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2019年9月24日 (火)

医療崩壊を阻止しようと言う努力が医療現場を崩壊させている

自らも地域の開業医であり、研修医であった娘さんを過労死で亡くした山田明先生が先日こんな記事を出していました。

医療崩壊を盾に勤務医を犠牲にするのか 過労自死した研修医の父で開業医の山田明氏が訴えること(2019年9月13日日経メディカル)

 厚生労働省は、2024年4月からの勤務医の残業時間について、年間上限を一般勤務医960時間、技術向上のための集中的な診療が必要な若手勤務医を1860時間、地域医療確保のための勤務医(特例)を1860時間とする案を示し、実施に向けた検討を進めている(関連記事)。これに対して、埼玉県で開業する山田明氏は「医療崩壊を盾に勤務医を犠牲にしてはならない」とし、「医師にも一般労働者と同じような規制を」と訴える。山田氏は2006年に、大学病院の研修医だった娘(当時26歳)を過労自死で亡くしていた。
(略)
 娘さんに何が起こったのか明らかにしたいと思った山田氏は、四十九日の法要を終えた後、勤務先だった大学病院に対して娘さんの勤務状況を尋ねたという。
 「はじめは渋っていましたが、3週間ほど経ってようやく報告書が出てきました。しかし、大学病院の報告書には、過重労働は全くなかったかのように記載されていた」。
 折に触れて娘さんの仕事ぶりを見てきた山田氏は、過重労働に関する記載がなかったことに「吐き気を催すぐらいの憤り」を感じたという。「私は父として、娘のつらさを目の当たりにしてきた。毎日のように娘が朝早く家を出て、夜中遅くに帰ってきたことを知っていた」。
(略)
 「研修医をめちゃくちゃ働かせるのではなく、早く帰らせて、家で文献を読む時間を持たせるほうがよっぽど大事なことだ。医師を育てる側が、医師の命の尊厳を守ろうとしていないのは明らか。こんなことでは患者の命は守れない」。山田氏の声に力がこもる。
 「医師の世界には、長時間稼働して当たり前という意識がある」と指摘する山田氏。こうした業界の「悪弊」を変えるためにも、「働き方改革では、むしろ規制や罰則を強化すべき」と訴える。特に、残業時間の上限を厳しくすると「地域医療が崩壊してしまう」との主張には、真っ向から反対する。病院経営者のマネジメント力のなさを、「医療崩壊」という言葉で覆い隠しているだけと映るからだ。「勤務医の犠牲の上に成り立つ地域医療であっていいわけがない。このことを病院のリーダーはよくよく考えてみるべきだ」。
 「今のままでは、私と同じような経験をする親が必ず出てくる」。山田氏の言葉は重く受け止めたい。

いわゆる医療崩壊と言う現象に関して少なくとも研修医に責任はないはずで、そのつけが若手など立場の弱い者にのしかかっているのだとすれば由々しきことですが、現実的には少しばかり事情が違うようです。
山田氏の言葉にもあるように医療崩壊云々とは関係なく元々医療業界内に医師を酷使する悪習があり、その正当化の根拠として医療崩壊と言う言葉がいわば脅し文句のように使われているのが現状ですね。
産科医に対する調査では過労死水準の月80時間以上の時間外労働をこなしている医師が66%に達し、月160時間以上の医師も27%に上ったそうで、医師の働き方改革が急がれる所以です。
そんな中で年960時間だとか1860時間だと言った数字が注目されてきた医師の時間外労働の上限規制について、先日こんな記事が出ていたことを紹介してみましょう。

「年960時間超え」には2021年までの時短計画策定が必須に(2019年9月4日日経メディカル)

 厚生労働省は2019年9月2日、医師の働き方改革の推進に関する検討会を開催。「追加的健康確保措置」の履行の確保と「医師労働時間短縮計画(時短計画)」の策定などについて議論、概ね了承された。いずれも、勤務する医師が年間960時間を超える時間外労働を行う医療機関に義務化されることになる内容で、特に時短計画については、2021年中に策定しなければ2024年度の法改正に間に合わなくなることから、注目を集めることになりそうだ。

 追加的健康確保措置とは、一般労働者に適用される時間外労働の上限時間数を超えて医師が働かざるを得ない場合に、医師の健康、医療の質を確保するために医療機関の管理者に義務付けられるもの。検討会では、対象者として月100時間以上の時間外労働・休日労働が見込まれる医師が挙げられ、都道府県が毎年行う立ち入り検査の中で確認することが示された。
 措置が不十分だった場合には都道府県が改善命令を出し、それでも改善されない場合は医師の時間外労働の時間外勤務上限として1860時間を認める「地域医療確保暫定特例水準」(B水準)や「集中的技能向上水準」(C水準)の特例を取り消したり、罰則を適用する(図1)。
(略)
 また、時短計画は、時間外・休日労働時間が年960時間を超える医師が1人でもいる医療機関に対して毎年策定を求めるもの。2024年度以降、医師が960時間以上の時間外労働を行うためには、労働時間削減の取り組みの評価を受けた上で都道府県からの認定を受ける必要がある。そのため、2024年度に間に合わせるためには、2021年度には医師労働時間短縮計画の策定が求められることになる。同日の検討会では、計画の項目例として、労働時間削減の目標と前年度実績の他、管理者マネジメント研修やタスクシフティング、医師の業務の見直しなどが厚労省より提案された。具体例として、現在全診療科が行っている当直を、初期対応が求められる診療科のみが行うことなどが示された。

 検討会の場では追加的健康確保措置に対して、「対象となる医師数が多い中で、物理的に面接・指導は可能なのか」「大学病院の産科の医局では、半分以上が追加的健康確保措置の対象となる」「面談など形骸化しかねない」など、実効性について疑問視する意見も多く出された。ただ、厚労省は「やれないと言われてもやっていただくしかない」という姿勢を崩さない。また、医師の確保が難しい地域では、追加的健康措置が実行できずに特例が取り消されたり、時短計画を進めることで地域医療に影響が出ることも懸念される。これまで以上に都道府県の差配が重要になりそうだ。

厚労省がかなり強硬な姿勢を示しているのは厚生よりも労働の側からの見解が主であると言うことなのかも知れませんが、基本的にこの働き方改革に関しては医師の労働時間をきちんと把握することが大前提です。
その部分が適当にされているのでは何ら意味のない話で、現状で労働時間管理の手法がきちんと確立されていない医療機関が今後どう動くかですが、下手をすれば自分で自分の首を絞めることにもなりかねません。
労働時間の計算に関しては宿日直の扱いがどうなるかでも全く話が変わってきますが、先日も紹介したように宿日直業務の解釈が変更されており、新しい基準に従うと労働時間がどうなるのかを考える必要があります。
また研究をしているとか非常勤と言う名目でありながら、実質的にフルタイムで働いている大学病院のスタッフなどの扱いがどうなるかですが、今後の病院側の動き次第で労基署の対応が決まることになるのでしょうか。

こうした諸点を考えると、現時点で未だに医師の労働時間をきちんと把握出来ていない、行う努力を払っていない医療機関は動きが遅すぎると言え、本当に2021年中に時短計画を打ち出せるのか疑問符がつきます。
また医療機関側に如何にルールを守らせるかも肝心であり、その強制力として記事にもあるように都道府県からの認可の取り消しや罰則があるのですが、さて問題はどの程度痛みのある罰則が用意されるのかですね。
そして対策を講じた結果当然ながら多くの医療機関で診療体制の改変や縮小が避けられないはずで、今までのような維持拡大路線ではなく、どこを切り捨てていくかと言う視点での経営マネジメントが必須となります。
その場合医療崩壊云々などと言う概念論ではなく、単純に病院の収入が減り経営が悪化すると言う直接的な影響が現場には出るはずなので、国としてはそれにどう対応するのかも注目していきたいところですね。

 

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コメント

>医療機関側に如何にルールを守らせるかも肝心であり

そんなもん奴隷医どもを全員縛り首にすればあっという間かとw

投稿: 10年前にドロッポしました | 2019年9月25日 (水) 16時16分

一見被害者と思える人でも、法を知り、法を守り、法を利用することは重要です。医師レベルの学歴教養があって、全く労働関連法規を調べないで、ただひたすら疲れを通り越して働く、、、もう縛り首しか残ってないですね。最近そのように考えるようになりました。
しかも残業代未払い案件は、弁護士にとって利息過払いに次ぐ「おいしい楽勝案件」と聞いたのですが。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年9月27日 (金) 10時55分

>一見被害者と思える人でも、

奴隷医は「被害者」ではなく「共犯」ですけどね。

>ただひたすら疲れを通り越して働く、、

そもそも徹夜明けの医師は酔っ払ってるのと同じだからして危険極まりない患者様のためにも縛り首にしなきゃ(使命感

>美味しい楽勝案件

依頼がなければ弁護士と言えども動けませんからねぇ…で、今時は証拠はまるっと電子カルテに残っているわけで、魂が奴隷医でなければ自分でやれば済む事ですよね後は気概の問題w
ところで利息過払いと違って残業代未払いのCMって聞いた事ないんですが、実は大して美味しくないのか日本人が奴隷気質なのか…

投稿: 10年前にドロッポしました | 2019年9月28日 (土) 10時47分

今後就労時間をきちんと管理することが義務づけられると、残業代支払いは一気に増えることになりそうですね。

投稿: 管理人nobu | 2019年9月28日 (土) 17時59分

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