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2018年5月30日 (水)

医師不足解消後から偏在対策が新たな国策に

先日は厚労省が医学部定員削減を言い始めたと言うニュースがありましたが、基本的にその方向で決まった気配です。

厚労省検討会が医学部定員削減の方向性を了承(2018年5月23日日経メディカル)

 厚生労働省は5月21日、医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会に第3次中間取りまとめ(案)を提示し、大筋で了承を得た。
 2020年度と2021年度の医学部定員は、2019年度の医学部定員を超えない範囲に設定。2022年度以降については将来的に医師供給が過剰になることを鑑み、医師の働き方改革の議論や医師偏在対策の効果を見ながら医学部定員を「減員」する方向性を示したもので、医療従事者の需給に関する検討会との合同会議で了承が得られれば、正式に取りまとめられることになる。

 検討のベースとなったのは、4月12日の分科会で示された労働時間別の医師需給推計(関連記事)。この推計では、医師の労働時間を週60時間以内に制限し、医学部定員が2018年度の9419人のまま推移したとすると、2028年ころには約35万人で医師需給が均衡し、2040年には医師供給が3.5万人過剰になるとしている。2022年度の医学部入学者が初期臨床研修を終えるのは2030年度以降となる。また、いずれのパターンでも長期的には供給過剰になることが予測されたことから、今回の取りまとめ案では、減員する方向で検討を進める方針を打ち出した。
 ただし、2008年以降に実施された医学部の臨時定員増の多くは、地域医療を担う医師を養成するための「地域枠」だ。全国的に臨時定員を削減するとしても、地域間での医師偏在が解消していない地域では地域枠のニーズが残る。そのため今回の取りまとめ案には、「地域医療の実情に応じた医師偏在対策などの側面を踏まえた配慮が必要」と記した。
 また、2022年度以降の医師養成数の議論については、全国レベルのマクロの医師需給推計だけではなく、「将来の都道府県毎の医師需給、診療科ごとの医師の必要数、長時間労働を行う医師の人数・割合の変化等についても適切に勘案した上で、定期的に検討をしていく必要がある」と記した。

 同日の分科会では、2022年度以降の医学部定員の検討に際し、医師偏在対策の議論をより深める必要があるとの指摘もあった。日本医師会副会長の今村聡氏は医師の働き方改革、医師需給、医学教育などに関し、厚労省の各検討会で議論するだけでなく、「厚労省が全体を見渡しながら議論を深められるようにしてほしい」と要望した。また、産業医科大学医学部教授の松田晋哉氏は「(当事者である)若手医師や医学生がどのように考えているのかが重要」とコメント。若手医師を対象とした意識調査の実施を要望した。

医学部定員、「2022年度以降、減員に向けた議論が必要」(2018年5月21日医療維新)

(略)
 医師需給分科会は、医学部の臨時定員増の期限を迎える2020年度と2021年度分については、早急に結論を出すことが求められていた(『2020年度以降の医学部定員、5月にも結論』、『医学部定員、2020、21年度分「速やかに示して」』を参照)。
 医学部定員の問題は、2019月3月末までに結論を出すことが求められている「医師の働き方改革」や、今国会に法案提出された医療法改正法案に盛り込まれた医師偏在対策と密接に関係する。第3次中間取りまとめ(案)では、「マクロの医師需給が均衡することは、必ずしも地域や診療科といったミクロの領域でも需給が均衡することは意味しない」とし、2022年度以降の医学部定員については、「働き方改革や労働実態、医師偏在対策や医師偏在の状況等を勘案し、定期的に医師需給推計を行った上で、将来的な医学部定員の減員に向けて、医師養成数の方針等について見直していくべきである」としている。

 構成員から主に出たのは、2022年度以降の医学部定員の検討に当たって、医師偏在対策等についての議論を深める必要性だ。今後の議論の進め方についても、幾つかの注文が付いた。
(略)
 日本医師会副会長の今村聡氏は、医師の働き方改革、医師需給、医師養成などについて、厚労省内で複数の検討会があることから、バラバラに議論していくのではなく、厚労省が全体を見渡してコントロールし、有意義な議論とするように要望した。
 産業医科大学医学部教授の松田晋哉氏は、「これからの議論では、当事者がどう考えているかが重要なポイントになる」と指摘し、若手医師への意識調査の実施を要望。さらにフランスでは医師に定年制があり、団塊世代がリタイアした後、医師が減り、医師養成数増になったことから、60、70代の医師への意識調査も併せて要望した。
(略)
 権丈氏は、「医師偏在問題を何とかしなければ、どうしようもない。ようやくスタート地点に立っているというのが、今の状況」とも指摘した。医師偏在対策についての意見は、地域ごとの医師偏在の度合いを示す医師偏在指標など、今後の議論のたたき台になる資料と、医師の診療科偏在に関するものが多かった。

 医療法改正法案では、医師偏在指標を基に、都道府県が「医師少数区域」等を設定して、対策を講じることになっている。聖路加国際病院副院長の山内英子氏は、「この指標が非常に重要」と指摘し、その検討の進め方について質問。
 厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健氏は、「医師偏在指標は、法案が成立したら、本分科会で議論していく予定になっている」と説明。医師偏在指標は、人口10万人当たりの医師数ではなく、患者の流出入など、地域の実情を踏まえたものになるとした。
 全日本病院協会副会長の神野正博氏は、「医師の診療科偏在も当然あり、新専門医制度の医師偏在対策にも絡んでくる。診療科偏在も、医師偏在指標に入るという理解でいいか」と質問。厚労省医政局医事課は、「そうした方向で議論していきたい」と回答した。
(略)
 医師の診療科偏在対策について、聖路加国際大学学長の福井次矢氏は、「医師需給は、現在の診療パターンの継続を前提としているが、国全体としてジェネラリストとスペシャリストはどのくらいの割合が妥当であり、それを目指して国がどう取り組んでいくかによって変わってくる」と述べた。「今のように、専門性を自由に選択できる状況は、国全体としての効率的な医療の提供という視点がない。個々の選択に今後も任せるのか否かによって、医師の需給や専門性の分布が変わってくる。国全体として望ましい専門性の分布を考え、そこを目指して調整していくことも必要ではないか」。
 神野氏は、「今のままで(臓器別の)専門医志向は強いので、専門の選択が自由のままであれば、まだまだ医師数は足りない。強い診療科別の偏在対策を視野に入れないと、将来的な医師不足対策にはならない」と指摘した。

国の公式見解として医師不足は終焉し、今後仮に不足を感じることがあったとしてもそれは偏在であると認定したと言う形ですが、末端臨床現場の皆様方にはまた別な考え方もあるのではないかと思います。
偏在していると言うなら過剰な領域・地域もあるはずですが、勤務医が過剰で職を失い食えなくなっていると言う話は未だあまり聞かないことを考えると、やはり開業方面で過剰が生じていると言うことでしょうか。
ただ以前と比べると特に非常勤医や俗に言うフリーター医師などを中心にして、契約を打ち切られただとか更新されなかったと言う話は聞くようになってきた印象で、充足してきた領域は相応にあるのでしょうね。
ただ社会問題化しているのは偏在の結果不足している急性期や救急診療と言った領域なので、これら領域の人不足感が解消されないのに何を言っているんだとは正直な感覚としてあるかも知れません。

日医ならずともいわゆる医師強制配置に関しては根強い反発があり、偏在解消に何らかの強制的な対応を取ることは今のところ考えられていないようですが、そうなるとどう偏在を解消していくのかが問題です。
この場合不足している領域にインセンティブを付けると言う方法と、過剰な領域で何かしらペナルティなりを設けると言う方法がありますが、専門医取得・維持の制限や地域内の開業規制などは当然考えられる話です。
仮に過剰な診療科については診療報酬を削減し廃業に追い込むと言った強硬な対策が講じられるのかどうかですが、そのためには議論の前提として誰もが納得出来る客観的なデータが必要になってくるはずですよね。
厚労省は医師の卒業からその後のキャリアを一貫して把握するデータベースを構築中ですが、将来こうしたデータを元に診療報酬等で誘導が行われるとすれば、固定客の少ない新規参入者ほど厳しくなるはずです。

医師過剰地域で議論される新規開業規制などもそうですが、結果的に先に開業した者が一方的に有利となりかねず、先輩開業医が廃業しない限り新規参入出来ないと言うことになると妙な話ですよね。
住民的にも地域の医療リソースが何十年も変わらず同じ顔ぶればかりで固定されるのもどうかですが、その種の弊害を避けようとすれば偏在対策の一環として既存の医師を排除する仕組みも求められることになります。
その場合何の指標を用いて選別を行うのかで、理屈の上では優秀な医師が残りそうでない医師が淘汰されるのが理想とは言え、実際優秀かどうかを何の指標を用いて客観的に評価すべきかと言う議論はありますね。
しばしば言われることに藪○者ほど無駄な検査や治療を行うために、診療報酬が高くなり経営的に安定してやっていけると言う逆説もあり、NHS式の定額報酬制度の導入などもたびたび議論に上るところです。

ちなみに先に述べた厚労省のデータベースは将来的には都道府県にも提供される方針だそうですが、地域医療構想に基づいて地域内の医療供給体制を決める主体は今後自治体になってくるようですね。
この点で(形ばかりとは言え)地域内に拘束される地域枠の意味が大きいのは当然ですが、現実的に医師免許が全国共通の単一資格になっている以上、都道府県単位での医師管理は難しいところでしょう。
さすがに都道府県限定とは言わずとも、将来的に例えば道州単位での医師免許なりはあり得るものなのかどうかですが、全国を飛び回って広範囲に活躍する優秀な先生ほど仕事に支障を来しそうです。
高度な技術を持つ専門医に限って越境就労を認めると言った話になれば現状名ばかりの専門医資格にも箔が付くと言うものですが、ともかくもどういう手段で偏在を解消するつもりなのかに注視していきたいですね。

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コメント

診療科の偏在対策ってどうするんですかね?
地域ごとに専門医の数に定員でも決めるとか?

投稿: ぽん太 | 2018年5月30日 (水) 08時18分

不足している診療科に従事する医師に高額の報酬を出せばいんですよ、「こんなに貰っていいのか…?」って罪悪感覚えるレベルの。そしたらあっという間に解決w

…そんな金はない?だったら絶滅してもいいだろ?、別にww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年5月30日 (水) 09時20分

ヤブ医者は金しか頭にないんだな

投稿: | 2018年5月30日 (水) 11時03分

昨今の医療財政を考慮すると、不足する診療科に金を出すよりも過剰な診療科の報酬を削ると言うことも考えられそうに思います。

投稿: 管理人nobu | 2018年5月30日 (水) 12時40分

>そしたらあっという間に解決w

高額報酬が話題になってて解決したことなんてあるのかなー
医師のみなさん自分と違う科の医者がすんばらしい高額報酬もらってザワザワしませんかwww

投稿: | 2018年5月30日 (水) 13時14分

>ヤブ医者は金しか頭にないんだな

間違いなく褒められたwww!!!

>医師のみなさん自分と違う科の医者がすんばらしい高額報酬もらってザワザワしませんかwww

とりあえず私は、例えば産科医とかがいくら貰おうが気にしませんね。金よりも命が大事だしwww
*なお実際はおいどんのが高収入な模様w

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年5月30日 (水) 15時36分

忌避される診療科がなぜ忌避されるのかを分析し、そこを改善していくことが必要だと思われます。
安い給料でこき使いたいと上の方が考えているのであれば、改善は難しいのでしょうけれども。

投稿: クマ | 2018年5月30日 (水) 21時15分

>金よりも命が大事だしwww

金で全て解決!って最初の説とまるっきり矛盾www

投稿: | 2018年5月31日 (木) 10時04分

医者に診療科変えさせようと決断させるほどの嫌がらせってどんなのが効くんだろ?

投稿: | 2018年5月31日 (木) 13時51分

>医者に診療科変えさせようと決断させるほどの嫌がらせ

どこかの国みたいに、医師賠償責任保険の保険料が年2000万円くらいになったら、その診療科をやめると思いますけれど・・・

投稿: クマ | 2018年5月31日 (木) 14時29分

>>金で全て解決!って最初の説とまるっきり矛盾www
 
・人手不足?金の力で集めてこい
・金よりは命の方が大事だよね
 
この2つの主張をしているだけなので、別に矛盾しとらんでしょ

投稿: | 2018年6月10日 (日) 07時03分

ああそうねえ
「自分は」命が大事、「他人は」高額報酬のために命を捨ててくれるはず、ってことよね


投稿: | 2018年6月12日 (火) 10時50分

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