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2018年5月 9日 (水)

家族が継続を希望しても強制的に延命的処置終了となったケースが話題に

救急医療の逼迫は今に始まった話題ではありませんが、国際医療福祉大学の准教授で、同大三田病院の救急部長を務める志賀隆先生が、先日こんなことを書いていました。

救急車は無料でいいの?救急搬送の適正化と人材確保・定着に向けた方策を(2018年4月27日医療維新)

(略)
 前回までは、自己紹介も兼ねて救急医を目指そうと考えているような若手医師らを応援する気持ちで「誰でも救急医になれる!」という記事を書きました。内容に対して、みなさまが寄せてくださったコメントにもありましたが、一部の救急医療の現場が疲弊しているのは確かです。今回から計2回は、救急医療の現場に患者を搬送してくる「救急車」について考えてみたいと思います。結論から先に述べると、私は救急医療の需要・供給のバランス不均衡を解決する策として「救急車の有料化」が必要と考えています。以下に、その理由を幾つか示しながら考察していきたいと思います。

 「救急車の有料化」が必要な理由としては大きく、
 ・救急搬送の総数が増えるスピードにブレーキをかける
 ・救急車の有料化で得られる収入分を救急医療の充実化や当直医のインセンティブに使う
の2つが特に重要と考えています。

 救急医療の疲弊の原因は、長時間労働の中で、深夜の受診、重症患者さんや難しい患者さんへの対応を限られた人員で行う必要があるからです。そんな中、救急搬送数は漸増しています。毎年、救急医を含めた医師は増えてはいますが、現在の体制だと、対応が難しくなってきています。地域の医療のために、多くの医療機関がギリギリの状態、あるいは既に限界は超えながらも救急医療を支えています。まずは利用者である患者さんに「お金を払ってでも救急車で運んでもらう必要があるか」を考えてもらうことで、救急搬送の適正化を図るべきです。副次的に、歩ける人には歩いて来院してもらい、不要不急の場合は夜間・休日の受診は避けてもらう効果も生じるはずです。

 ただ「ブレーキ」をかけるだけでは足りません。有料化で得られる診療報酬を基に、人材確保・定着に向けた方策も同時に講じる“合わせ技”でなければ、救急医療の疲弊感解消に向けた効果は出にくいでしょう。現在の診療報酬は施設毎への支払いが基本ですが、救急担当の当直医自身にインセンティブが至る仕組みを検討していくことが、医師の行動変容につなげるためにミクロ経済学の視点から必要であると考えています。

 数年前ですが、ある大学の同窓会新聞に「今の学生はけしからん。給与に釣られて、大学病院での研修よりも地域の総合病院での研修を選んでいる!」という趣旨で名誉教授の先生がしたためた寄稿が載っているのを拝見しました。大学病院が人材獲得に苦慮している状況を示す内容だと感じますが、果たしてこの嘆きは実態に基づくものなのでしょうか?大学病院が人員不足で悩んでいるのは事実だと思いますが、私はあえて、「一部は本当」と指摘しておきます。調査結果によっては、研修する病院を選ぶ際に「給与」よりも重要な要素があると分かっているからです。
(略)
 前回までの記事に寄せられた、みなさんのご意見からも分かるように、救急医療の現場について「とても従事できるものではない!」と考える医師は一定数いらっしゃります。理由としては、「リスクが高い、不確実」「夜間など身体的な負担が強い」「広い診療領域、そしてクレーム対応が大変」などが挙がっていました。

 確かに、救急医療は専門化が進む現在の医療の中ではめずらしく、専門性とともに、ジェネラリストの側面も必要な領域です。「新しい領域を勉強する」「自分の専門領域以外に対応する」「夜間や休日にも働く」などが必須となり、年齢を重ねるとともに、大きな負担になると私自身も感じます。

 現状のように救急搬送が漸増していく中、時間外に働く現場の医師にどんどん負担が増えるという構図では、救急医療を維持していくのは難しいと私は考えます。そのため、救急搬送の有料化で救急搬送の適正化を図ると同時に、当直やオンコール対応の医師らも含めた救急医療の現場にインセンティブや交代制勤務を導入し、少しずつ負担感を減らしていくことで徐々に医師が集まるようにすることも必要だと考えています。労働環境が整い、働きやすい職場になれば、結果として若手が飛び込んできやすい環境が整うだろうとも考えています。
(略)

大学病院での研修云々に関する話題には今の医療業界の抱える課題が現れているようにも思いますが、需給バランスが破綻していると言うことであれば、方法論の議論は別としてやはり何かしら制約は必要と言うことです。
救急搬送1件につき4万5千円のコストがかかると言う計算もあるそうですが、無論いきなり全額自己負担とは言わないにせよ、一定の自己負担導入については医師の9割国民の7割が賛成していると言います。
政府としても断続的に議論されている様子であり、救急医療の受診抑制対策の流れを見る限り近い将来導入されても全く意外性はありませんが、自己負担を増やすによる自発的な抑制策が日本では多いと言うことですね。
さて、イギリスの国民皆保険制度であるNHSは原則無料で利用出来ると言う特徴があり、それ故に専門医にかかるにはホームドクターの紹介が必要と言った、無制限な利用を制限する制度も同時に存在しています。
日本式の一定の自己負担は伴うものの、受診機会は完全に自由化されている制度とは一長一短ですが、NHSのこうした厳しい制約の一端がうかがわれるのが先日以来世界的に話題になってきたこちらのニュースです。

重病英男児が死亡、両親の訴えもむなしく呼吸器取り外し(2018年4月28日AFP)

【4月28日 AFP】英国で、重病で人工呼吸器によって生命が維持されてきたアルフィー・エバンス(Alfie Evans)ちゃんが28日、呼吸器が外され、死亡した。息子の延命のために法廷で争い、ローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王の支持も得ていた男児の両親が明らかにした。
 父親のトム・エバンス(Tom Evans)さんと母親のケイト・ジェームズ(Kate James)さんはフェイスブック(Facebook)で発表した声明で、「午前2時30分(日本時間同日午前10時30分)私たちの息子に翼が生えた(天使になった)。私たちは悲しみに打ちひしがれている。これまで支援してくださった皆さん、ありがとう」と述べた。

 医師団側の提案に反対しアルフィーちゃんの延命治療継続を求めていた両親の申し立てを裁判所が退けたことから、人工呼吸器は23日に取り外されていた。
 アルフィーちゃんは、まれな神経変性疾患で慢性てんかん発作があり、2016年12月から入院していたが、人工呼吸器が取り外されればその命はたちまち奪われてしまう状態だった。
 両親は、英イングランド北西部リバプール(Liverpool)の小児病院がアルフィーちゃんの人工呼吸器を停止しようとするのを阻止し、治療継続のためにイタリアの首都ローマにある小児病院にアルフィーちゃんを転院させるために法廷で争ってきた。

 アルフィーちゃんをめぐっては、父親はフランシスコ法王と面会し「息子を救ってください」と訴え、フランシスコ法王もこれまでに数回、アルフィーちゃんについてコメントを発表。今週初めにはツイッター(Twitter)に「新たな治療を行いたいという(両親の)気持ちが聞き届けられることを願う」と記していた。

アメリカなど医療保険の未整備な世界の多くの地域ではこうした場合、家族の側から医療費負担に耐えかねて呼吸器外しを望むだろうと思いますが、その意味でこれは皆保険制度があるからこそ発生する状況です。
日本ではこうした場合、医師が家族の反対を押し切って人工呼吸器を外すと言うことは行ってはならない行為とされていると思いますが、イギリスでは司法判断の元であるとは言えこうした行為もあり得ると言うことです。
その背景に幾ら長期間の治療を行っても患者(家族)負担がないと言うNHSの制度があることは否定出来ませんが、自己負担による自発的な抑制が働かなければ何が起こるかと言う現実でもありますね。
医学的に出来ることはあってもその行為にあまり意味がないと言うケースは終末期などでは当たり前に見られますが、金銭や制度など何かしらの制約がなければ感情だけで一見不合理な選択がなされることもあるわけです。

日本では同様の事態が発生した場合、医学的に無意味と思われる延命的行為であれば可能な限り家族を説得し、医学的介入の終了について了承を得て外すと言う手順ですが、了承が得られない場合どうなのかです。
どうしても治療継続を希望する場合、急性期の施設から慢性期に移行出来ないかを検討する必要がありますが、医療制度上こうした患者の引き受けは難しいのが現状で、場合によっては自宅退院と言う場合もあります。
その結果患者の健康上の不利益を強いることになったり、時には医療訴訟沙汰になったりもするわけで、制度設計上そうしたリスクは許容すべきものと見なされているのでしょうが、誰がリスクを引き受けるべきなのかですよね。
救急搬送有料化問題なども結局のところ、制度を変え何かあった場合に誰が責任をとるかの問題に行き着くかと思いますが、そうした場合に過度のゼロリスク志向は結局何も産み出さないことは忘れたくないものです。

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コメント

イギリスじゃ治癒不能な悪性腫瘍も処置中止してるんですかね。

投稿: ぽん太 | 2018年5月 9日 (水) 08時35分

「救急医療の維持、という一点だけに絞れば、話はそうならざるを得ません。視野を医療関係者のQOLレベルにまで拡げれば、おのずと別の解決法がありましょう」
「その通り、救急をやめればいいのだw」

>研修する病院を選ぶ際に「給与」よりも重要な要素があると分かっている

そもそも給与に釣られたとして、それのナニがいけないんでw?

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年5月 9日 (水) 09時40分

一部病院で未だに奴隷的待遇が存続しているようで、そうした境遇の先生方が給与ではないと言われるのであればまだしも、高給を取っている偉い先生方に言われてもとは感じます。

投稿: 管理人nobu | 2018年5月 9日 (水) 11時52分

>そうした境遇の先生方が給与ではないと言われるのであればまだしも

だからそういう連中は全労働者の敵だから縛り首だと何度

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年5月 9日 (水) 13時59分

>そもそも給与に釣られたとして、それのナニがいけないんでw?
目先の給与より生涯賃金、もしくは10年後の時給を視点にするべきと考えます。
ま、この連中は、単に滅私奉公を要求しているので、いずれにしても論外ですが。

投稿: 麻酔フリーター | 2018年5月14日 (月) 15時03分

いまどき大学で奴隷奉公して生涯賃金上がるもんかね?

投稿: | 2018年5月14日 (月) 20時34分

>10年後の時給

10年後の自分なんてアカの他人も同然ですからwwww

>この連中は、単に滅私奉公を要求しているので

滅私奉公しちゃう莫迦がいるからこのテのが図に乗るワケで…

>いまどき大学で奴隷奉公して生涯賃金上がるもんかね?

金がすべてではない!(キリッ、とか言っちゃうんですよきっとあああああああ○してぇええええええ!!!!!!!

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年5月15日 (火) 09時38分

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