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2018年12月25日 (火)

働き方は変わっていないと言う現場の声は取り上げられず

医師の働き方改革に関わるこのところの議論をみていて、当然誰しも感じるだろう感想が議論の場で提示されたそうです。

働き方骨子案たたき台「現場の医師の声盛り込むべき」副座長が苦言(2018年12月20日医療維新)

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(座長:岩村正彦・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は12月19日の第15回会議で、17日の前回会議で示した骨子案のたたき台について引き続き議論した。事務局資料の「第14回までの議論のまとめ(骨子案たたき台)」について副座長の渋谷健司・東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授 が、前回会議で出た若手医師や看護師らの構成員の意見が盛り込まれていないことについて「なぜ反映されていないのか、誰の意見を尊重するのか。現場ではないか」と問題視した。岩村座長はこの日の議論を踏まえ、次回会議で骨子案を示すよう事務局に指示。ただし、時間外労働上限を骨子案に盛り込むのは難しいとして、別に議論のための数字の案を出すよう求めた(資料は、厚労省のホームページ。第14回の会議は『「連続勤務は28時間まで」「勤務は9時間のインターバル」』を参照)。

 渋谷氏が問題視したのは、次の記述。

タスク・シフティングの推進に向けて、現行資格制度を前提とせずに今後の検討を行っていくべきとの指摘があった一方で、医師の働き方改革のために資格制度を検討することへの疑問も示された。

 渋谷氏は、「これは前回の議論をまとめたものなのか」と切り出した。東京ベイ・浦安市川医療センター集中ケア認定看護師・戎初代氏の「目の前の患者を救うのに、医師の指示がないからどうしようかと躊躇している」という発言や、特定非営利法人架け橋理事長・豊田郁子氏による「医療界がNPを含め本当にタスク・シフトをやるなら国民は協力するはずだと確信を得た」との発言、また東京女子医科大学東医療センター救急医・赤星昂己氏の「中間整理が出されて1年経つが、自分の働き方は変わっていない」といった発言を挙げ、「こういう重要な意見をあえて入れないのは意図的なのか」と事務局に問い質した。
 厚労省医政局総務課長の北波孝氏は「つづめれば両論あったということを書かせていただいた」と答弁したが、渋谷氏はさらに「厚労省はどこを向いているのか。両論併記というが現場の声が入っていない。『何も変わらない』というメッセージを与えかねない」と苦言を呈した。日本医師会副会長の今村聡氏は、「現行の資格を持っている人が本当に役割を果たせているか。まずは現行の資格でやれることを議論していただきたい。その上で将来的には、ということだと思うが、そこまで踏み込むとなかなか議論がまとまらないのではと思っていることはご理解いただきたい」と述べた。

 千葉大学医学部附属病院病院長の山本修一氏は、「管理者の意識改革」との記述について、非常に重要だと指摘。「戦後の長い医療制度の整備の中で、初めて医師個人の働き方にスポットライトが当たった。この機会を逃すべきではない」と述べる一方で、「どう考えても経費は増えるという不安はものすごく大きい。まして消費税があのような形で決着をしてしまった。不安は非常に大きい。改革を推し進めるための経済的な支援はぜひ入れていただかないと」と要望した。
(略)
 会議冒頭では、関連する「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」の結論について、座長を務めた渋谷氏が報告。「国民総力戦」と銘打ったパンフレットの市民、行政、医師/医療提供者、民間企業それぞれのアクションのうち、民間企業について、今村氏が「企業にどうやって働きかけるかが非常に重要だ」と指摘。保健医療福祉労働組合協議会事務局次長の工藤豊氏も「企業の社会的責任という点から、さらに取り組みを進めてほしい」と述べた。渋谷氏は、両者の意見に賛意を示し、「企業にはともすれば従業員の健康を守るのは『コスト』だという意識があるが、今はむしろ投資の対象に健康そのものがなりつつある。健康を守ることで企業の価値が上がる、そういう時代になりつつある」と応じた(『「国民全体が医療危機に取り組むべき」デーモン閣下、宣言発表』を参照)。


「健康を守ることで企業の価値が上がる、そういう時代になりつつある」とは非常に示唆的な発言で、ひと頃の逃散だとか立ち去り型サポタージュと言った現象はまさにこうした価値観の別な一面であったと言えるでしょう。

新臨床研修制度が導入され、研修医に限らず医局派遣ではなく自ら選んで病院に就職することが当たり前になりましたが、ほぼ同時期にネットやSNSがここまで一般化したことの影響も小さくないように見えます。

ネットを介した口コミにより研修の様子など実際の内部事情が容易に知れるようになり、各病院も待遇改善が病院の評価を上げ、ひいては恒常的な人材確保につながる現状を理解せざるを得なくなってきました。
そのために経費が増えると言うのも事実でしょうが、医師が増えればそれだけ総収入も増え出来る業務も拡がると言うのもまた事実なので、長期的な展望のもとでどれだけ人材に透視できるかが将来を分けると言う意味では一般企業と何ら変わることはないはずです。

ともあれ現状ではまだまだ労基法無視の違法労働が常態化している医療現場において、どのような強制力を持って働き方改革を進めるかが最大のポイントですが、先日厚労省からこんな方針が示されたそうです。

医師の働き方改革巡り、健康確保策を点検…第三者機関設置へ(2018年12月20日読売新聞)

 長時間労働が常態化している医師の働き方改革を巡り、厚生労働省は19日、残業時間の上限を一般労働者より緩和する代わりに健康確保策が確実に実施されているかチェックする第三者機関を設ける方向で検討に入った。年明けにも具体的な議論を始める方針だ。

 来年4月施行の働き方改革関連法で、労働者の残業の上限は最大年720時間となる。医師については医師不足地域に配慮し、5年の経過措置を設けたうえで、上限は省令で別に定める。
 厚労省は今年度内に残業の上限を決める方針で、現在、一般の医療機関で働く医師は年960時間とする方向で調整中だ。地域の中核的な医療機関の医師や、経験を積む必要がある研修医ら特定の医療機関の医師は上限をさらに緩和する。

 ただし、健康確保のため、終業と始業の間に9時間の休息を求める「勤務間インターバル」や、連続勤務は28時間までとする制限を設ける。上限を緩和する特定の医師には義務化を検討している。
 しかし、健康確保策の実施が順守されるか疑問視する声もある。このため、自民党のプロジェクトチームが18日、実施を促す第三者機関の創設を求める中間提言案を公表。日本医師会も必要性を指摘していた。
 第三者機関は、都道府県などが地域の医療機関の労務管理を支援する「医療勤務環境改善支援センター」などで検討する。

見る限りでは厚生省と言うより労働省寄りの話ではないかと感じるのですが、第三者委員会にどんな権限を持たせるかが問題であって、保険診療の停止命令など厳しい処分を科せるものであって欲しいものです。
ただ気になったのが第三者機関の設置主体が都道府県になりそうだと言うことなのですが、全国一律の基準に従って空気を読まない対応では地域の実態に則したものにならないと言う考えなのでしょう。
ただこれが行きすぎれば地域医療の破綻を防ぐと言う錦の御旗のもと、第三者委員会が過度に地域の医療事情に忖度してしまう懸念もあって、監視機能としての実効性に疑問符がつくものとなりかねません。

第三者委員会なるものをどのような構成員にするかも問題ですが、一般企業の労働管理案件であれば労組や弁護士なども有識者と言えるでしょうが、医療現場の多くは未だこの方面で未発達だと言えます。
また医療関係者として医療機関の管理者側だけではなく現場医療スタッフなども含まれるのか、「現場の声が入っていない」のでは適切な判断も難しくなりますが、本当に多忙な人々はこんな場に加われませんね。
何より実際に違反があり是正勧告なりを出した場合、どうやってそれを達成するかの方法論が最大の課題ですが、案外シンプルに何日間の業務停止命令と言った形が最も確実なものになるのかも知れません。

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コメント

言いたいことはたくさんありますが・・・研修医の労働時間制限緩和は絶対反対ですね。また死人が出ます。

投稿: クマ | 2018年12月25日 (火) 08時46分

弱い者への労働搾取強要をなぜ放置するのか
制度的にも搾取を許容するのではまったく救われない

投稿: | 2018年12月25日 (火) 08時56分

>弱い者への労働搾取強要をなぜ放置するのか

医師は労働者としてはちっとも弱くない、というか最強なんですが。

ヤクザは組長も組員も悪。
ブラック病院も同様。

奴隷医もろとも、容赦すべきでない

投稿: 10年前にドロッポしました | 2018年12月25日 (火) 10時39分

今後は自主的に士気の高い医師が集まる病院と(実質)強制配置の若手しか来ない公的病院に二分化されていくのではないかと言う気もします。
特に地方においてはかかりつけ開業医への誘導とあわせて、実質的にNHS式の医療システムに近いところに行き着くのかなとも思うのですが。

投稿: 管理人nobu | 2018年12月25日 (火) 16時15分

休みなしで働いたら「プロ失格」と上司に怒られた 国連で働く日本人女性の「カルチャーショック」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181223-00010000-globeplus-int

投稿: | 2018年12月25日 (火) 16時59分

「自主的に士気の高い医師が集まる病院と(実質)強制配置の若手しか来ない公的病院に二分化」
 10年前に小説化されてます。 2018年地中海病院/菊花病院 
 予言通りに進んでしまうのが クリニカルイナーシャ(T田製薬)というか、加算虎の予言と申しましょうかw 

投稿: | 2018年12月26日 (水) 14時50分

旅行で不在だったので亀レスですが、「中間整理が出されて1年経つが、自分の働き方は変わっていない」って、ええ年した医者は、働き方は自分で変えるものですわ。病院変えるなり、開業するなり、いろいろある。以上。

投稿: 麻酔フリーター | 2019年1月 4日 (金) 13時38分

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