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2018年12月17日 (月)

医師の残業上限は年1920時間を国が公認の可能性

医師の働き方改革の議論について先日もお伝えしたように、昨今ではいかにして医師の健康を確保するかと言う点に議論の軸足が移ってきていると言います。
逆に言えば健康障害のリスクマネージメントが出来るのであれば法令違反も構わないとも受け取れる話なのですが、事実そうした観点から医師特例での労働時間規制を考えているようです。

医師の時間外労働上限「地域医療確保」「技能向上」で2階建て提案「追加的健康確保措置」の実施が条件、厚労省(2018年12月8日医療維新)

 厚生労働省は12月5日の第13回「医師の働き方改革に関する検討会」(座長:岩村正彦・東京大学大学院法学政治学研究科教授)に、2階建てで医師の時間外労働の上限を設定することを提案した。まず「達成を目指す水準」として、脳・心臓疾患の労災認定基準(2~6カ月平均80時間以内、単月100時間未満)を考慮し、休日労働込みで年間・月間の数字を設定し、さらにその上に「地域医療体制確保」と主に若手を念頭に「技能向上」のために、経過措置として例外的な上限設定をする。
 時間外労働の上限を「一般則」よりも緩和する一方、勤務間インターバルや連続勤務時間制限など「追加的健康確保措置」を、「達成を目指す水準」では努力義務、例外的な上限設定では義務として医師の健康確保を図る(資料は、厚労省のホームページ)。
 構成員からは「医療提供体制に鑑みると、特例は設けざるを得ない」(東北大学環境・安全推進センター教授の黒澤一氏)などと賛意が示された一方で、「過労死基準を恒常的に超えなければいけないのは問題だ」(自治労総合労働局長の森本正宏氏)と懸念も提示された。岩村座長が「事務局案は将来的には医師の健康確保・医療安全という観点から、理想に近い形に近付けていくことを基本とするものだ。提示された図(下部に記載)の肝は一番左があくまで達成を目指す水準だと理解している。」と結び、今後も数回にわたり議論していく予定だ。

  厚労省はまず、医師の時間外労働規制について基本的な考え方として、(1)医師の労働時間の短縮を進める、(2)労働時間管理の適正化、(3)医療機関内のマネジメント改革、地域医療提供体制の機能分化・連携の推進、(4)上手な医療のかかり方の周知――を提示。その上で、下図のイメージのような2階建ての上限規制案を示した。
 厚労省案では、医師の上限も2019年4月施行の改正労働基準法で定められた「月45時間、年間360時間以内、臨時の場合2~6カ月の平均80時間以内(休日労働を含む)年間720時間以内(休日労働は含まない)」の「一般則」と同水準を目指すべきだが、24時間365日のニーズがあり、休日診療の必要もあることから、医師は休日労働込みの上限を設定する。その上限は脳・心臓疾患の労災認定基準の水準(2~6カ月平均80時間以内、単月100時間未満)を考慮して決める。これを「達成を目指す水準」とする。
 この場合に「一般則」を超えることになるため、「追加的健康確保措置1」として連続勤務時間制限や勤務間インターバル確保、代償休暇などに努めるよう求める。ただし、この場合でもいわゆる「36協定」の上限設定は「一般則」を超えないことを条件とし、一定の歯止めをかける。

 2016年度に実施した「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」によれば、病院勤務医の勤務時間は、約4割が「一般則」を超える年間960時間をさらに上回り、2倍の水準の1920時間以上も1割、3倍となる2880時間以上も約2%いる。厚労省は、労働時間短縮に取り組んだとしても、時間外労働の上限規制が医師にも適用される2024年4月までに医師の労働時間を調査の半分や3分の1まで削減することは困難と想定。無理に労災認定基準を考慮した時間数を設定すると、地域医療提供体制への影響が懸念される。また、労働時間短縮により、若い医師が知識や手技を身に付けるための期間が長期化してしまう可能性もあり、医師養成の遅れ、医療の質や医療提供体制への影響もあり得る。
 そのため、これら二つの観点から、「対象となる医療機関を特定」し、若い医師の技能向上の目的の場合は「本人の申し出」も条件として、「達成を目指す水準」を上回る上限設定も可能とする。地域医療体制確保の目的の場合は将来的には「達成を目指す水準」まで上限を下げることを求める。いずれも場合も、月当たり時間数の上限を超える場合は「追加的健康確保措置1」と、「2」として面接指導と「ドクターストップ」をともに義務付ける。
(略)
 順天堂大学付属病院医師の猪俣武範氏は、技能向上のための特例が本人の申し出によるものとされていることについて、「一律でない水準設定に賛成だが、『本人の申し出』が形骸化する、例えば全員が申し出ないといけない雰囲気になることのないようにしなければいけない」と釘を刺した。

残業上限、年960時間 医師の働き方、厚労省調整 一部病院は当面、千時間超(2018年12月13日共同通信)

 医師の働き方改革を巡り、2024年4月から勤務医に適用となる残業時間の上限規制について、厚生労働省が将来的な上限を「年960時間」とする方向で検討を進めていることが12日、関係者への取材で分かった。特定の医療機関の医師は当面、地域医療提供体制の維持や技能向上のため、年千時間を大幅に超えた上限とする見通しで、2倍の1920時間とする案も出ている。
 いずれも休日労働を含めた時間。年960時間は1カ月に換算すると80時間で、脳・心臓疾患の労災認定基準となる「過労死ライン」と重なる。千時間超は過労死ライン超えとなるため、妥当性を巡って議論となりそうだ。

 6月に成立した働き方改革関連法に盛り込まれた一般労働者の年間上限は、休日労働を除き720時間と定めている。
 医師にはより長い残業時間を認める代わりに、連続勤務時間の制限や、終業から次の始業までの間に一定の休息時間を設ける勤務間インターバル制度の導入を努力義務とする。さらに、緊急診療などに対応できるよう、健康に関する医師の面談を受けることを条件に、月の上限を超えることも可能とする
 千時間超の対象は、地域医療を担う病院や技術の向上を目指す若手などを想定し、勤務間インターバルや連続勤務時間制限は義務とする。若手は本人が希望した場合に限定する。

 厚労省の調査では、残業が年1440時間を超えるとみられる勤務医は約2割、年1920時間超えが約1割いるとみられ、地域医療体制を維持するには1500時間を超える上限が必要との意見も出ている。
 同法の上限規制は19年4月から順次施行されるが、医師は診療を原則拒めないとされる「応召義務」があることなどから、5年間適用を猶予。医師独自の上限や負担軽減策が厚労省の検討会で議論されてきた。

しかし医師に限っては残業時間上限が1920時間でもいいだろうと言い出す方も言い出す方ですが、実際にそれをある程度許容する雰囲気の中で議論が進んでいると言うのも興味深い話ですね。
どのような感想を持つかは人それぞれだと思うのですが、「24時間365日のニーズがあり、休日診療の必要もある」ことを認めていながら、勤務間インターバルなどと言う仮想的設定を持ち出すのもどうなのかです。
過労死レベルの労働も一時的に越えると言うのであればまだしもですが、年12ヶ月全てでそれを認める前提と言うのは違和感を感じずにはいられない話で、まして倍の上限設定など何の冗談かですね。
この場合医師として自分の健康管理くらい自分で出来るだろうと言う考えがあるのなら恐ろしい話ですが、現場医師とすれば国がそう考えている前提で労働管理を行わざるを得ないとは言えそうです。

今回の話で特に気になったのが、若手医師に関しては本人同意の下で超長時間労働を許容すると言う点ですが、当然ながら医療に限らずブラックと呼ばれる職場で若手にどんな拒否権があるのかです。
無論研修医に関してはどのような労働環境で働かされるか知った上でマッチングを行っているはずで、知らないでしたは今の時代通用しない話ですが、その上のレジデントクラスは大変なことになりそうですね。
当然ながら時間外呼び出しにおいてもこうした若手の先生ほど真っ先に駆り出される機会が多いと思いますが、実際の処どうやって労働管理を行い得ると考えているのか、それとも最初から放棄しているのでしょうか。
仮にこうした考えのもとで法的規制が行われた場合、各医療機関における実際の扱い方が重要になるはずですが、ここでもポイントとなるのは応招義務と言うものの捉え方になるのではないかと言う気がします。

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コメント

>若手は本人が希望した場合に限定する
特攻隊希望者は一歩前へ ですな。

投稿: | 2018年12月17日 (月) 07時09分

勤務間インターバルを設定すると、インターバル中は緊急呼び出しどころか、その医師への業務に関する電話、メール、ラインすべて禁止ですけど理解してますかね?
確か連続勤務時間32時間縛りも報道されてましたが、これもクリアしようとするとかなりきつい。

守る気が無いなら、今の法律を変える必要も無いでしょうし・・・

投稿: クマ | 2018年12月17日 (月) 08時55分

>特攻隊希望者は一歩前へ ですな。

戦時中じゃあるまいし、ていうか戦時中ですらレアケースとはいえ拒否したパイロットも実在するわけですしそこで一歩前に出ちゃうようなマヌケは別に○んでいいんじゃw?

投稿: 10年前にドロッポしました | 2018年12月17日 (月) 09時18分

労働者は残業は拒否できるんだから過労死なんて発生し得ないってくらいの無茶苦茶ぶりに聞こえる

投稿: | 2018年12月17日 (月) 10時15分

>労働者は残業は拒否できるんだから

医師に関する限りはその通りですからw
以下コピペ改変

ヤクザは組長も組員も悪。
ブラック病院も同様。

奴隷医もろとも、容赦すべきでない

投稿: 10年前にドロッポしました | 2018年12月17日 (月) 11時20分

かなり突っ込みどころの多い話でこのまま実現するかどうかも不透明ですが、実現した場合各病院の裁量の発揮具合でかなり大きな労働格差が生まれそうには感じます。

投稿: 管理人nobu | 2018年12月17日 (月) 13時24分

>ハンガリーで時間外労働の年間上限を大幅に引き上げる労働法改正案が可決され、首都ブダペストでは16日、政府に抗議する超党派の大規模デモが行われた。
>一部の参加者が警官隊と衝突する一幕もあった。

なんとタイムリーなにゅーすが。ここまでとは言わずとも、自分で汗を流さないかぎり ま 奴隷は奴隷のままでしょうね。。。

投稿: | 2018年12月17日 (月) 20時07分

これね

https://www.cnn.co.jp/world/35130222.html

年400時間の残業認める「奴隷法」に抗議、デモが暴徒化 ハンガリー
2018.12.17 Mon posted at 13:15 JST

(CNN) ハンガリーで、企業が従業員に対し年間400時間までの残業を求めることを認める法案が議会を通過したことを受け、国民による数千人規模の抗議行動が続いている。4日目となった16日夜には一部の参加者が暴徒化し、路上で警官隊と衝突するなど混乱が広がった。

評論家が「奴隷法」と呼んで非難するこの法案は、オルバン首相率いる右派政党が提出し、12日に議会を通過した。ハンガリーではこれまで、従業員に年250時間までの残業を求められるとする法律が成立しているが、この上限が150時間増える見通しとなった。

政府はCNNの取材に答え「自由意志による勤務時間の変更は従業員の利益になる」と説明。法案の成立を受けて人々はより多く働き、より多くの賃金を手にすることができるとの見方を示した。

首都ブダペストでは12日から法案に対する抗議行動が始まった。16日には国営テレビの本社ビルに突入しようとしたデモ参加者と警官隊が衝突した。CNN系列局のATVハンガリーが報じた。

現場を撮影した映像や画像には、暴徒鎮圧用の装備を施した警官隊が、群衆に向かって催涙ガスを放出する様子がとらえられている。

ATVハンガリーは17日、人混みに挟まれて動けなくなるリポーターや催涙ガスをあびて地面にうずくまる人々の映像を公開した。

投稿: | 2018年12月17日 (月) 21時00分

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