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2019年11月20日 (水)

医師不足が叫ばれる中で医学部定員が削減に転じた理由

先日取り上げました来年度の診療報酬改定の話題に関して、今回も薬価に関して厳しい改定が予想されそうだと紹介しましたが、厚労省の調査では薬局は未だ黒字であることが報じられています。
薬価改定で経営的にどのような影響があるかは単純には言えない話ですが、今後薬局に関しても厳しい目線が注がれる可能性が高く、場合によっては新規解説規制などもないとは言えない状況だと言いますね。
以前から日本医師会などは薬局が儲けすぎだと目の敵にしていて、医薬分業自体の意義を問い直す声も根強くありますが、薬局の場合保険外の商品取り扱いで儲けは出しやすく、経営上有利とは言えるでしょう。

ところで薬剤師の供給元となっている薬学部の定員は年々増加を続けていますが、長期的に見ればいずれ減少に転じるはずだと言う予測があります。
薬学部6年制への変更やドラッグストアへの薬剤師配置などで当面売り手市場となっていたとは言え、今後法科大学院や歯学部と同様に過剰となるだろうと言うことですね。
現時点ではもっとも不足感が強い医療職は医師と看護師だと思いますが、その医師にしてもそろそろ過剰の懸念がささやかれる中、先日はこんな記事が出ていました。


2020年度の医学部地域枠、12大学で計77人減(2019年11月18日医療維新)

 文部科学省は11月13日、2020年度医学部入学定員を大学設置・学校法人審議会に諮問、臨時増員計画による地域枠の定員が2019年度と比べて12大学で計77人減少することが明らかになった。過去の充足率が低い大学で定員削減が目立ち、旭川医科大学と山形大学は、同計画による地域枠を廃止。一般やAO入試によって地元に定着する卒業生の確保を目指す。一方で、3大学で計13人増加し、臨時増員による地域枠は計65大学で計863人(2019年度比64人減)だった。

 医学部の定員は臨時増員計画が始まった2008年度以降、増加傾向が続き、直近3年間は2017年度が9420人、2018年度9419人、2019年度9420人とほぼ横ばいだった。地域枠の減少もあり、2020年度は90人という大幅減の9330人となった。今月内にも答申を受けて、正式に認可される見通しだ(資料は、文科省のホームページ)。
(略)
 勤務地が制限されることもあり、地域枠で入学しても、奨学金を返却するなどして義務年限を果たさない学生が少なからずいる。厚生労働省の調べでは、2018年の地域枠の定員充足率が81.6%にとどまっていた(『2018年度の地域枠充足率81.6%、24府県が「8割未満」』を参照)。
 厚労省は、地域枠だけの試験を実施する「別枠方式」と比べて、一般と同じ枠で試験を行ってから入学前後に希望者を募る「手挙げ方式」では、卒業後に指定された地域や診療科で勤務しない割合が高いために問題視。「別枠方式」に統一するよう改善を求めていた。
(略)
 医学部の定員は2008年度以降、地域枠や研究医枠の創設、歯学部からの振り替え、東北医科薬科大学医学部(定員100人)と国際医療福祉大学医学部(定員140人)の開設によって、大幅に増加。2017年度から2018年度に1人減ったのを除いて、毎年増え続けていたが、2020年度は大幅に減少に転じた
 医学部入学定員は、2020 年度と2021 年度については、厚労省の医師需給分科会の2018年5月の第3次中間取りまとめで、「2019 年度の医学部定員を超えない範囲で、その必要性を慎重に精査していくこととする」となっていた(『医師需給の「第3次中間取りまとめ」、了承』を参照)。

この地域枠問題、本来的には基本的人権を無視した御礼奉公を強要されるからこそ不人気であると捉えるべきと言え、一般枠が高倍率であるにも関わらず地域枠は定員が埋まらない大学も多いそうです。
その意味では医師過剰とは本来別の問題であるはずなのですが、注目すべきは地域枠定員を削った分をまるまる医学部定員削減としていることで、結果的に医学部定員の大幅減となっている点ですね。
医師不足が今後も長く続くと言うことであれば、一般枠に振り分けるなどしてでも定員総枠を維持すべきところでしょうが、文科省としては現時点で医学部の定員削減にゴーサインを出したと言う形です。
医療行政は基本的には厚労省の管轄であり、医師の需給予測に関して厚労省と文科省でとらえ方が違うと言う可能性もありますが、この種の問題では両者がある程度協議した上で決めていると思われます。

要は厚労省としても少なくとも定員削減に反対ではないと思われるのですが、地域枠の減少は医師の勤務地について強制力を発揮出来る手駒の減少に直結する問題で、本来あまり歓迎できないはずです。
他方で2018年より新専門医制度がようやく実施の運びとなりましたが、実質的な勤務先の制限など医師配置についてより強力な規制手段としても活用出来るものであり、地域枠よりよほど有用とも言えますね。
必要な場所に適切に配置されるなら同じ医師総数であっても効率的な医師の活用が可能になるはずで、仮に全医師が最善の効率で活用されるなら医師数をこれ以上増やさずともすむ可能性もあります。
不人気の地域枠を強いて維持する必要性に乏しい体制が整った以上、奨学金など余計なコストもかかり不確実な地域枠が次第に減少、廃止されていくことは既定の路線なのかも知れないですね。

 

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コメント

>地域枠で入学しても、奨学金を返却するなどして義務年限を果たさない学生が少なからずいる。

自治医大だと奨学金を返却すれば後腐れ無く(は言い過ぎかもしれませんが)義務から解放されますけれども、
なんで地域枠の場合こんな言われ方をしなければいけないのか理解に苦しみます。
誰か裁判起こして白黒つけて欲しいなあ・・・

投稿: クマ | 2019年11月21日 (木) 21時59分

罰金を払うからいいだろと規則を破る人がいる、みたいなもんじゃないですか

投稿: | 2019年11月22日 (金) 08時59分

契約書にどのような記載がされているのかにもよると思いますが、一般論としてお金で他人の人生を縛るならお金を返せば自由も返すのが妥当ではないかとは思います。

投稿: 管理人nobu | 2019年11月23日 (土) 19時29分

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