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2019年6月10日 (月)

結局のところは医療の沙汰も金次第と言う現実

傍目に感じる素朴な疑問と言うことでしょうか、先日こんな記事が出ていました。

なぜ?医師数は過去最多32万人でも“医師不足” 「地域医療が成り立たぬ」現場の声(2019年6月2日FNN)

全国各地で医師不足が深刻化している。
(略)
厚生労働省のデータによると、全国で医師の数は過去最多となる約32万人。その一方で、専門家は問題を指摘する。

医療ジャーナリスト油井香代子氏:
医師の数は地域によって違いがあり、医師が集中するのは大都市です。
最先端の医療技術があり、情報が多くあるので都会に集中する傾向があります。
その影響で人口の少ない過疎地には、どうしても医師が不足するということになります。

医師不足 の背景に“県内格差”
人口10万人に対する医師の増減データをみると、「大都市医療圏」にくらべると、「過疎地域医療圏」では医師の数が減少している地域が多いことがわかる。
(略)
医師不足が更に深刻な地域では、自治体が主体となって非常勤の医師を雇っているという。
ある女性医師は、住居のある埼玉県や東京都内の医療機関に勤務しながら、定期的に北海道などで非常勤で勤務しているという。
(略)
そんな中、秋田県湯沢市唯一となる市立の診療所・皆瀬診療所で、3年以上にわたる常勤医師不在が解消され、ついに常勤の医師による診療が始まった。
岩手から赴任した55歳の男性医師は内科と外科が専門で、傷の縫合手術や胃の内視鏡検査も可能に。今後、湯沢市は必要な設備を充実させていくという。
湯沢市福祉保健部の佐藤恒雄部長は「お医者さんがいなくなってからの3年間で6割程度患者さんが減少し、少ない時で10人というような状態になっていた。人口も減っていて、これから医療は少しずつ変わっていくと考えているが、地域の住民が安心して生活できるような医療を目指し、医師と一緒に市全体の医療を作っていきたい。」と話す。

総務省と厚労省は今後、医師の確保が困難な地域の公立病院に対して、財政措置を拡充していくということだ。
(略)

お金を出せば集まるうちはまだしもですが、歴史的に見れば医師不足とは医療需要の増加、多様化と言う需要増大の要因と、医療の提供側の要因とに大別出来ると思います。
前者については数十年前であればまだ全国で医者の顔を見るなど死亡宣告の時だけと言った地域もありましたが、今やどんな僻地のお年寄りでもその気になれば定期的に医療機関を受診出来る時代です。
それもかかりつけの町医者で何でも診てもらうと言うのではなく、耳が悪ければ耳鼻科専門医、白内障なら眼科専門医と専門分化も進んでいるのですから、多様な需要に応えようと思えば医師数は幾らでも必要です。

他方で医療を提供する側でも年々医療を行うこと自体が手間暇かかるようになっていて、昔なら簡単な説明で即治療だったものが、今は何度も丁寧な説明を繰り返し理解と了承を得る必要があります。
手術にしても昔ながらの開腹手術なら1時間で済むものを内視鏡で何時間もかけて切ったりするのですから、治療そのものも高度化・複雑化して一件当たりの手間暇がかかるようになっているとは言えますね。
さらに言えば結局不足しているのは内科や外科で年中休みなく働く医師ですが、かつて何も考えずに大部分が内科外科に進んでいた学生達が、今はQOMLも考慮しながら多様な進路を選択する時代です。
診療科別の医師数推移を見てみれば判りますが、医師総数は増えていると言っても内科、外科、産婦人科、小児科のいわゆるメジャー診療科はむしろ年々減少を続けていると言うのが現実ですよね。


いずれにせよこうした時代にあって医師を集めることも一苦労で、各地の病院ではそれぞれに工夫したやり方で医師集めを行っていますが、話として判りやすいのは労働環境改善と金銭的待遇の改善でしょう。
メディカルクラークを導入するなど、医師の労働環境改善は今の働き方改革推進の議論の中でも当然話題になってきたものですが、医師が増えれば仕事も楽になる好循環も期待出来るでしょう。
他方でその医師集めの有力な手段ともなり得る金銭的待遇改善はどうしても先立つものが必要ですが、先日こんなニュースが話題になっていました。

救命救急センターが医師不足解消のためクラウドファンディング 2000万円調達へ(2019年6月5日MBS)

 大阪府高槻市の三島救命救急センターが医師不足を解消するため、クラウドファンディングを使って資金調達を行うと発表しました。クラウドファンディングで病院が運営資金を募るのは全国初だということです。

 大阪府三島救命救急センターは緊急性の高い患者を24時間体制で受け入れていますが、10年前と比べると医師の数が半減するなど近年医師不足が深刻で、患者の受け入れを制限せざるを得ない状況が続いています。
 「さらに離職者が増えて、培ってきた救命救急の知識や技術がこれから先につなぐことができなくなってしまう」(大阪府三島救命救急センター 福田真樹子副所長)

 収益が大幅に減る中、病院としては全国で初めてクラウドファンディングを使って運営資金2000万円を募る計画で、集まった資金は人材募集の費用などに充てる方針です。

医師人件費をクラウドファンディング 大阪の救急病院(2019年6月5日朝日新聞)

 深刻な医師不足を解消しようと、大阪府三島救命救急センター(同府高槻市)がクラウドファンディング(CF)で医師らの人件費を集める試みを始める。センターとCFサイト運営会社「レディーフォー」(東京)が5日発表した。同社によると病院が人件費を募るCFは全国的に珍しいという。センターは「病院だけではもう限界」と協力を呼びかけている。

 センター(41床)は公益財団法人が運営。命に関わる重篤な患者を24時間態勢で受け入れている。だが近年は慢性的な医師不足に陥り、2010年度の27人から今年度は14人とほぼ半減。17年度は院内感染で1カ月間、患者の受け入れを停止したほか、整形外科医の不在で3カ月間、外傷患者の受け入れを止めた
 その結果、財源の6割超を占める医療収入が大幅減に。10年度の13億8400万円から17年度には9億5900万円に落ち込んだ。人件費も削減され、離職者が相次いだ。

 施設の老朽化の問題もあり、22年度に市内の大阪医科大学内に移転する予定。それまで安定運営を続けるため、CFの活用を決めたという。センターの福田真樹子副所長は「悪循環に陥り、病院だけではもう限界。安全に患者の治療、看護を続けるために応援をお願いしたい」と話した。

記事を見れば全国どこでもありがちな激務の救急医療機関で医師の逃散が起こっている状況とも受け取れるのですが、病院側としてはこうした状況に対応すべくある程度の診療制限なども行っていたようです。
その結果収入が大幅に減り人件費も削減され、さらに離職者が相次ぐ事態になっていると言うのですから悪循環そのものですが、そもそも論として地域で必要な施設であるから整備されたのではないかと言うことです。
地域住民が必要だと思うリソースの整備には本来地域住民がお金を出すべきだと思いますが、言ってみればそれを可能にする手段としてクラウドファンディングと言う手法は合法的な抜け道にはなり得るものでしょう。
公的病院が多く、地域性を無視した全国一律の公定価格を強いられ、営利目的での運営も禁じられた日本の病院では、まずは経営的自由度を高めるための努力と工夫から始めなければならないのでしょうね。

ただ現実的にこれだけ収益も減り人員もさらに減少を続ける中で、たかだか2000万円で何が出来るのかと言う疑問は誰しも抱くところでしょうが、2000万円で人材を募集してもしょせん一時的なものにしかなりません。
安定的な経営を続けるとなれば固定的な収入を確保しなければなりませんが、判りやすいのは公的資金の導入で、全国各地の公立病院は自治体からの支援がなければ運営が出来ない状況です。
ただ自治体の財政問題を抜きにしても、医療機関の場合高齢者の利用が最も多く、働いて税金や保険料を払っている現役世代は利用が少ないと言う点で、過度の公費投入も世代間の不公平感につながります。
今後医療の規制緩和なりで安定的な収入を確保出来たとしても、経営的観点から現場に介入されることを喜ぶ医師も少ないはずですが、病院毎に受け入れ可能なやり方を個別に工夫するしかないのでしょうか。

 

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コメント

>2000万円で人材を募集してもしょせん一時的なものにしかなりません。
R元年分、あるいはR元年上半期分と見ればOKかと。
そも受益者負担って話でしょ?幕末期の大阪の医療と同じで
三島の人が救急を必要とするなら協力すりゃいいし、
いらなければしなければ良いだけの話。

投稿: | 2019年6月10日 (月) 08時11分

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