跡は認められるようには思われました。

置き去り事件と言えば10年あまり前に、大阪で入院費用も支払わず長年病院内に居座り続けた全盲の高齢者を病院職員が公園に置き去りにした事件が報じられ、これも大きな話題になったことがありました。
この事件では自宅退院を拒否した上に保護者に相当する前妻と連絡がつかなかったこともあり、今後の行き先をどうするかと言う道筋が見えない中での置き去り行為であったと考えられています。
今回ルール上は医療機関への受け入れが出来なければ自治体施設で収容となっていたそうですが、当然こうした状態の高齢者を夜間休日引き受けると言うことは、誰かがつきっきりで世話をする必要があります。
その場合誰が世話をするのかの当番割や、食事や睡眠のための手配の段取りなども決まっていなければ現場は何も動けませんが、記事を見る限り少なくとも現場にはそうしたルールが周知されていなかったようですね。

高齢者の身元不明者は近年全国的に増加傾向で、結局身元がわからないままと言う事例も少なくないようですが、独居がこれだけ増えた時代身元がわかっても引取先がないと言うことは当然あるはずです。
今回も最終的に病院に収容されたと言うこともあり、こうした場合病院に連れて行けと言う声も多いようですが、身元不明者を引き取れと言うなら出口も用意してくれないなら、単なるババ抜きですよね。
どうしてもの場合は自治体病院が自治体とルールを決めた上で引き取るのが筋かも知れませんが、自治体病院も無期限に入院させるわけにもいかず、支払いや受け入れ先の問題が結局ついて回ります。
結局のところ生活保護制度などとも絡めて行政が能動的かつ迅速に動かなければどうしようもなさそうですが、家族としてはまだ元気なうちから高齢者の身元確認の手段を講じておくことも大事ではないかと思いますね。

 

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2020年2月 3日 (月)

日医は医師労働時間の厳密な管理に反対と主張

医師の働き方改革に関連して、日医がまたしても頑強な抵抗をしていると報じられていました。

過半数の病院が「労働時間の通算に反対」と回答(2020年1月31日日経メディカル)

 日本医師会は1月29日の記者会見で、2019年12月に実施した「医師の副業・兼業と地域医療に関する日本医師会緊急調査」の結果を発表した。回答した病院の過半数が、複数の医療機関に勤務する医師の労働時間を通算することに反対の姿勢を示していることが明らかになった。

 労働者全般の副業・兼業に関する労働時間の取り扱いについては厚生労働省の労働政策審議会で議論されており、複数の勤務先での労働時間を通算することなどが検討されている。これを受け、日医は医師の副業・兼業の現状を把握し、労働時間が通算された場合の地域医療と病院経営への影響を検討すべく、全国の病院と都道府県医師会を対象に調査を実施。病院8343施設のうち、3713施設が回答した(回答率44.5%)。
(略)
 調査の結果、複数医療機関に勤務する医師の労働時間を通算することに関して、B水準に相当する医療機関2132施設のうち28.0%が「反対」、23.8%が「どちらかといえば反対」と回答した(図1)。自由意見の中には、「医師の労働時間が複数の医療機関で通算されると、非常勤医師の確保が困難になり、地方の病院では経営が困難になる可能性もある。また、二次救急における輪番体制も維持できなくなるのではないか」など、地域医療が医師の副業・兼業により成り立っており、労働時間の通算により地域医療の崩壊を懸念する声が多く上がった

 同様に、C水準に相当する医育機関55施設と都道府県医師会においても「反対」「どちらかといえば反対」が過半数を占めていることが分かった。

 調査では、もし複数の医療機関に勤務する医師の労働時間が通算された場合、地域の医療体制、医療機関経営に影響を及ぼすと考えられる項目を聞いたところ、病院、都道府県医師会ともに「宿日直体制が維持困難」と「派遣医師の引き揚げ」の回答が上位を占めた。

 調査結果を公表した日医常任理事の松本吉郎氏は「医師は副業・兼業が当たり前の業種であり、一般職種での副業・兼業のあり方を医師にも適用した場合、地域医療が崩壊しかねない」とし、労働時間管理により医療機関における事務負担の増加を懸念する声も多く寄せられたことから「複数の医療機関に勤務する医師の労働時間については医療機関が厳密に管理するのではなく、自己申告制がよいのではないか」との見解を示した。

■都道府県医師会の97.9%「維持困難」、副業・兼業の通算で(2020年1月30日医療維新)

 日本医師会常任理事の松本吉郎氏は、1月29日の定例記者会見で、2019年12月に実施した「医師の副業・兼業と地域医療に関する緊急調査」について、新たに医育機関(大学病院・大学附属病院)と都道府県医師会への調査結果を加えた全容を公表した。いずれも6割以上が副業・兼業の労働時間への通算に反対、都道府県医師会の97.9%が、「宿日直体制が維持困難」との懸念を示していた。
(略)
 労働時間が通算された場合の影響について、医育機関で最も高かったのは、「派遣医師の引き揚げ」と「宿日直維持の困難」でいずれも78.2%。「病院の経営が悪化する」(63.6%)、「病院勤務医の減少につながる」(58.2%)──が続いた(複数回答)。自由意見欄では、「副業・兼業は医師確保ばかりか、大学病院などでの給与の抑制による経営にも重要なこと」、「地域医療の支援、医師の待遇確保の観点からやむを得ない」などの声があった。
 一方、都道府県医師会は、97.9%が「宿日直体制が維持困難」と回答。「派遣医師の引き揚げ」(89.4%)、「病院の経営が悪化する」(78.7%)、「救急医療からの撤退」(74.5%)──が続いた(複数回答)。
 自由意見欄では、「大学病院や基幹病院の勤務医による支援がなければ、地域医療は崩壊する」、「派遣医師を引き揚げた後、その医師の給与を大学や基幹病院で賄えるのか」、「拙速かつ厳格に法的基準を定めていくことには賛同できない」など、現状のまま通算することに懸念を示す声があがった。

 松本氏は緊急調査の結果を受け、「制度を変えた場合の影響が多岐にわたり、何が起こるか予測が困難。宿日直の兼業で現在の医療体制が成り立っていることが切々と訴えられている」とし、「医師が一般労働者と同じ扱いで良いのか、単純に当てはめることで混乱が生じる危険があり、議論が必要だ」と訴えた。
 日医は医師の働き方に関して、一般労働者と同一の働き方が当てはまるかを現行法に基づく考え方を超えて幅広く議論するため、検討会を設置。3月を目途に意見をまとめる方針。
(略)

議論の前提として医師の労働時間をまずきちんと把握しようと言う大原則を前に、こういう声が出てくること自体が理解困難ですが、調査の対象が誰なのかが問題です。
日医などは医師を働かせる側の方々を代弁する組織ですし、調査対象も病院など雇用者側ですから、、こうした声が上がってくることは想定内としか言いようがありません。
当事者である兼業医師の側にたずねてみればまた別の答えも出てくるだろうと思うのですが、しかし相変わらず日医にとって世間の常識は医師の非常識なのですね(苦笑)。

厚労省としてはかねて医療リソースの集約化を計りたい意向で、先日も統廃合を考えるべき全国数多の病院を実名で公表し話題になっていたのは記憶に新しいところです。
派遣医師が回ってこなければ宿日直体制維持が困難な病院など統廃合の対象と言いたいのが本年でしょうが、この点で法的な制約があることは留意すべきでしょう。
病院であれば当直医が必要と言う医療法のルールは、救急などとらない中小病院にも過剰なリソースの維持を求めるもので、労基法違反を誘発する大きな原因と言えます。

この点で興味深いのが平成30年に医療法が一部改正されたのですが、当直医に関しては従来よりさらに厳密な体制を求めるよう、厳しくなる方向で改められたことです。
今後地域医療計画に基づいて病院の役割分担が明確化されていけば、現実的に時間外救急をとる病院、とらない病院もはっきり区分けされていくだろうと思われます。
その時点で当直医は置かずとも待機で十分と言う施設もあるはずで、その辺りの要件を緩めて医師の拘束時間を減らさなければ労基法違反解消など出来そうもありませんね。
日医なども医師の労働時間把握など自己申告で適当に、などといい加減なことを言っている場合ではなく、どうすれば労働時間を減らせるか考えを出すべきはずですがね。

 

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2020年1月20日 (月)

病院もキャッシュレス化のすすめ

今年はオリンピック開催もあって海外からの訪日客増加が見込まれていますが、それに伴いいくつか不具合もありそうだと懸念されているようです。

訪日客トラブルに保険続々 病院不払いやSNS炎上(2020年1月14日共同通信)

 訪日観光客の急増を受け、受け入れに関わる国内事業者と旅行者のトラブルに備えた保険商品が多様になっている。外国人の医療費不払いに見舞われる病院や、会員制交流サイト(SNS)が悪評で染まる「炎上」に悩む飲食業などの需要が拡大しているためだ。東京五輪・パラリンピックで訪日客がさらに伸びると騒動も増えかねず、損害保険大手による商品開発競争は加速しそうだ。

 観光庁の2018年度の調査では、滞在中のけがなどに備える海外旅行保険に加入済みの訪日客は7割程度。日本でのトラブル防止へ官民で加入を呼び掛けた結果、損害保険ジャパン日本興亜がインターネットで扱う旅行保険は18年度の加入者数が前年度の1・8倍に伸びたものの、客の急増に追い付いていない。

 「ノーマネー」。厚生労働省によると、急病で診療を受けても支払いを拒んで帰国する客が後を絶たない。そこで、あいおいニッセイ同和損害保険は外国人患者に特化した「医業未収金補償保険」を昨年、医療機関向けに発売した。一定額まで不払いを補い、治療費回収は同社が代行する。東南アジアからの訪日客の入院治療費が1千万円を超えた例もあり、反響は大きいという。

 三井住友海上火災保険は中国の保険会社と提携し、日本での医療費をキャッシュレスでカバーする保険を中国で発売。取り扱いを伸ばしている。
(略)

この医療機関での未収金問題、以前から当「ぐり研」でも何度か取り上げてきたところですが、特に無保険者が多い外国人の未払いを2割の病院が経験していると言います。
日本の医療機関はある時払いの性善説に立つ施設が多く、未収金に対しても強く支払いを迫ってこなかった経緯もありますが、そうであるなら対策を講じるべきでしょう。
この点でかねてクレジットカードをもっとうまく活用できないかと思っているのですが、特に無保険外国人の場合原則カード提示を求めるようにすべきではないでしょうか。

海外ではクレジットカードによるデポジットが広く活用されていて、あらかじめ提示しておいたカードによる支払いでも現金払いでも精算時に選べるようになっています。
現金払い文化が広く蔓延している日本では従来カードの活用があまりされていませんでしたが、消費税増税を機にキャッシュレス決済導入も進められているご時世ですよね。
残念ながら医療業界は特にキャッシュレス化の遅れた業界の一つとされていて、国民からも現金払いしか出来ない不便さを最も痛感する場所だと認識されているそうです。
キャッシュレスの便利さはすでに認知されつつありますが、病院などはむやみに長くなりがちな会計の待ち時間対策と言う点でもかなり強力な売りになりそうですけどね。

病院待ち時間なくすクレカ ライフカードと京大病院(2019年8月8日京都新聞)

 アイフル子会社のライフカードと京都大医学部付属病院(京都市左京区)は、病院会計の待ち時間を省く「エクスプレス会計」機能を付けた提携クレジットカードを発行した。診察後に専用窓口へカードを提示すれば、その場での会計が必要ない

 東京の7病院で導入しており、西日本では京大病院が初めて。診察券とひも付いた提携クレジットカードを、診察後に専用窓口へ提示するだけで帰宅できる。支払いは後日、登録した口座から引き落とされる。

こちらのシステムの場合患者にとっても会計の待ち時間が減らせると言うメリットがありますが、運用の仕方によって実質的なデポジットとしても活用出来そうです。
別に専用のシステムでなくとも同様のやり方はどこででも出来そうなものなのですし、医療機関にとってもマンパワーの点からのメリットもありそうに思いますね。
ただ現状では手数料負担が課題で、零細事業者や利益率の低い業界でカード手数料負担は厳しいものですが、実は多くの医療機関はまさにこれに該当すると思われます。
その点であまり利用されすぎても困るのも本音かも知れませんが、未収金対策だけではなく患者にとってもメリットのあることなら誰はばかることなく導入しやすいですね。

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