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2019年10月28日 (月)

医師が死ぬほど働かされていると言う中で医療業界団体は患者を減らすことに反対

ずいぶんと以前から高齢者の医療費自己負担率を引き上げると言うことは決まっていたはずですが、このところいよいよその実施が迫られていると言う声が上がっています。

医療費負担増に理解相次ぐ 社保会議初会合の議事録(2019年10月7日共同通信)

 政府は4日、「全世代型社会保障」の実現に向け関係閣僚と有識者が話し合う検討会議の初会合の議事録を公開した。有識者から、医療費抑制のために「年齢ではなく能力に応じた負担の議論を」などと、給付と負担の見直しに理解を示す意見が相次いだ。高齢化を受けた医療費急増への危機感が背景にあるとみられる。初会合は9月20日に開いた。

 経団連の中西宏明(なかにし・ひろあき)会長は「75歳になられる方の負担を継続、あるいは外来受診時の負担金はやむを得ない。ただ低所得者への影響は十分考慮する必要がある」と発言。経済同友会の桜田謙悟(さくらだ・けんご)代表幹事は「年齢ではなく能力に見合った負担という議論をお願いしたい」と述べ、経済的に余裕のある人への負担増の容認を示唆した。サントリーホールディングスの新浪剛史(にいなみ・たけし)社長も「応能負担の徹底が重要」と語った。

 清家篤(せいけ・あつし)前慶応義塾長は「財源を確保して給付の在り方を見直すという守りの改革と、女性や高齢者の就業を促進して社会保障の支え手を増やす攻めの改革の両輪で進めるべきだ」と主張した。

 検討会議では、75歳以上の人が医療機関の窓口で払う自己負担の現在の原則1割から2割への引き上げや、外来受診した際の窓口負担に一定額を上乗せする「ワンコイン負担」の導入などが焦点。年末に中間報告、来年夏に最終報告をそれぞれ取りまとめる予定だ。医療業界は医療の負担増に対し「受診抑制につながる」と反発している。

識者が理解しても国民が広く理解してくれないことにはなかなか政策には反映されないと思いますが、しかしここで注目したいのは医療費抑制のために自己負担の見直しをしようと言うロジックが語られている点です。
医療費自己負担率が何割になろうが医療費の多寡は本来医療費の総額で語られるべきものですが、保険者としては公的に給付される部分が減らせるわけですから、保険財政上は有り難みのある話です。
また自己負担が増えれば受診抑制が期待されると言うのも暗黙の了解で、要するに医療の需要を削減すると言う方針が確認されたと言うことでもあるのですが、これに対して医療業界が反発していると言うことです。
働き方改革推進が急がれるほど多忙な医療現場の立場を考えると、仕事が根本的に減らせる方策にそうまで反発が出るのかと言う疑問も抱くところですが、反発している医療業界なるものも確かにあるようです。

日医横倉会長、「負担ばかりの議論」とけん制(2019年10月9日医療維新)

 日本医師会会長の横倉義武氏は10月9日、自民党の人生100年時代戦略本部に出席し、「患者負担を増やすことばかりを議論するのではなく、時代に対応できる給付と負担のあり方という視点で議論することが重要だ」と訴え、医療費抑制の動きをけん制した。日本歯科医師会会長の堀憲郎氏、日本薬剤師会会長の山本信夫氏も、それぞれ意見を述べた。自民党は、政府の全世代型社会保障検討会議をにらんで、戦略本部での議論を進めており、日医などの意見も踏まえて、政府へ提言する方針だ。

 横倉氏は、政府の全世代型社会保障検討会議の発足直後から、構成員に医療従事者が入っていないため、医療費抑制に偏った議論となることに強い懸念を示していた(『日医横倉会長、医療費削減・負担増をけん制』 を参照)。政府は、そうした声に配慮し、与党を通して検討会議の構成員以外の声をすくい上げ、議論に反映させる考えを示していた。この日は、その一番手として三師会が自民党に乗り込んだ格好だ。
 会合は非公開で行われた。日医によると、横倉氏は▽予防の推進、▽地域に根ざした医療提供体制の確立、▽全世代型社会保障の実現――の3点を主張。特に、受診時の定額負担を求める声が全世代型社会保障検討会議などで上がっていることについては、「これまでの原則を破って、患者に負担を求めるものであり、容認できるものではない」と釘を刺した
(略)
 横倉氏は会合後、記者団に「(自民党には)我々の懸念をよく理解していただいた。今日は議論のキックオフだから、また何度も意見を述べに来る」と述べた。「社会保障というのはやり方を間違えると、すぐに国民の反発を買う。そうしたら当然、我々の組織の中でもいろいろな声が上がってくる」と、自民党が下野した時代の話が出たことも明かした
(略)
 出席した自民党議員からは、三師会の主張に対して理解を示す声が相次いだ一方、「負担の話は避けて通れない」といった声も上がったという。
(略)

患者負担を増やすことばかりを議論するなと言うのであれば、医療現場の負担を増やすことばかり主張するなと言う声も聞こえてきそうですが、言ってみれば1億の国民のうち医師などたかだか30万に過ぎません。
その30万の医師の中でもかなり偏った立場に立つ方々ばかりが、医療業界の声を代弁していると称して政策立案に関与しようとしているのですから、最後は現場が泣いて辻褄を合わせるしかない話です。
この点で経営者目線で語る日医など業界団体と、現場で実際に働く医師らの立場は全く異なるし、働き方改革推進においてはむしろ対立的関係になる場合の方が増えてきていると言えるかも知れません。
日医など業界団体の中で勤務医が軽んじられているとか、それがために勤務医からは見向きもされていないと言う現状は、働き方改革を巡る議論の中でも勤務医の代弁者がいないと言う問題を生んでいますね。

とかく薄利多売を前提とする診療報酬体系の中で、経営のために患者を減らしたくないから受診抑制は認められないと言うのであれば、医療現場は未来永劫増え続ける一方の業務をこなさなければなりません。
日医らは何を最終目的とするかを明確化すべきだと思うのですが、単純に業界に落ちる金を減らすなと言うのであれば診療報酬体系を変更させ、薄利多売せずとも経営が成り立つ体系を目指す道もあるでしょう。
受診抑制で自分達の収入が減ることが困るのに、患者が困るから反対などと言うから話が分かりにくくなるので、業界団体として自分達の利益をストレートに追及した方がよほど判りやすくはなりそうにも思えます。
その上で適正な利益と妥当な労働環境を確保し、医療業界の永続性を担保することが国民の最終的な利益に結びつくと言うことを納得させられるかどうかこそ、業界団体の責任において為すべき仕事でしょうね。

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コメント

>働き方改革を巡る議論の中でも勤務医の代弁者がいない

イランでしょそんなもん自分で言うか労基に駆け込むか逃散すりゃ済む話ですしそれをやらない奴はむしろ縛り首にすべき駆除対象だしw

投稿: 10年前にドロッポしました | 2019年10月28日 (月) 10時24分

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