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2018年10月31日 (水)

救急医療のより円滑な運用に向けた工夫

命にも関わりかねない救命救急の現場では時に迷うことも多いわけではありますが、こちら迷った時の窓口が徐々に広まっていると言うニュースを紹介してみましょう

救急車呼ぶか相談できる「#7119」 全国の40%が利用可能に(2018年10月20日NHK)

マンガ家のツイートをきっかけに、救急車を呼ぶかどうか相談できたり開いている病院を紹介したりする電話番号「#7119」がネット上で話題になっています。#7119を運用する自治体は少しずつ増えていて、利用できる人は今、全国のおよそ40%となっています。

#7119は具合が悪くなったりけがをしたりして救急車を呼ぶかどうか迷った場合などにアドバイスを受けられる専用回線です。

看護師などが電話を受けていて、救急車を呼ぶ必要があるかどうかや開いている病院はどこなのか、また応急処置の方法などを相談できます

具合の悪くなった女性のマンガ家が今月、#7119を利用して手当てを受けた経験をツイートしたところ6万回以上リツイートされるなどネット上で話題になり、「知らなかった」とか「番号を覚えておこう」などといった声が上がっていて、まだ番号が広く知られていない実態もうかがえます。

#7119は東京都が平成19年に最初に導入し、これまでに大阪府や福岡県、埼玉県など9の都府県が全域で導入していて、利用できるのは一部で実施している県なども含めて国の人口データをもとに計算すると、全国の約40%の人となっています。

導入の背景には、救急車を呼ぶかどうか事前に相談することで不要な119番通報を減らし救急医療の体制を充実させたいという狙いがあり、国は全国的な普及を目指して自治体や各地の消防本部に導入を働きかけています。

元ネタになっているマンガ家氏のつぶやきについてはこちらの記事を参照いただきたいのですが、今回は大事に至らず良かったと言うものの、この種の判断に迷う状況は全国どこででも日常的にあり得る話です。
一部には迷うくらいなら遠慮せず救急車を呼べば良いんだと言う意見もありますが、さすがに昨今の救急需給バランス崩壊や救急搬送の逼迫ぶりを見るに付け、何でもかんでも119番と言うのも困るでしょう。
自分で病院を探し受診の段取りをつける手間を惜しんだり、夜間救急で少しでも早く診てもらいたいだけのために救急車を呼ぶのもどうかですが、大多数の普通の利用者にとっても判断の基準は欲しいところです。
今はまだ十分に周知徹底が進んでいない段階ですが、今後こうしたサービスが直接病院や救急隊と緊密に連携出来るようになれば利便性も増すはずで、自治体主導での体制整備が望まれるところですね。
さて、素人が医学的な判断に迷うことは当たり前なのですが、医療関係者であっても当然判断を誤ることはあり得るはずで、それも構造的な問題として考えるべきではないかと言うのがこちらのニュースです。

「被災し病院搬送も放置、死亡」 遺族、石巻赤十字提訴へ(2018年10月26日河北新報)

 東日本大震災で被災した宮城県石巻市の女性=当時(95)=が市内の石巻赤十字病院で必要な介助を受けられずに死亡し、精神的苦痛を受けたとして、遺族が近く同病院に慰謝料など約3220万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こすことが25日、遺族側への取材で分かった。

 遺族側によると、女性は震災前に同病院に通院し、日常生活に全面的な介助が必要とされる要介護5の認定を受けていた。2011年3月14日、自宅周辺が水没して孤立していたところを自衛隊に救助され、同病院に搬送された。

 同病院は治療の優先順位を決めるトリアージで、女性を「自力で歩ける軽症の患者」を意味する「緑」と判定。女性は飲食介助や点滴といった医療行為を受けられず、搬送から3日後の同17日に脱水症で死亡した。

 遺族は「介護状態の認定に必要な主治医意見書は同病院から発行されており、女性が自力で飲食できないことを同病院は震災前から把握していた」と指摘。同病院は搬送を受け入れた時点で必要な保護措置を講じる義務を負ったにもかかわらず、漫然と女性を放置して死亡させたと主張している。

実際のところどのような扱いであったのかは記事だけでは何とも言えないのですが、本当に3日で脱水症で亡くなったとすればかなり急な経過で、当時の院内の混乱ぶりが忍ばれる話でもありますね。
ただ記事を一読して盲点であったと言う気がするのですが、救急医療のトリアージと言えば一般に処置を急ぐ優先順位をつけるもので、現場の先生もその後の介護のことまで考えてタグ付けしているわけではないと思うのです。
しかし要介護度の高い高齢者などが被災した場合、外傷等で直ちに緊急の処置は必要としなくても、その後の介護の必要性は高いと言うケースも多いはずですが、さてこうした場合に何色のタグをつけるべきかです。
救急医療についてなら軽症扱いで良いとして、緑タグを付けられたことでその後の必要なケアが後回しにされ重大な結果を招きかねないのだとすれば、現在のタグの付け方に問題があるとは言えるのかも知れません。

ただ一方でこうしたトリアージが行われるような状況であれば、当然周囲にはより重症の患者も大勢いたはずで、そちらへの対処や処置に追われこうした軽症者へのケアが十分なされないのも当然と言えば当然です。
その場合重症者を放り出して高齢者の面倒ばかりみていればそれはそれで問題化していたはずなので、結局のところは医療リソースの不足によりどこかでこうした問題は出てくるしかなかったと言うことですね。
今後の教訓にするとすれば、こうした大規模災害では周辺地域でなるべく早急に現地の患者を引き受けるべきだと言うことになりそうですが、どんな患者を送り出すべきかと言う点でも一悶着ありそうです。
今回のような高齢者は長年のかかりつけを離れたがらないだろうし、家族の付き添い等の都合もあるだろうしで、この辺りの調整も円滑に進められるような組織なり仕組みなりがあれば何かと助かるのでしょうね。

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コメント

>慰謝料など約3220万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こす

95歳の要介護5でしょ?
いつ無くなってもおかしくないのに、そんなときに震災でうまく逝ってくれたのを
これ幸いと金にしようとしているとしか思えないですよね。

投稿: | 2018年10月31日 (水) 09時45分

ヒト死んでんねんで!まどうてや!

投稿: | 2018年10月31日 (水) 11時36分

この種の話全般に言えることですが、民事訴訟ですので訴える自由はあるわけです。

投稿: 管理人nobu | 2018年10月31日 (水) 21時30分

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