« なにが上手な医療のかかり方かは、立場によっても正解が異なる | トップページ | 今日のぐり:「洋食ルセット」 »

2019年11月26日 (火)

改革の抵抗勢力、断固たる態度で改革に反対

社会保障制度改革は喫緊の課題が山積していますが、年金や雇用に優先してまずは真っ先に医療制度改革を前倒しで推進すべきだと、国が方針を固めたと先日報じられていました。
その原動力となるのが団塊世代が後期高齢者に突入する令和4年以降の医療費膨張の予測で、とりわけ高齢者と現役世代における負担と給付の見直しがキーワードになると考えられています。
この点に関連して受益者負担の推進と言う点からも、安易な過剰受診の抑制の観点からも導入が期待されているのが受診時定額負担ですが、日医はかねてこんな主張を繰り返していることが知られています。

日医横倉会長「定額負担、容認できない」と直訴(2019年11月26日医療維新)

 政府は11月25日、第2回全世代型社会保障検討会議(11月8日に開催)の議事録を公表した。第2回会議には、日本医師会会長の横倉義武氏、日本歯科医師会会長の堀憲郎氏、日本薬剤師会会長の山本信夫氏が出席し、意見を述べた。横倉会長は安倍首相ら構成員に対して、「財政論に偏って議論を進め、結論を急ぐべきではない」と訴え、受診時定額負担の導入などに反対する姿勢を示した。一方、民間の構成員からは、「後期高齢者が大幅に増える時期が迫る今こそ、給付と負担の見直しが必要だ」などの声が上がった(資料は、首相官邸のホームページ)。

 横倉会長は、会議内で必要性が検討されている受診時定額負担を巡って「将来にわたり 患者の療養給付を最大でも3割までしか負担を求めないとしてきた、これまでの原則を破って患者に負担を求めていくものであり、容認できない。社会保障としての国民皆保険の理念に反する」と批判。予防医療に力を入れ、健康寿命を延ばせば、結果として社会保障の支え手が増えるとして「従来の医療は、診断・治療に重点を置いてきたが、病を防ぐということも医療の大きな役割で、しっかり取り組んでいきたい」と述べた。
(略)
 横倉会長らの意見に対し、構成員からは厳しい声が上がった。
 日本総合研究所理事長の翁百合氏は「多くの国民は今後も医療の恩恵を受けられることを望んでいるが、医療制度の財源面が、持続可能なのか不安を持っている」と強調。横倉会長が受診時定額負担にしか明確に触れていなかったことから、「低所得者に十分配慮すれば、後期高齢者の窓口負担引き上げはやむを得ないと考えているのか」と質問した。
 日立製作所会長の中西宏明氏は「やはり今、高齢者の方が優遇されていて、若い人に閉塞感があるという現実を踏まえて、負担能力のある高齢者に負担をお願いしていくという方向性については、はっきり今出すべき時期ではないか」と迫った。

 横倉会長は「当然現役世代に負担がかかっていることも、十分に理解し、低所得者に十分配慮しながら、国民が納得できるよう十分な議論を尽くしていくべきだろうと考えている。国民が納得するような形で、負担ができる方には負担を上げていくことには私も賛成をしている」、「負担ができる方を上げることには強い反対は申し上げていない」と応じた。

 東京大学公共政策大学院客員教授の増田寛也氏は、日医が自己負担の増加による受診抑制が健康への悪影響を及ぼすと主張していることを挙げ、「(受診時定額負担を)仮に100円とすると、診療報酬30点強に相当する。このレベルの点数の新設、かさ上げというのは、診療報酬改定で行われており、診療報酬のプラス改定では当てはまらないけれども、受診時定額負担ではこういう悲劇が起こるというのはちょっと無理がある」と指摘した。

受診時定額負担に関してはかねて受診機会の多い高齢者をターゲットにした制度だと言う批判があり、日医もかねて後期高齢者の負担増と言う観点からこの制度導入に反対しています。
ただ今回興味深く感じたのが本音では後期高齢者の受診抑制は困ると言うことであるのに、患者自己負担は最大で医療費の3割までとの既定の原則に反していると主張している点でしょうか。
そもそも後期高齢者は自己負担率の点でも未だに1割負担が続くなど優遇されているのですから、定額負担が加わっても3割になどなるはずがないと思いますが、日医としても反論に苦労していると言うことでしょうか。

ちなみに日医自身も認めているように、自己負担増加による自主的な受診制限ではなく、自由な受診を制限し予約制にするなど医療側による受診制限によって医療費を管理する国もあります。
イギリスなどがその代表格で、日本でも昨今基幹病院などは実質的な受診制限を敷いている例がありますが、応招義務と言う法的制約に加えて、日医ら医療系団体が受診の自由を断固主張しています。
要するに患者が医療をどの程度利用するかは完全な患者側の自主的判断に委ねられているのが日本の現状であり、まずはこれを制限するべきかどうかが議論の出発点にならなければなりませんね。

今後医療の提供体制に関しては自治体が主体となる地域医療構想に従って構築されることになりますが、施設間の機能分化が推進されれば、急性期を担当する医療機関は額面上減ることになると思われます。
他方で患者側からすれば調子が悪い時には救急を扱うような急性期施設に真っ先に受診したいはずで、こうした施設は今まで以上に多忙になる恐れが強そうですから、現実的にも無制限な受診は困るでしょう。
医療のコスト、クオリティー、アクセスのうち国民が最も受け入れやすいのはアクセス制限だと思われるのですが、それに反対するなら日医はどこを制限することで医療の永続性を図ろうとしているのか知りたいですね。

 

|

« なにが上手な医療のかかり方かは、立場によっても正解が異なる | トップページ | 今日のぐり:「洋食ルセット」 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

定額負担というシステムそのものは理解するのですが、窓口で徴収する金額の計算がさらに面倒くさくなりそうなのが・・・

投稿: クマ | 2019年11月29日 (金) 08時47分

定額負担には断固反対と言う一部団体の主張が今回通りそうなのですが、これだけ反対されるとその意義と意味を改めて考えたくなりますね。

投稿: 管理人nobu | 2019年12月 1日 (日) 12時16分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« なにが上手な医療のかかり方かは、立場によっても正解が異なる | トップページ | 今日のぐり:「洋食ルセット」 »