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2019年5月27日 (月)

給料が安い人ほど多く働かされるのは経済原則の上では当然で

医師の働き方改革を巡る議論を通じて、そもそも議論の前提となるはずの医師の労働の現状に関するデータにろくなものがないことも明らかになってきましたが、先日興味深い数字が示されていました。

時間外「960時間超」6.8%、「1860時間超」0.1%、全自病調査(2019年5月23日医療維新)

 全国自治体病院協議会は5月23日の記者会見で、会員病院を対象に実施した「医師の働き方改革に関するアンケート調査結果」を公表、時間外労働が「年960時間超」の医師は、2018年は6.8%で、2017年の7.7%から0.9ポイント減少していることが明らかになった。「年1860時間超」は、2017年0.2%から、2018年は0.1%に減った
 2018年の結果を見ると、初期・後期研修医は9.5%、非管理職医師7.8%、管理職医師2.2%と職位による差があった。診療科別では、救急科が9.9%で最も多く、次いで外科系8.0%。一方、最少は精神科1.2%であり、診療科による開きも大きい。

 調査では、厚生労働省が2018年2月に打ち出した「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」の進捗状況も尋ねた。2024年度から医師に適用される時間外労働の上限規制で、努力義務あるいは義務となる「連続勤務時間制限(28時間以内)」や「勤務間インターバル(9時間)」は、「実施済」が1割程度、「検討中」が約5割で、「対応不可」が「連続勤務時間制限」25.6%、「勤務間インターバル」31.9%を占めた。一方、「客観的な在院時間管理方法等の導入」「在院時間の実態把握」「労働時間短縮に向けた取組」「36協定の締結・届出」などは、「実施済」と「検討中」の合計で9割以上だった。
 「年960時間超」になる要因としては医師不足等が挙がり、医師の働き方改革に関する課題・要望は、「医師不足、地域・診療科偏在の解消」が最多で、54.0%と半数を超えた。次が「交代制勤務の推進には、経費増が避けられず、診療報酬での対応または補助金制度が必要」と「コンビニ受診の抑制等、国民の理解が必要」が各10.0%だった。
 全自病会長の小熊豊氏は、「年960時間超の医師が年々減っている。医師自体が、時間をいかに上手に使うかを考えるようになったのだろう。意識を変えることでも、労働時間は減る。また個々の病院がマネジメントを改善した結果とも言える」と語り、「医師の働き方改革は、やはり医師不足が最大のネック。次は経費の問題になる」と対策の必要性を訴えた。
(略)

数字の読み方にも色々な考え方があると思うのですが、特に見ていて興味深いと思ったのが研修医から次第にステップアップし、管理職になるほど労働時間は短くなっていると言う点です。
過去の厚労省の調査でも20代、30代で最も労働時間が長く、そこから年齢が上がるほど労働時間は短くなると言う傾向が見て取れますが、今回の調査でもこれを裏付けられた形ですね。
技量未熟な若手であれば、同じことをやってもベテランよりずっと手間暇が余計にかかると言う意見もあって、特に大学など高度医療を行い教育も同時に進めている施設ではそうした傾向が強いのも事実でしょう。
とは言え一般の職場環境から考えると、やはり労働において裁量権の強い上級職に比べて、職場内ヒエラルキーの下位に位置するスタッフほど様々な仕事を押しつけられやすいのではないかと言う推測も成り立ちます。

この点で思い出すのが医師の働き方改革を巡る議論の中で、働かせる側の管理職などエラい先生ほど労働時間制限への反対意見が強く、その理由として医師は働きたいから働いている云々の意見があったことです。
無論何の仕事であれ働きたいから働いていると言う人間は一定数いるでしょうが、多くの医師がやり甲斐を感じるからこそ働いているのであれば、長年医師を続けているベテランほど労働時間が長くなりそうなものです。
特に若手医師はもっと働きたがっているのだと、その労働時間を無制限に延長させようとしている先生方などは自らも寝る間も惜しんで働いていて当然だと思いますが、この辺りの数字を調べて見ても面白そうですよね。
ともかく年1860時間に達するような医師の多くは現状の労働量は過大だと考えているのだとすれば、それを引き下げるためには当事者に働くなと言っても無駄で、働かせる側に規制をかける必要があることになります。

一連の議論を通じて見えてきたことは、一つには働き方改革を推進しようとすれば現状の医療需要に応えることは難しく、いずれにせよ何らかの形で需要の抑制が必要になりそうだと言うことだと思われます。
そしてこれと表裏一体の関係なのですが、労働時間短縮にせよ需要抑制にせよ医師一人当たりの稼ぎも減るはずであり、病院の経営上収入減少に対する何らかの対策が必須であると言うことも自明でしょう。
議論の経過を見ているとほとんどの医療側関係者は働き方改革とセットで診療報酬上の手当を期待しており、そして支払い側はそんなことは出来ないしやるつもりもないと考えているらしいと言うことも見えてきます。
ただ多くの医療側も敢えて言及せずにいることですが、労働時間短縮によって当然ながら医師の収入も減るだろうことも予想されますが、その受け止め方については現場の医師各人でもっとも意見が分かれそうですね。

現在でもより多くの収入を求めて、常勤先以外にアルバイトをかけ持ちしている先生は少なくないと思いますが、生活に困るレベルの低給与の若手だけでなく、収入を多く得ているベテランの先生も珍しくないようです。
この辺りは労働量とその対価のバランスと言うこともあるでしょうが、例えば寝当直で支払いが良ければアルバイトで行きたいと言う先生は多いでしょうし、条件の悪い場合には人集めにも苦労するのは当然でしょう。
医師の働き方改革が進むと言うことは、こうした労働条件の善し悪しと人材が集まるかどうかの関係がよりシビアに問われることでもありますが、今後どんな職場が生き残っていくものかには注目しておくべきですね。
多忙で給料が安くても人が集まる職場や、仕事は楽で支払いもいいのに人が集まらない職場など、全国各地の求人求職状況を調べてみれば現場の医師の本音が最も明確に現れてくる気がします。

 

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