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2019年10月23日 (水)

完全無給に限らず適正な報酬が支払われない場合も無給医問題に含まれるそうです

いわゆる無給医問題について、先日こんなシンポがあったそうです。

無給医問題、「医師のやりがい搾取」「裸の王様」有志の医師らシンポ、実効性ある解決策は労基署や裁判への訴え(2019年10月20日医療維新)

 有志の医師らで組織するドクターズ・デモンストレーション実行委員会は10月19日、都内で「無給医問題シンポジウム」を開催した。登壇した医師、弁護士らは、無給医が生じる背景には、博士号等取得のために大学が行う「資格ビジネス」、研鑽を積みたいと考える若手医師の意欲、思いを利用した「やりがい搾取」などの問題があると指摘。「やりがい搾取」を続ければ、優秀な人材が海外に流出してしまい、日本の医学・医療は沈没しかねないとの危機感が呈せられた。
(略)
 無給医問題を博士号等取得のための大学が行う「資格ビジネス」と称したのは、全国医師ユニオン代表の植山直人氏。「資格が欲しければお金か、無償の労務提供を求めている」と問題視。9月から実施している「無給医実態調査」の締め切りを11月末まで延長、その結果を踏まえ、厚生労働省と文部科学省に無給医問題是正を求める要請を行っていく方針を説明した。
 無給医問題については、文部科学省が全国の大学への調査を実施、6月にその結果を公表した(『大学病院の「無給医」、少なくとも2191人、文科省調査』を参照)。「無給だが、精査中」との回答があるなど、同調査は不十分であるとし、植山氏は、「労基署が入らないと、本当のことは分からない」と述べ、多くの事例を基に両省に要請し、無給医問題の解決につなげていきたいとし、「無給医実態調査」への協力を呼びかけた(詳細は、全国医師ユニオンのホームページを参照)。
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 過労死の背景に無給医問題があると提起したのは、松丸氏。「長時間連続勤務の背後には、無給医問題があることが分かった。無給医であれば、病院としても何時間働かせても同じ」と述べ、大学院生にとっては、生活を成り立たせるためには関連病院等にアルバイトに行かざるを得ない現状があるとした。同時に、医師が抱く「やりがい」が、長時間労働や無給医につながっていることも指摘。「この意識が変わらないと、医療界は変わっていかないのではないか」。
 文科省の無給医調査については、「アンケートでは、教授などのバイアスがかかる可能性がある。サンプル調査でいいので、大学院生に直接調べたり、労基署による立入調査を含めた実効性のある調査を行うことが必要」と指摘した。
 さらに裁判では賃金の不払い等が認められても、「最低賃金」の水準にとどまることを問題視。「最低賃金だけ払っていれば、という判決なので、これを破っていかなければいけない。『同一労働同一賃金』を実現して、無給医の労働者性を回復するのが一番の課題」と松丸氏は述べた。
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 各演者の後の講演では、無給医問題が生じる原因と実効性のある解決策をめぐり議論した。
 松丸氏は、「その業界の中にいると、非常識さが分からなくなっている」と述べた上で、「動かないように見えても、法的な道はできている。少し押せば動く可能性がある」と指摘した。労基法違反は刑事罰であり、労基署を動かすためには、「いつ誰が、どんな勤務をしているのか」などの実態を具体的に示す必要があると説明。同時に松丸氏は、無給医自身が声を上げる難しさもあるとした。
 植山氏も、「誰も発言できない。大学の中で、言論の自由をどう作っていくのか」と提起し、「忖度」する風土があることを示唆した。「無給医や過重労働が続いている先進国はない」とも述べ、ILO(国際労働機関)に訴えたり、世論を動かす取り組みが求められるとした。
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 市橋氏は、「外からの風をもっと入れなければいけない」と述べ、医師が真っ当な生活ができるようにしないと、ひいては医療の質低下などの悪影響が生じかねないことを世間に訴えていくことが必要だとした。松丸氏と同様に、「法違反を是正するために、労基署に訴えるか、裁判所を利用し、賃金請求や損害賠償請求を行うことが端的な解決方法」と述べ、「無給医なくして医療が成り立たない」という制度的な矛盾が浮かび上がっていけば、医療制度全体の問題として解決していくことにつながるとした。
(略)

ちょうど先日の社保審医療部会において、2020年度診療報酬改定にあたっては医師等の働き方改革が重点課題とする案が提示されたそうで、医師の労働環境に関しては国策としても是正が急がれる状況です。
その中でも最近注目を集める機会も増えた無給医問題は最右翼のブラックなテーマだとも言えますが、そもそも論として一般的に社会的地位も職場における権力も強いと見なされる医師が、何故タダ働きするのかです。
その理由として今回の記事にもあるように、何らかの資格を得るだとか特殊な技術や知識を学ぶにあたって、そうした学習機会自体を対価として無給で労働させると言うことが当たり前に行われてきた経緯があります。
当然こうした行為は大学病院のような高度医療機関に多い理屈で、学閥的な支配的関係と絡めて語られることが多いですが、本質的には別個の問題とは言え強い支配-被支配関係があってこそとは言えますね。

この種のタダ働きに関しては別に医療機関独自のものではなく、職人など古来の伝統的職業においては多く見られるでしょうし、現代の一般企業においても研修期間と称して安価に雇用する仕組みはあるでしょう。
一般に修行期間において稼ぎが少ないのは当然で、音楽や芸能関係などにおいても売れない時期には本業以外で食い扶持を稼ぐのは当たり前であると言う考えも、現代社会においても公言する人もいるようです。
http://gurikenblog.cocolog-nifty.com/blog/2019/07/post-c5100f.html
医師の場合こうしたタダ働き生活に従事する前後で、あるいはタダ働き期間中も休日の当直アルバイトなどで食っていける程度には稼げるからこそ成立するシステムとも言われますが、今後それがいつまで続くのかです。
働き方改革によりアルバイト等も含めて全ての労働時間を管理した上で、総労働時間に今まで以上の制約を課されるとすれば、休日を削ってアルバイトをして稼ぐと言う生活スタイル自体が成立しなくなるはずです。

この点で大学当局などにすれば、タダ働きは労働ではないのだから労働時間に含まれるはずがないと考えているのかも知れませんが、過去の判例から給与の有無に関わらずタダ働きも労働であると解釈されるでしょう。
そもそも電子カルテなどで誰が何をやったか管理されている時代に、労働者でもない人間が指示を出したり処置をしたりしている方がよほど問題で、患者側から突っ込まれでもすれば弁明の余地はない話ですよね。
当然今後働き方改革を巡る議論でこの辺りの是正が雇用主側に迫られていくことになりますが、それ以前に被雇用者が声を上げていけばこそより早く確実な是正が図られるはずで、内部告発等も有効でしょう。
昨今では医療業界のこうした問題に労基署もかなり真面目に取り組むようになったと評判で、かつてのように医者と知られた瞬間電話を切られることもないそうですから、困っているなら声を上げていくべきでしょうね。

ところで本質的にはこのタダ働き問題とはやり甲斐搾取の問題であるとは昨今しばしば指摘される点で、実際に資格に対する対価としてタダ働きを強要している以外にそうした側面も少なからずあると思います。
近ごろでは世間一般でやり甲斐搾取問題への目線は極めて厳しいのですが、これに対して特に病院側などを中心に「そうでもしなければ医療が存続出来ない」式の反論が出てくることも少なくありません。
タダ働きによって労働者を搾取し、時に過労死にまで追い込んでまで存続させなければならないものがあるとすれば、その受益者にこそ特にこうした問題があるのだと言うことを理解してもらわなければならないはずです。
不要不急の救急受診など不必要な医療リソースの浪費に対する患者側の自省も必要なのですが、そうして需要を喚起することを要求される新郎報酬上の問題でもあって、制度面での抜本的改革が求められますね。

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コメント

おっしゃってる事は至極真っ当なんですが、なんだろうこの国連の機関に制服の強要は人権侵害だと訴えた高校生感…

投稿: 10年前にドロッポしました | 2019年10月23日 (水) 16時19分

だってパ○クの人○屋

投稿: | 2019年10月25日 (金) 20時26分

おそらくですが自ら労基署に告発なり出来るようなメンタリティーの方は、そもそも過労死するような奴隷労働に甘んじないのではないかと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2019年10月26日 (土) 22時25分

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