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2018年9月 3日 (月)

岐阜の高齢者医療施設で入院患者5人が熱中症で死亡

先日以来世間的には大騒ぎになっているのがこちらのニュースなのですが、恐らく医療業界の内外で受け止め方にずいぶんと差がありそうな事例でもありますね。

岐阜の病院死者5人に 84歳男性、熱中症か 病室、エアコン故障(2018年8月29日共同通信)

 岐阜中署は29日、エアコンが故障した部屋の入院患者4人が相次いで死亡した岐阜市の「Y&M 藤掛第一病院」で28日夕、患者の男性(84)が死亡したと発表した。同病院の死者は5人となった。同署は男性も熱中症で死亡した疑いがあるとみて、業務上過失致死容疑を視野に5人が死亡した経緯を捜査、司法解剖して死因を調べる。

 同署によると、男性は24日に入院、当初はエアコンが故障していた3階の病室にいた。28日午後6時40分ごろに死亡。その際、どこの病室にいたかは不明で、同署が詳しい状況を捜査している。
 この患者の成年後見人を名乗る男性(52)が同日午後8時40分ごろ、入院患者の死亡が相次いだことから、署を訪れ相談した。病院から県警への連絡はなかった

 病院などによると、26日午後8時40分~27日午前11時35分ごろ、83~85歳の男女4人が相次いで死亡。3階と4階の少なくとも10部屋のエアコンは20日に故障した。各病室の天井に吹き出し口があり、集中制御する構造だった。
 故障を受け、病院側は扇風機で対応する措置を取ったが、3、4人が定員の各部屋に1台ずつを置いただけだった。数人の患者はエアコンが故障していない2階の病室に移動させた。27日までに死亡した4人はエアコンの故障した部屋にそのままいた

 岐阜市は29日、病院に対し空調設備の状況を改善するよう指導した。病院には、除湿機とみられる機器数台が持ち込まれた
 28日に取材に応じた藤掛陽生(ふじかけ・ようせい)病院長は「エアコンの故障が死亡につながったとは考えていない。いつ容体が急変してもおかしくない症状だった」と説明した。

入院患者5人、病死判断 診断書に熱中症記載なし(2018年8月30日共同通信)

 岐阜市の「Y&M 藤掛第一病院」でエアコンが故障した部屋に入院していた80代の患者5人が死亡した問題で、病院側が5人の死因をいずれも病死と判断していたことが30日、岐阜県警への取材で分かった。死亡診断書に熱中症との記載はなかったという。
 医師法は医師が死体に異状を認めた場合、24時間以内に所轄警察署に届けなければならないと規定しているが、病院は5人の死亡をいずれも県警に通報していなかった。病院側が報告の必要な死亡と判断していなかったとみられる。

 市によると、病院には看護師や看護補助者のほか、非常勤の医師ら計36人の職員がいたが、常勤医師は藤掛陽生(ふじかけ・ようせい)院長1人だけだった。
 5人のうち何人かは重症の心不全や多臓器不全、肺の病気のため入院していたとみられる。県警は28日、病院を捜索し、カルテなどを押収。生前の病状と死亡との因果関係を調べるため、一部の患者について29日から司法解剖を始めた。
(略)

入院患者5人死亡 エアコン故障の各病室に扇風機1台のみ 院長「暑い方がいいという人もいた」(2018年8月29日東海テレビ)

(略)
 岐阜市などによりますと、病院は、エアコンが壊れたそれぞれの病室に家庭用の扇風機を1台しか置いていませんでした。
藤掛陽生院長(28日):
「患者の中にも暑い方がいいという人もいたので残ってもらってることも」

 警察は、病院が暑さ対策を怠り5人が熱中症で死亡した可能性があるとみて調べています。
 また、岐阜県などは29日も病院への立ち入り検査を続けていて、医療法に基づき病室の使用を禁止する制限命令を出すことも検討しています。

記事を見る限りでもおおむね想像はつくと思いますがこの藤掛第一病院なる施設、療養病床119床を有する老人医療の専門病院で、高齢者のご臨終までの終末期医療を担当することを役割としています。
病院サイトでも診療方針として「与えられた範囲内での最高の質の医療を施し、最善の努力をする」と記されていることが非常にリアルに感じるのですが、限られたリソースで地域医療の最下流を担っていると言えますね。
たまたま岐阜がこの夏に記録的な猛暑に見舞われていたことが不運だったとは言えますが、この種の老人施設では毎日何かしらの事情でお亡くなりになっていくわけで、本来こうした大騒ぎになる話ではなかったとも思えます。
その意味で今回注目したいのが何故こうして大々的な問題になったのかですが、記事を見る限りでは遺族の一人が警察に駆け込んだことが発端であったようで、いずれ民事訴訟でも争われることになるのでしょうか。

病院側としてもこの猛暑の中、エアコン故障に対してただ業者の手が空くのを待っていただけと言うのは努力不足と言われる余地はあり、特に問題が表面化してから冷風機を新たに導入するなど後手に回っている印象です。
一方で報道を見ていて気になったのが警察に届け出なかったことを問題視している点ですが、今回の場合明らかな病死であって死因にも疑いの余地はなく、また外表異状もないわけで常識的には異状死体ではないと思われますよね。
ただ異状死体とはそもそも犯罪に関わりのありそうな死体に関して、警察の捜査が容易になるように届け出を求められていると言う経緯があり、警察が業務上過失致死で捜査をしている点から逆算するとどうなのかは気になります。
異状死体とは外因死の疑われる死体であると考えると、熱中症による死亡は外因死だろうとも言えますが、今年の夏にも大勢出た熱中症による死者をどれだけの医療機関が警察に届けているのかと言う話でしょう。

報道と言えば病院側が杜撰であるとかいい加減だと言った批判的な論調も多いのですが、繰り返すようですが熱中症でなくとも感染症の蔓延など療養型ではこの手の大量死亡事例は全く珍しくありません。
そもそもが回復の見込みがない終末期の患者や寝たきりの高齢者が、言ってみれば亡くなるために入院しているわけで、何か想定外のことが発生すれば容易に状態が急変し死につながるような患者ばかりであるわけです。
そうした状況が気に入らない、何かあれば絶対助けろと言うならそもそも入院させるべき施設ではないし、大多数の家族はこうしたことは了承した上で入院されていると思いますが、中にはそうではない方々もいらっしゃるでしょう。
今回のようなケースがあってはならないことにされてしまえば、今後は慢性期や療養型の受け入れ要件がさらに厳しくなってくると思いますが、結局そのつけはいずれ急性期医療の破綻と言う形で顕在化していくのでしょうか。

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コメント

5人目の家族が通報?4人目の時点でニュースになってた気が。

投稿: | 2018年9月 3日 (月) 08時44分

この夏の猛暑でエアコンが動かないとなれば、根本的にはエアコンの修理が出来るまでエアコンが効くところに避難させなければ無理というもので、
そのような避難がこの病院内で困難、ということであれば他の病院を探さなければならなくなります。
ただ、数十人単位で転院の必要な患者が一度に生じた場合、転院を実行に移すのは用意ではありません。
災害であればDMATが動いてくれますけれども・・・

投稿: クマ | 2018年9月 3日 (月) 13時19分

医学的な対応としての妥当性はともかくとして、報道やテレビニュース等で見る限りこの院長先生ももう少しマスコミ対応をうまくこなせなかったのかと言う印象は抱くところでした。

投稿: 管理人nobu | 2018年9月 3日 (月) 15時24分

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