« 今日のぐり:「はやたろう 倉敷店」 | トップページ | 疑似医療行為の宣伝戦略に突っ込み、荷担した方々も炎上騒動に »

2019年11月11日 (月)

医師に過酷な労働を強いる病院と知られると患者が敬遠してしまう…だから?

当事者の誰もが思っていたことなのだとは思うのですが、医師の労組と言うべき全国医師ユニオンの研究会でこんな疑問が呈されたと報じられています。

研修医に「年1860時間」時間外特例認める根拠は何か?(2019年11月4日医療維新)

 全国医師ユニオンは11月3日、第9回医療労働研究会を「医師の働き方は変えられるのか?~医師の過労死裁判報告より~」をテーマに都内で開催した。医師の働き方改革の動向に注目が集まる中、研修医に時間外労働の上限規制の特例として「年1860時間以内」まで認めることを問題視する声が相次ぎ、「長時間労働がより良い研修につながるエビデンスがあるのか」と、根拠なき決定への懸念が呈せられた
(略)
 その一人として登壇したのが、医療法人寛明会山田内科クリニック(埼玉県三芳町)理事長の山田明氏。山田氏の娘である研修医(当時26歳)は、2年目に入ったばかりの2006年4月に過労自殺した。同年7月に労災申請し、2007年2月に労災認定された。「当直は年間77回、1カ月の時間外労働は150~200時間に上っていた」。勤務先の大学病院の就業規則では、平日の勤務時間は午前9時から午後5時で、当直は月4回、日直が月1回だった。
 山田氏は、「職業別に見て、医師だけが特別の体質を持っているというのか」と問いかけ、「年1860時間以内」という特例について、医師だけに認める医学的根拠のほか、長時間研修が良いという根拠もないと問題視した。山田氏が声を上げるようになったのは今年に入ってからのことで、「異常な数値が独り歩きする状況を何とか改善してもらいたい」という思いからだったという。「医師の命を守らずして、医療は守れない。“ドクターファースト”が当たり前だろう」(山田氏)。
 フロアからも、「臨床研修制度では、研修医は早く返さなければいけないはず。研修医はミスをしがち。だから労働時間を短縮し、守られているはずではなかったのか。にもかかわらず、C-1の基準があるのは違和感を覚える」、「他の業界では、新入社員は3カ月、6カ月などの期間、研修するが、研修医については、ほぼいきなり現場に出るのは乱暴すぎるのではないか」、「自分の心身にある程度、余裕がある状態でないと、学ぶことができない。新人ほど余裕が欲しいはず。どんな環境で研修すれば、最も効率がいいのかについてのエビデンスを出すべき」といった意見が上がった。
(略)
 ディスカッションでは、司会を務めた全国医師ユニオン事務局長の土谷良樹氏が、「なぜ医師だけが長時間労働をすることがよしとされているのか」と問いかけた。
(略)
 山田氏は、「最終的には研修医が全てをやって当たり前という、封建的な物の考え方がいまだに残っている」と述べ、スポーツ選手では練習量と成績が比例するとは限らず、医師も同様だとした。医師増員、医師の偏在解消、患者教育など問題解決にはさまざまな取り組みが必要だと指摘した。
 中原氏も、「国民の理解が得られていないのが、一番大きな問題ではないか」と述べたほか、「医師の敵は、医師」とも提起。2007年の東京地裁判決で利郎氏の死が労災認定された際、ある高名な小児科医がそれを問題視したことが耳に入ってきたという。「裁判の過程でも、中原(利郎氏)の勤務は過剰だったとは言えないと言った人がいる」。

研修医は勉強が必要だから長時間労働をして当たり前だと言うのであれば、長時間労働をすることで研修の効率が高まると言うエビデンスを示せとは、過労時にどれだけまともに頭が働くものかと考えると理解しやすいですね。
先日は厚労省から過労死基準の見直しについて来年検討会を開くことが発表されましたが、現在の残業月100時間と言う基準をより厳しい水準に改める方向で見直すことになるのではと予想されています。
そんな中で医師だけ年1860時間の時間外労働を許容すると言う報道に疑問を感じる医師も多かったと思いますが、一応は期間限定での暫定的措置であり、かつ医師の労働時間管理の厳格化が前提と言いますね。

要するに現状ではそれ以上に働かされている医師も多いのだから、現時点ではまずは最低限ここまでが上限と言う数字を示したと言うことですが、気になるのは自ら労働管理を行えない研修医の扱いです。
仕事中毒の偉い先生方が好きで過労死水準の労働をしていると言うならともかく、上から命じられた労働を拒否できないヒエラルキー最下層の研修医に、強制的に過剰労働を押しつけると言うのは如何なものかです。
過労死裁判のたびに「俺たちの若い頃は」式の意見が出ることを見ても、働かされる側視点では「医師の敵は、医師」とはその通りだと思うのですが、働かせる側にはまた別な論理があるようです。

働き方改革の評価、構成員が病院名公表に難色「ブラックと言われ大学病院離れ」「患者が敬遠」(2019年11月7日医療維新)

 厚生労働省は11月6日、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(座長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)に、医師の時間外労働上限の特例医療機関を指定する際に前提となる「医師の働き方改革」を評価する機能についての案を提示した。労務管理体制や医師の労働の実態などを書面、訪問により調査するものだが、その評価結果を公表することについて、構成員から「ブラックと言われ大学病院離れ」「患者が敬遠」などと難色を示し、慎重な対応を求める声が相次いだ。この日の案は評価体制や指定の枠組みについて大まかなイメージにとどまっており、厚労省は今後詳細を示す(資料は、厚労省のホームページ)。
(略)
 北里大学医学部教授の堤明純氏は、厚労省案の評価結果を公表することにより「医療のかかり方を見直すきっかけとなることが期待される」との記述について、具体的にどのようなことを想定しているかを質問し、厚労省医政局医事課は「年960時間以上(時間外に)働いている医師がここにはどれくらいいるということが地域の患者に分かり、受診の仕方などの啓発にも寄与するのではないかと考えている」と回答。堤氏は「ポジティブに伝えられて学んでもらえるのはいいが、患者が病院を敬遠してしまう情報に取られると、医療機関には困る。出し方、うまい評価のされ方が大切だ」と述べた。

 日本医師会常任理事の城守国斗氏も、「公表によって医師が『あそこは長時間労働させられる』となって(敬遠し)、時短ができにくくなる」と同調。日本医学会副会長で九州大学大学院消化器・総合外科教授の森正樹氏は、「(地域医療構想の)424病院のリストでも、地域の人たちも背景が分からずに見ることになって『病院がなくなってしまうのではないか』などとなった。長時間になっているところには行きたくないという患者の心理で、病院格差を助長する可能性もある」と続き、日医副会長の今村聡氏も「公表の仕方など、全てこれからの日本の医療提供体制に大きく影響する。慎重の上にも慎重を」と注文を付けた。

 国立大学附属病院長会議常置委員長で千葉大学医学部附属病院病院長の山本修一氏は、「大学病院は軒並み『あの病院はブラックだ』と名前を挙げられて、大学病院離れを助長する。もちろん努力はするが、公表の時期の問題もある」と指摘。最初に評価結果が出た時点では医療機関と都道府県にのみ通知し、改善後に公表することを提案した。

各施設の労働の実態はよく判らないのですが、基本的に仕事が多すぎるから長時間労働を強いられていると考えるのが自然で、現場の医師からすれば公表で患者に敬遠されて仕事が減るのであれば歓迎でしょう。
しかしそれでは病院側としては困る、もっと医師には馬車馬のように働いてもらわなければ儲けにならないと言うのであれば、これはまさにブラック企業と同様の論理であって、患者にも医師にも敬遠されて当然です。
このあたりは働き方改革の議論でありながら、大病院の幹部ばかりが医師代表のような顔で参加している点にも問題がありますが、まさに患者はそんな病院にかかりたがらないと当事者も認識しているわけです。
過労が仕事の質を低下させ最悪事故を誘発することにはすでにエビデンスがあるのですから、それでも過酷な労働を課してまで患者を集めたいと言うのであれば、患者や医師が納得出来る理屈づけが必要でしょう。

 

|

« 今日のぐり:「はやたろう 倉敷店」 | トップページ | 疑似医療行為の宣伝戦略に突っ込み、荷担した方々も炎上騒動に »

心と体」カテゴリの記事

コメント

過去に奴隷労働を行っていて、現在は病院の幹部となっている医師に、研修医を守れと説いても、無駄でしょう。
それより、働き方改革を行っていない病院の診療報酬を減額した方がよい。
経営者に、医師を無理に働かせるよりは労働時間を守った方が経営には良い、と誘導するべき。

投稿: OldDr | 2019年11月12日 (火) 14時39分

診療報酬上の格差で働き方改革を誘導することももちろんですが、ルールを守らない施設に関しては支払い減額などきちんとペナルティを与えることも必要と考えます。

投稿: 管理人nobu | 2019年11月12日 (火) 15時57分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 今日のぐり:「はやたろう 倉敷店」 | トップページ | 疑似医療行為の宣伝戦略に突っ込み、荷担した方々も炎上騒動に »