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2019年3月18日 (月)

医師の労働時間の定義、近く厚労省から示される予定ですが

医師の働き方改革において当面目指すべき水準がほぼ確定してきた様子ですが、その中で少しばかり気になる部分もあるようです。

医師の当直、どこまで労働時間 厚労省、基準を明確化へ(2019年3月10日朝日新聞)

 勤務医の残業規制の枠組みを年度末までにまとめるのを控え、厚生労働省は労働時間を適正に把握できるよう、当直や学習・技術習得のための研鑽(けんさん)について、どこまでが労働時間かを明確にする方針を決めた。ずさんな勤務管理状況を改善し、違法残業の減少をはかる。4月にも通知を出し、抜本的に見直す

 医療機関を含め、企業は労働時間の客観的な把握が求められ、4月から法律で義務化される。だが、勤務医の当直や研鑽は、どこまで労働に当たるか不透明な部分もあった。
 入院患者対応のため、病院は夜間や休日に医師の当直が義務づけられている。待機時間も原則、労働時間となり、残業が大幅に増えて割増賃金も生じる。だが軽い業務しかなく一定の基準を満たせば、国の許可を受けて、待機時間を労働時間から外すことができる

 

今の許可基準は70年前のもので、軽い業務の例には、定時巡回や少数の患者の脈や体温の測定しかあげられていない。基準を満たすことが、ほぼありえない状況だった。
 現状は、多くの病院で当直医が外来患者も診ている。患者が多いのに許可を受けていたり、許可を受けずに労働時間から外したりする病院もあった。厚労省は基準を見直し、少数の入院患者の診察や、想定されていない外来の軽症患者を診ることを軽い業務に含める。対象を明確にして不適切な運用をなくす狙いだ。

当然ながら時間外労働の上限を決めるためには、そもそもどこまでを労働時間とするかと言う定義づけが避けて通れませんが、この点で長年慣習的に行われてきた宿直・当直業務は非常にグレーな部分です。
時間外労働にカウントされない当直とはほとんど実労働を行っていない、いわゆる寝当直に限られるはずですが、現実的には基幹病院では単なる夜間・時間外診療を当直医がこなしている場合がほとんどでしょう。
今まで適切に時間外労働を管理してこなかった施設において、これらを正しく労働時間に加算すれば一気に時間外労働が増加する可能性があり、求められる水準まで労働時間の適正化が図れるのかどうかです。
この点で厚労省が近く労働時間の定義を改めて示す方針であるとのことですが、この点について最近気になるニュースが報じられていました。

”車の運転は労働時間に当たらず” 遺族の労災申請を認めず(2019年3月11日NHK)

長時間、車を運転して取引先を回っていた横浜市の会社員が過労で死亡したとして遺族が労災を申請しましたが、車の運転は労働時間に当たらないとされ、労災とは認められませんでした。遺族側は「働き方改革の一方で、会社の外での労働時間が切り捨てられている」と批判しています。

遺族や弁護士によりますと、横浜市にあるクレーン車販売会社の営業社員で、3年前に心臓疾患で死亡した当時26歳の男性は、会社の車を運転して東北から東海まで12の県の取引先を回っていました
ほぼ毎日会社に寄らず、自宅から直接、取引先に向かい、日によっては10時間以上運転していました。
遺族が、長時間労働による過労死だとして労働基準監督署に労災を申請しましたが、運転は労働時間に当たらないとされ、先月、労災とは認められませんでした
また、千葉市の建設設備会社の支店で支店長として勤務し、おととし脳疾患で死亡した当時55歳の男性についても過労死だったとして労災を申請しましたが、車の運転や接待など会社の外での業務が労働時間とされず、同じく先月、労災は認められませんでした

記者会見を開いた川人博弁護士は「会社内での働き方改革が進む一方で、会社の外での労働時間が切り捨てられている。厚生労働省はこれを規制すべきなのに逆のことをして助長している」と批判しています。
厚生労働省は「車の運転を労働時間とするかは個別の事例ごとに判断している」としています。


「労働時間を過少算定」 弁護士ら国批判 労災不支給相次ぐ(2019年3月12日東京新聞)

 過労死弁護団全国連絡会議幹事長の川人博弁護士らは十一日、東京都内で記者会見し、過重労働の労災認定を巡って各地の労働局が、労働者の労働時間を過少に算定し、不支給とするケースが今年に入り相次いでいると訴えた。車を運転して出張した際の移動時間や会社経費での接待など、従来なら労働時間に含めていた社屋外での労働が認められにくいという。
 働き方改革の一環として、罰則付きの残業時間の上限規制が、四月から大手企業で適用となる。川人弁護士は「行政によって過少な労働時間認定が行われれば、長時間労働の実態が隠蔽(いんぺい)され、上限規制の取り締まり対象から外れてしまう」と批判した。

 同連絡会議は例示として二〇一六年五月に出張先のホテルで死亡した横浜市内のクレーン車販売会社の男性社員=当時(26)=のケースを公表した。男性は今年二月、労災不支給となった。
 男性は甲信越や中部など十数県の営業を担当。社有車で移動し、ホテルに泊まりながら取引先を回ったが、移動時間の多くは労働時間と認められなかった。
 死亡二日前には首都圏から静岡や三重に出張。遺族側は、朝出発してから夜にホテルでパソコンを使うまで約十四時間の労働を主張したが、労基署は四時間二十分しか認めなかったという。遺族は月の残業を最長で約百六十八時間と訴えたが、認定は五十二時間にとどまった。
 千葉県の建設会社の支店長が一七年に死亡し、今年二月に不支給となった事例では、会社の経費で行った接待や取引先の通夜への参列が労働時間から除外された。

働き方改革は別に医療業界に限った話ではありませんが、その過程で当然ながら労働時間の定義を明確化し、各労働者の実労働時間をきちんと把握する必要があるはずです。
これについて業界ごとに労働時間とすべきかどうか微妙なグレーゾーンがあるのも当然予想されるところですが、公的な認定の基準として厚労省がこのところ線引きを厳しめに取っている気配があると言うことですね。

さて、こうした背景事情の中で医師に関してどのような基準が示されるのかが非常に興味があるところですが、その線引きの在り方に寄っては労働時間管理など絵に描いた餅になりかねないですよね。
特に軽症の外来患者の診療を軽い業務に含めると言う点が気になりますが、救急搬送も含め時間外患者の大多数が軽症患者である現実を考えると、なかなか興味深い基準が示されそうな気がします。

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コメント

>厚労省は基準を見直し、少数の入院患者の診察や、想定されていない外来の軽症患者を診ることを軽い業務に含める。

夜通し患者みても軽い業務扱いですかやってらんないですね

投稿: | 2019年3月18日 (月) 08時12分

↑やってらんないじゃなくてやっちゃダメなんですよ労働ダンピングですから。

投稿: 10年前にドロッポしました | 2019年3月18日 (月) 17時39分

08時12分氏が、辞めない理由はなんでしょうか?
1)当直部分だけ切り取ると奴隷だが全体としては給与水準と労働付加のバランスに満足している。
2)まだ技術習得途上で部長や副部長から教えを乞う代償としてやっている。
3)もうすぐ近所で開業で多数の患者を引き連れるため
この3つ以外はアホですよ。ドロッポ師匠基準だと、どんな理由でも縛り首ですが。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年3月20日 (水) 11時26分

実際のところ夜間外来も当直扱いされるようになると、特に常勤医にとって現行の当直料ではダンピングが過ぎるのではないかとも思います。

投稿: 管理人nobu | 2019年3月20日 (水) 16時49分

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