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2019年3月 6日 (水)

竹田医師会病院元院長が同医師会から訴えられた意外な訴訟

医療絡みの訴訟沙汰と言えば通常患者側と医療側の争いを思い浮かべるものですが、先日大変に興味深い訴訟のニュースが出ていました。

竹田市医師会 「診療録不備で報酬返還」 解雇元院長を提訴(2019年3月4日大分合同新聞)

 竹田医師会病院を運営する竹田市医師会が、2017年に懲戒解雇した元院長の男性(43)に計約1710万円の損害賠償を求める訴訟を大分地裁竹田支部に起こしたことが1日、関係者への取材で分かった。元院長が受け持った患者の診療録に記載の不備などがあり、保険の診療報酬を関係機関に返還する必要が生じたためだという。

 医師会側の書面によると、法令で医師が記録することになっている診療録の診断名を看護師が記載したり、病状などの内容も不十分だったりした。医師会が外部業者に調査を依頼。約1290万円分の返還を九州厚生局大分事務所に申し出た。調査費用を含め賠償すべきだと主張している。
 同事務所によると、架空請求に当たるものはないと医師会から説明があったという。実際の返還は数カ月後になる見通し。
 元院長は取材に対し「きちんと反論していきたい」と答えた。

 懲戒解雇を巡っては、元院長が医師会の対応は不当だとして17年12月に提訴し、大分地裁で係争中。

ちなみに元院長についてはスタッフへのパワハラなどを理由に懲戒解雇されたそうですが、元院長の解雇直後からほぼ100%であった救急受け入れ率が一気に低下し地元で問題になっているそうです。
しかし診療報酬返還が命じられることなど日常的な話で、通常それに対して再審査請求するなり返還するなり対処すればいいところ、自主的に調査し自主的に返還した上で、元院長に請求するのも奇異な話です。
今回コメント欄にぬこの文字が殺到したかどうかは判らないのですが、竹田市と言えばつい先日も市内唯一の小児医療機関である市立こども診療所の所長が、市当局への不信感を訴え辞意を表明したばかりです。
市内から小児科医が不在となる事態だけに地元では大騒ぎだそうですが、これも市当局と所長である小児科医とのコミュニケーション不足がうかがえる話で、今回の訴訟にも相通じる空気を感じないでもありません。

そもそも診療録記録がどこまで求められるのかですが、医師法第二十四条には「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と、ごくざっくりした定めがあるのみです。
医師法施行規則第二十三条には患者の氏名や年齢などの情報、病名及び主要症状、治療方法(処方及び処置)、診療の年月日の4項目記載が求められていますが、通常これらはまあ記入されますよね。
他方で慢性期の病棟などでよくあるのが、毎日ではなくたまにしか診療録に記載が無いと言うパターンですが、今回の場合どのように記載が不十分であったのか記事だけからは何とも言いがたいところです。

ただ今回の医師会の言い分を突き詰めると、採血をすれば各項目について一々記載したり、レントゲン一枚毎に詳細な所見を求められると言うことになりかねませんが、想像するだけでも大変な労力ですよね。
患者なども検査をすればまさに一項目ずつ結果説明を求める方もいらっしゃって、多忙な外来で難渋した経験をされた先生もいらっしゃるかも知れませんが、患者からすればお金を出している以上それが当然だと言う考え方もあります。
今回の訴訟過程で裁判所からこうした面での指針的な判断が示されるのかどうかで、日常診療にも大変な影響が出かねないと思いますが、限りある医療のリソースをどこに重点的に投じるかは永遠の課題ではありますね。

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コメント

そこまで難しい話でしょうか?単に、僻地でしか起きない小競り合いという感想しか。これも若い人に、僻地行かん方がええよ。4年行った僕が言うから間違いないよ、にしか結びつきません。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年3月 6日 (水) 08時03分

>元院長の解雇直後からほぼ100%であった救急受け入れ率が一気に低下し地元で問題になっているそうです。

スタッフへのパワハラって専門外を時間外に残業代なしで受けろ!って強要してたんですねそらあパワハラだわよく分かりましたw

投稿: 10年前にドロッポしました | 2019年3月 6日 (水) 09時55分

一般論としてパワハラ上司は迷惑以外の何者でもないのですが、パワハラ気味にスタッフに強要しなければ誰も救急など取らないと言うことも現実ではあるのでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2019年3月 7日 (木) 17時42分

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