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2019年8月 7日 (水)

医大付属の医療センターでも分娩休止…と言われるとびっくりしますが

医大付属の医療センターと言えば立派な大病院を想像するのですが、兵庫医科大ささやま医療センターは古い国立病院を起源とし、1997年私立の兵庫医大に委譲された地方病院です。
一般病床92床・地域包括ケア病床44床・回復期リハ病棟44床と言いますからまあ昔ながらの田舎の公立病院と言う規模ですが、その医療センターで産科分娩休止の話が出ていると報じられています。

激務の産科医、休みなし 分娩休止で機能集約を 病院「国レベルの課題」(2019年6月3日丹波新聞)

 兵庫県丹波篠山市の兵庫医科大ささやま医療センター(片山覚院長)は5月23日、丹波新聞社の取材に応じ、産婦人科における分娩は中止して、隣接する同県丹波市に近く完成する「県立丹波医療センター」に機能を集約させるものの、産婦人科自体は継続し、従来通り妊婦健診や妊娠中のトラブルについては入院も含めて対応する―との方向性であることを明らかにした。片山院長は、「産科医が全国的に不足する中、より安心・安全な周産期医療を提供するためには、『医療圏』という広域で考えることは大前提で、市の問題ではなく、国レベルの課題」と話している。
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 片山院長によると、リスクを伴う分娩は、24時間対応で、小児科、麻酔科、場合によっては脳外科も必要な領域で、広域(丹波市も含めた丹波医療圏)で整備されるべき医療という。
 ささやま医療センターの産婦人科は、医師2人体制は維持しているものの、労働条件は過酷。妊婦の体調の急変に備え、24時間、できるだけ2人で対応できるよう心がけ、また、どちらかの医師が病院にいるか、1時間以内に駆けつけられる範囲に外出を自制している。
 田中宏幸部長は敷地内の官舎で寝泊まりし、出張などの際は医大にバックアップを要請する。休日はなく、田中部長は少なくとも、池田医師が退官した4月以降、同県西宮市の自宅で夜を過ごしたことはない。
(略)
 片山院長は、「市の分娩数が減っている中、市域における共存という意味では、『地元で産みたい』という人は、幸い市内には産婦人科医院があり、そこを利用してもらえばよい。医療センターでなければならない理由はない」と話す。

 ささやま医療センターの「分娩休止を検討」との意向を受け、丹波篠山市の酒井隆明市長は今月20日、同センターの産科充実に向けて市民の意見を聞く検討会を6月にも立ち上げることを表明している。
 昨年6月に医科大と結んだ「ささやま医療センターの運営等に関する基本協定書」では、医科大は、同センターにおける婦人科や小児科などの「存続と充実に努める」とし、医療従事者の不足や経営状況などでやむを得ない事情となっても「当該診療科の存続、再開について可能な限り努力する」と明記している。
 市は同センターに対し運営補助金として年1億2600万円を交付している。

報道では長年地域の産科医療を支えてきた前任の池田医師が定年で退職した後、残る二人の医師があまりに過酷な労働環境を強いられていると言い、このままでは医療事故も起こりかねない状況と言えそうです。
大野病院事件や大淀病院事件を経験した今の時代、不十分な体制におけるハイリスクな分娩継続は忌避されるべきもので、同医療センターの分娩休止と言う判断自体はまあ妥当なのかと言う気はしますね。
ただ注目頂きたいのは今後の分娩先として近く開院する県立医療センターのみならず市内の開業医を推奨している点と、つい昨年医大との間で協定を結び産科婦人科存続に努力すると現地を得ている点でしょうか。
市としてはお金も出し協定も結んでさあ安心と思った矢先の分娩休止であり、当然ながら一言あるだろうと思っておりましたら、やはり先日の会合で市当局からつるし上げられたと報じられています。

ささやま医療センターの分娩休止検討 子育て世代の7割「継続を」(2019年7月10日神戸新聞)

 兵庫医科大学ささやま医療センター(兵庫県丹波篠山市黒岡)が分娩機能の休止を検討している問題で、同市は6日夜、同センターの産科充実に向けて、市民や医師、助産師らでつくる検討会を立ち上げた。同日、丹南健康福祉センター(同市網掛)で会合があり、子育て世代の7割が「分娩継続を希望する」と回答したアンケートの結果を報告した。
(略)
 アンケートは先月、乳幼児検診や母子保健事業などで来庁した子育て世代約253人に実施(回答は246人)した。同医療センターの分娩継続を「希望する」と答えた人が70%、「希望しない」が4%、「よく分からない」が17%だったという。出産する病院を選ぶ理由では「住まいに近いから」が最多だったことも明らかにした。
 委員からは「なぜ医師2人では安全な分娩ができないのか、大学の説明を聞きたい」などの質問が出た。
(略)

「緊張感は24時間365日」 分娩休止受け、産科医が実情訴え 検討会で市民から疑問も/兵庫・丹波篠山市(2019年8月2日丹波新聞)

 兵庫県丹波篠山市黒岡の兵庫医科大学ささやま医療センターが「医師2人体制では安全な分娩ができない」として、産科の分娩休止の方向性を出したことを受けた同市の「ささやま医療センターの産科充実に向けての検討会」(委員長=酒井隆明市長)の2回目の会合がこのほど、同市の丹南健康福祉センターで開かれた。同センター副院長も務める田中宏幸産婦人科部長らが出席。「2人がずっと、いつ呼び出しがあるか分からない緊張感を持って24時間365日を過ごしている。みなさんに期待してもらっている安心・安全な産科医療は困難だ」などと現状を述べた。

 今年5月、同市は同医療センターが分娩休止を検討しているとの意向を確認。酒井市長は「市の中核病院として産科分娩は不可欠」とし、昨年6月に兵庫医大と締結した、(同医療センターの)産科、婦人科、小児科などの「存続と充実に務める」とする協定に沿い努力すべきと主張、市民の意見を聞こうと7月6日に初会合をもった。
 第2回検討会で、委員からは「医師2人ではなぜ分娩ができないのか」「産科医院では分娩できるのに、医療センターはなぜできないのか」「臨時的にでも助けてくれる医師を探すことはできないのか」などの質問が出た

 田中部長は、全国的にも産婦人科医が減少し、兵庫医大本院の産婦人科の医局も定員15人に対し、1人不足している状況であること、ささやま医療センターは労働基準法からみても必要数に達していない状況を説明。「医療センターには、小児科や麻酔科とも連携した『病院』としての機能が期待されているが、その要望には応えられない状況」「医大としては、若い医師を育成する役割もあるが、指導する余裕はない」などと回答した。
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 田中部長は、「『分娩は休止する』とは言っているが、これからの産科充実について考える時、産科医の立場で話ができる人は必要。協力できることはしたい」と話したが、酒井市長は「田中先生は業務に専念して」と、かみ合わなかった

しかし今の時代に産科医や助産師が呼べばどこかから集まるだろうと言う認識も如何なものかですが、仮にそうした人材がいたとしても丹波の片田舎の病院にどれだけ求心力があるのかと言うことでしょうか。
むろん市民としてはおらが町の病院で分娩が出来ればそれに越したことはないでしょうが、医療センターとして求められる水準での対応を続けられない、続けようとすれば労基法違反の状態になると言っているわけです。
医療事故を防止するためにも無理なものは無理と言うしかありませんが、市側市民側としては医師1人の開業医で分娩が出来るのに何故医師2人の医療センターで分娩が出来ないのかとはもっともな疑問ですよね。
これについては扱う分娩数や負うべきリスクが異なるからと言うことになるでしょうが、まずは休止により体制を整えた上で限定的にでも分娩を再開するのかどうか、今後の労働環境の改善次第ではないかとも感じます。

市民の考えはそれとして、一連の経緯で市長はかなりヒートアップしているようで、理事長が交代し長年産科を支えた池田医師が退任したとたんにこうした話が出てきたことに市の公式サイトで不満を述べています。
興味深いのは市長の言によれば、医大側は前任の池田医師のやり方は安全なやり方ではないと主張したという点で、想像するに良くも悪くも昔気質の熱心な先生であり、部下にもそれを求めていたのでしょう。
市長は「兵庫医大にも、ささやま医療センターの現場の先生たちにも産科を守ろうという方はおられなくなってしまったのでしょうか」と言われますが、では座して医療事故が起こるまで待つべきなのかどうかですよね。
仮に運良く医療事故が起こらずとも労基法違反の状態が許容される時代でもありませんので、いずれにせよ何らかの診療制限は必要ですが、産科医2人に地域として何を優先的に求めるかと言うことになるでしょうか。

 

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コメント

市長も市民の委員たちもだが、せめて検討会やらに参加する前に、
最低限の知識を持って討議をしようとは思わないんだろうか。

投稿: | 2019年8月 7日 (水) 09時31分

シロウトさんは専門家にお任せで文句だけ言ってるのが一番楽ではある
ここは金はちゃんと出してるので同情の余地はあるかな

投稿: | 2019年8月 7日 (水) 17時26分

産科常勤2人で他診療科もある総合病院がお産を断念したことで、今後お産の最低ラインが引き上げられていくのかどうか注目されます。

投稿: 管理人nobu | 2019年8月 7日 (水) 21時01分

>運営補助金として年1億2600万円を交付

産科単体に1億ならまだしも、全体でこんだけで、文句だけは一人前。
それに、こんな弱気がトップである医局の医局員はマゾなのでしょうか。
文句あるなら産婦人科全部撤退する、と言えば良いだけの案件なのに。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年8月 9日 (金) 10時14分

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