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2019年12月11日 (水)

記者氏の言うところの『「大学勤務医は低賃金」を所与とした議論続く』状況はおかしいと思うのですが

来年度の診療報酬改定の議論が進んでいて、本体部分は横ばいか微増、薬価も含めて全体としては減額と言うありがちな結論になりそうだと報じられています。
今後団塊世代の高齢化が進み医療費など社会保障全般の財政的、人材的な逼迫が懸念される中で、永続的な医療供給体制をどう構築していくべきなのかと言う問題はきわめて重要かつ難しい課題ですね。
ちょうどそのタイミングで医師ら医療専門職の働き方改革の議論も進んでおり、特に医師を雇用し働かせる側である医療系諸団体にとっては、稼ぎ手である医師が働いてくれなくなることを懸念しているようです。
単純に医師が働かなければ病院の収入が減って困るだとか言う理屈では説得力がないとは自覚しているのでしょうが、見ていますとどうも少し奇妙な論理で医師を働かせ続けることを求めているようです。

医師の働き方改革「健康は確保、収入は確保できず」、地域医療への影響も(2019年12月9日医療維新)

 社会保障審議会医療部会(部会長:永井良三・自治医科大学学長)は12月9日、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」と「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」の議論の報告を受けたが、時間外労働の上限規制が厳しくなると、大学等からの医師派遣が少なくなり地域医療に支障が生じたり、医師個人の収入が減少するなど、副業・兼業をめぐる懸念が相次いだ

 「副業・兼業によって収入を得て生活をしていた医師が、上限規制で兼業に影響が出ると生活ができなくなる。健康が確保できても、収入を確保できなければ問題であり、その辺りのバランスをどう取るかも考えていかなければいけない」(国立病院機構理事長の楠岡英雄氏)、「大阪では、2次救急医療機関の当直の4割は、大学からの医師に頼っている。こうした状況が急に破壊されることがないように、副業・兼業のことをしっかりと考えてもらいたい」(日本医療法人協会会長の加納繁照氏)といった意見だ。
 副業・兼業の在り方は、厚生労働省内でも労働基準局の検討事項であるため、「医師の副業・兼業を一般労働者と同じように扱うのか。医師がいない中で、物事が決まることに危機感を覚える。医師の働き方について、何らかの形で意見を言う立場、機会を設けるべき」(日本医師会副会長の今村聡氏)といった要望も挙がった。
(略)
 9日の医療部会で議論の口火を切ったのは、楠岡氏。医師の時間外労働の上限規制の根拠となった調査は、副業・兼業を含めたものかどうかを確認。厚労省医政局医事課長の佐々木健氏が副業・兼業を含んだものであると答えると、「それでは副業・兼業先に医師が行かなくなるケースは少ないと考えていいのか」と尋ねた。
 佐々木課長は、「現時点でも約2万人の時間外労働は、年1860時間を超えている。まず年1860時間未満にしなければならないことを考えると、さまざまな取り組みをしていかなければいけない。単純に今の役割分担、業務をそのままにし、何もしなければ影響が出てしまう。各医療機関および地域での取り組みが必要」と回答した。それを受けて、楠岡氏は「(時間外労働時間が減って)健康が確保できても、収入が確保できないと問題であり、その辺りのバランスをどう取るかも考えていかなければいけない」などと述べたのだった。
 加納氏は、「大阪府では、2次救急医療の8割は民間病院が担っている。その当直の4割は大学からの医師に頼っている。こうした状況が急に破壊されることがないように、副業・兼業のことをしっかりと考えてもらいたい」と求めた。
 早稲田大学人間科学学術院准教授の松原由美氏も、「大学病院の勤務医が、時間外労働の上限を課せられ、生活ができるのか。家族を持っている医師など、大学病院を辞めざるを得ない医師が出てくるのではないか。大学病院が最後の砦になっている地域では、地域医療が崩壊しかねない」と述べ、医師の働き方改革により、医師の収入や病院経営がどう影響するのかについてのシミュレーションを要望。
(略)
 政策研究大学院大学教授の島崎謙治氏は、「医師の働き方改革の影響は甚大で、相当丁寧に議論していくことが必要。“巨大なスポンジ”、言ってみれば無尽蔵の働き方で医療ニーズを吸収してきたが、それが吸収できなくなれば、ニーズがこぼれる」と、たとえを交えながらコメントした。日本の約1.2倍の面積のスウェーデンでは、病院数も外来受診回数も日本よりも格段に少ないというデータを紹介しながら、「国民もある程度、我慢しなければいけない」「医療資源を再編するしかない」などと述べ、地域医療構想も念頭に地域ごとに丁寧に進めて行くことが必要だとした。
(略)

もちろん地域医療への影響など様々な議論が必要であることは言を待ちませんが、大前提として医師の大きな供給源となっているのが大学病院であると言う現実があります。
その大学病院の医師がアルバイトを制限されると困るだろう、だから働き方改革を厳しく進めすぎると大変だと言うのもごもっともなのですが、何か違うと言う気もします。
本来的に問題なのは大学病院の給与が生活も出来ないほど低すぎることであり、それ故に多忙であるにも関わらず夜間休日のアルバイトを強いられてきたことでしょう。

未だに大学病院勤務医の低待遇があったからこそアルバイトの需要があり、地域への医師派遣機能が働いていたのだと、妙に前向きに評価する声も根強く残っています。
他の業界で企業経営者らがそんなことを口にすれば、たちまち国民と進歩的マスコミ諸社の集中砲火を浴びて当然ですが、未だに医師の常識は世間の非常識なのでしょうか。
今回の記事を見ても、社保審の場では大学病院の低待遇を問題視する声すらないようですが、こうした方々によって医療のあり方を巡る議論が進んでいると言うことです。

これを「そうは言っても現実問題としてそうなっているのだから仕方ないじゃないか」と言うなら、何故大学病院医師の低待遇だけ聖域視するのかと反論されるでしょう。
診療報酬や働き方改革、あるいは医療のあり方など様々な難問は単独で解決出来るものではなく、相互に関連づけて一体的に改革を進めなければならないでしょう。
場合によっては現状を破壊する勢いで抜本的に改革しなければならない困難な状況で、特定の問題だけは現状がこうだから仕方がないと言うのはおかしな話ですよね。
それをあえて許容しているとすれば、議論している方々にとってはその現状こそが都合が良いと言うことですが、現場の医師達の声は届いているのかと不安になります。

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コメント

>早稲田大学人間科学学術院准教授の松原由美氏も、「大学病院の勤務医が、時間外労働の上限を課せられ、生活ができるのか。家族を持っている医師など、大学病院を辞めざるを得ない医師が出てくるのではないか。大学病院が最後の砦になっている地域では、地域医療が崩壊しかねない」と述べ、医師の働き方改革により、医師の収入や病院経営がどう影響するのかについてのシミュレーションを要望。

どっかから金もらって、妙ちくりんな意見言うのはいいとして、大学研究者なら、シミュレーションは、まず自分がやってみて、論文にしろや。なんでこんなん研究者で食わしてるねん。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年12月13日 (金) 10時28分

東大消化管外科の野村先生のお話を拝聴すると、今の時代に当たり前の考え方が大学ではまだまだ異端に留まっていることを感じさせられます。

https://www.m3.com/news/iryoishin/711931

投稿: 管理人nobu | 2019年12月15日 (日) 18時59分

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