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2018年6月25日 (月)

千葉県の救急車を絶対断らない病院、救急搬送受け入れを停止

千葉県と言えばかねて救急医療崩壊の先進地として知られていますが、昨年その対策として千葉県議会では必ず救急搬送を受け入れる病院を指定すると言う勇気ある対策が講じられたことが報道されていました。
千葉市界隈で搬送先が決まらなかった場合、あらかじめ指定された3病院が必ず受け入れると言うものですが、それから約1年が経過した現在は予想された通りの経過を辿っているようです。

「救急断らない」中断 対象病院に集中、再開模索(2018年6月22日千葉日報)

 6月千葉県議会は21日、一般質問が始まり、自民党の佐野彰(千葉市中央区)、武田正光(流山市)、山本義一(八街市)、千葉民主の会の守屋貴子(市川市)、公明党の赤間正明(同市)の5議員が登壇した。県は、搬送先が決まらない救急患者を必ず受け入れる病院を事前に指定し、代わりに経費を補助する事業(昨年8月に千葉市内の3病院で開始)が、対象病院からの「搬送集中」の訴えで、停止していると明らかにした。対象病院の拡大を図り、今冬までに再開したい考え。佐野議員の質問に答えた。

 同事業は、2015年時点の消防庁調査で本県の平均救急搬送時間が東京都に次いで全国2番目に長い状況も踏まえ、試行的に開始。搬送時間の長さは病院が決まらないことが要因で、これを回避する狙い。
 試行は千葉医療圏(千葉市内)を対象とし、同市消防局とも調整した上で、同市中央区の千葉大病院と若葉区の民間2病院を指定した。県は、専用の病床を確保するための人件費などの補助に3病院で計約3400万円を予算計上した。
 しかし、今年3月、対象のうち民間2病院から「搬送件数の増加で負担が過大となり、参加を見直したい」との申し出があった。

 実施協定は年度単位のため同月末まで継続したが、4月以降は停止。県は本年度も事業の継続を前提に同額の予算を組んでいる
 現状で大きな影響は出ていないが、県、千葉市消防局ともに、インフルエンザなどで搬送患者が増える冬までの再開を模索。搬送先が集中しないように対象病院を増やす方向で市内の医療機関と改めて調整する。

この補助金の金額がどうしても目に付くのですが、空床確保の経費を助成する名目で費用の3分の1を助成する方式だそうで、救急お断りの定番である空床がないので受け入れ不能と言うケースを避ける狙いなのでしょう。
1病院あたり1100万ほどの予算で何でも受け入れと言うのはさすがに無理があると思うのですが、病院上層部はこれで患者も増えてラッキーぐらいに考えていたのだとすれば勘違いも甚だしいと言う気がします。
しかしこの条件で対象病院を増やすと言ってもどこが受けるのかですが、恐らく地域内で救急の実績がある病院が対象になっていたのでしょうから、普通に考えて失敗が判明しているアイデアに他施設が参加するでしょうか。
今後どうしても地域内で何とかするのだとすれば、むしろ搬送で受け入れた患者を引き取る転院先を整備した方がいいと思いますが、例えば入院後転院までの日数が短いほど高い補助金を出すといったやり方もあるでしょう。

全国的に見れば昨今では病院の救急受け入れ拒否よりも、過度の救急搬送依頼によって搬送体制が破綻しつつあることの方が問題視されていて、言ってみれば入り口対策の方が重視されている傾向があります。
救急隊に連絡があった時点でトリアージを行うだとか、消防救急以外の相談窓口を設けるだとか様々な試みが行われていますが、医療現場からは以前から救急搬送無料が利用者増加の大きな要因との指摘があります。
医師に対する調査でも一定程度の金銭負担をさせるべきだと言う声が多数派を占めているのですが、当然ながら救急車なら何でも断らず受け入れたがるような病院経営陣の方々にはまた別の意見もあることでしょう。
この辺りは同じ病院内、同じ医師間でも意見の相違が非常に大きいところですが、少なくとも無制限の受け入れ体制整備ばかりではなく、何らかの原因対策も必要であると言う点については異論は少ないのではないでしょうか。

先日は「ファストドクター」なる興味深い医師の往診サービスについての記事を拝見したのですが、多忙な基幹病院の医師にとっては往診など非効率で割高のサービスであると認識されている先生もいらっしゃるでしょう。
ファストドクターは都内限定、夜間専門の往診サービスと言う興味深い営業形態なのですが、連絡を受けると症状により翌朝の医療機関を指示したり、近くの救急病院を伝えたりと言ったトリアージの役割も行っています。
往診を行うのは重症度はさほどではないが、当座何らかの処置が必要と思われる症例に限定され、代表的なものが小児の急な発熱などでしょうが、元々は小児ではなく高齢者を対象にしたサービスとして始まったそうですね。
車など移動の足がない高齢者が、夜間のささいな不調を訴え救急車を呼ぶことを往診によって回避できれば救急搬送の負担も軽減され、結局は医療費も安上がりにもなると言う理屈で、一定の成果を挙げつつあるようです。

こちらは人口密度の高い都内限定のサービスだそうですが、地方都市などにおいても同様のサービス展開がなされれば需要はそれなりにあると思う一方で、経営的に成立するかを考えると公費投入も必要になるのでしょう。
ファストドクターでは70人以上の医師が所属しており、さらに毎月新たな医師が加わっていると言うことですが、地方都市で夜間の急な呼び出しに対応出来る医師がこれだけそろうかと言えば大いに疑問でもありますね。
ただ最近ではタクシーの配車アプリにみられるように、リソースの分配をより効率的に行う手段は得られるようになっていますし、地域や時間帯を限定すれば協力出来ると言うスタッフもある程度は確保出来るのかも知れません。
また往診とまではいかずとも電話やメールでの相談を受け、必要なら受診すべき医療機関を指示すると言ったサービスだけでも相応に効果はあるようで、原因対策の面でもまだ出来ることが少なくないのは幸いとも言えますね。

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コメント

ファーストドクターの記事みましたが、医療費タダ(もしくは格安)の老人や小児にたかっているだけのように見えます。通常受診より割高な診察料等は自己負担でなく公費負担。(交通費のみ自己負担)しかも、重症であれば基幹病院に投げるだけ。そりゃ、商売のうま味で、登録医が増えるのも納得。

投稿: 麻酔フリーター | 2018年6月25日 (月) 12時39分

商売としてはおっしゃる通りの手法で成り立っているのだと思いますが、診療報酬等の金銭的インセンティブで診療体勢を誘導することはごく一般的な手法であり、これもまたその結果の現れだと思います。

投稿: 管理人nobu | 2018年6月25日 (月) 19時08分

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