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2019年9月 5日 (木)

医師の働き方改革、働かせる側に求められるものは

このところ医師の働き方改革に関する議論もずいぶんと進んできていますが、その中でも多くの医師に関係しそうなのが宿日直の基準が変更された点ではないでしょうか。

宿日直許可基準が変更! 業務はどこまで可能?(2019年8月13日日経メディカル)

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 3月末に厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」は、2024年度から導入する医師の時間外労働規制の枠組みを決定した。それから約4カ月の間、厚労省はスムーズな制度導入のため、具体的な仕組みの詰めなどを進めてきた(図1)。
 以下では、病院経営に影響を及ぼす(1)新しい宿日直許可基準、(2)医師の研さんの扱い、(3)応召義務の解釈、(4)「医師の働き方」後継検討会の発足、(5)大学病院医師の副業・兼業――の五つのトピックスのうち、70年ぶりに変更された(1)宿日直許可基準の最新動向を紹介しよう。

従来より緩和、診療科別などでも「許可が可能」と明示

 病院経営に最も大きな影響があるトピックは、70年ぶりに改められた宿日直許可基準だろう。7月1日に基発0701第8号「医師、看護師等の宿日直許可基準について」の通知(表1)が発出され、従来の基準(1949年に通知発出)よりも大幅に緩和された。
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 従来の基準では、宿日直中に行ってもよい「特殊の措置を必要としない軽度、短時間の業務」は、「病室の定時巡回、少数の要注意患者の定時検脈、検温」などとされていた。それが新しい基準では、「少数の要注意患者の状態変動に対応するための問診による診察等(軽度の処置を含む)」などとされ、少々の診療なら認められるようになった(表1)。全日本病院協会会長の猪口雄二氏は、「以前は少しでも業務があれば宿日直許可が下りなかったが、新しい基準はかなり緩和された」と評価する。

 さらに新しい通知では、診療科や職種、時間帯などを分けて宿日直の許可を受けることが可能だと明記された。日本病院会副会長の岡留健一郎氏も新しい通知を評価し、「今後は、どの診療科が何曜日に忙しいか、深夜に業務がどのくらい発生しているかなど、医師それぞれの労働実態を細かく把握した上で、自院に適した体制を構築することが大切だ」と指摘する。
 例えば、病院内でも救急外来担当医と病棟当直医に分けて、夜間・休日の業務量が多い救急外来担当医は通常の勤務とし、病棟当直医の夜間・休日の当直については宿日直の許可を受けるといった方法がある(図2)。
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一見すると働き方改革に逆行して医師により多くの当直労働を押しつけるかのようにも見える話なのですが、そもそも宿日直とはほとんど実際の労働を要さず、電話番程度で終わるような業務のみ認められていました。
もちろんよほどの寝当直ででもなければこうしたことはあり得ないのですが、実質的には夜間時間外診療をしているにも関わらず表向きそうではないと強弁し、宿日直として許可を得ていた歴史的経緯があります。
今回の働き方改革ではこうした医師の実労働を正しく把握した上で、当直と称しても実態として夜勤状態なのであれば夜勤として扱えと言うことで、当然ながらその分は労働時間としてカウントされることになります。
医師個人の総労働時間規制との関連もさることながら、医師を働かせている側への影響も非常に大きそうな変更点ではあるのですが、このところの議論の中でもこうした働かせる側への影響が懸念されています。

「無理に改善すれば診療体制縮小」医師の働き方改革(2019年9月3日医療維新)

 厚生労働省は9月2日、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(座長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所長)の第2回会議で連続勤務時間制限や勤務間インターバル、面接指導などの「追加的健康確保措置の枠組み」と、「医師労働時間短縮計画および評価機能について」の案を提示した。医療従事者側の構成員からは「無理に改善させることは可能だが、診療体制が小さくなることは確実だ」などと難色を示す意見が相次いだ
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 日本医師会常任理事の城守国斗氏は「管理者も一生懸命されると思うが、地域の医療需要に対応するために頑張らざるを得ない状況が続けば、未実施が続いて改善命令ということになろうかと思う。そうなると、管理者としては診療体制を縮小する流れが想定される」と指摘。千葉大学医学部附属病院病院長の山本修一氏も「内部のマネジメントを必死に真面目にやってもだめならば、それは地域の医療提供体制上やむを得ない部分がある」と述べた。
 これに対し、日本労働組合総連合会総合労働局長の村上陽子氏は「医療機関側の構成員から懸念が出ているが、なぜ医師の働き方改革が必要かと言えば、働き過ぎで倒れてしまう医師をなくしていこうということで、それが医療の安全につながる。その観点は大事にしていくべきだ」と釘を刺した。
 厚労省医政局総務課保健医療技術調整官の堀岡伸彦氏は「院内のマネジメントが全くいい加減ということであれば罰則もあるかもしれないが、罰則で特例取消となって結局困るのは住民なので、基本的にはないと思っている。都道府県の支援と改善命令で、地域医療を守りながら支えていくことを考えていくしかない」と述べた。城守氏はさらに、公的病院については「母体となる全国組織があるところも多い。全国的な会議で検討すればいいのではないか」と提案した。
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いやまあ、医師が多忙過ぎると言うのですから医師の担当する業務の範囲が劇的に減らせるとか、医師数が近い将来激増すると言ったことでもない限り、まさに診療体制を縮小するしかないとは当然の結論だと思っていたのですが。
むろん世の中にはもっと働きたい、もっと沢山の業務をこなしたいと考えている医師もいないではないのでしょうが、ここで出ている診療体制の縮小云々の話、言ってみれば困るのはほぼ経営者側の話ではありますね。
現在の診療報酬体系にあっては現場スタッフに過剰労働をさせなければ黒字にならず、経営が成り立たないと言う側面ももちろんあるのでしょうが、一連の議論とは経営者ではなく労働者のためのものであるはずです。
その議論の主体となる医療側参加者の論点が経営者目線のみに偏っているのであれば、働き方改革が正しい道筋に進むとも思えませんが、この辺りは現場医師の代弁者が不在と言う医療業界長年の課題とも言えますね。

現場医師に及ぶ悪影響を考えると、今まで夜間休日でも院内で誰かが居残っていて他科コンサルトが出来ていたものが、労働時間短縮の結果コンサルトする相手がいなくなると言った影響は考えられるかも知れません。
また現実的に労働時間の上限を超えた医師はどうなるのかですが、例えば外科で緊急手術をしたいが麻酔科が労働時間オーバーで働けないと言った事態があるのかどうかですが、施設毎の判断が別れそうです。
ただそうした時間外や緊急の事態が必要なのであれば、その分を見越して普段の勤務時間の短縮を図っておくべきことであって、こうした点にこそ経営者としての決断と実行力が問われることになるかと思いますね。

 

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コメント

>例えば外科で緊急手術をしたいが麻酔科が労働時間オーバーで働けないと言った事態

そういう事態に陥る時点でアウトだと思いますが、実際にそうなったら自家麻酔するか他の病院に送るかするしかないでしょうねえ。
なんとなくですが、麻酔科の先生よりも外科の先生の方が先に労働時間オーバーになりそうな気がしますけれども。

投稿: クマ | 2019年9月 7日 (土) 12時26分

自分じゃ時間外麻酔嫌がる麻酔科医が今どき自家麻酔などありえんって外科医の時間外手術を邪魔するって話も聞きますけど・・・

投稿: | 2019年9月 8日 (日) 10時31分

今は麻酔フリーター市場も供給過剰で、ちゃんと金出せば麻酔科医なんてすぐに調達できますわ。
それさえもけちって、自家麻酔させようとする(あるいは常勤麻酔酷使しようとする)ブラック病院もたくさんあるでしょうけど、麻酔科医不足が時間外労働規制の言い訳になることはありません。

と書くと、北部東北地方がー、とか言い出す人がいるでしょうけど、将来の人口推計から将来ないような所は私は無視してますのであしからず。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年9月10日 (火) 18時07分

相応にお金を出せばそれなりに供給は可能と言う状況を供給不足とカウントすべきなのかどうかですが、昔の安い医局派遣の助っ人に頼っていた病院ほど市場の相場感に感覚が追いついていないのかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2019年9月11日 (水) 08時18分

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