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2019年6月 3日 (月)

医師の働き方改革、診療報酬上の手当はなく自助努力が求められる方向に

長崎の病院で33歳の勤務医が2014年に死亡した件に関して先日過労死と認められ、病院側に1億6千万円余の支払いが命じられた判決が出ていました。
亡くなる直前1カ月の残業は159時間だったそうですが、単純計算で12倍すると年1908時間と、このところ話題の年1860時間と言う数字にほぼ相当する時間なのが気になるところですよね。
いずれにせよこの働き方改革と言うもの、実現に向けては資格専門職である故に数が限られた医療のマンパワーの問題に加え、金銭的な負担増加が懸念されるところですが、このところ気になるニュースが出ています。

医師の働き方改革、診療報酬上の扱いは?(2019年5月29日医療維新)

 中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は5月29日、次期診療報酬改定のテーマの一つとして「働き方改革と医療の在り方について」を取り上げた。診療側からは働き方改革に必要な財源を診療報酬で手当てすることを求める声が上がったが、支払側が反論し、激しいやりとりになった(資料は厚生労働省のホームページ)。

 医師の働き方改革に関するこれまでの議論の経過や政策的な対応について、104ページに及ぶ資料について約1時間にわたって厚労省保険局医療課長の森光敬子氏が説明した後、議論に入った。
 全日本病院協会会長の猪口雄二氏は、医師に先立ってそれ以外の職種では今年の4月から働き方改革関連法が施行されたことで、これまで当直として扱ってきたものを夜勤として時間外手当を支払わなければならなくなるなど、「医師以外は働き方改革で勤務体系が変わってきている。夜勤を置かなければいけないため、明らかに人件費が増えている」と指摘。病院運営が厳しくなるとして、「入院基本料がどうあるべきかを議論しないといけない」と求めた。
 これに対し、健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は「基本料にまで言及されたが、これは誰が負担するのかを考えていただきたい。医師の働き方改革を患者が負担することには違和感を覚える。全く違う論理だ。全ての企業で働き方改革が行われており、経営トップがマネジメント改革をするところから始まる。基本料や加算を拡大するのは働き方改革とは違う方向だ」と反論した。

 医師の働き方改革と診療報酬の関係については、2017年11月8日にも幸野氏と日本医師会副会長の今村聡氏との間で議論が繰り広げられた経緯がある(『診療側、働き方改革で診療報酬上の対応求める』を参照)。このときも幸野氏は「働き方改革のために診療報酬上の対応をするのは違うのではないか」と反対を表明していた。
 今村氏は今回、マネジメントの改善がこれまで十分でなかったことは同意しながらも、「医師の働き方は医療を受ける国民の医療安全に資する話だ。それを支えるには一定の財源が必要で、どんなに改革をしてもコストはかかる」と指摘。日医常任理事の松本吉郎氏も「幸野氏には明確に反論する」と強い口調で表明。「中医協では医療技術の適正な評価をし、それに伴って患者は一定の負担をする。これは明確なルールだ。それを保険者から被保険者に説明する視点が欠けているのではないか。診療側も説明していくが、支払側も説明していってほしい」と求めた。幸野氏は「各論に入り、『これならば必要であろう』という加算は議論しなければいけないが、入院基本料という話が出て、それは違うのではないかということだ」と再度反論した。

「最初から診療報酬で手当て」は想定せず - 迫井正深・厚労省審議官に聞く(2019年5月29日医療維新)

――今後、労働時間管理、さらにはその縮減に向けてタスクシフティングをはじめ、さまざまな改革に医療現場が取り組む中で、行政としてどんな仕掛け、支援を想定しているのでしょうか。予算や診療報酬上での支援を求める声もあります。

 まずは各医療機関で、医師の働き方の実態と具体的な課題を個別に把握していただくことから始めないと、何をどう改善するのか、現場で対応すべき具体策が見えないのではないかと思います。そのためにも、まずは労働時間の管理を徹底していただく。その上で、地域のニーズや他の医療機関の状況も踏まえて、何を変えなければいけないのかなど、個別の課題に対応していただく。働き方改革は、マネジメント改革そのものです。行政による支援ツールはそう多くはありませんが、マネジメントに必要な専門的知識の提供、ノウハウや事例の紹介などが想定されます。
 また何をすべきかが整理できても、すぐにはできない場合があります。永続的な支援は難しいですが、将来の姿を目指していくに当たって、「どうしてもこの部分が不足している」などといった場合に、例えば、マンパワーの配置換えに伴う事業的な経費を支援することもあり得るでしょう。その場合、地域医療介護総合確保基金や各種補助金などの既存事業の活用も含めた対応を検討することになると思います。
 一方で、最初から診療報酬で全国一律に対応することは、「ちょっとないだろうな」と。個々の現場の状況があまりに異なるため、先ほど触れたような、まず着手すべきことをやっていただくことが先決でしょう。その上で、現場の動きを見ながら、「ここは全国共通で、何らかの手当てが必要」といったものが出てくれば、そこをどう支援するかを考えるという手順になると思います。
まず現場でできる範囲で、できることをまずやっていただく
(略)
――これまで医師の労働時間管理をしていなかった医療機関の中には、新たに時間外手当を支払わなければいけないケースもあると思います。それまで支払っていなかったこと自体問題ですが、経営的には難しいとの声も現場にはあります。

 医療サービスが改革により充実するなど、国民の皆様にプラスの負担をお願いするのに値するような見直しがあるなら、そうした相談があってもいいとは思います。でも、まずは「これは、本当に必要なサービスなのか、必要なら誰が担うべきか、効率化はできないか」など、医師の働き方、そして病院内のマネジメント全体を吟味してください、という話だと思います。
 金融業や製造業をはじめ、他のセクターはここ20、30年、サービス残業や無駄な作業をなくすなど、生産性を上げる努力を死に物狂いでされてきたのだろうと思います。その結果として、従業員の給与を引き上げた場合で、サービスや商品の価格を引き上げた企業もあるでしょう。ただそれは、さまざまな努力をまず行ったあと、やむを得ずの値上げに消費者が理解を示した場合でしょう。最初から値上げありきで対応したわけではありません
 まず現場でできる範囲で、できることをまずやっていただく。それでもなお、どうしても採算が取れないといった事態になれば、診療報酬上の手当てはあっていいと思います。しかし、最初からそれをしないで、国民の皆さんに負担をお願いするのは、理解が得られないでしょう。
(略)

支払い側が新たな医療費支出増加につながる診療報酬負担に拒否感を示すことはいわば当然で、他業界でやっているようにまずは効率化や経営改革を進めるべきだと言うのは予想された反応でしょう。
ただ診療報酬を決めている厚労省側もほぼ同じロジックで語っている点は気になるところで、少なくとも当面のところ診療報酬上の手当がなされる見込みはないと考えてよいでしょうね。
もちろん他の業界から見れば医療の世界は経営上の無駄が多いと言う指摘は過去にも繰り返されてきたことで、今後その辺りをどれだけ効率化出来るかは国民から業界全体に突きつけられた課題です。

医療の側から見れば当然反論の余地もあり、全国一律の公定価格で全てが縛られ、しかも広告規制など営利的運営は実質的に禁じられ、かつ混合診療と言う利益追求手段も断たれている状況です。
手足を縛られ活かさず殺さずの経営を強いられている中で、何でもフリーハンドで行える民間企業と同様の経営改善をやれと言うのは虫が良すぎると言うことですが、改革の余地自体はむしろ少なくなさそうです。
判りやすい例で言えば名ばかりの総合病院で、さして需要もない診療科でもとりあえず一通り取りそろえておく必要があるのかどうか、緊急性がないことであれば必要時に他の施設に紹介してもいいはずですよね。
この辺り、自治体病院などは町長や議員が集票対策の一環で医者を呼んできた面もありますが、医療は利益追求だけの話ではないとして敢えて医療側自ら赤字部門も抱え込んできた側面も少なくありませんでした。

このところ医療側から医師働き方改革の前提条件として、国民の受診行動変容が求められていますが、不要不急のコンビニ受診を控えろと言うことはすなわち、国民の利便性を犠牲にせよと言うことでもあるわけです。
医師が疲れるからコンビニ受診を控えろが通用するなら、医療リソースが無駄になるから無駄な赤字部門は削減しろも通用するはずですが、興味深いのは医療の側から後者の話はあまり主張されていないようです。
薄利多売を強いられる診療報酬制度下ではとりあえず患者を大勢集めろ、そのためにどんどん手を広げろと経営側が要求してきた経緯がありますが、儲けにならないことに幾ら手を広げても意味がないのは当然です。
医療リソースは無意味に薄く広く分散配置すると、肝心の中核的施設で医師不足から過労や医療事故の原因となりかねないことは自明の理ですが、医療側に求められているのはこうした面での意識改革でもあるのでしょうね。

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コメント

タイムリーなニュース出てました

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190603-00000006-yamagatan-l06

投稿: | 2019年6月 3日 (月) 13時01分

特に地方公立病院の場合は主張や議員の影響力も大きいと思いますが、そうした場合国として診療報酬以外のやり方で病院の在り方を誘導することは不可能ではないとも言えます。

投稿: 管理人nobu | 2019年6月 3日 (月) 20時30分

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