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2019年9月11日 (水)

厚労省が公的病院の再編統合へ発破

医師の働き方改革とも大いに関連する話題として医師の業務自体を減らす必要性が言われていますが、そのための手段の一つとして兼ねて言われてきたのが医師の集約化、医療リソースの再編です。
広く浅く医師を分散配置するよりも集中した方が効率的であり、多人数による交代制やチーム医療により休養もとりやすいのは当然の理屈ですが、先日から厚労省がこんなことを言い出したそうです。

再編促す病院名公表へ 厚労省、9月末にも(2019年9月9日共同通信)

 厚生労働省は6日、全国の公立病院や日赤など公的病院のうち、診療実績などから再編・統合を促す必要があると判断した病院を公表することを決めた。早ければ9月末に具体名を示す。同日開かれた同省の検討会で了承された。不要な病床削減に向けた議論を加速させ、将来の医療費を抑制するのが狙いだが、病院が少ない地域などで住民の反発も予想される。

 厚労省が病院ごとの手術や放射線治療の実績、救急車の受け入れ件数などを分析。他の病院との距離も考慮した上で公表する。一方、この日の検討会で「地域の病院がなくなる」といった誤ったメッセージを住民に送りかねないとして、厚労省は「再編・統合」には病院の縮小や病床機能の転換、集約も含まれると説明した。

 政府は、団塊の世代が全員75歳以上となり医療や介護のニーズが大幅に増える2025年を見据え、効率的な医療提供体制を定めた「地域医療構想」の実現を目指す。構想では、複数の自治体単位の「構想区域」(全国339カ所)ごとに関係者が集まって病床数の削減などの議論しているが、地域住民や首長の反対もあり進んでいない

公立・公的病院「再編統合」の再検証、要請方針を了承(2019年9月6日医療維新)

 厚生労働省は9月6日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長:尾形裕也・九州大学名誉教授)の第23回会議で、地域医療構想の実現に向け、(A)がんをはじめ、9領域の全てで「診療実績が特に少ない」、(B)がんなど6領域で、診療実績が「類似かつ近接」――という2類型に該当する公立・公的医療機関等に対して、具体的対応方針の再検証を要請する方針を説明、了承を得た。該当する医療機関は、「再編統合」の必要性を検討することが求められる。ただし、全国で25ある人口100万人以上の構想区域については、類似の状況にある医療機関が多数に及ぶことから、(B)については今回は再検証を要請しない(資料は、厚労省のホームページ)。
 前回までの議論では、「役割の代替可能性がある」、「再編統合の必要性について特に議論する必要がある」――という2類型で検討されていた(『公立・公的病院の「代替可能性」「再編統合」、検証手順おおむね了承』を参照)。(A)と(B)は後者に該当する。前者、つまり、9領域の一部について「診療実績が特に少ない」もしくは「類似かつ近接」に該当する公立・公的医療機関等に対しては、具体的対応方針の「再検証の要請」ではなく、「自主的な見直し」を求める。

 厚労省は今後、構想区域別に、2類型に該当する公立・公的医療機関等の名称入りのデータを公表する予定。このデータは、当初は2019年央にも公表する予定だった。日本医師会副会長の中川俊男氏は、「公表の時期はいつ頃か」と会議の最後に質問。厚労省医政局地域医療計画課長の鈴木健彦氏は、今日の議論を基に医療機関ごとにデータの分析を行うとし、「しかるべき時期を見て公表させていただきたい。いつかは今の段階ではお答えすることは難しい」と述べるにとどまった。
(略)

 公立・公的医療機関等は、「新公立病院改革プラン」「公的医療機関等2025プラン」を策定、2025年の地域医療構想の実現に向けた具体的対応方針について、2018年度末までに各調整会議で合意を得ることになっていた。ただし、現状と2025年の比較でトータルの病床数が横ばいであるなど、「現状維持」のケースが少なくないなど、地域医療構想の実現に沿ったものであるかが疑問視されている。
 そこで浮上したのが、具体的対応方針の再検証だ。9領域(計17の分析項目)の診療実績を基に、(A)診療実績が特に少ない、(B)他に類似した実績を持つ医療機関が近くにある――場合に、「再編統合」の必要性について検討を求める。ここで言う「再編統合」は、病院を統合するという意味に限らない。ダウンサイジング、機能の分化・連携、集約化、機能転換・連携なども含まれる。
(略)
 厚労省の方針に対して、構成員は基本的に了承したが、幾つか細かい指摘が出た。
(略)

 前述のように具体的対応方針の再検証で検討する「再編統合」は、ダウンサイジング、機能の分化・連携などを含む幅広い意味。中川氏は、「患者が少なく、そろそろ撤退すべきと思われているにもかかわらず、首長が『病院が古いためであり、医師も集まれば、患者が増えるだろう』などと考え、(再編して)大病院を新築するケースが少なからずある。こうした事態にいい手立てはないか」と質問。
 厚労省医政局地域医療計画課は、「一部の公立・公的医療機関等が、地域のその他の医療機関との連携のあり方を考慮することなく医療機関同士を統合することにより、その他の医療機関の医療提供のあり方に不適切な影響を与えることがないよう、将来の医療提供体制について、関係者を含めた十分な協議を行うことが重要である」と資料に記載していることを説明。
 総務省自治財政局準公営企業室室長の大塚大輔氏は、各自治体の首長は選挙で選ばれ、議会で意思決定をすることから、「民主的なプロセスで政策決定がなされているので、それは尊重しなければいけない」と述べる一方、調整会議も法律に基づく仕組みであり、「新公立病院改革ガイドライン」でも、調整会議の議論は踏まえると記載していると説明。「どちらを優先するかは難しいところだが、データが示されれば、調整会議の議論は活性化するだろう。いろいろな地域の事情、住民ニーズを踏まえながら、調整会議で将来像を描いてもらいたいと考えている」。
(略)

この医療リソース集約化に関してはいわば厚労省の積年の宿願とも言えるものですが、注目すべきなのは今回の議論で挙げられているのはかねて抵抗の根強い医師の再編ではなく病院の再編であると言う点です。
すでに10年前の時点で厚労省担当者から 「建て替えにたくさんのお金を使うのは好ましくない」とのコメントが出ており、まさに自治体首長が大病院を新築することに釘を刺す考えを持っていたことが判ります。
そもそも近い将来地域医療構想に基づいて病院の再編、統合を推進する予定である以上、縮小、統合される側となる可能性が高い中小公的病院を勝手に新築されても無駄にしかならないと言うことでしょう。
この点で日医からも首長トップダウンによる自治体病院の新築は問題視されていると言うのも興味深い話ですが、今回の話を見ていて判るのが病院再編が既定の路線であることには表だった反対はなかったことですね。

いずれにせよ医療の存続を規定するのは他ならぬマンパワーであることに理解が広がってきた現状で、ハコモノだけを整えて中身が伴わないのでは意味がなく、税金や公的資金の無駄遣いとして批判されるべきでしょう。
今後厚労省により統廃合すべき病院が公表された場合地元政治家や住民がどう受け止めるのかですが、普段行政の無駄を批判するスタンスが目立つマスコミなどもこうした無駄にどこまで突っ込むのかも注目です。
他方で再編統合を進めるに当たっては住民の利便性はスルーされているのも注目ですが、自動車での移動時間を元に地域性を加味するとは言うものの、いわゆる田舎にとって不利な話だとは予想出来ます。
全国統一の公定価格で医療提供を行う以上給付水準に差をつけるべきではなく、病院の再編統合で地域医療格差があまりにも大きくなるのは如何なものかと言う声も根強く、田舎にどうメリットを与えられるかです。

この点では大きな病院ほど都市部に位置することが多く、診療実績からも田舎の小病院を都会の大病院に統合することが合理的とも言えますが、逆に都会の大病院を田舎に移転するやり方も考えられると思います。
人口集中地域から一見遠くなったとしても、渋滞などがない分都市住民にとっても利便性はさほど低下しない上に、土地代などは安上がりにすむ分初期投資も少ないなど病院経営上もメリットがあるでしょう。
都会では近隣住民のコンビニ受診や夜間時間外の救急受け入れで疲弊する可能性も高く、飛び込み患者の少ない田舎で専門的診療に専念出来るのであれば、医師の勤務環境も良くなるかもしれませんね。
実際に厚労省のリストが公表されれば改めて議論になるでしょうが、すでに病院があると言うことは地域の既得権益化している以上、再編の主体となる自治体には地域医療の明確な将来像提示が求めらるでしょう。

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