コロナ大規模抗体検査の結果公表、やはり医療関係者は陽性率が高かった
ある程度バイアスのかかっているものと思われる民間企業の調査ですが、先日新型コロナ抗体検査の大規模調査結果が公表されていました。
抗体検査、陽性0・43% ソフトバンク、4万人対象 医療従事者は高い傾向(2020年6月10日共同通信)
ソフトバンクグループ(SBG)は9日、社員や協力を得た医療機関などを通じ約4万4千人を対象にした新型コロナウイルスの抗体検査を実施した結果、0・43%の人が陽性だったと発表した。医療従事者の陽性率は1・79%で、ソフトバンク社員などの0・23%よりも高い傾向を示した。国内で最大規模の抗体検査とみられ、単純比較できないが、これまでの海外の検査例よりも陽性率が低い結果となった。
感染の診断に使われるPCR検査では陰性だったにもかかわらず、抗体検査では陽性が出たケースが複数あった。インターネットのライブ中継で解説した国立国際医療研究センターの大曲貴夫(おおまがり・のりお)国際感染症センター長は「(それぞれの)検査を組み合わせることが必要。症状のある人が早く検査を受けられる環境づくりが最優先だ」と述べた。抗体検査は5月12日~6月8日に実施。SBGや取引先の社員など3万8216人に加え、医療従事者5850人を対象にした。陽性者数はそれぞれ86人と105人だった。
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爆発的な感染拡大が起きた米ニューヨーク市では、抗体陽性率が平均で約20%という報告がある。スペイン政府は6万人を対象に行った抗体検査で陽性率が約5%だったとの暫定結果を5月に発表している。
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医療従事者5850人抗体検査、陽性率は1.79%(2020年6月10日医療維新)
ソフトバンクグループは6月9日、グループ各社従業員や医療従事者ら計4万4066人を対象に実施した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体検査結果の速報値を公表した。医療従事者5850人のうち105人が陽性となり、陽性率は1.79%だった。職種別では、受付・事務等が2.0%、医師が1.9%、看護師が1.7%などの順だった。全体では191人が陽性となり、陽性率は0.43%。医療従事者を除くと0.15%と下がる。PCR検査の結果が陰性でも、抗体検査で陽性となった例もあった。
検査はグループ内の感染状況を把握するとともに、社会貢献などのために、医療機関や取引先を対象とし、2020年5月12日~6月8日に実施した。検査にはINNOVITA社とOrient Gene社の迅速検査キットを使った。結果は動画と資料で公表している。
全国539施設が参加した医療従事者の陽性率を都道府県別(検査件数100件以上)に見ると、最も高いのが東京都の3.1%で、千葉県(2.8%)、広島県(2.2%)、大阪府(2.2%)、北海道(2.0%)、京都府(1.9%)、福岡県(1.9%)、兵庫県(1.7%)と続いた。検査件数が100件未満のため、数値は公表されていないが、石川県でも陽性率が3%以上に上った。今回の結果は、厚生労働省が集計しているPCR検査の結果に基づいた感染分布とおおむね一致しているという。
医療従事者の年代別では、60歳以上の男性が3.34%、女性が3.40%で最も高かった。50歳代は男性2.62%、女性2.32%、40歳代は男性2.49%、女性2.53%、30歳代は男性2.54%、女性1.25%、29歳以下は男性0.53%、女性1.26%だった。大曲氏、歯科医の陽性率の低さに「驚くべきデータ」
職種別では、医師、看護師、受付・事務の陽性率が1.7%以上となる一方、歯科助手は0.9%、歯科医は0.7%と比較的低かった。
ソフトバンクグループが配信した動画に出演した、国立国際医療研究センター国際感染症センター長の大曲貴夫氏は、「驚くべきデータだと思う。歯科では口の中を処置するため、飛沫を浴びることが多く、リスクが高いと非常に心配されていた。この間に、どういう感染対策をやっていたのか、どういう患者を診ていたのか深掘りしてみたい」と感想を述べた。陽性者の大半はPCR陰性・未検査
ソフトバンクグループ社員らを含めた全体の陽性者191人のうち、6月8日までにPCR検査を受けているのは42人にとどまり、13人が陽性、29人が陰性だった。
4月以降に肺炎の症状があったが、PCR検査で陰性となってCOVID-19と診断されなかった30歳代の男性が抗体検査の結果、IgG陽性と判明したケースもあった。
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PCR検査の陽性者で、抗体検査が陰性となった例はなかった。
ソフトバンクグループ会長の孫正義氏は「民間の試行錯誤なので、専門家からアドバイスいただきながら、よい対策ができるよう進めたい」と述べた。
先日厚労省が公表した1000人規模の抗体検査の結果が都内で0.6%で、昨年の検体でも0.4%の陽性が出たことから偽陽性の可能性があるとの結論でしたが、今回の全体値もおおむね同程度の値と言えます。
やはり現時点でその程度は感染していると見るべきなのでしょうが、諸外国の報告と比べると比較的低いようで、日本の感染者数が比較的低く抑えられているとの観測の傍証の一つになりそうですね。
インフルエンザなどは毎年国民の10人に1人は感染していて、おおむね200人に1人と言えば少ないようですが、通勤電車やスーパーなど人の多い場所に行けば誰かは感染している計算です。
直接的な飛沫だけではなく環境の汚染もあり得ることですので、マスクのみならず手洗いや手指消毒などもしっかり行うことが自分を守るだけでなく、周囲に感染を広げないためにも重要だと言うことですね。
今回の結果で当然ながら注目されるのが、ある意味予想通りではあったものの医療関係者の陽性率が一般の数倍に上っていると言う点ですが、年齢が上がるほど陽性率が高いように見えることは興味深いですね。
さすがに今時ベースン法で済ませている年配の先生がいるとも思えませんが、手洗い手指消毒の頻度や日常的な衛生観念の差などと相関があるものなのか、データが出せれば面白いかも知れませんね。
個人的にもう一つ注目することとして男女差があまりなさそうだと言うことなのですが、医師と看護師の差がないこととあわせて、現場ではどのような状況で感染が起こっているのか知りたいところです。
また記事にもあるようにハイリスクと思われる歯科関係者が案外低いのですが、患者層や数の違いなのか歯科領域での感染防御策に何かポイントがあるのか、こちらも理由が検証出来れば有益でしょう。
末尾のPCR検査と抗体検査の結果に食い違いが見られると言うのは、それぞれ陽性になりやすい時期の差もあるでしょうが、臨床現場での診断の限界として考えるとなかなか示唆的なデータだと言えます。
発表資料を見ますと今回の抗体検査では発症8-10日目以降でほぼ確実に検出出来るようですが、PCR検査に関してはすでに発症後初期の3-4日間が最も検出しやすいことが明らかになっています。
例の発症後4日間ルール(ではなかったそうですが)の意味がここでも問われるところですが、これだけ検査法による不一致があるなら今後発症後の日数に応じて検査法の使い分けを考えるべきなのかと思わされますよね。
ただ発症後10日以降ともなればコロナ感染症としてはそろそろ治癒に向かう時期ですから、隔離の解除などと関連して抗体検査陽性と言う結果をどう解釈すべきなのかは取り扱いの難しいところだと思います。
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