« 今日のぐり:「水島ギャラリー」 | トップページ | 今日のぐり:「喫茶イブ」 »

2019年10月15日 (火)

高齢医師が増え続ける時代にあっての高齢医師の身の振り方

医学部定員増をいつまで続けるべきかに関しては様々な議論があるところですが、本日まずはこんな記事を紹介してみましょう。

医師高齢化、廃業増え「充足することはない」高橋・国際医療福祉大院教授、第61回全日病学会で講演(2019年10月7日医療維新)

 国際医療福祉大学大学院教授の高橋泰氏が9月29日、名古屋市で開かれた第61回全日本病院学会で「医師偏在の現状」と題して講演し、「医師が充足することはない。医学部の定員増をやめるのは間違いである可能性が高い」と、医師の高齢化や過疎地域の医師不足に拍車がかかることに警鐘を鳴らした。

 講演では、田中角栄内閣による「1県1医大構想」の影響で1970年代に医学部32校の新設が相次いだ影響で、1970年代前半まで毎年約3000人だった医師国家試験の合格者が1980年以降は毎年約8000人に達しているという統計を基に、年齢ごとの医師免許保持者の構成を見ると、30歳代、40歳代、50歳代がいずれも約8万人、60歳代が約4万8000人、70歳代が約3万3000人との推計を示した。
 これまでは70歳以上の医師数が少なかったため、「8000人が生まれ、4000人がリタイアしていた」。今後は毎年約8000人が国家試験に合格していた世代が70歳代に達するため、2008年度以降の既存医学部定員増などで合格者は増えるものの、「9000人生まれるが、6000~7000人がリタイアする時代になる」と指摘。「毎年2000人くらいしか増えない。厚生労働省は医師が飽和すると言っているが、誤差が出るだろう。医師全体の数は予想するほど、医師は増えない」と強調した。

 それを裏付けるのが、1996~2016年の20年間の医師の年齢構成の変化だ。20年分の医師・歯科医師・薬剤師調査を基にした解析によると、50歳代の医師数は1996年に2万7993人、2006年に5万6603人、2016年に7万728人と約2.5倍に急増。この世代が60歳代、70歳代に差し掛かると、廃業する医師の数も増えることが予想される。地域別に分析すると、大都市医療圏は11万1080人から15万6252人と41%増えたのに対し、過疎地域医療圏では1万9854人から2万677人と4%の増加にとどまり、地域間格差が広がっていた。
 また、30歳代の男性医師が過疎地に行かず、外科を志望しない傾向が強まっていることをデータで示し、「全体の数字だけではなく、若い医師の変化に焦点を当てて考える必要がある」と、若手医師の志向が偏在を生み出していると指摘。開業時や病院長になる要件として半年間程度の過疎地域での勤務を義務づけることや、外科医を主治医制からチーム制に変更し、術後管理などは担当チームに任せるなどの働き方改革を提唱した。地方での充実が必要な診療科として、皮膚科、眼科、耳鼻科を挙げた。

しかし高齢医師は過疎地での診療を好み、外科医として日々熱心にメスを振るっているなどと言う話も聞いたことがありませんが、そうでなければ若手だけに責任を負わせるかのような言動はいささかどうよ?と感じます。
むしろ全国どこの病院でも歳だけとって使えない高齢医師が増えてきているようにも見えるのですから、高齢勤務医の肩たたきと地域内開業総量規制で僻地移住を後押しすると言う方法論もあり得るかと思いますね。
僻地住民としても経験も少ない若手医師に診てもらうくらいなら、長年の経験に裏打ちされたベテランの診療を望ましく思うかも知れずで、年代別の医師分布に関しては確かに一度考えてみる余地はありそうです。

それはともかくここで考えたいのが、医師と言う職業には実質定年がないとも言われ、事実働けるうちは働いている高齢医師も少なくない中で、さてどの程度の年齢まで医師としての労働力に計算すべきなのかです。
このところ医療業界に限らず定年延長の傾向にあり、国としても70歳まで働けるよう法改正をしようと言っている中で、医師の引退年齢も少なくとも他業界同程度までは延長できるはずだと考えることも出来ます。
一方で医師は激務であると言う声は当事者から根強くあり、そんな過労死寸前の高齢者を働かせ続けるのは虐待にも等しいとも言えますが、先日日医会長はこんなコメントを出したと報じられています。

日医横倉会長、「医師も70歳前後まで働ける」国民医療推進協議会、医師確保へ財源確保要求を決議(2019年10月8日医療維新)

 日本医師会をはじめ、計40の医療系団体で構成する国民医療推進協議会は10月8日、日本医師会館で第14回総会を開き、持続可能な社会保障制度を確立するための財源確保を政府に対して求める決議を採択した。同日から、診療報酬改定に向けた議論が大詰めを迎える12月下旬までを「国民医療を守るための国民運動」期間とし、12月6日には総決起集会を開く。同協議会の会長を務める日本医師会会長の横倉義武氏は「公共財である医療・介護の充実は、多くの国民の願いであり、国家事業として最優先されるべきものだ」と述べ、次期診療報酬改定での本体部分のプラス改定や医師が高齢になっても働き続けられる環境の整備を求める姿勢を示した。
(略)
 総会後の記者会見では、横倉氏は「地域医療を壊さないように働き方改革を進めるには、適切な人材確保が重要になる。多くの医療職の定年が60歳になっているのを、少し延長し、(60歳を超えても)社会参加できる環境を作る必要がある。(勤務を)週4日、週3日と減らせば、70歳前後まで十分働ける」とも言及し、定年退職が定められている医療機関でも医師が長く働き続けるための環境整備を求めた。
 決議では、「人生100年時代を迎えるなか、幸福な国民生活を将来にわたりおくるためには、必要な医療・介護を安心して受けられるようにしなくてはならない」と指摘。「持続可能な社会保障制度の確立に向けて、適切な財源を確保するよう、本協議会の総意として、強く要望する」と主張している。
(略)

まあ日医風情に他人が何歳まで働くか決めていただくと言うのもおかしな話ですし、今どきどこの施設でも必要な人材であれば60歳できっちり定年と言うこともないでしょうが、では何歳あたりが妥当なのかです。
本人にその意志があり組織としても必要としているのであれば、個別に非常勤医師なりの名目で新たに契約を結び直せばよいでしょうし、単に働き続けたいだけであれば開業して一国一城の主になるのもいいでしょう。
逆に組織として必要としていない人材が、定年延長を盾に継続雇用を要求すると言うのであればこれも困ったものですが、特に完全年功序列の公立病院などは若手に対するポスト不足の懸念も出てきかねません。
何にしろ医師の世界も従来通りの年功序列では何かと難しくなってきているのも確かで、果断な経営者を抱える私立系の施設ではスキルベースなりの新たな雇用体系を模索しているところなのかも知れませんね。

定年延長に伴うこの手の問題は他業界ではすでに以前からあって、その中で判ってきたのが定年を延長して継続雇用する有り難みがあるのは、やはり他に代えがたいスキルを持つ技術系専門職に多いと言うことです。
さすがに目や腕も衰えてからバリバリ手術や検査処置をこなすのも大変でしょうが、ある年齢以上になれば現場仕事は若手に任せて管理職として君臨したいと考える先生にとって、今後競争は厳しくなりそうです。
医師と言う職業自体が技術系専門職と言えますが、やはり実際に手を動かす仕事は若手ほどはかどらないとなれば、知識のアップデートを怠り昔の遺産だけで食べているような先生は今後危ないかも知れません。
無論そうした医師にも出来る仕事、やってもらいたい仕事は幾らでもあるので、きちんと仕事を割り振って適材適所で使えるのかどうかこそが重要であり、これも組織の管理者の手腕次第と言うところがありそうです。

 

|

« 今日のぐり:「水島ギャラリー」 | トップページ | 今日のぐり:「喫茶イブ」 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

過去の統計では100歳を越えた医師も死んだ医師も数に含まれていたらしいですが・・・

>無論そうした医師にも出来る仕事、やってもらいたい仕事は幾らでもあるので、
そういう仕事って本当は医師免許要らないんじゃないかという疑問はありますが、明日は我が身なのでこれ以上は突っ込みません。

投稿: クマ | 2019年10月15日 (火) 23時06分

医師が専門的判断のもとにやったと言うタテマエが必要な場合もあるかと思いますが、相当割合であの有名人○○が監修した新製品○○!レベルの関与ではないかと言う気もします。

投稿: 管理人nobu | 2019年10月17日 (木) 16時48分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 今日のぐり:「水島ギャラリー」 | トップページ | 今日のぐり:「喫茶イブ」 »