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2019年10月 2日 (水)

来年度診療報酬改定、全体としてはマイナス改定継続の方針

マスコミ的表現をするならば医師の給与などにあてられる診療報酬について、来年度も引き続き全体としてマイナス改定とする方針が先日報じられていました。
安倍政権では医療費の対GDP比上昇を抑える方針と言うことで、このところ医療費総額の中でも薬剤関連の報酬が重点的に抑制されてきた経緯がありますが、それも限界が近づいていると言います。
来年度改定ではひとまず本体部分はプラス改定の方針とのことですが、今後は再び本体部分も切り下げが行われる可能性があり、医療機関としても経営環境の見直しが迫られると予想されるところですね。
そんな中で先日内閣府から今後の医療費に関する見解が示されましたが、今後どこを重点的に抑制していくかと言う点に関して政府の考え方が判るのではないかと思います。

「安倍政権下、対GDP比で医療給付費を抑制」内閣府(2019年10月1日医療維新)

 内閣府は9月30日の経済財政諮問会議に対し、「社会保障分野における安倍政権下での主な成果」を提出し、医療給付額や保険料負担については「過去最大規模のGDPを実現するとともに、歳出効率化への取り組みを通じて、給付費対GDP比の上昇を抑制した」との見解を示した。
 対GDP比で、医療の給付額は2000年度の4.6%から2012年度は6.3%に増加。第2次安倍内閣は2012年12月に発足、その後は0.1ポイントの伸びにとどまり2017年度は6.4%。保険料も2000年度3.2%から2012年度4.2%に増加したものの、2017年度は0.1ポイント増の4.3%。協会けんぽや組合健保の収支も改善したとしている(資料は、内閣府のホームページ)。
(略)
 西村康稔内閣府特命担当大臣は、会議後の記者会見で、経済財政諮問会議と全世代型社会保障検討会議の役割分担について、次のように説明している。「全世代型社会保障検討会議は、社会保障に関係する政府内の会議の代表者の方々で構成している。骨太方針で大きな方向性が既に示されているが、その中でもより骨太の大きな方向性について基本的な考え方と具体的な方針を取りまとめていくことを考えている。一方で、経済財政諮問会議では、社会保障改革の議論をこれまでも行ってきたが、所得・雇用、投資、人材確保などさまざまな視点を踏まえながら、その経済再生への効果、国民生活の質の向上、財政面の効率性といった観点から既に検討している。今後検討を深めて、2025年度の財政健全化目標の実現に着実につなげていく。経済財政諮問会議の代表も入って全世代型社会保障検討会議も議論しているので、連携しながら議論を進め、深めていきたいと考えている」。

社会保障改革の今後の重点課題(民間議員提出資料)

(1)予防・健康づくりやイノベーションの推進などを通じた経済再生・QOL の向上
・ 健康寿命延伸プランの推進(健康寿命に関する客観的な指標の設定等、40~50歳代の特定健診・がん検診受診率の向上、生活習慣病等の予防への重点的取り組み)
・生涯にわたる健診・検診情報の活用をはじめ医療・介護分野の情報活用に向けた課題の洗い出し等を行い、データヘルス改革の推進とデータ分析や予防に関するサービスの産業化の推進
・高い創薬力を持つ医薬品産業への転換の観点も踏まえた薬価制度の抜本改革、調剤報酬の適正な評価等の改革の推進

(2)健康で安心して働ける環境整備
・社会保障の支え手の拡大と合わせた短時間労働者の就業調整の解消に向けた取り組み強化
・健康寿命を延伸しつつ、年齢にかかわらず働くことを選べる仕組みの構築(高齢者の勤労判断に中立的で公平な制度の整備、いわゆる「生産年齢人口」の捉え方等)

(3)AI 等の利活用やインセンティブの活用等を通じた人材不足や効率化等への対応
地域医療構想の実現に向けた病床のダウンサイジング支援の追加的方策、病床機能の転換を促す診療報酬の大胆な見直し
・介護現場の生産性向上に資する ICT、ロボット、AI 等の利活用拡大とアウトカムに基づく支払いの推進や行政手続き処理の効率化(デジタル化)、付加的な民間サービスを拡大する介護制度改革
・公的サービス分野に多様な民間主体が参入することで創意工夫を働かせられる仕組みづくりや官民連携の推進

(4)データ・エビデンスをベースとした歳出の効率化とバランスのとれた負担の仕組み
・国保の法定外繰入等の早期解消、国保の都道府県内保険料水準の統一など受益と負担の見える化に取り組む都道府県の先進・優良事例の全国展開
・ 保険者のインセンティブ強化(保険者努力支援制度等の強化、国保の普通調整交付金の見直し、介護の調整交付金の活用等)
高額医薬品・医療機器の費用対効果や社会保険財政への影響等について、エビデンスベースでの評価の徹底活用

予防医学重視の考え方と医療費を支える現役世代の拡大は近年のトレンドですが、注目される課題としては地域医療考想に基づく病床管理と、高額医薬品・医療機器関連の評価になるかと思います。
このうち前者に関してはつい先日も全国公的病院の再編統合について、国が病院の実名を公表して推進を促したと言う件が注目を集めていますが、現時点では実名リストはあくまで議論のたたき台だと言います。
無論地域の実情に応じて実際の再編統合の判断は今後自治体に委ねられるとは言え、稼働率の低い病床の削減や老朽化した施設の統合など、今後自治体への地域医療再編の圧力は高まりそうですね。

地域ごとに求められる医療のあり方も異なるのは当然で、長期的には自治体間での医療提供の差別化が進むと思いますが、その指標としてやはり消費される医療費の多寡で論じられることになるとは思います。
地域の病床が多かろうが閑古鳥が鳴く病院があろうが、使われる医療費が結果的に少ないのであれば国としては困らないはずで、各地域に適した医療のあり方を自治体がきちんとデザイン出来るかが鍵でしょう。
ただ患者側が望ましい医療を求めて越境医療を希望したり、医師らが医療のあり方を見ながら働き先を決めると言うこともあり得るとすれば、大胆すぎる地域独自の医療スタイルは諸刃の剣となるかも知れませんね。

後者の高額医薬品・医療機器に関しては、基本的に医療が進むほど費用がかさむのは当然であり、特にガイドラインにも収められるような治療法であれば現場としても使わないわけにはいきません。
ただ超高齢者に超高額な医療をするかなどは議論のあるところで、ガイドライン等で年齢も考慮した記載をするか、後期高齢者など年齢により保険給付の範囲を変えると言った制度的対応が望ましいでしょう。
将来的には遺伝子検査の結果などに基づいたオーダーメイド医療が中心になれば、高額な薬を効かない患者に無駄遣いすることは減るはずで、こうした面での技術的進歩が期待されるところですよね。
いずれにせよ財政的に見ると医療は今後大幅な成長は難しく、未だ増え続ける医師はワークシェアリングを進め収入低下を受け入れるか、保険外の診療を手がけ収入を確保すると言った工夫が必要でしょう。

 

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コメント

>未だ増え続ける医師はワークシェアリングを進め収入低下を受け入れるか、保険外の診療を手がけ収入を確保すると言った工夫が必要でしょう。

医者は、文書で雇用契約書を交わすレベルから始めないと。
契約の概念もなく、保険外に手を出したら、コンサルや業者のカモになるでしょう。

個人的な話では、現時点では週5仕事で埋まっていますが、しばしば週4になって、しばらく週休3日になってしまう期間が出始めました。それでも時給低下は受け入れるつもりはありません。総収入低下はしゃーないですな。実際、もう医者過剰だし。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年10月 4日 (金) 11時11分

非常勤医の方が常勤よりも契約内容について考える機会が多いぶん、意識改革が進んでいるようには感じます。

投稿: 管理人nobu | 2019年10月 9日 (水) 21時18分

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