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2019年7月22日 (月)

診療拒否のガイドライン、厚労省から通知

応招義務の範囲に関しては以前から様々な議論のあるところですが、先日現時点での公的な定義として厚労省からこんな通知が出るそうです。

「診療しないこと」が正当化される場合など周知へ(2019年7月19日医療維新)

 厚生労働省は7月18日に開いた社会保障審議会医療部会の会議で、医師の応召義務について「現代における応召義務」に関する解釈通知を発出するとの方針を示した。医療提供体制や医師の勤務環境に関する観点も考慮した「医師・医療機関が診療しないことが正当化される考え方」なども含む見通し。上智大学法学部教授で同医療部会の委員も務める岩田太氏が研究代表者の厚生労働科学研究「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈に関する研究」の報告書がまとまったことを受けた対応(資料は、厚労省のホームページ)。
 厚労省医政局長の吉田学氏は応召義務について「議論すると、いろいろな反応があり、患者の立場からは、『医師が自由に離れて、あるいは逃げてしまってもいいのか』という意見がある。医師からは、『応召義務を心の支えに頑張ってきたが、それはないのか』というような言葉をいただく」と述べ、そもそも難しい議論であると指摘。その上で、「今回の研究班の報告書はまず法的な整理をしていただいた。これをきちんと伝えながら、医師・患者関係での思い、医師にとっての、または医療関係者全体にとってのかもしれないが、職業倫理や矜持についても、混乱がないように正しくメッセージが伝わるように、行政として受け取ったものを発信する際には留意し、工夫したい」と述べた。

 岩田氏の同研究は検討の方向性として、▽医師には応召義務があるからといって、当然のことながら際限のない長時間労働を求めていると解することは当時の立法趣旨に照らしても正当ではないと解される▽医師法上の応召義務に関する規定の存在により医師個人に過剰な労働を強いることのないような整理を、個別ケースごとに改めて体系的に示すことが必要と考えられた▽個別具体的なケースを念頭に置いて、医療機関、医師が従うべき準則を明らかにする――などを考慮。応召義務について下記の解釈をまとめた。

実態として個々の医師の「診療の求めがあれば診療拒否をしてはならない」という職業倫理・規範として機能し、社会的要請や国民の期待を受け止めてきた。こうした背景もあり、応召義務はその存在が純粋な法的効果以上に医師個人や医療界にとって大きな意味を持ち、医師の過重労働につながってきた側面がある。ただし、医師には応召義務があるからといって、当然のことながら際限のない長時間労働を求めていると解することは当時の立法趣旨に照らしても正当ではないと解される。

 また「診療しないことが正当化される事例の整理」として、病状が深刻な救急患者などが該当する「緊急対応が必要なケース」と、病状が安定している患者などの「緊急対応が不要なケース」に分け、それぞれ「診療時間内・勤務時間内」と「診療時間外・勤務時間外」を解説した。

 緊急対応が必要なケースにおける「診療時間内・勤務時間内」については、救急医療において医療提供の可能性や設備の状況などを総合的に勘案し、事実上診療が不可能な場合のみ診療しないことが正当化されるとまとめた。同「診療時間外・勤務時間外」では、原則として「公法上・私法上の責任に問われることはないと考えられる」と明言。必要な処置を取った場合においても、医療設備が不十分なことが想定されるため、求められる対応の程度は低いことなども記した。
 緊急対応が不要なケースの「時間内」に関しては、原則として患者の求めに応じて必要な医療を提供する必要はあるものの、「緊急対応が必要なケースに比べ、診療しないことが正当化される場合は緩やかに(広く)解釈される」と説明。考慮すべき事項として、患者と医療機関・医師の信頼関係を挙げた。緊急対応不要なケースの「時間外」については、「即座に対応する必要がない」「時間内の受診依頼や診察可能な診療所・病院などの紹介等の対応が望ましい」と記した。
 診療しないことが正当化されるか否かについて、過去の裁判例などを参考に個別事例も列挙。「患者の迷惑行為」、「医療費不払い」、「入院患者の退院や他の医療機関の紹介・転院など」、「差別的な取扱い」ごとの解説も盛り込んだ。
 さらに、法的には、医師は国に対し応召義務を負っている旨を説明する図も作った。
(略)

まあしかし進歩的なメディアの方々がどのような反応をするだろうかと今から楽しみと言えば楽しみなのですが、少なくとも無制限に応招義務が成立するものではないと明言されたことは一歩前進と言えるでしょう。
注目すべき点としては現在進行中の医師の働き方改革を巡る議論とも関連する話として位置づけられていると言う点で、現時点で公表する意味合いとして応招義務を抑制的に再定義する意図がありそうです。
とりわけ診療時間外・勤務時間外においては全ての場合で応招義務は負わず努力目標とされたことが重要で、仮に対応を行ったとしても求められる責任の範囲は非常に限定的と言う、かなり抑制的な内容です。
この部分は夜間・時間外診療を担当している当直医の負担感とも密接に関わるものですが、各施設内ルールはともかく法的には時間外の救急要請をお断りして何ら問題無いと示されたのは重要なポイントですね。

患者の立場からすると夜間の急病はどうしたらいいのかですが、努力目標として時間内受診の案内や他施設への紹介などが挙げられているものの、逆に言えば緊急性のない患者は断られても仕方ないと言えます。
現実的に診療を行わなければ重症か軽症かも判らないと言う意見もあるでしょうが、厚労省は軽症者とは言わず病状の安定している患者と表現しているあたり、いわば見た目の印象で考えろと言うことでしょうね。
一見軽症であった患者が後で急変したと言った場合しばしば紛争化しますが、こうした厚労省の見解がどこまで言い訳として通用するのかで、こればかりは今後の判例の蓄積を待たなければならないように思います。
また勤務時間内に関しては原則的に全てのケースで一定の対応が要求されており、特にかかりつけ患者に関しては軽症と重症とを問わず対応すべきと受け取れる文脈ですが、かかりつけ重視の時代の流れではありますね。

今回むしろ救急時間外の対応義務以上に注目されるのが、日常診療の場でどこまで診療の求めを断ることが出来るか、診療拒否が許容されるケースを個別の事例を挙げて列挙されている点ではないでしょうか。
過去に問題化した事例などと照らし合わせて考えると、迷惑行為を行う患者や退院可能なのに退院を拒否する患者、意図的な未払い患者は拒否可能であるとされたのはなかなか示唆的ではないかと思います。
他方で宗教や思想信条だけでは診療拒否は許容されないが、それらにより診療が著しく困難な場合は許容されると言うのは、最終的にはどこまで現場が受け入れ可能かで考えろとやや丸投げ感もありますね。
全体として医療の必要性がある場合は一定程度の診療を義務づける一方、医療の必要性がなければ拒否も許されると言うことですから、迷惑患者などはまずは医療の必要性がない・乏しい状態に持ち込めるかが重要と言えそうです。

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コメント

医師法のなかでも罰則がない条項を気にするって。ちゃんと労働法規を守りましょう。こっちは罰則付き。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年7月22日 (月) 17時29分

気にしなかった人は気にしないだろうし、気にしてた人はこれからも変わらず気にするんだろうな>応召義務
これでなにが変わるってこともないんだろうなと予想

投稿: | 2019年7月23日 (火) 00時01分

今回の資料を見ても、応召義務が医師の義務なのか病院の義務なのかはっきりしない。
文章は病院の義務であるかの様に書いてあるが、図表には医師の義務であるかの様に書いてある。

投稿: クマ | 2019年7月23日 (火) 00時10分

医師法の文言からすると明らかに医師個人の義務なのですが、仮に応招義務を組織に対して課せられた義務と解釈すると、個人に対してよりはペナルティの選択肢は拡がりそうには思います。

投稿: 管理人nobu | 2019年7月23日 (火) 15時57分

当直医の応招義務がばっさりカットされたのは、「診療に従事する医師は」という言葉が問題だったのでは
当直医が診療に従事していることになると、当直時間をまるまる労働時間にカウントしなければならなくなります

投稿: 想像ですが | 2019年7月30日 (火) 20時37分

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