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2019年1月10日 (木)

医療現場へのコストパフォーマンス評価、導入進む見込み

以前からその導入が検討されている医療の費用対効果評価について、先日こんな記事が出ていました。

製薬団体「費用対効果評価は一部新規収載品に限るべき」中医協合同部会でヒアリング、「補助的な手段」と主張(2018年12月19日医療維新)

 中央社会保険医療協議会は12月19日に費用対効果評価、薬価、保険医療材料の各専門部会の合同部会を開催し、費用対効果評価の本格的導入検討に関して関係団体からヒアリングを行った。日本製薬団体連合会(日薬連)、日本製薬工業協会(製薬協)、米国研究製薬工業協会(FhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)を代表して意見陳述した製薬協会長の中山讓治氏は、「新規収載品のうち、算定方式にかかわらず、一定率以上の有用性加算が適用され、かつピーク時の売上高が一定額以上になると予測される品目とすべき」などと述べ、既収載品などは対象外とするべきだと主張した(資料は、厚生労働省のホームページ)。

 中山氏は、諸外国では日本のような精緻な薬価基準制度がないために費用対効果評価が用いられているとして、薬価基準制度との整合性を保持し、保険償還の可否判断には用いるべきではなく、新薬評価の補助的な手段として用いられるべきだと説明。企業による分析の期間を6カ月以上確保することや、価格調整率を加算率の50%以内、かつ価格全体の10%以内にすることなどを求めた。さらに、FhRMAとEFPIAは連名で、価格調整の対象は加算部分のみとすることなどを求めた。
(略)
 日本歯科医師会常任理事の遠藤秀樹氏は、意見陳述の中でハニンジャー氏が費用対効果評価によりアクセス制限が生じる可能性があると言及したことについて、「どんな要因でどんなアクセス制限があるのか」と問いただした。FhRMA在日執行委員会委員長代行のジェームズ・フェリシアーノ氏は「世界の製薬企業が日本で上市することを優先する市場になってきたが、この3年で変わってきている。非常に厳しい費用対効果評価が日本で導入されれば、日本に優先的に投資を行う魅力が薄くなる。アクセス制限につながるリスクがある」と指摘。
 ハニンジャー氏は「英国はICER(増分費用効果比)が保険適用の判断にも使われ、新しい乳がんの治療薬の上市を妨げている。ヨーロッパでのがんの生存率が英国のそれを上回っている。これは全てICERをベースに保険適用の可否を決めていることによる。英国のような制度をあえて導入するのか。皆様のご判断だ」と述べた。

医療財源が逼迫する折ですから、医療現場においても費用対効果の考え方も必要であると言う総論には誰しも異論ないところだと思いますが、その実際に関しては意見の分かれるところでしょうね。
日本の場合新薬は既存薬よりも優れていなければ保険収載されず、同時に既存薬よりも優れていると言う点からより高い値付けをされる制度ですが、その結果新薬はどんどん高価なものになっていく道理です。
費用対効果の考え方でコスパが悪い場合はそもそも新薬として認めないのか、あるいは効果相応に価格を引き下げるのか一定範囲の減額に留めるのかなど、検証の結果をどう反映するかによっても影響の大きさはずいぶん変わってきそうですね。
さて、こうした費用対効果のいわば枠外にあるのが保険外の診療と言うことですが、先日全国各地で行われている自治体の癌検診についてもこんな記事が出ていました。

推奨外がん検診に注意喚起 厚労省が指針改定へ 8割の自治体が実施(2019年1月7日共同通信)

 市区町村が住民向けに行うがん検診について厚生労働省は5日までに、死亡率の低減効果が不明確なものは推奨していないことを国の指針に明記し、注意喚起する方針を決めた。前立腺や卵巣がんなど推奨外の検診を87%の自治体が行っている現状を改善するためで、どの検査方法を「推奨しない」とするか検討し、2019年度にも指針を改定する。

 厚労省は公費で行う自治体のがん検診について、死亡率を下げる効果が確認された胃、子宮頸部(けいぶ)、肺、乳房、大腸の5種類のがんの検診を推奨。検査方法、開始年齢、受診間隔を指針で示している。だが、これまでは勧めない検診が何かは特定していなかった
 全国1730自治体の16年度の状況を調べると、推奨されていない前立腺がんのPSA検査を82%が実施していた。PSA検査は前立腺の組織が壊れると増えるタンパク質を採血で量るもので、推奨の根拠を提供する国立がん研究センターなどの研究班は「効果を判断する証拠が現状では不十分」としている。一方、日本泌尿器科学会は「死亡率は低下する」として強く推奨し、見解が分かれている
 他に、日本では効果が明確になっていない上、米国では「不利益が利益を上回る」とされた卵巣がん検診が5%、甲状腺がん検診は4%の自治体で行われていた。

 検診自体に大きな危険があるわけではないが、放置しても命取りにならないがんを見つけて治療することになる過剰診断や、精密検査に伴う合併症などの不利益を被ることもある。このため厚労省は、死亡率を下げるという利益が不利益を上回る検診のみを推奨している。
 推奨は自治体の事業が対象で、個人が自己判断で人間ドックなどを受けることは妨げていない

完全な自費で行う人間ドック等の任意健診の場合は特に制約がないのは当然ですが、自治体が公費を投じて行う癌検診においても費用対効果が求められるのも当然と言えば当然でしょう。
この検診項目については以前から議論があるところですが、当然ながら医師の間でも意見が分かれるところですし、PSAなどは腫瘍マーカーの中ではむしろ有用性が高いものとして定評があるものです。
この点では人間ドックのオプション検査でやたらと多数の腫瘍マーカーを選択し、高値が出たからと保険診療でフルセットの全身検査を要求するようなケースの方がよほど医療財政に悪影響はありそうにも想いますね。

医療技術の進歩と言う点から考えますと、わずかな検体で多数の癌を調べられると言った技術が実用化間近な段階で、将来的にどこまで検診等に使っていくかと言う判断を迫られることになりそうです。
PET-CTなども検診目的で使うには高価過ぎると思われていた検査も、担癌患者の評価など今や医療現場に完全に定着しているものもあり、どんな検査も使い方を間違えなければ相応に有効なはずです。
検査自体は一見して多少割高に思えても、検査に要するマンパワーを大きく節約出来ると言うことであれば人材不足の医療現場では有用性が高いとも言え、今後そうした点も含めての評価が必要でしょうね。

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コメント

医療現場、って薬だけじゃないんですが、新薬も含めて金食い虫で効果が?な薬に手を付けるのは結構なこと。
後発薬導入が ようやくPMDAを先発メーカーの手先 から解放したことは間違いない。
高価な新薬に飛びつくのは医者の責任。

投稿: | 2019年1月10日 (木) 09時41分

今の時代の保険診療においてさすがに命は地球より重い式のロジックは通用しないと思いますが、どこまでが皆保険制度下で提供されるべき医療水準として妥当なのかですね。
医療側がコスト無視で望ましい医療ばかりを追及し続けるなら、保険診療上可能な利用との乖離が拡大する可能性があり、場合によっては訴訟沙汰にもなりかねないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2019年1月11日 (金) 16時16分

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