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2018年7月 2日 (月)

抵抗根強い医師の働き方改革、その推進力となるものは?

医師の働き方改革と言うことに関して、医療系団体からはいかにして医師を持続的継続的に労働させるかと言う観点からの発言が相次いでいますが、一方で先日厚労省医政局長からこんな発言があったそうです。

「真の医師の働き方改革とは何か」、武田厚労省医政局長(2018年6月28日医療維新)

 厚生労働省医政局長の武田俊彦氏は6月28日、金沢市で開催された第68回日本病院学会で「将来を見据えた医療提供体制の構築に向けて」をテーマに、特別講演した。「医師の働き方をどのように規律すれば、真の『働き方改革』になるのか」と問いかけ、「単に労働時間を短くする」のではなく、医師という職業の特殊性、医師の健康管理、地域医療への影響などを総合的に勘案して、検討していく必要性を強調した。
 「結局、今の働き方をある程度、維持できる、認める形での規制をしなければいけない一方、どのような統計データを取っても、今の医師の働き方は圧倒的に長時間労働であるのも事実。地域医療を守りながら、これから医師を目指す若手のことも念頭に置き、健康確保の方策について、われわれ医政局として医療行政の一環として考えていかなければいけない。また、たくさん働いている医師には、それに応じた賃金が支払われることも必要」(武田氏)
(略)
 武田氏は、「医師の特殊性」としてよく指摘されるものとして、(1)医師の特性・社会的要請に関するもの(人の生命を扱う公共サービスであるなど)、(2)医師の供給面に関するもの(医師養成には長時間を要する、業務独占など)、(3)医師の職業倫理に関するもの(患者を最優先に考えるなど)、(4)使用者との関係に関するもの(診療方針は、医学的判断によって担当医師・チームが立てるなど)――を挙げた。
 医師以外の専門職として、大学教授、民間組織の研究員、弁護士、新聞記者、本社の企画職(ホワイトカラー)、管理職、ディーラー・アナリストを挙げ、「いずれも何らかの労働時間規制がある。なぜここに医師が入ってこなかったのか。それは医師自身が自分を労働者として認定していなかったという面があるだろう。医師の働き方改革は、取り残された問題であり、今回はしっかりとした議論をすることが必要」(武田氏)。

 その上で、武田氏は、「医師の働き?改?に関する検討会」のこれまでの議論を踏まえ、「私見」と断り、(1)労働法の観点から、医師の働き方をどのように規律すれば、真の『働き方改革』になるのか、(2)医師が健康に働き続けられる勤務環境とはどのようなものか、(3)その他、必要と考えられる視点――の3点を提示。
 (1)については、外来や手術、自己研鑽、宿日直など、「密度が異なるさまざまな仕事」を手がける医師の勤務の特殊性などを踏まえる必要性を指摘。一方で、自己研鑽は「良質かつ適切な医療を行う」ための大前提であり、「自己研鑽を抑制するような規律の仕方であってはならないのではないか」との見解を示した。
 (2)については、「単に時間を短くすればいい、わけではないのではないか」と問いかけた。「一人一人の医師がやりがいを持ちながら、無理をせず経験、研鑽を積むことができることが重要なのではないか」とする一方、「勤務時間インターバル」(終業から始業までの間隔)の設定、連続労働時間や当直回数の制限、完全休日の設定などにより働きづめにならないこと、メンタルヘルスなどの健康管理の必要性も挙げた。
(略)
 武田氏は、医師確保対策、地域医療構想、医師の働き方改革は相互に密接に関係する問題であるとも指摘。地域医療構想について、「もともと必ずやらなければいけないことについて、国として枠組み、財源、ツールを用意した」と説明。「一番良くないのは、何も変わらない、何もしないということ。その結果、経営が悪化し、医師が来なくなり、患者の満足度が低下してしまう」とし、改革を進めれば、経営的、医療機能や医師の確保でもいい影響が出てくるとした。
(略)
 さらに「日本の医師数は少ないのか多いのか」と武田氏は問いかけ、日本の人口は減り始めている一方、2008年度以降の医学部定員増で医師数は増えていることから、「人口10万人当たりの医師数は、今までの伸びのトレンドから、上方にシフトする。医師不足は、マクロにおいては解消されつつある」との見解を示した。一方で、いまだ医師の偏在は解消されていないことから、「偏在対策は強力に実施していかなければいけない」とし、医療法・医師法改正法案に盛り込まれた一つである、「医師需要の見える化」を、人口構成や患者の流出入の補正をしながら取り組む重要性を強調した。
(略)

シンプルに考えるなら、日勤の給与に対して当直や時間外の給与を2-3倍くらいに設定すれば、現場の不満や不公平感もかなり解消されるかとも思うのですが、医師偏在と言うなら労働量の偏在も解決すべき課題の一つでしょうね。
それはさておき、「結局、今の働き方をある程度、維持できる、認める形での規制をしなければいけない」と言うコメントがまた異論を呼びそうですが、認めて欲しいのは誰なのかと言う視点は必要ですね。
病院を経営する立場からは医師を労基法無視でどんどん働かせられる事が望ましいのでしょうが、今後そうした働かせる側の論理に対して異なる意見を持つ医師はますます増えそうです。
特に新臨床研修制度導入以来、自分で自分の望む職場を探し就職するのが当然となった若手医師にとって、何故望みもしない過酷な労働環境を強いられなければならないのかでしょう。
「何も変わらない、何もしない」施設では今後ますます医師確保が難しくなりそうですが、そうした施設を医師不足だと制度的に救済すべきなのかどうか、議論は別れるところでしょうね。
いずれにせよ厚労省とは厚生行政のみならず労働行政も担っており、医療の特殊事情ばかり忖度するわけにはいかない道理ですが、労働行政の面から先日興味深いこんな記事が出ていたことを紹介してみましょう。

違法残業監視に民間の力 厚労省、対策強化へ委託(2018年6月25日共同通信)

 厚生労働省は7月から働き方改革の一環として、民間の力を借り、残業に関する企業の監督体制を強化する。具体的には、残業をさせる際に労使で結ぶ「三六協定」の届け出がない会社に対し、厚労省の委託を受けた事業者が調査票を送り、現状を記入させ、回答に応じて専門家が指導する。労働基準監督官による従来の立ち入り調査と組み合わせることで、これまで手が回らなかった多くの企業に目を光らせる狙い。

 労働基準法は労働時間を「1日8時間、週40時間」などと定め、それを超えて働かせるには同法36条に基づき協定を結ぶ必要があるが、協定がない違法状態で残業をさせている企業は多い。厚労省の2013年の調査では、約1万の企業のうち、協定を結んでいたのは約半数だけ。締結しない企業に理由を尋ねると「協定を知らなかった」という回答が多かった。
 事業所は全国に約400万あり、計約3千人の監督官では指導にも限界があった。監督の実施率は16年で4%程度にとどまっていた。

 今回の新事業では、委託先から企業に送る調査票に(1)協定締結の有無(2)労働時間の状況(3)就業規則策定の有無―などを記載。問題が確認されたり、事業所から相談を求められたりすると、弁護士や社会保険労務士、監督官OBらが改善を指導する。
 当面の対象は従業員10人以上の約45万事業所。長期間回答しないなど、悪質な事業所を把握できるだけでも違法残業監視への大きな進歩となるという。

 政府の規制改革推進会議は昨年5月の答申で、一部事業の民間委託を盛り込んでいた。一方、労働問題に詳しい弁護士らからは「監督官の増員が先決だ」との指摘も出ていた。

この種の民間委託と言えば10年余り前から駐車禁止の取り締まり業務が民間委託されましたが、その結果何でも杓子定規に作業が行われるようになり取り締まりが以前よりも厳しくなったと言う声があるそうです。
ある程度権限のある人間であれば自分の責任で判断する余地がありますが、限定的な権限しか与えられていないスタッフであればルール通り行動するしかないのは当然で、空気を読まない厳しい対応が期待されますね。
民間導入の暁には、今までのように医療だけは特別だと斟酌することのないようお願いしたいですが、大学病院レベルでも三六協定すら締結されていないような遵法精神に欠ける業界では取り締まりのしがいがありそうです。
労基法違反の取り締まりもレセプトチェックのように厳しく行われるようになれば医療の世界もあっと言う間に変化が進みそうですが、こうした外力でも利用しない限り医療の世界もなかなか変われないのかも知れません。

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コメント

>残業をさせる際に労使で結ぶ「三六協定」の届け出がない会社に対し、厚労省の委託を受けた事業者が調査票を送り、現状を記入させ、回答に応じて専門家が指導する。

救済措置も兼ねて過労死された方のご遺族に委託しよう!(提案

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年7月 2日 (月) 09時52分

賛成

投稿: | 2018年7月 2日 (月) 12時09分

実際に導入されればより強力な対策になる可能性もありますが、迷惑駐車被害者を駐禁取り締まりに起用しないのと同様、客観性と公平性の担保と言う点でも難しいのではないかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2018年7月 2日 (月) 15時10分

医療過誤のご遺族に医療過誤取り締まりさせようって言ったら賛成する?

投稿: | 2018年7月 2日 (月) 15時45分

ブラック企業とか迷惑駐車とかはガンガン粛清していいんですよ。オレ様ブラック企業経営者じゃないし、オレ様のスーパーカッコいいマイカーは2台とも緊急往診用って名目で駐車禁止除外指定車だしw
*もちろん往診なんかしないww

>医療過誤のご遺族に医療過誤取り締まりさせようって言ったら賛成する?

うんそれは客観性と公平性が担保出来ないから反対w

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年7月 2日 (月) 18時10分

同類
https://buzzap.jp/news/20180702-kodo-professional-keidanren/

投稿: | 2018年7月 2日 (月) 18時55分

医療過誤のご遺族?割りばしの親とか、まだ記憶に新しい。奈良の産科事故の旦那とかも。実現したら、ある意味面白いことが起きそうですね。

投稿: 麻酔フリーター | 2018年7月 2日 (月) 19時11分

>https://buzzap.jp/news/20180702-kodo-professional-keidanren/

>>窒息死に向かう日本経済 (角川新書)
>>浜 矩子

解散w

そういえば医療崩壊華やかなりし頃、中医協に医療過誤のご遺族が名を連ねていませんでしたっけ?当時ネット医師に蛇蝎のごとく忌み嫌わられていたような…

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年7月 3日 (火) 09時11分

「医師自身が自分を労働者として認定していなかった」のが仮に事実だったとしても、
国が労働時間規制をしない理由になる理屈はさっぱり分かりません。

投稿: クマ | 2018年7月 3日 (火) 13時01分

蛇蝎のごとく忌み嫌わられていた、はさすがに言い過ぎかと
あの種の方々は決して加えてはならんとの教訓を残した、では如何?

投稿: | 2018年7月 3日 (火) 13時26分

過労死された方のご遺族も、企業からさぞかし蛇蝎のごとく忌み嫌われているでしょうな

投稿: | 2018年7月 3日 (火) 17時18分

電通に殺されたお嬢さんのお母様なんてさぞかし忌み嫌われているでしょうね。逆恨みもいいところですが…。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年7月 4日 (水) 09時23分

電通の母親なにかやらかしたの?

投稿: | 2018年7月 4日 (水) 17時55分

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