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2018年7月30日 (月)

職員過労死で国立病院機構が史上初めての書類送検

かつては一種聖域視されていた感のある医療機関に対して、このところ労基署が空気を読まずに踏み込む事例が増えてきている印象ですが、先日こんな興味深いニュースが報じられていました。

国立病院機構過労死で送検へ(2018年7月25日NHK)

宮崎県にある、国立病院機構が運営する病院でおととし男性職員が過労自殺し、労働基準監督署は男性に違法な長時間労働をさせた疑いで機構と当時の上司を近く書類送検する方針を固めました。
国立病院機構が労働基準法違反の疑いで書類送検されるのは初めてです。

おととし7月、宮崎県都城市にある国立病院機構・都城医療センターに勤める20代の事務職員の男性が自宅で自殺し、その後、過重労働による労災と認定されました。
関係者によりますと男性は電子カルテのシステムの更新を担当していましたが、都城労働基準監督署が調べた結果、自殺した年のひと月の時間外労働が多いときで150時間以上に達し、労使協定で定められていた上限の「3か月で120時間」を大きく超えていたことが分かりました。
このため労働基準監督署は、病院を運営する独立行政法人の国立病院機構と、当時の上司1人を、上限時間を超える違法な長時間労働をさせた労働基準法違反の疑いで近く書類送検する方針を固めました。
国立病院機構が労働基準法違反の疑いで書類送検されるのは初めてです。

関係者によりますと、都城医療センターにはタイムカードがなく、残業する場合は本人が勤務記録簿に手書きで記入する仕組みになっていますが、記録上では男性職員の残業時間は労使協定の上限内に収まっていたということです。
ところが労働基準監督署が男性のパソコン記録を調査した結果、違法な長時間労働の実態が明らかになったということです。
国立病院機構本部の金森勝徳職員厚生部長は「労働基準監督署の指摘も踏まえ、よりよい勤務管理に向けた取り組みを進めたい」と話しています。

医師ら医療職ではないにせよ、国立病院機構が労基法違反で書類送検されるのは史上初めての事例なのだそうで、これを機会に医療業界の正常化が進んでいくことを期待したいところですね。
労働時間は手書きの帳簿で管理されていたようで、実労働時間と明らかな乖離があったと言うことですから、職場内で明文化あるいは暗黙のルールとして残業記帳は何時間までと言った制約があったのかも知れません。
医師に対しても同様なシステムをとっている施設は少なくないと思いますが、今どきは電子カルテ記録で実際の労働時間がかなり把握しやすくなっているそうで、今後はますます摘発が進む可能性があります。
いずれにせよ医師の過労に関しては本人だけの努力ではどうにもならないものがあって、冒頭の記事でも上司が書類送検されている点に注目いただきたいところですが、この点に関して先日こんな記事を拝見したので紹介してみましょう。

月200時間超の残業…過労で起こした「死亡事故」で上司も書類送検、社会への影響は?(2018年5月12日弁護士ドットコム)

2017年の衆議院議員選挙の前日に、兵庫県川西市の選挙管理委員会の男性職員(50代)が起こした死亡事故を巡って、県警が4月23日、男性職員に加え、過労を知りながら運転を命じたとして、上司の選管事務局長(50代)も道交法違反(過労運転下命)の疑いで書類送検した。
(略)
今回の兵庫県警の判断を、専門家はどう評価するか。通勤中の「過労事故」についての事件を担当したことのある、川岸卓哉弁護士に聞いた。

●上司も書類送検「実態に即した適切な判断」
ーー今回男性職員に過労運転をさせたとして、男性職員の上司も道交法違反容疑で書類送検されました。どう評価しますか。
「刑罰の課される過労運転について、事故を起こした当事者以外の管理監督者の責任も追及されることになったことは、異例で画期的であるといえます。
しかし、これは本来は当然のことです。労働法上、使用者(会社側)には、労働者に過度に疲労を蓄積させて健康被害等を生じさせてはならないという『安全配慮義務』を負っています
今回の書類送検は、事故を起こした運転者の背景にある過労実態を適切に捉えて、真の事故責任者を処罰する判断をしたもので、実態に即した適切な判断といえます」

●刑事上も責任を問われることが明らかに
ーー今回の書類送検が与える影響について、どう考えますか。
「通勤途上の交通事故は、労働者の自己責任の範囲とされ、事業者の安全配慮義務違反が問われることはほとんどありませんでした。労災認定上も、『通勤災害』は通勤経路であれば労災認定されますが、事故の背景にある過労実態について調査されることはなく、事業者も対策を怠ってきました。
今回の書類送検によって、会社側が、過労状況に追い込んで通勤時に運転をさせた結果発生した事故について、民事上のみならず、刑事上も責任を問われる可能性があることが明らかになりました。各企業は通勤途上の過労事故を防ぐ対策を迫られると考えます」
(略)
今、社会問題となっている過労死や過労自殺について、かつては自己責任とされていましたが、裁判例の積み重ねの結果、真の責任者である会社側が責任を負うという考えが定着していきました。今後、潜在する過労事故についても、過労死の一類型として対策が進むことが求められます」

道交法違反と労基法違反では扱う主体も変わってくるわけですが、職場で過剰な業務を強いられ過労に追い込まれた被雇用者が事故を起こした場合、管理者も責任を問われることがあるとは当然の判断に思えます。
特に医師の場合法的に応招義務などと言うものを課されていることもあり、職場管理者はどうやって医師の過重労働を抑制するかの算段こそ必要になるはずですが、実際にそうした配慮が十分であるとはとても言えません。
無論可能な限りの配慮を行っても業務量が上回ると言うことはあるわけで、この場合は受診抑制や逆紹介など様々な手段も講じる必要がありますが、個々の現場医師がそれを行うのは実質的に不可能であると言えます。
この辺り最終的には全国統一の公定価格により、一定の数をこなさなければ経営が成り立たないと言う点も一因で、国としても違法労働が何故続くのかと言う点にも目を向けた対策が求められるところですね。

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コメント

マスコミは電通過労死で大騒ぎしたのにこっちはスルーだね

投稿: | 2018年7月30日 (月) 12時01分

犠牲者が医療専門職であればもう少し話題性が高まったかも知れません。

投稿: | 2018年7月30日 (月) 19時11分

>個々の現場医師がそれを行うのは実質的に不可能であると言えます。

「ブラック病院の存続、という一点だけに絞れば、話はそうならざるをえません。視野を全労働者の人権レベルにまで拡げれば、おのずと別の解決法がありましょう」
「その通り、彼が辞めればいいのだ」

投稿: 10年前にドロッポしました | 2018年7月31日 (火) 09時08分

各施設の管理者側の現状認識や対応の差異が次第に明らかになっていく中で、嫌なら辞めろと言う選択肢はそれなりの重要性を増してきている印象も受けます。

投稿: 管理人nobu | 2018年7月31日 (火) 11時45分

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