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2018年10月 2日 (火)

国が全国一律の医師偏在指標を設定

医師の働き方改革についてこのところ議論が続いていますが、その前提とも言えるこんな調査が行われるそうです。

医師6000人に勤務状況調査、厚労省、改定結果検証で(2018年9月26日医療維新)

 厚生労働省が診療報酬の観点から医師の勤務状況の調査に乗り出す。「勤務時間」や「診療時間」、「オンコール回数」、「勤務状況を改善する必要性」などについて聞く調査票を1500施設の医師計6000人に配り、協力を求める。2018年度の「診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」として実施する。9月26日、中医協総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)が同特別調査の内容を承認した。10~11月に調査を実施し、来年1~2月に結果を公表する計画だ。

 同特別調査は、2年に1度の診療報酬改定後に毎回実施している。今年度は、▽かかりつけ医機能等の外来医療▽在宅医療と訪問看護▽医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進▽後発医薬品の使用促進策――の4調査を実施する。
 医師の勤務状況については、2018年度の改定で医療従事者の常勤配置や勤務場所に関する診療報酬要件を見直したほか、「医師事務作業補助体制加算」など医師や看護職員の負担軽減を目的にした点数を充実した効果を検証する。

 「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」の調査対象は、「医師事務作業補助体制加算」を算定している医療機関と算定していない医療機関それぞれ750施設ずつ計1500施設を無作為抽出し、調査票を施設と医師個人の双方に配る。医師の対象は1施設当たり4人で、外科系1人、内科系1人、その他2人で構成するよう求める。対象医師数は6000人に上る。
 医師個人に対する主な質問は、(1)医師経験年数や役職、勤務形態、主治医制の状況などを聞く「ご自身について」、(2)1週間の勤務時間、診療時間、事務処理時間や1カ月の当直回数・オンコール回数などを聞く「勤務状況等」(下記参照)、(3)医師の増員状況や勤務間インターバルの導入、予定手術前の当直免除の有無などを聞く「業務とその負担感等」、(4)「病棟薬剤師による業務の負担軽減等」、(5)勤務状況を改善する必要性などを聞く「あなたの勤務状況に関するご意見等」――で構成する。
(略)

正直今さら感が少なからずあるのですが、今回に関して言えば診療報酬との関連づけと言う文脈での調査である点がポイントと言え、今までと同様診療報酬による医療の誘導を図っていく考えなのだろうと思います。
この点で負担軽減に関連する項目を見てみると、基本的に大きな基幹病院を対象にした項目に偏っている印象で、当然そうした大病院ほど多忙な場合が多いわけですが、実態把握と言う点でやや不満も残ります。
調査として考えれば毎回同じ項目で調べなければ改善、増悪の判断もし難いはずですが、むしろ医師の負担軽減と言う点ではこちらのニュースの方が注目に値するのではないかと言う気もしますがどうでしょうか。

医師偏在指標、全国一律に「医師多数区域」「医師少数区域」を設定(2018年9月30日医療維新)

 厚生労働省は9月28日の「医療従事者の需給に関する検討会」の第23回医師需給分科会(座長:片峰茂・長崎大学前学長)で、2019年度から都道府県で策定作業が始まる医師確保計画で設定される「医師少数区域(仮称)」と「医師多数区域(仮称)」を決めるための「医師偏在指標」の計算方法を提示、大筋で合意を得た。診療科別の偏在指標も必要とし、まずは産科・産婦人科、小児科で取り組む考えを示した。

 2018年7月に成立した改正医療法・医師法では、▽新たな医師の認定制度の創設(2020年4月施行)、▽医師確保計画の策定(2019年4月施行)、▽外来医療機能の可視化/協議会における方針策定(2019年4月施行)、▽都道府県知事から大学に対する地域枠/地元枠増加の要請(2019年4月施行)、▽都道府県への臨床研修病院指定権限付与(2020年4月施行)――が予定されている。
 都道府県ごとに策定する医師確保計画では、二次医療圏を基本として「医師少数区域(仮称)」と「医師多数区域(仮称)」を設定し、医師の派遣調整を行うことが求められる。ただし、「医師の確保を特に図るべき地域」の定義には「医師少数区域」だけでなく、二次医療圏より小さい区域で「無医地区」「準無医地区」「知事が厚労大臣と協議の上で定める地域(離島や山間部等のへき地)」も指定できるようにする考えを示している。
 区域の設定に当たっては、全国共通の指標を使って一律に比較し、一定の上位、下位の地区を指定する方針で、その基準は今後、同検討会で議論していく。

 そこで、重要になるのが、「統一的・客観的に把握できる、医師偏在の度合いを示す指標」の導入だ。現在、一般的に使われている「人口10万対医師数」では診療科や年齢分布、患者流出入などが考慮されておらず、統一的な「ものさし」にはなっていないという指摘があった。新たに導入する指標は、医師の性別、年代による労働時間の違いを調整した「標準化医師数」と、人口10万人対医師数をベースに地域ごとに性年齢階級による受療率の違いを調整したもので勘案するというもの。
 計算式については概ね合意が得られ、厚労省は2018年度中に結果を公表する。慶應大学教授の権丈善一氏は「ニーズに基づくのは一歩も二歩も前進。ニーズの代理指標は人口と年齢がベースになり、同じ年齢の人たちは、どこに住んでいても同じアクセシビリティを保障していこうという考え。標準的な平均値が普通で、そこから外れる地域は、挙証責任として理由を言ってもらうようにすべき」と指摘した。聖路加国際大学学長の福井次矢氏は「理想的な分布、受療行動をグランドビジョンとして考えていただき、理想に向けての働きかけも必要」と述べた。厚労省は「基本的には全国均一の受療率があり得るべきものとして平均化する。それが理想かどうかは難しいところだが、過剰な受療行動があれば是正しなくてはならない」と説明した。
(略)
 同検討会では、医師偏在指標以外についても、医学部における地域枠、地元出身者枠の在り方、外来医療提供体制、医師少数区域勤務認定制度などについても議論し、2019年3月までに取りまとめる予定。
(略)

これも印象レベルの議論で徳島では医師が余っているとか言っていても仕方がないことなので、具体的な数字比較が出来ることにこしたことはないのですが、不足だけではなく過剰な受療行動の是正云々もポイントでしょうか。
具体的な計算式の内容がわからないので何とも言いがたいのですが、都道府県毎に地理的要因の影響も大きく、県土の広さや交通網の整備度合い、雪など自然災害の有無など様々な要因が絡みそうです。
ただそうは言っても地域医療構想は都道府県単位で策定されるものであり、県内での医師分布を検討する上では有用な指標になる可能性がありますが、問題は偏在をどう解消するのかと言う方法論です。

僻地に医師が少ないからと強制配置をしようと思えば当然反発も大きいのですが、自治体の権限が及ぶ医師派遣や病床数コントロールでどれだけ対応出来るのか、診療報酬のあり方にまで踏み込むべきなのかです。
ちょうど先日は聖地奈良県が県内の診療報酬一律カットを主張していましたが、地域内での医師配置是正を図る上で診療報酬の柔軟な設定が有効な可能性もあり、主体的に決めたい自治体もあるでしょう。
他方で都道府県単位を越えた医師偏在の是正はどうすべきかですが、偏在是正とはつまりは医師の引き抜き合戦であるとも言え、余っているからと医師を引き抜かれていく側にとっては全くありがたくない話ですよね。
医師が減ることによるデメリットの軽減や、そもそも医師が少ないほどメリットが大きくなる提案などが為されない限り、地域内であれ地域間であれ偏在是正とはそれなりに大きな騒動の火種になりそうには思います。

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コメント

>僻地に医師が少ないからと強制配置をしようと思えば当然反発も大きいのですが
反発以前に、どのような法律を作れば強制配置可能になるのでしょうかね?

投稿: 麻酔フリーター | 2018年10月 2日 (火) 16時45分

麻酔フリーター様
医師国家試験合格者を全員国家公務員にしたらよいのてはないでしょうか?
有期限でもある程度は効果的かと…

投稿: 耳鼻科医 | 2018年10月 3日 (水) 08時20分

↑先生!開業医は如何いたしましょうかw?

投稿: 10年前にドロッポしました | 2018年10月 3日 (水) 09時48分

都市部の開業規制で僻地に誘導すべきかと

投稿: | 2018年10月 3日 (水) 11時30分

全員国家公務員にして管理したらどうなるか、ちょっとシミュレーションしてみたいような気はします。
ただ、空気を読まずに医師を配分したら、全国まんべんなく足りなくなりそうなのと、
研究している医者や保健所の所長や厚労省の医官や産休育休中の医者がどのような扱いになるのかが気になります。

>都市部の開業規制で僻地に誘導すべきかと
これをやると、僻地とされた場所のなかで一番マシな場所に医者が集まるだけで、多くの僻地には医者が行かないと思います。

投稿: クマ | 2018年10月 3日 (水) 15時43分

新たに医師になる人たちから国家公務員にしていくたけでよいのでは?
最初は混乱するでしょうが,そのうち安定します.研修医制度導入の時と同じでしょう.

投稿: 耳鼻科医 | 2018年10月 3日 (水) 16時43分

勤務医については診療報酬による誘導が効きにくいので、当面は公立基幹病院を中心とする医師派遣を求める形になるのではと感じています。
特定病院に勤務したい医師はそこでしか出来ない何かを求めている場合が多いと思うので、それに対する代価として一定程度の社会奉仕を求めることになると言うことでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2018年10月 3日 (水) 17時14分

全員国家公務員ねえ。嫌がるの人を公務員にするような法律作れるでしょうか?憲法との整合性もあやしい。で、飲酒運転ひき逃げとか、懲戒解雇になるようなことをした公務員医師をどのように処遇するのでしょうか?また転勤拒否した公務員はどう処遇するのでしょうか?(警察や消防でも、出世には影響するでしょうけど、直ちに解雇はしていないでしょうし、できないと思います。)
そんな細かいことはおいておいて、公務員身分保障すると、サボることは自明ですし。

投稿: 麻酔フリーター | 2018年10月 3日 (水) 19時23分

追加すると、財務官僚が絶対に飲まないでしょうし、永遠に強制配置ないと同義ですなあ。個人的にはどうでもよいけど。

投稿: 麻酔フリーター | 2018年10月 3日 (水) 19時28分

>公務員身分保障すると、サボることは自明ですし。

奴隷医ドモにサボる気概なんぞあるワケないじゃないですかヤダーwww

投稿: 10年前にドロッポしました | 2018年10月 5日 (金) 10時26分

公務員になってしまえば、厚労省の身内なんだから、負担軽減してもらえるんじゃナイ?

投稿: | 2018年10月 5日 (金) 14時14分

>公務員になってしまえば、厚労省の身内なんだから、負担軽減してもらえるんじゃナイ?

厚労省官僚がえげつないサービス残業しているみたいですから、期待薄ですねえ。

いろんな意見があるでしょうけれども、医師を全員国家公務員にするというのは、JRを国鉄に戻すようなもので、ほとんどの人が幸せにならないような気がします。

投稿: クマ | 2018年10月 6日 (土) 11時58分

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