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2018年5月 1日 (火)

何をブロックしていいのかは誰がどうやって決めるべきなのか

このところ話題になる機会の多い海賊サイト問題について、先日こんな興味深い主張をする方々がいたと話題になっていました。

「日本の法体系ではあり得ない」 海賊版サイトブロッキング問題、弁護士がNTTコムを提訴(2018年04月27日ITmedia)

 弁護士の中澤祐一さんが4月26日、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)が予告している海賊版サイトのブロッキングの実施について「通信を妨害してはならない」として、同社を東京地方裁判所に提訴した。
 中澤弁護士はインターネットや著作権に詳しく、普段は発信者の情報開示請求や権利侵害コンテンツの削除要請などを行うなど、海賊版サイト対策には前向きな姿勢だ。しかし、サイトブロッキングという手段を取るNTTコムに対しては「日本の法体系ではあり得ない」と切り捨てる。中澤弁護士がNTTコムを提訴した理由とは。

 海賊版サイトを巡っては、政府がISPにサイトブロッキングを要請したという報道を受け、議論が過熱。日本国憲法第21条で定める「通信の秘密」や「表現の自由」を侵害する恐れがあるとして、複数の業界団体や法律関係者から反対の声が上がっていた。
 そんな中、NTTコムを含むNTTグループ4社は4月23日、政府が指定した漫画海賊版サイト「漫画村」と、アニメ海賊版サイト「Anitube」「Miomio」に対し「短期的な緊急措置として」ブロッキングを行うと発表。これを受け、全国地域婦人団体連絡協議会と主婦連合会が4月25日、NTTらに対し「刑事告発も辞さない」と意見書を発表するなど、一部の団体からは大きな反発があった。
(略)
 法改正なしのブロッキングは憲法第21条に規定される「通信の秘密」を侵害し、例外的に違法性を否定できる「違法性阻却事由」(いほうせいそきゃくじゆう)にも該当しないとする考え方が、これまで複数の弁護士や法学者から表明されてきた。
 「恣意的な判断で通信を遮断するのは、日本の法体系ではありえない。なしくずしにブロッキングが始まる前に、ここで何かしておこう」――中澤弁護士はそう考え、NTTコムの提訴に踏み切ったという。
(略)
 一方で、現在も児童ポルノサイトのDNSブロッキングは行われているという現状がある。回線契約者が接続しようとするドメインやURLはISPに見られていることから、「単に著作権侵害サイトのURLがブロックリストに加わるだけではないか」という指摘もある。
 これについて中澤弁護士は、「確かに、ISPに通信内容を見られることに関して拡大する損害はない。しかし、『著作権侵害のサイトをブロックするために私の通信を見てもいい』とは同意していない。そのために見られたとなれば、慰謝料は請求できる」と主張する。
(略)
 「現行法が実情に追い付いておらず、海外事業者への情報開示請求がやりにくいというのはある。直接的に著作権侵害をしないリーチサイトの問題もあるため、著作権の間接侵害についても法律を改正していくのが本筋だろう」(中澤弁護士)
 漫画村などの海賊版サイトは、コンテンツの削除要求を無視する海外の配信サーバと、配信を中継するCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)サービスの米Cloudflareを組み合わせることで運営管理者の身元を分かりにくくしている。運営者の割り出しが困難で、権利侵害コンテンツを削除できないからブロッキングをする他ないというのが今回の政府側の見解だ。しかし中澤弁護士は「やるべきことを尽くしていないのでは」と疑問を呈する。
 「被害届を出していないのではないか。国際捜査協力で現地の警察を動かすのが先だろう。Cloudflareに発信者情報の開示要求を出せば配信元サーバの情報を教えてくれるので、サーバ会社相手に現地で弁護士を立てて裁判することもできる。1件当たり1000万~1億円程度でできるだろう。被害額が数千億円ということであれば、現地での裁判などできることはたくさんあるはず」(中澤弁護士)
 中澤弁護士は「権利侵害コンテンツ削除を行っている知り合いの弁護士も、ラトビアのサーバ会社相手に裁判している。確かに海外での裁判が難しいという面はあるが、できないことはない。こういうことを1つ1つ積み重ねて国際的な枠組みを作るというのが望ましい形」とし、「海賊版サイトの問題は国内だけでは解決しない」と続ける。
 「国内については、裁判をへたものであれば、プロバイダーがブロックしても責任を問わないという規定をプロバイダ責任制限法に入れていくことが大事。運営者が分からず訴えられないなら、対象さえ分かれば訴えられるよう民事訴訟法を改正できれば。国際捜査協力ができるまでに、これらが国内での被害をとどめる措置になるだろう」(同)
 「結論としてブロッキングを解決手段として取るのは私はいいと思う。しかし、ブロックして良い悪いを誰が決めるのか。これは裁判所が決めるしかない」(同)

この中澤何某なる弁護士氏、ネットで検索しただけでも何かとIT関係での逸話の多い方であるようなのですが、その主張は要するに「著作権侵害は許せないが、アクセス遮断はするべきではない」のひと言だと言えます。
言われるまでも無く政府としても法的裏付けのないサイトブロッキングが違法性を問われかねない点については気がついているようで、各ISPに要請するのではなくあくまで自主的ブロッキングと言う形にしたい意向だと言います。
さすがにそれはせこいと言うしかありませんが、法的規定なり裏付けが必要であると言う論旨には一理あるものの、だから訴えると言う発想は少し一般人にはないものがあるようにも思えますがどうでしょうね。
また記事にもあるように児童ポルノのブロックはよくて違法漫画は駄目だと言う専門家の線引きもよく理解しかねるのですが、どこまでが正当なブロックかは主観的な判断の余地が極めて大きい問題であるようにも感じられます。

ちなみにこの問題について弁護士らによって公開の場で討論されたそうですが、実際に海外のサーバ会社と交渉を行ってきた当事者からは、弁護士らの主張する可能な対策なるものは実際に行っても無意味だったと言います。
この点ではコンテンツ削除をしない方針のサーバーを利用する業者に有利と言えますが、興味深いのは映画や音楽は違法コンテンツのダウンロードも違法になっているのに対して、漫画など静止画にはそうした法がないそうです。
先日は経済的損失を被る側の出版社側から政府方針を支持する見解が出て話題になっていましたが、こちらも法律を作っての規制が正道である点は同意していて、その上での緊急避難的な対策を求める立場です。
結局一番著作権を侵害しているのは正規ルートで購入しない利用者であるとも言える以上、こうした出口対策の不備も含めて早急に国会なりでも議論し立法なりを行っていく必要があるように思いますけれどもね。

ところでその利用者の立場ですが、大多数の利用者は少なくとも表向きは違法サイトの規制には賛成の立場で、反対意見としては法的な不備など主にその方法論と言う点でも専門家らと大きな差はありません。
ただ当然ながら無料で漫画が読めることを歓迎する向きは水面下では相当数あるものと予想され、またIT事業者にしても過去にアクセス数の多い違法サイトに広告を出して来たと言う共存関係も指摘されています。
こうしてみると誰が悪いのかと言う点で判断が難しいですが、少なくとも確実な被害者と言える漫画作家の立場からすれば、違法サイトにアクセスを許容している各ISPに対して良い感情はないのではとも思えます。
ISPが違法行為を幇助しているとも言えることに対して、例えば民事で損害賠償なりが成立する余地があるのかですが、しかし一番ブロックして欲しいのは迷惑メールだと言う声があることにも首肯するものがありますね。

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