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2018年9月18日 (火)

終末期医療、手段としての議論は進む一方で

先日ちょっとした話題になっていたのがこちらのニュースです。

がん3年生存率71% 膵臓は15%、高齢者も課題 国立センターが初集計 治療効果、早期に把握(2018年9月12日共同通信)

 国立がん研究センターは11日、2011年に全国のがん診療連携拠点病院でがんと診断された患者の3年後の生存率は、がん全体で71・3%だったと発表した。3年生存率をまとめるのは初めて。継続的に分析することで、新しい薬や治療の効果を早く把握できるようになり、がん対策に活用できるとしている。
 膵臓(すいぞう)がんの3年生存率が15・1%にとどまるなど、5年生存率が低いがんは3年でも低い傾向がみられ、がんの治療法開発が課題として改めて浮かび上がった。また高齢がん患者では、持病などがん以外の病気で死亡する例が多いと考えられることも判明。全身状態に配慮したきめ細かい治療体制の確立も求められる。

 拠点病院のうち268施設の患者約30万6千人を分析。主要な11種類のがんについて、がん以外の死亡の影響を取り除いた「相対生存率」を算出した。治療成績を評価する指標として同センターはこれまでに5年や10年生存率を発表しているが、3年生存率は短期間で集計できる利点がある。
 種類別は、肺がんが49・4%、食道がんが52・0%、肝臓がんが53・6%と比較的低い結果となった。一方、前立腺がんは99・0%、乳がんは95・2%、子宮体がんは85・5%と比較的高かった。
 08~09年に診断された患者の5年生存率も公表。全体の生存率は65・8%で、08年単独集計の65・2%と比べるとほぼ横ばいだった。詳しく調べると、患者の約半数を占める70歳以上では、がん以外の死因が多いことが分かった。心臓病や糖尿病などの持病のほか事故が原因と推測される。
(略)

当然ながら膵臓癌のように発見された時はすでに進行しているケースが多い癌では生存率は低くなるのだろうし、胃や大腸など早期発見早期治療が増えている癌では非常に好成績になるだろうとは予想出来ます。
単純に記事に挙げられた数字だけを比べてもあまり意味がない話ですが、強いて言うなら癌と言っても今や結構長生きする時代になったのだなと言うことで、癌と言われれば直ちに死を覚悟と言うものではないわけです。
無論手術で癌を取りきって経過観察している状態の患者と、進行した癌を抱えながら日々治療を頑張っている患者では全く話が違うとは言え、後者の場合も今や年単位の余命は珍しくない時代ではありますね。
ただそうは言ってもやはり月日が経ち状態が悪化していくにつれ、いずれは終末期へと至る患者もいらっしゃるのは事実なのですが、先日終末期医療に関してこんな記事が出ていました。

<終末期医療>延命中止、意思確認に力点 自民、新法検討(2018年9月16日毎日新聞)

 自民党は、終末期医療のあり方を規定した新法作成の検討に入った。終末期医療を巡っては2012年に超党派の議員連盟が尊厳死法案をまとめているが、本人の意思に反して延命措置が中止されることへの懸念が根強い。同党は、法案を抜本的に見直し、継続的に本人の意思を確認するなど手続きに力点を置いた新たな法案への練り直しに着手。与野党各党の賛同も得て早ければ来年の通常国会への提出を目指す。【酒井雅浩】

 末期がんや老衰により回復の見込みがない患者に対し、人工呼吸器の装着や人工透析などの延命治療を施すのは、患者の苦痛や家族の介護負担などを考慮すると必ずしも患者のためにならないとの考え方がある。一方で、現行法では医師の延命措置の中止が刑事責任を問われる恐れもあり、医療従事者を中心に法整備を求める声が出ていた。
 12年の法案は「終末期」について患者が適切な医療を受けても回復の可能性がなく、死期が間近と診断された状態にある期間と定義。延命措置を中止できるのは、患者が書面などで意思を表示している場合とした。ただし、この規定に従わずに延命措置を中止することもできるとしている。

 だが、終末期患者の7割は、意識不明や認知症などのため自分の意思が伝えられないとのデータもある。障害者の団体などからは「意思を示すことができない患者が尊厳死に追い込まれるのではないか」などの懸念が示された。法案は国会提出に至っていない。
 そこで、自民党の終末期医療に関するプロジェクトチームは8月29日の会合で、法案をゼロベースで見直すことを決めた。

 近年、医療現場では、最期の迎え方を患者本人と家族、医師らが継続的に話し合う「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)の取り組みが進んでいる。継続的に話し合うので本人の意思の変化も反映できる。
 同党は新法案にACPの考え方を盛り込み、患者の意思決定のあり方の透明化を医療現場に促し、国民の理解を得たい考えだ。

この問題、ここ数年で各種ガイドラインが登場するなどかなり話が進んできた印象がありますが、患者サイドから求めがしばしばあったのに対し、医療側は法的責任追及を恐れ延命処置中止を渋る構図がありました。
医学的に明らかな終末期であり、当事者がいずれも延命的処置中止を望んでいる場合、それを可能にする裏付けに関して指針なり立法なりがあれば助かると言うのが多くの臨床家の実感ではないかと思います。
無論進歩的な団体の方々による根強い反対論に加え、いわゆる遠い親戚問題など現場が乗り越えるべきハードルは多いにせよ、全ての関係者が一致して求めている場合にも出来ないと言うのでは困りものですね。

ただこの問題に関しては本質的には患者の権利問題であり、議論の本筋もそうあるべきではあるとは言え、2012年頃から具体的な議論が進み始めた背景には医療費増加や医療崩壊の問題があることも否めません。
終末期と言えば当然ながら極めて状態が悪い重症患者であり、延命処置を続けるならばそれなりの医療リソースを投じる必要がありますが、その結果より必要性の高い患者に医療が行き届かないのでは問題です。
医療の供給量が限られている以上、個人レベルにせよ社会レベルにせよ一定程度の歯止めは必要で、出来ることは何でもやってくださいは通じなくなってきている時代ですが、では誰がその選別をするのかですね。
ひとまずは議論の余地なくと言う場合からの限定的な運用になるにせよ、あるべき医療の提供体制とはどうあるべきかと言う議論も平行して行っていかないと、結局現場が困ると言う構図はあまり変わらない気がします。

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コメント

意思表示もできないボ◯老人の意思に反するも反さないもないだろうに禅問答かよw

投稿: | 2018年9月18日 (火) 09時12分

若い頃から統合失調症を患っているご高齢の患者が身体的な治療を希望したのに
「患者は精神病で意思表示をする能力がないから患者本人が希望しても意味が無い」
と言い切ったクソな医者もいますからねえ・・・

投稿: クマ | 2018年9月18日 (火) 13時20分

当然ながら個々のケースに応じて弾力的な運用が求められるわけですが、ルールと言うものはしばしば厳密で硬直したものになりがちであると言う点で使い勝手が悪い面はありますね。

投稿: 管理人nobu | 2018年9月18日 (火) 19時25分

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