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2019年1月 7日 (月)

地域医療構想、良くも悪くも首長の医療への影響力が増大する可能性大

以前にも紹介しました奈良県の診療報酬一律カット計画が頓挫したらしいと報じられていましたが、結局は奈良県知事も地元医師団体と闘うよりは協調路線を選択したようです。
これはこれで実現すれば興味深いことになっていたのではと期待していただけに残念ですが、地域医療については今後地域医療構想に基づき各地の自治体が主体となって整備することとなっています。
当然ながら今後は国の医療政策を批判するだけではなく、自ら明確なビジョンを提示し地に足のついた医療計画を策定する必要がありますが、自治体レベルでそうした面を構想できる人材がいるのかどうかです。
この点で奈良県のみならずやはり首長の意向はかなり大きなものになるのではないかとも想像するのですが、先日興味深い記事が出ていたことを紹介してみましょう。

地域医療構想、実現を阻むのは「首長」(2018年12月21日医療維新)

 厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長:尾形裕也・九州大学名誉教授)の第17回会議で12月21日、山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座教授の村上正泰氏は、地域医療構想の協議で感じる課題として、「公立病院においては政治的影響があり、首長などの意向に判断が左右される」ことを挙げ、調整会議で話し合っても、それが実現しにくい現状があると指摘した(資料は、厚労省のホームページ)。
 村上氏は、「病床利用率が低下しても、少ない人口の範囲内でそれぞれが病院の体裁の維持に固執し、ダウンサイジングや再編・統合には消極的」と説明。依然として「拡大路線」を志向する首長の存在が、地域医療構想実現の阻害要因になっているとした。
 奈良県立医科大学教授の今村知明氏も、「ほぼ同じ課題を感じている」と述べ、「首長にどこまで踏みとどまってもらえるかだ」と指摘した。ダウンサイジングや再編・統合の協議が始まると、反対運動、さらには落選運動が起きたり、反対派が首長に当選したりするという難しさがあるとした。
 全国自治体病院協議会会長の小熊豊氏からは、「信じられない。そんな首長がいるのか」との声も上がった。「今は人口減だから、ダウンサイジングしようという動きがある。地域に必要な医療を維持するには、再編統合等が必要。自分の一存で決めるなんて、考えられない」(小熊氏)。
 日本医師会副会長の中川俊男氏も、村上氏が紹介したような公立病院の動きは、「地域医療構想策定ガイドラインに抵触しているのではないか」と問題視。さらに「公立病院の改革は、首長の権限の範囲内にしなければいけないのか、と思ってしまう」と述べつつ、「しっかりと考える首長もいれば、次の選挙を気にする首長もいる。いくら新公立病院改革プランを出して協議を求めても、『無理だな』と考えてしまいがちだが、諦めずに頑張る必要がある」と関係者に呼びかけた。
(略)
 村上氏は、「地域医療構想の協議で感じる課題」として、(1)制度的問題、(2)公立病院における政治的影響、(3)調整会議の機能――に分けて、提示。(2)の中で挙げたのが、「首長などの意向に左右される判断」。
 「地域の患者数自体が減少し、病床利用率が低迷していても、『それは医師が少ないから』と言って、医師の増員を求めるなど、ダウンサイジングには消極的」と指摘。
 ある公立病院の事例では、新築、移転の際に、話し合いの場では、「現状維持、あるいはダウンサイジングが必要」という意見が出ていた。しかし、病院を設置している自治体の長の最終的な判断によって、病床は減らしたものの、救命救急センターを新設、診療科も10近く増やす予定になったという。「地域医療構想と、ややずれると感じられることが、首長の意向によって出てくる」。
 日本病院会副会長の岡留健一郎氏が、「地域医療構想アドバイザーとして強く言えないのか」と尋ねると、村上氏は「病床利用率が低下している中小規模の公立病院について、再編統合を急がなければいけないという共通認識が医療関係者の間に出ていても、首長の選挙前だからといって動かない。選挙が終わってもなかなか動かず、結局、また次の選挙の時期が来てしまう。公立病院のガバナンスは大きな問題」と指摘した。
 その他、村上氏は、県の医療政策担当部局と病院事業担当部局の連携不足で、足並みが揃わないことも指摘。「医療政策担当部局の職員も、ローテーションで代わるので、あまり詳しくない人が担当になると、また基本的なところからやらなければいけないという問題もある。ノウハウの蓄積と部局間の連携が必要だが、それができていない」。
(略)

この選挙と絡んだ首長の意向が地域の医療に大きく影響してくると言う問題、古くはUターン、Jターンを進めるような地方の小さな自治体でも問題視されてきた経緯があります。
地元に自治体病院がありますだとか、小児医療は全て無料にしますと言った政策が選挙民や移住希望者への受けも良いのは事実でしょうし、そうした政策を掲げ推進することが当落に直結してきた経緯もあるのでしょう。
とは言え、実際に医療を担当する現場としてはまた別な意見もあるはずですから、あまりに現場の感覚と乖離したトップダウンの政策では医療は立ちゆかないと言う事もあり得るはずですね。

逆に首長のトップダウンによって医療現場の負担軽減のための政策を推進した事例として、以前に岩手県立病院再編に関わる経緯を紹介しましたが、知事は県議会の場で土下座までしたと伝えられています。
地域住民の根強い反対を知事が押し切ったと言う形ですが、興味深いのは報道各社が批判的な住民の声を大々的に取り上げたにも関わらず、知事はその後の知事選も連続して再選していると言うことです。
声の大きい人達の意見が必ずしも多数派ではないと言うことはままあることですが、外野からの意見に過度に左右されることなくどれだけのビジョンを提示出来るか、今後は各首長の見識が問われそうですね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

診療報酬の地域差までさすがにやり過ぎなのかな
県境の病院はいろいろ大変になりそうだし

投稿: | 2019年1月 7日 (月) 11時10分

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

病院再編って難しいですねえ。
経営不振に陥ったとある公立病院を民間病院に吸収という形で譲渡しようとしたら
「箱だけよこせ職員イラネ」
って言われて頓挫しているらしいですが・・・

投稿: クマ | 2019年1月 7日 (月) 20時28分

>病院を設置している自治体の長の最終的な判断によって、病床は減らしたものの、救命救急センターを新設、診療科も10近く増やす予定になったという
これは首長の問題というよりも、実は使えない余っている医者の問題では?どの病院も(イギリスとか異なり)たいした手術待ちでもないのに、麻酔科が足らないって騒いでいる。それは下手糞な外科医が過剰なだけなんですよ。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年1月 7日 (月) 20時35分

病院の垣根を越えて医師の融通が出来れば良い局面も少なくないのでしょうが、公立私立間など給与体系などが異なると大変そうではありますね。

投稿: 管理人nobu | 2019年1月 8日 (火) 11時49分

事務員給与はそのままに…舞鶴が頭に浮かびました。医師は極端な言い方ですけど資格技術職です。公務員を続けることのメリットがなければ辞めるでしょうし転職するならできます。
行政の舵取りに注視します。

投稿: いつものところ | 2019年1月 8日 (火) 21時34分

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