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2019年10月 7日 (月)

病院は医師を計画的に働かせることが求められる時代に

医師の働き方改革に関連して、雇用者である病院側にどうやって医師の労働時間を守らせるかと言う点が重要ですが、違反をする施設は特例認定しないと言うことが当面の歯止めになりそうです。

悪質な労基法違反病院は960時間以上認めず 特例指定は3年ごと更新、厚労省案(2019年10月3日医療維新)

 厚生労働省は10月2日の「第3回医師の働き方改革の推進に関する検討会」(座長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所長)に、医師の時間外労働時間上限の特例水準を指定する枠組みの案を提示した。医師労働時間短縮計画を都道府県に提出することや、適正な労務管理を前提として臨床研修プログラムを組んでいることなどを盛り込み、指定期間は3年間(一部は3年以下)で、更新可能。過去1年間に、労働時間に関して悪質な労働基準法違反で書類送検、公表された病院は指定を認めないことも盛り込んだ(資料は、厚労省のホームページ)。

 2024年4月から2036年3月までの時限措置を予定しているB水準(地域医療確保暫定特例水準)は、各医療機関が都道府県に申請し、都道府県が指定するもので、3次救急医療機関や、年間救急車受け入れ台数1000台以上の2次救急医療機関、高度ながん治療、移植医療といった特に専門的な医療を行う医療機関などが該当。A水準の年間960時間に対し、年間1860時間まで時間外労働が認められる。特例の指定期間は3年間。
 地域の医療提供体制全体の確保のために医師の長時間労働を是認してB水準とせざるを得ないか否かについて、都道府県は都道府県医療審議会の意見を聴く。その際に地域医療構想推進との整合性も担保するため、地域医療構想調整会議から協議の状況を都道府県医療審議会に報告させる。指定の前提となる「医師労働時間短縮計画」については、医療機関から年1回都道府県に提出させる。

 C水準(集中的技能向上水準)のうち初期臨床研修医、専攻医を対象としたC-1水準と、「高度な技能を有する医師を育成することが公益上必要とされる分野」に従事する医師と対象としたC-2水準も上限は年間1860時間。
 C-1水準のうち臨床研修プログラムでは、「適正な労務管理」と「研修の効率化」を前提として各研修プログラムにおける時間外労働の想定時間数を明示し、第三者組織に当たる?「評価機能」がそれを評価、地域医療対策協議会などの意見を聴いた上で都道府県知事が確認し、指定する。臨床研修に関する厚生労働省令に基づいて毎年4月に都道府県に対して行う年次報告などで、時間外労働時間が申請を上回っていたり、労働時間短縮の取り組みが不十分と判断されたりした場合は、都道府県が調査を行う
 専門研修では、各学会、日本専門医機構が認定した専門研修プログラムとカリキュラムを都道府県知事が確認してC-1水準の指定を行う。毎年の専攻医募集に際しては時間外労働の前年度実績と想定時間を明記し、大きな乖離や悪質な労基法違反があれば改善を求める

 C-2水準では厚生労働大臣が、審査組織での議論を踏まえて「高度な技能を有する医師を育成することが公益上必要とされる分野」を指定。この分野は(1)高度な技能が必要で、(2)当該技能の習得およびその維持には相当程度の時間、関連業務への従事が必要で、(3)関連業務の遂行に当たって、例えば、高度で長時間の手術等途中で交代するのが困難であることや、診療上、連続的に診療を同一医師が続けることが求められる分野――を基本的な考え方とする。
 都道府県は、指定された分野での医師育成が可能な特定機能病院、臨床研究中核病院、専門研修認定医療機関(期間型のみ)などをC-2医療機関として指定。その上で、医師自身が「高度特定技能育成計画」を、医療機関を通じて審査組織に提出し、認められれば当該医師にC-2水準が認められる。ただし、上記の医療機関以外でも教育研修環境の審査に通ればC-2医療機関に指定されることができる。期間は医師自身が3年以下で設定する。

 B、C-1、C-2水準のいずれも、指定された上で時間外労働および休日労働に関する労使協定(36協定)を締結して初めて、A水準を超える時間外勤務や休日勤務ができる。このため、厚労省によると、指定へのプロセスと並行して各医療機関で労使協定締結に向けたプロセスも進める必要がある。各水準に共通する枠組みとしては、この他に「評価機能」による評価の受審、追加的健康確保措置の実施体制の整備、労働関連法令の重大かつ悪質な違反がないことが必要となる。
(略)
 千葉大学医学部附属病院病院長の山本修一氏は、「そもそも研修にかける時間については、短くすればいいというものではない。非常に危険で、臨床研修制度の形骸化につながりかねない」と指摘。横浜市立大学産婦人科・横浜市医療局の鈴木幸雄氏も「『労務管理』と『研修の効率化』と聞くと前向きな研修にならなそうなイメージを抱かれてしまう。C-1水準にアプライする若者に十分な研修機会、診療経験が担保される文言が入ると安心できると思う」と述べた。また、「どうしてもA、B水準(の議論)に多くの時間が割かれてきたが、C-1、C-2水準は日本の未来を担う人材育成で非常に重要だ。もう少し時間を割いていただきたい」と要望した。
 家保氏は、36協定を見ずに「白紙委任のような形で(B水準を)指定するのでは、都道府県としては責任を持ちかねる。あらかじめ申請に当たって36協定でどのような範囲が対象になるかを出してもらわなければならない」と指摘。C-1水準では研修医、専攻医の研修先が複数医療機関、また都道府県をまたぐケースもあることにも留意が必要だと訴えた。
 日本医師会副会長で日本専門医機構副理事長でもある今村聡氏は、C-1水準指定のプロセスで審査に同機構が関わることについて、「時間なのか、従来通りのプログラム審査なのか」と質問し、厚労省が「内容とともに時間も審査していただくイメージだ」と答弁。今村氏は「専攻医募集のプロセスが毎年変わり、作業が遅れる傾向にある。一生懸命取り組んでいるが、さらにプログラムの時間の関係まで機構で判断するとなると、相当な作業量になってくる。いつまでも順調に専門医制度が回らない」と懸念を示した。

医師の働き方改革に関しては病院毎にAからCまでの水準を認定し、A水準であれば960時間、B・C水準では1860時間までの時間外労働を許容すると言うことが骨子となっています。
このうちB水準は特別の事情がある基幹病院が対象ですが、C水準に関しては研修医(C-1)や特殊な領域の専門的診療を行う医師(C-2)などが対象で、当該医師個人に対しての認定です。
当然研修を行う医師などは立場が弱く、仕事を押しつけられても断りにくいはずですが、あらかじめどの程度の時間外労働を要するかをプログラムとして作成し、提出する必要があると言うことです。
要するに行き当たりばったりで雑用を押しつけることなど論外と言うことですが、当然適切な研修が受けられるよう病院側はきちんとしたプログラムを作成する義務があると言うことで、さてどんなことを書いてくるかですね。

B水準に関しては暫定的なもので基本的にはA水準の960時間が上限であり、将来的に1860時間の上限は廃止される予定とのことですが、そのタイムリミットとして2036年と言う数字が設定されているとのことです。
無論その間もそもそもどんな医療機関がB水準に認定されるかが注目ですが、恐らくどの施設を認定するかで地域内での医療供給体制の変化もあるだろうし、その認定も永続的なものではありません。
いずれ特例は廃止されるのですから、タイムリミットのある改革が強いられるはずですが、問題はどこの病院でも経営的に余裕があるわけでもない現状で、医師の労働時間を削減し経営に影響しないのかです。
当然医師からコメディカルへと業務の委譲を推進する必要があるはずで、未だに医師でなくとも出来る業務を何でも医師に押しつけている後進的な施設ほど、こうした面での改革を強いられることになりますね。

これら全ての特例については何らかの審査を経て認定されるもので、違反があれば認定自体が取り消されるわけですから、それ自体が医療機関にとっての罰則になり得ると言う考え方もあるでしょう。
ただ特例のルール破りをするような病院が特例認定を外れたからと言って、労基法上許容される正しい労働を行わせるようになるとも思えずで、下手をすると上限も何も無視の無法状態に戻る可能性もあるでしょう。
当然そうした施設には労基署も特別に注目することになるでしょうが、医業が忙しいからこそ残業も増えるのですから、例えば保険医療機関の指定を取り消せば残業が多すぎて困ることもなくなるかも知れません。
過去に保険医療機関取り消しは診療報酬の不正請求絡みで行われてきたものですが、ルール上は他にも取り消しの理由がないでもないようですので、認可を行う厚労相の判断次第となるのでしょうか。

当然ながら雇用者側の思惑だけでは話が進まず、現場レベルの意識改革がなされなければ絵に描いた餅ですが、その点で管理職医師の役割は今までよりもずっと重いものとなりそうです。
配下の先生方の業務分担の見直しなどもそうですが、手術を月に何件予定するのか、検査予約をどれだけ受け入れるのかと言ったことに関しても、今後気を遣う必要がありそうです。
当然特例認定されるような施設であれば予定外の急患が少なくないはずで、その分も見越して予定件数を少なめに抑えなければなりませんが、その結果手術や検査の待ち時間は延びることでしょう。
手術が半年先と言われれば他施設に行くと言う患者も出るでしょうから、今後地域内でも施設間で適切に業務の分担を進めなければ地域医療が回らない時代が来るのでしょうかね。

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