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2020年1月14日 (火)

応招義務があるからどんな患者も受け入れなければ、と言う間違った呪縛

上司としての在り方が職場の士気に大いに影響することは言うまでもないことですが、こちら職場のみならず全国的に称讚を集めた事例です。

店長になったのでクレーマーを全員出禁にしたら…(2019年12月17日ライブドアニュース)

飲食店やコンビニなどで声を荒げるお客と、平謝りの店員……。最近よく見かける光景ですよね。
店員さんも困るし、他のお客さんも気分が悪い。それでも悪質なクレーマーが減らないのは、店の責任者が「お金を払ってくれるから」と黙認してしまうからでしょう。
しかし、バイトから店長になったネヴァダ(@nevadan2)さんは、バイト時代から来店していたクレーマーを全員出入り禁止にしたそうです。
その結果どうなったかというと……。

バイト時代に幅利かせてた頭おかしい客を店長になってから1人残らず出入り禁止にしたら、まともな客が三倍以上入ってきたのでクレーマーなんか追い出すに限るのだ。クソ客は他の客を遠ざけている。
-ネヴァダ (@nevadan2) July 12, 2019

なんと、クレーマーを追い出したら、集客が3倍以上にもなったそうです! やっぱり悪影響だったのか…。
この結果に称賛コメントが多く寄せられました。

出入り禁止のお客様は貧乏神だったんですね。
- JADTI (@JADTI76) July 11, 2018

素晴らしい!正しいことして利益も増える理想のカタチだと思います。クレーマーを大事にするアホな企業も見習って欲しい
- Yuichi (@yuichi_support) July 12, 2018

勇気ありますね。素晴らしい接客だと思います。酷いお客様に時間を割くより、良いお客様に時間を割いた方がお店の雰囲気も良くなります
- こけ (@kokekeoukoku) July 12, 2018

店員さんも、他のお客さんも、そして経営者も。度を越したクレーマーには毅然とした態度で接すると、みんなが幸せになれるかもしれません。

医療施設でも同じような立地、施設であっても問題患者ばかりが集まる施設や、見るからに客層の良い施設と様々ですが、少なくとも客層の悪い施設にまともな顧客が集まってくる可能性は低いでしょう。
特にクリニックなどでは長期的な経営安定のためにも客層のコントロールとは非常に重要な課題ですが、しばしば応招義務と言うものを勘違いした医師ほど問題患者に誤った初期対応をしてしまいがちです。
昨年夏に厚労省内での議論で応招義務の在り方が整理された結果、営業時間外であり緊急性もあると言う場合を除いて望まない診療を強いられずとも良いことなどがこのたび正式の通知として提示されました。


◆応招義務「患者を診察しないことが正当化される事例」整理 厚労省が通知、「公法上の義務であり、私法上の義務にあらず」(2019年12月27日医療維新)

 厚生労働省は12月25日、「応招義務をはじめとした診療治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」と題する医政局長通知を都道府県に発出した。医師法第19条第1項と歯科医師法第19条第1項に規定する応招義務は、医師や歯科医師が国に対して負う義務であり、患者に対する私法上の義務でないとしている。厚労省医政局医事課によると、国は診療に従事する医師の基本姿勢として応招義務を求めるものの、例えば、診療契約を結んだ患者について、医師が正当な理由なく診療を拒んだ場合に、それは応招義務ではなく、診療契約上の問題になるという(資料は、厚労省のホームページ)。
 他方、1949年(昭和24年)の旧厚生省通知を根拠に、医療機関が組織として、患者からの診療の求めに応じて必要十分な治療を行うことが求められ、正当な理由なく診療を拒んではいけないとも明記している。

 医療機関や医師個人が、診療の求めを拒むことが正当化される理由として、緊急対応の必要性が最も重要な考慮要素だが、それに加えて診療時間・勤務時間内であるか否か、患者との信頼関係があるか否かも重要な考慮要素であるとした。緊急対応が必要な場合かつ時間内の場合には、「事実上診療が不可能と言える場合」にのみ正当化されるとした一方、緊急対応が不要で時間外の場合、かつ患者の迷惑行為がある場合などは新たな診療を行わないことが正当化される。
(略)
 通知では、医療機関の勤務医が労使協定・労働契約を超えた診療指示等の解釈についても記載。勤務医が協定・契約を超えた診療指示等を受けた場合に、結果として労働基準法等違反になることを理由に診療を拒否したとしても、それは応招義務違反ではなく、労務関係法令上の問題になるとの整理だ。

 「患者を診察しないことが正当化される事例」は、緊急対応が必要な場合か否か、診療時間・勤務時間内か否かの4パターンに分けて整理している。
 緊急対応が必要で時間内であれば、医療機関・医師の専門性・診察能力等を総合的に判断して、「事実上診療が不可能と言える場合」にのみ正当化される。一方、時間外であれば、応急的に必要な処置を取ることは望ましいが、原則、公法上・私法上の責任に問われることはない
 緊急対応が不要な場合も、時間内であれば患者の求めに応じて必要な医療を提供する必要はあるものの、緊急対応が必要な場合と比べて、正当化される理由は緩やかに解釈される。時間外については、時間内の受診依頼等を行うことが望ましいとしたものの、「即座に対応する必要はない」とした。

厚労省HPで公開された今回の通知では幾つか興味深い点がありますが、最も注目されているのが応招義務とは国に対して負う義務であって、患者に対する義務ではないことが明示された点でしょうか。
未だに時折「応招義務違反だ!訴えてやる!」と窓口で騒いでいる患者もいるやに聞きますが、この点については全く誤解であって患者に対して医師は何ら診療の義務は負わないと言うことですね。
法的には医師に応招義務があっても患者に診療を受ける権利がない以上権利侵害自体も発生しないので、応招義務違反を根拠に民事的に損害賠償請求をすることも出来ないと言うことになります。
無論診療時間内に緊急性の高い患者を、診療可能であるにも関わらず拒絶した場合、国に対して行政処分を求めることは可能ですが、その際にはどうして診療不能であったかを訴えることになるのでしょうか。

ちなみに過去にはいくつか民事訴訟上の損害賠償請求を認められた事例がありますが、今回の通知と照らし合わせてみると責任を認めるのもどうなのか?と思われるものもないではないようです。
今後はこの基準に基づいた判例の蓄積が求められますが、特に患者との信頼関係がないことも重要な考慮要素であるとされている点は、クレーマー対策として非常に心強い根拠となるでしょうね。
他方で不要不急であるにも関わらずやたらと医療機関受診を繰り返すタイプの問題患者に関しては、それが緊急性のある状態でないことを証明しない限り営業時間内の対応が求められることになりそうです。
ただこのタイプの多くは夜間時間外に何度も押しかけることが問題なので、日中の外来診療に限定して対応の義務を求められると言うことであれば多少扱いやすくはなりそうに思われますね。

ところで昨今の働き方改革を巡る議論も反映してか、今回の通知では労使協定や労基法等の範囲を超えた診療を勤務医は拒否出来るし、それは診療拒否には当たらないと言う重要な文言が示されています。
この場合は医師と患者の問題ではなく、医師と雇用者との間の問題であると言う理由からですが、限度を超えた長時間労働を理由として勤務医が救急受診の求めを拒否出来る場合もあると言うことですね。
この点で労使協定でどこまでの義務を課せられているかと言うことが非常に問題で、勤務医は今後ますます労使協定の詳細について知っていなければならないし、不当な契約は避けなければならないでしょう。
逆に労使間の問題であると言うことで、実際に診療を拒否した場合病院当局との争いになることも考えられるはずですから、いざと言う時に備える意味でも労働時間の把握と管理が必要であると言えますね。

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