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2019年7月29日 (月)

身元保証人のガイドライン、身元保証人問題の解消につながるかは良く言っても未知数

先日こんなガイドラインが出されているのを皆さんご存知だったでしょうか。

入院時の「身元保証人」、本当に必要ですか?(2019年6月11日日経メディカル)

 ほとんどの医療機関は、患者入院時に身元保証人や身元引受人を求めていることだろう。しかし、独り暮らしで親族がいない人の増加に伴い、身元保証人や身元引受人となる人を見つけられないなど、対応に苦慮する場面が増えている。このほど厚生労働省は、身寄りがいない人の入院時には、成年後見人や行政との連携を強めて対応すべきとしたガイドラインを取りまとめた。

 患者入院時に「身元保証人・身元引受人」の情報提供を求めることは、これまで医療界で長く慣習的に行われてきた。医療機関側からすると、身元保証人や身元引受人を明確にすることで、支払いの保証や、緊急時の連絡先の確保、退院時や死亡時の対応、入院計画への同意取得、入院中に必要な物品の準備などを求めやすくなるとの考えだろう。
 しかし、医療機関が求める身元保証人は、民法で定められる連帯保証人とは異なり、支払い義務を負わない。「身元保証人には法的根拠がないのに、なぜか医療界では慣習的に続いてきた」と指摘するのは、山梨大学医学部医学科社会医学講座教授の山縣然太朗氏。加えて、「身元保証人や身元引受人がいないからという理由で、患者の受け入れを拒否した場合、医師の応招義務違反になる」と断言する。
(略)
 このような入院時の身元保証に関する混乱を解消すべく、山縣氏が研究代表者となって、このほど「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(平成30年度厚生労働行政推進調査事業費補助金)がまとめられた。同ガイドラインは、4月24日に開催された厚生労働省の社会保障審議会医療部会で了承されている。
 同ガイドラインは、身寄りがない人や家族や親類へ連絡がつかず、支援が得られない人において、身元保証人・身元引受人を求めることなく、実際に医療現場が直面し得る場面ごとの対応法を提示する。
(略)
 入院費については、支払い能力があれば本人が支払い、支払い能力に疑問がある場合は、自治体の窓口に相談する。
 退院支援は、本人に相談した上で、入院前にケアマネジャーなどの関わりがあれば、それら専門職と相談しながら退院先の選択や手続きを行い、そのようなチームがない場合は、高齢者であれば地域包括支援センター、障害者であれば障害福祉窓口、経済的に困窮する恐れがある場合は生活困窮者に対する相談窓口に相談するよう求めている(図2)。
 死亡時の遺体や遺品の引き取り、葬儀は市町村が行うことになるため、前もって担当窓口を確認し、手順を確認することも勧める。
(略)
 本人の判断能力が不十分にもかかわらず、成年後見制度を利用してない場合は、本人に親族や友人知人の有無を確認した上で、それらを確認したことをカルテに記載した上で、最終的に、自治体の担当窓口に相談する(図3)。
 入院計画についての説明も、本人が理解できない状態で、説明できる家族などがいない場合には、本人への説明を試みた上で、その旨をカルテに記載して対応する。入院費、遺体・遺品の引き取り、葬儀などについては自治体に相談する。
 退院支援については、成年後見制度の利用準備も進めつつ、入院前に関わりのあった専門職と連携したり、新たなチームを作るため、高齢者であれば地域包括支援センター、障害者であれば障害福祉窓口、経済的に困窮する恐れがある場合は生活困窮者に対する相談窓口に相談するのは、判断能力がある場合と同じとしている(図2)。

 「今回のガイドラインの特徴の1つは、成年後見人の活用を謳いつつ、その業務内容を明確にしたところだろう」と山縣氏は語る。
 成年後見人は医療費の支払いや医療・介護・福祉サービスの契約、見守りの責任を負うが、その一方で、医療についての決定・同意を行う権限はないことが、同ガイドラインには明記されている。
 本人の判断能力が不十分な場合については、厚生労働省による「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の考え方を踏まえ、医療・ケアチームや臨床倫理委員会などで対応することとなる。
 医療現場は、慣習的に本人以外の家族や後見人にも医療行為に関する同意を求めがち。しかし、同意できるのは本人のみであり、家族らは、本人の意思を推定するだけ。医療者は患者の推定意思に基づいて、医療を提供するしかないというのが、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の基本的な考えだ。
(略)
 最後に同氏は、「このガイドラインは、困ったら自治体を頼れというもの。しかし、受け手側の自治体がどこまで対応できるかは未知数。今後、見直すべき点は見直していきたい」と言う。加えて、「このガイドラインを契機に、身元保証人などの欄が、本人以外の緊急連絡先欄にとどまることを期待したい」とも語る。

かつての大家族や親子同居が当たり前であった時代ならまだしも、独居や子供のいない家庭が年々増加している社会において、身元保証人なるものが見つからないと言う経験をする先生も少なくないでしょう。
ただ本人に財産自体はあるが引き出すことが出来ないと言った場合も少なくないはずで、こうした場合に代理人なり法的な代替手段なりが用意されていないことが問題であると言うことでしょう。
身元保証人を求める最大の理由として支払いの担保があることは否定出来ませんが、他方で身元保証人については支払いの法的義務はないそうで、カード払いなどで対応している施設も増えているそうです。
かかりつけであれば事前にカード払いの了承を取っておく等で対応は出来るかも知れませんが、救急搬送で来る見ず知らずの患者の場合どうなのかで、身元保証人とのトラブルも未払い関係が最多だと言いますね。

今回のガイドラインを見ていますと、支払い問題や退院先の確保など、何にしろ困った際には自治体に相談しろとのことですが、問題はガイドラインは医療機関向けのものであり、自治体向けのものではない点です。
自治体としては支払い能力があっても本人の意志確認が出来ないと言った面倒なケースを、わざわざ持ち込まれてもうれしくはないでしょうから、最悪の場合相談はしたが何の助けにもならないと言うこともあるでしょう。
正式に民事訴訟なりで財産を強制的に取り立てると言ったやり方もあるでしょうが、医療機関の利益率を考えると赤字になることが確定的で、結局自治体がどれだけ動いてくれるのか次第なところがあります。
普段からどれだけ自治体に恩を売っているかでも発言力が変わってくるのだと思いますが、しかしガイドラインまで作ったのであれば法的に自治体に何が出来るか、どこまでする義務があるかも明記して欲しいですね。

ちなみに応招義務違反という点に関しては先日厚労省の新たな通達を紹介したところですが、身元保証人のいないことを理由に断れば応招義務違反に問われるかも知れませんが、他の理由であれば全く問題ないわけです。
この辺りは実臨床の現場ではこれまでにもいわゆる本音と建前の使い分けは行われてきたところでしょうが、今後はきちんと建前さえ用意しておけば少なくとも夜間時間外に関しては、応招義務違反を問われることはまずないと言えるでしょう。
逆に一昔前には身寄りのない行き倒れのような患者ばかりを好んで引き受けてきた施設も一定程度あったはずですが、社会良識上如何なものかと問題視されるケースも多く、近ごろは滅多に見なくなった印象があります。
この種の施設を社会的必要悪と言って良いのかどうか何とも言いがたいところですが、正しくはかくあるべしと言う話ばかりではどこかでうまくいかなくなるのは、何処の業界でもありそうな話ではありますね。

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コメント

>身元保証人には法的根拠がないのに、なぜか医療界では慣習的に続いてきた」と指摘するのは、山梨大学医学部医学科社会医学講座教授の山縣然太朗氏。

で、あんたが作ったガイドラインに法的根拠あるのかよ?でFAでは?
法的根拠とかほざくんだったら、せめて省令にしろよ。

>「身元保証人や身元引受人がいないからという理由で、患者の受け入れを拒否した場合、医師の応招義務違反になる」と断言

罰則規定のない法律で、違反だなんて断言なんてしていいのかよ。判例くらいあるのでしょうね?(ないだろうけど)

投稿: 麻酔フリーター | 2019年8月 2日 (金) 12時02分

地域的なものもあると思いますが、身元保証人とか身元引受人とかの書類を作って役に立ったと感じたことが1回も無いんですよね。
だれもいなければ自治体に丸投げするだけですし。

もうそろそろ成人患者の治療の同意を家族に求めるシステムは廃止すべきじゃないかと、個人的には思います。

投稿: クマ | 2019年8月 9日 (金) 08時50分

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