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2019年7月 8日 (月)

医師の労働時間に関する厚労省の通達が興味深い内容

本日まずはこちらのニュースから紹介してみましょう。

長時間労働で院長ら不起訴 新潟市民病院、遺族が告発(2019年7月3日共同通信)
https://www.m3.com/news/general/685956
 新潟市民病院が2017年1~6月、延べ90人の医師に労使協定違反の長時間労働をさせたとして、過労自殺した女性研修医=当時(37)=の遺族が労働基準法違反の疑いで告発した問題で、新潟地検が片柳憲雄(かたやなぎ・のりお)院長らを不起訴処分としていたことが2日、地検などへの取材で分かった。処分は4月8日付。

 遺族代理人の斎藤裕(さいとう・ゆたか)弁護士によると、片柳院長は起訴猶予、新潟市と篠田昭(しのだ・あきら)前市長は嫌疑不十分だったという。斎藤弁護士は「起訴猶予は犯罪行為が認められたことになり、病院には対応してもらいたい」としている。

 同院の女性研修医が16年1月に過労自殺。遺族らが長時間労働の改善を市に申し入れたが、十分な対策が取られていないとして、17年10月に告発、新潟労働基準監督署が19年2月に書類送検していた。

この新潟市民病院に関しては史上初めて医療機関でブラック企業大賞にノミネートされましたが、過労死まで出すような職場環境に関して当時病院当局が「事態改善は難しい」と開き直っていたのが印象的でした。
http://gurikenblog.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-95c7.html
http://gurikenblog.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-4df0.html
労働者としての医療関係者が病院当局を訴えると言う事例も時折報じられていますが、今の時代ブラック企業対策はどこの業界でも重要であり、必要であれば訴訟沙汰も辞さない労働者も増えているようです。
https://www.sankei.com/affairs/news/190617/afr1906170045-n1.html
明確な法令違反の行為などは論外ですが、医療業界の場合そもそも関連法規を無視した、あるいは全く知らずに運用されている事例も未だに多く、労基署などからもたびたび突っ込まれる所以ではありますね。
長く続いている医師の働き方改革を巡る議論でも、労働時間の把握など基本的な部分の徹底が再確認されたそうですが、先日報じられたこちらの厚労省通知もまた少なからず影響を与えそうなニュースです。

医師の宿日直、3条件かつ「十分な睡眠」で許可、厚労省通知(2019年7月2日医療維新)

 厚生労働省労働基準局は、医師の働き方改革に直結する「医師、看護師等の宿日直許可基準について」と「医師の自己研鑽に係る労働時間に関する考え方について」という2つの通知を、7月1日付で発出した。宿日直許可基準については3つの条件を全て満たすことを求め、かつ「宿直の場合は夜間に十分な睡眠を取り得るもの」と明示
(略)
 医師等の勤務が宿日直として認められる、つまり労働基準法施行規則第23条に基づく許可(以下、宿日直許可)が下りるのは、(1)通常の勤務時間から完全に解放された後のものである、(2)宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限る、(3)一般の宿日直の許可の際の条件を満たしている――という3つの条件を全て満たし、かつ「宿直の場合は夜間に十分な睡眠を取り得るもの」である場合。宿日直中に、通常の勤務時間と同様態の業務に従事する場合が、「稀に」あった場合でも、宿日直許可を取り消すことはないが、これが「常態」と判断される場合には許可は下りない。

 医師の自己研鑽については、「所定労働時間内」と「所定労働時間外」に分けて整理。「所定労働時間内」の研鑽は、使用者に指示された勤務場所(院内等)において行う場合は労働時間となる。
 「所定労働時間外」でも、上司の明示・黙示の指示に基づく場合には、労働時間。一方、問題となるのが、上司の明示・黙示の指示に基づかない自己研鑽だ。⑴ 一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習、(2)博士の学位を取得するための研究および論文作成や、専門医を取得するための症例研究や論文作成、(3)手技を向上させるための手術の見学――の3つの類型に分けて、「研鑽の具体的内容」と「研鑽の労働時間該当性」を明示。その上で、研鑽が労働時間に該当するかどうかを明確化するために必要な手続きと環境整備を示している。

 宿日直については、通常の勤務時間と同様態が、「常態」か「稀に」のいずれであるかが、許可の判断基準になる。通知では、「宿日直の際に担当する患者数との関係または当該病院等に夜間・休日に来院する急患患者の発生率との関係等」から判断するとしている。
 また前述の(2)の「特殊な措置を必要としない軽度、または短時間の業務」の例としては、以下の4つを挙げた。

◆「特殊な措置を必要としない軽度、または短時間の業務」の例
・医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと。
・ 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと。
(略)

 自己研鑽に関する3類型の「研鑽の具体的内容」と「研鑽の労働時間該当性」は以下の通り。労働に該当しない研鑽を行うために在院する医師については、「診療体制には含めず、突発的な必要性が生じた場合を除き、診療等の通常業務への従事を指示しないことが求められる」としている。また、通常勤務ではないことが外形的に明確に見分けられるよう、「院内に勤務場所とは別に、労働に該当しない研鑽を行う場所を設ける」、「白衣を着用せずに行う(手術・処置の見学等は別)」などを求めている。
(略)
 上司や先輩である医師から論文作成等を奨励されている等の事情があっても、業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。
 ただし、研鑽の不実施について就業規則上の制裁等の不利益が課されているため、その実施を余儀なくされている場合や、研鑽が業務上必須である場合、業務上必須でなくとも上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は、当該研鑽が行われる時間については労働時間に該当する。
(略)
 上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があったとしても、業務上必須ではない見学を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う場合、当該見学やそのための待機時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。
 ただし、見学中に診療を行った場合については、当該診療を行った時間は、労働時間に該当すると考えられ、また、見学中に診療を行うことが慣習化、常態化している場合については、見学の時間全てが労働時間に該当する。

宿日直と言うものの取り扱いについては以前から議論が続いているところですが、今回の通知で十分睡眠を取れるようなものであることが求められる一方、軽症患者の診療だけであれば宿日直扱いであるとされました。
この軽症患者なるものの定義が難しいところですが、入院や緊急の処置を要さず簡単な投薬だけで帰せるような患者であると考えた場合、救急搬送の大多数が現状でこうした軽症者であると言う現実があります。
救急車を何台も受けていれば決して暇ではないでしょうが、いずれも特に処置もせず帰せるような軽症患者ばかりの場合は時間外労働ではないと言われると、当事者としてはひと言あるところでしょうね。
また以前からこれも議論のあるところですが、ベテランであればひと目見て診断がつく病態を、経験の浅い医師があれやこれやと散々検査処置をした場合、多額のコストも手間も要した患者でも軽症扱いになるのかです。

自己研鑽なるものの扱いも示されていますが、大原則として自由意志で行うものであること、通常の業務とは完全に切り離されたものであることが必要となると、これも厳密に当てはまるものはかなり限定されそうです。
前者に関しては上司から命令や直接間接の強要、指示があった場合は労働時間扱いになりますが、論文を書けだとかデータを出せだとか言われた時点で超勤をつけるとなると、大学などは大変そうですね。
後者に関しても労働時間外であることを示すために白衣を着用するな等々、かなり厳格な区別が必要ですが、むしろ今まで自己研鑽の名目で労働をさせていた場合の扱いが難しいものになるのではないかと思います。
例えば手術記録で助手として名が載っていれば公式には手術に参加していたことになり業務になるでしょうが、名前を載せなければ専門医資格等の申請にも使えずで、そもそも研鑽の意味がなくなりかねません。

また電カルに指示出し等の記録が残っていれば自己研鑽ではなく業務になる理屈ですが、自己研鑽としてカルテを閲覧し勉強している最中に、ふと思いついて検査指示を追加した場合などはどう扱うべきなのかです。
指示出しをした数分間だけを勤務時間にカウントするのが筋かも知れませんが、勉強していたからこそ気づいたと言う意味では全てが診療の一部と言えますし、まさに業務との切り分けの難しいものではあるでしょう。
この辺りは当然人により組織により線引きが異なって当然であり、労基署なども含めてそれぞれ厳密な線引きが必要になった時点で改めて境界線を確定する作業が必要となってくるだろうと思います。
ただ少なくとも現時点で自己研鑽として扱っていた領域のかなり多くの部分が労働時間に組み込まれそうでもありますから、雇用者側としても医師の労働時間を早急に計算し直してみる必要があるでしょうね。

 

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コメント

救急指定病院は 救急病院等を定める省令に基づき
 救急医療について、相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること
が必要ですので、救急患者積極的に受け入れますよ~って言った時点で、たとえ一人も来なかったとしても「労働」だと思うのですが?

投稿: REX | 2019年7月 9日 (火) 11時09分

輪番に入っているけれども週に数人しか患者が来ない、みたいな病院をどうするのかが気になります。
今回の通達だと宿日直扱い出来ません。
輪番から抜ける病院がたくさん出てくるのかもしれませんね・・・

投稿: クマ | 2019年7月10日 (水) 09時04分

文字通りに解釈するとかなり難しい事態になりそうなのですが、労基署がどこまで空気を読まずに対応するのかがポイントになると思います。

投稿: 管理人nobu | 2019年7月10日 (水) 11時07分

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