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2020年2月25日 (火)

どうやら地域枠は壮大な失敗であったらしいことが次第に鮮明に

ちょうどこの時期は大学受験のシーズンですが、今年は久しぶりに医学部定員が大幅削減されることが話題になっています。
国が旗を振って長く続いてきた医師大量養成の方針転換とも取れる話なのですが、当の大学からはもう少しぶっちゃけた話も出ているのが興味深いところです。

入学定員減は 医学生の学力低下が背景に?(2020年2月19日日経メディカル)

 12年ぶりに定員が大幅に減ることになった2020年度入試。背景には、学生の質の低下と教員の負担が重い参加型臨床実習の導入が関係していた。

 「地域枠を作るのが地域医療を守るために有効だという話をしていたのに残念だ」――。2019年11月27日。厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会では、事務局からの2020年度入試定員に関する報告に不満の声が相次いだ。医師の偏在が指摘される中、その解決策と期待されていた地元出身者枠や地域枠の学生を中心に全国で90人の定員減となったからだ(表1)。
 だが、地域枠を削減した大学からは、地域枠の再開に対する抵抗感は強い。15人を減らし、地域枠を撤廃した山形大学医学部長の山下英俊氏は、「別枠の地域枠入試では、入学者の能力を担保できない」と主張する。

 これまで地域枠は、入学試験時に地域枠と一般枠とを完全に分ける「別枠方式」と、一般枠と地域枠を一体的に扱う方式があった。山形大がとってきたのは後者だ。だが、医学部の定員増は、そもそも医師の偏在対策が目的だったことから、医師需給分科会が一般枠と地域枠の一体的な管理を問題視。2020年度入試からは別枠方式が義務付けられることになった
 「地域枠で問題なく合格する受験生は10人中2、3人。残りは一般枠では不合格だが、地域枠ならば合格というレベルだ。最低点に届いているとはいえ、学力的には一段劣っている」と山形大脳神経外科教授で同大の医学部入試を担当する園田順彦氏は話す。園田氏が県内の各高校の教師と情報交換をする中で、「山形県のような人口が少ない県では、優秀な受験生は10人はいるが15人はいない」と園田氏。優秀な受験生たちが一般枠で受験することになれば、地域枠のレベルはさらに落ちる。「そこまでして入学してほしくない、というのが教授会の総意だ」(園田氏)。
 地域枠の学生の質に疑問を抱くのは地方の大学だけではない。大都市圏の私立大学のA教授も、「地域枠の学生の指導は大変だ」とこぼす。「地域枠は公的に履かされた点数の“下駄”。現場は、できれば地域枠の設置は断りたいというのが本音だ」。

 学力の問題は地域枠の学生だけにとどまらない。現在行われているのは少子化が進む中での医学部定員増。2006年の新医師確保総合対策以降、地域医療を守ったり研究を行う医師を増やすことを目的に、2007年度には7625人だった医学部の定員は、2019年度には9420人と約2割増えた。
 旧帝国大学のある大学で基礎医学の教育を担当するB教授は、「地域枠とは関係なく、この15年、学力は右肩下がりだ。そもそも医学に興味がない子が多い」と嘆く。前出のA教授もこう話す。ある私立大学医学部で留年を繰り返し、国家試験の受験すらできないまま退学した学生が学費返還を求める訴訟を起こした。A教授が勤務する大学ではこの訴訟を受け、正答の理由を説明しにくい記述式の問題を出せなくなった他、極力留年させずに6年生まで進級させるように指示が出されたのだ。

 また、B教授が純粋な学力以上に気に掛けるのは、学生が勉強の方法を知らないこと。「昔は成績は勉強方法と記憶力の掛け算だったが、今は記憶力だけ」とB教授。受験戦争が激化する中で、幼い頃から合格するための必勝パターンを叩き込まれる。パターン認識だけを学んで医学生となるため、定期試験の際に学内に出回る過去問の回答と一字一句同じ回答が書かれていることも珍しくないという。
 しかも数年前をピークに、「大学入試における医学部バブルは収束しつつある」という見方は強い。同年代のトップが入学しなくなれば、さらに学生のレベルは落ちる可能性がある。
(略)
 国は現在、医学生が医行為を手掛けるスチューデントドクターを公的な仕組みにする準備を始めている。2021年にも法的な整備が整う見込みだ。だが、現在の学生の質と教員数で社会から認められるスチューデントドクター制度を始められるのか。教育現場の苦悩は続く。

医学部医学科と言えば理系学生のトップが集まる場所とも言われていましたが、特に近年有資格職で食いっぱぐれがないとして人気が高まり、特に医師志望でもない学生が成績だけで進学することも多いそうです。
当然そうした学生は勉学へのモチベーションにも欠けドロップアウトしやすい傾向にあると言う声が教育の現場からも聞こえてきますが、本来地域枠学生などは一般枠より医療に対する情熱が期待されていたはずです。
ところが実際には地域医療に貢献するために地域枠を選んだ学生などはごく少数で、単に合格しやすいから、学費の免除があるからと言った理由で受験してくる学生が少なくなかったとも聞きますね。
さらに近頃では地域枠自体の人気も急落しているのだそうで、医学部自体のレベルが落ちているのだから何も地域枠でなくても一般枠でいいと、地元学生もあまり志望したがらなくなってきているそうです。

この地域枠と言うもの自体、もともと医師が地元に定着しない地方の大学で人材確保の手段として期待されていたものですが、最近では地域枠よりも卒後の研修・教育プログラム充実の方が売りになるそうです。
若手の先生に限らず医師と言う職業は一生勉強を続けなければならない以上、卒業後どれだけきちんとした教育機会があるのかが重要であり、まじめに医療に取り組む先生ほどその充実が訴求力を持つのでしょう。
この点でも患者や医師の多い都会の大学の方が有利な気がしますが、地方の大学も競合相手がいない中で広大な圏域の診療を担当してきた実績があり、有利な部分も決して少なくはないように思います。
今の学生は長期的な人生設計を堅実に考えている方々も多いだけに、若手時代だけでなく医師人生全般にわたって安心して働ける環境を用意出来るかどうかも進路選択を考える上で影響力がありそうですね。

いずれにせよ学生数が減少する中で、医学部定員だけは急増させていたのですから学生のレベルが落ちるのは当然ですが、同様に定員増がレベル低下を招いた例として同じ医療職である歯学部の事例があります。
すでに地方の不人気な歯学部では定員も埋まらないそうですが、聞くところによればこれも歯科医はまだまだ足りないと主張する一部のエラい先生方のせいで、現場の歯科医は食っていくのにも苦労しているそうですね。
同様に大量育成方針をとったロースクールなども不人気校閉鎖など今や大変な惨状だそうで、当然医学部もこのままではいずれ同様に破綻を来しかねないだろうとは、久しく以前から言われているところです。

無論まだまだ医師は足りない、OECD平均にも達していないと言う方々はいらっしゃいますが、国が医療費抑制政策を堅持している以上、数が増えるほど今後は一人あたり取り分が減るのは当然の理屈でしょう。
要するに職業としての医師は今後は次第に魅力が乏しいものになっていく可能性があると言うことで、先が見え目端の利く優秀な学生ほど医学部を選ばなくなるだけの構造的な理由はあるとは言えそうです。
B教授と同様地域枠とは無関係に昔とは学生の質が違うと言う大学の先生の声はしばしば聞きますが、今更地域枠廃止や多少の定員削減で大きく質が改善するのかで、むしろ否定的ではないでしょうか。
とするとそうした学生の質を前提でどのような教育が出来るのかですが、まずは教育機関である大学でスタッフの持つ教育のスキル自体を正しく評価する仕組みが必要になるのではないかと言う気がしますね。

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コメント

地域枠のレベルがというが、それは一般枠との比較であって、特に酷いというわけでもないでしょ?
少なくとも地域枠で入学している学生のレベルは、昔の私学の医学部に比べりゃ相当高いと思いますがね。

投稿: | 2020年2月25日 (火) 10時29分

今の若者はなっとらんって老人の口癖だからいちいち相手にしたってねえ

投稿: | 2020年2月26日 (水) 19時31分

私は母親の教えを守り、紐付き奨学金には一切手をつけませんでした。
今となっては、母親に感謝するしかありません。

投稿: クマ | 2020年2月26日 (水) 22時11分

看護師の御礼奉公をあれだけ批判した進歩的メディアが何故地域枠を総掛かりでバッシングしないのか、未だに不思議でなりません。

投稿: 管理人nobu | 2020年2月27日 (木) 08時38分

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