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2018年7月 4日 (水)

推進が期待される医師の働き方改革、その阻害要因とは?

先日は医師の働き方改革に対する厚労省側の見解を紹介しましたが、同じ病院学会で医療系団体からはこんな発言があったそうです。

「医師と個別に契約書」「専門医も総合的なマインドを」(2018年6月30日医療維新)

 金沢市で開催された第68回日本病院学会で6月28日、「今後の医療・介護の行方~地域・包括医療・ケアを中心に~」をテーマに、特別シンポジウムが開かれ、医療関係団体のトップら4人が登壇。地域医療・介護の提供体制そのものよりも議論になったのは、その担い手である医師の働き方や求められる医師像だ。
(略)
 特別シンポジウムに登壇したのは、日本医師会会長の横倉義武氏、日本病院会会長の相澤孝夫氏、全日本病院協会会長の猪口雄二氏、地域包括ケア病棟協会会長の仲井培雄氏。司会は、全国自治体病院協議会の前会長で、赤穗市民病院名誉院長の邉見公雄氏が務めた。

 相澤氏は、自身が理事長を務める社会医療法人財団慈泉会の相澤病院(長野県松本市)では、医師一人一人と業務内容と給与を記載した契約書を交わしていることを紹介した。「『先生には、これだけの仕事をやってもらいます。だから給与はこの額です』と提示している。こうしたことをやらないと、多分もたない」と相澤氏は説明。医師によって得意分野、可能な業務内容や業務量は異なる。ワーク・ライフ・バランスについての考え方も違う。個々の医師に対して、あらかじめ業務内容や業務量を規定し、それに応じた給与を規定することにより、皆が納得感を持って仕事ができる体制を構築するという発想だ。「排除するのではなく、皆を巻き込んで、うまく人材を活用することが必要」(相澤氏)。

 横倉氏は、「労働基準法通りにやると、地域医療は崩壊してしまう。『医療、医師は特別』とは言わないが、医療の現状を理解してもらい、どこまで医師の働き方改革ができるかを検討していく必要がある」とコメント。日医主催で、四病院団体協議会、全国医学部長病院長会議などが参加する「医師の働き方検討会議」の報告書がまとまったことを紹介。「若い人の意見も取り入れた。労働法制の方にも理解いただける内容」(横倉氏)。医師の働き方改革の基本的考えとして、一つは医師と医療の特殊性を洗い出すこと、もう一つは医師の健康を確保するためには何が必要かを考え、各医療機関での実施を徹底することを挙げ、横倉氏は「医師の自己研鑽が労働に当たるかどうか、宿日直の在り方、オンコールの労働性などの議論が今後、必要になってくる」と述べた。
 さらに横倉氏は、「国民の理解を得る必要がある」とも指摘した。「国民皆保険下では、いつでも、どこでも、誰でも受診できる。このアクセスの良さを現状のまま維持することができるか、国民に考えてもらうことが必要」と述べた。
(略)
 仲井氏は、「ハイクオリティー、ローコスト、フリーアクセス」の全てを維持するのは無理との考えを示した。自身の経験を踏まえ、原則60日以内の入院となっている地域包括ケア病棟について、早期退院の努力をして30日など短期間で退院させた方が、60日の入院よりも収益性が低いなどの問題点を指摘、診療報酬体系に改善の余地があることを示唆した。
(略)

病院学会でのコメントですから、当然ながら医師よりは病院の側に立った内容となっているものと言えますが、日医などの立場を見るとやはり経営者的には現状維持最優先なのだなと言う印象を受けます。
この点で先日の医政局長からは「一番良くないのは、何も変わらない、何もしないということ」と言う発言がありましたが、久しく以前から医師の労働環境の悪さが指摘される中で、ようやく今からの議論なのかとも感じますね。
いずれにしてもこれだけ世間が労働環境改善に目を向けている中で、医療業界だけが必至に抵抗を続けていれば嫌でも注目を集めざるを得ませんが、労働量そのものを根本的に減らせるかも重要な課題です。

仲井氏が指摘するように診療報酬の設定にも問題があり、現場が努力し医療コスト削減を進めることが経営上かえってデメリットになるのであれば、医療費の際限なき増加を招き医療財政を破綻させかねません。
それを避けようと診療報酬が削減されれば、減収を避けようとする医療機関が薄利多売に走り不要不急の医療需要を喚起し、さらなる現場の疲弊を招いてきたと言う側面はこれまでにも見られたことでした。
他方で日本の医療の構造的な問題として、応召義務とフリーアクセスの存在が際限ない医療需要の増加を招くと言う指摘がありますが、特に後者に関しては日医ら医療団体がその維持を主張してきた経緯もあります。
当然ながら労働量削減のための根本的対策としてフリーアクセスの制限を求める声も根強くありますが、これに強硬に反対してきた日医の代議員会の場で先日こんな発言があったと言います。

「受療行動変革、一層進める」日医横倉会長(2018年6月27日医療維新)

 日本医師会会長の横倉義武氏は6月24日の第143回日医臨時代議員会で、国民の受療行動は変化してきているとの認識を示した上で、「これからの超高齢社会、少子化による人口減少社会に向け、国民の受療行動の変革を一層進めていかないといけない。かかりつけ医機能を推進していくことが非常に重要」と述べた。宮城県代議員の橋本省氏の代表質問に答えた。

 橋本氏は、日本の患者は大病院指向が強く、軽症でも大病院に行くことや、救急外来を受診して専門医の診察を要求する例が少なくないことなどから、勤務医の負担が過剰であると指摘。特に急性期病院で労働基準法を守るためには医師の増員が必要だが、それは不可能で、医療を縮小するしかないがそれもできないという現状を訴えた。
 さらに、フリーアクセスに変化が必要であるとも説明。まずはかかりつけ医を受診して必要に応じて専門医の紹介を受けることや、コンビニ受診抑制といった受療行動変革の必要性について、日医の見解を尋ねた。

 横倉会長は、大病院と、中小病院や診療所の外来の機能分化の観点から大病院の直接受信の是正の重要性を指摘。今年4月の診療報酬改定で紹介状なしの大病院受診時の定額負担徴収義務がある病院の対象が、従来の特定機能病院と一般病床500床以上の地域支援病院から、許可病床400床以上の地域支援病院に拡大されたことを挙げ、対象病院の要件と負担額の分析や、初診だけでなく再診にも広げていくことにも言及。国民の意識変革を促し、ヘルスリテラシーを高めていくことは「医師会の使命だ」との見解も示した。


「医師少数区域勤務で所得税優遇を検討」中川日医副会長(2018年6月24日医療維新)

(略)
 中川副会長は、牧角氏の3つの指摘について、以下のように回答。
(略)
 第二の「医療現場での労働環境の整備」については、「地域医療の継続性と医師の健康への配慮の両立が不可欠であり、労働時間だけの問題ではない」とし、日医に「医師の働き方検討会議」を設置し、慎重に議論をしていると説明。「例えば、かかりつけ医機能の推進や外来機能の分化を進め、国民に分かりやすい形で示し、受療行動の在り方を考えてもらうことも必要だろう。また、病院と診療所の連携、病院内の医療関係職種との連携など、地域医療連携、多職種連携が重要」などと述べ、都道府県医師会が、地域住民の方への啓発活動をはじめ、地域全体の課題として検討するよう働きかけた。
(略)

直接的な受診抑制を求めているわけではないものの、日医が国民にフリーアクセスの制限めいたことを求めるとは興味深く、それが勤務医の過労改善など医師労働環境整備の文脈で出ている点が注目されますね。
形の上ではイギリスのNHS的なゲートキーパー機能を容認しているようにも受け取れるコメントですが、これこそまさしくフリーアクセスの制限に他ならず、日医の過去の主張との整合性はどうなのかと気になります。
無論制度としてNHS方式の受診抑制策を認めるとも思えませんが、診療報酬の格差設定などで実質的に大病院の直接受診を抑制することは可能であり、日医もそこは容認していると言うことでしょうか。

元々は診療報酬設定の問題もあり、有名な話では病院に対して開業医での診察コストを高く設定した結果、患者が診察費が安上りで各科専門医が揃っている大病院に集中してしまったという過去の経緯もありました。
最近は選定療養加算などで大病院受診を抑制しようと言う動きも見られますが、根本的には全国どこでも一律の診療報酬が設定されているのも問題で、患者とすれば同じ料金なら大病院志向になるのは当然です。
日医としては開業医への診療報酬を安く、病院は高くと言う設定には断固反対と言いたくなるでしょうが、結局問題となるのは個々の診療報酬がどう設定されるかではなく、医療機関トータルでの収入が増えるのか減るのかと言う点にあるはずです。
大病院にかかれば支払いが高くつくとなれば自然に開業医への受診も増え、結果的に安い診療報酬設定でも増収になる可能性はあるわけで、日医としても損して得取れの精神で診療報酬の格差設定を容認いただきたいところですね。

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