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2018年4月11日 (水)

離れはお粥をすすり、母屋はすき焼きが正しい在り方?

先日の日医の臨時代議員会で、日医会長がこんな認識を示したそうです。

「保険調剤薬局、非営利法人に限定も」横倉会長(2018年3月28日医療維新)

 日本医師会会長の横倉義武氏は3月25日の第141回日医臨時代議員会で、大手チェーンの調剤薬局で内部留保や配当が大きく増加していることについて、「国民の保険料、税金、一部負担を株式会社が株主に還元することは極めて大きな問題。可能ならば保険調剤薬局は非営利法人に限定することも考えられる」と述べ、保険調剤を行う薬局は非営利のものであるべきだとの認識を示した。
 福井県代議員の大中正光氏の代表質問への答弁。

 大中氏は、日医総研のレポートで、調剤関連技術料が、全て院内処方で対応した場合には現状の2兆5000億円から8000億円に圧縮できるとの推計がなされたことを指摘し、「医療費増大の根源的な理由の一つである医薬分業の廃止を思い切って提案しては」と発言(『調剤技術料「全て院内」で1兆7000億円減、日医総研レポート』を参照)。また、薬価の外国平均価格調整で米国の薬価も用いられることについて、「そもそも米国は自由市場で、日本の公的医療保険制度とは別物。米国の薬価は参考から外すべきだ」とも主張した。

 横倉氏は、「公的医療保険の財源は、諸経費以外の利益は医療の再生産に回すべきだと考えている」と説明。医科に関しては医療法人制度などで、過剰な利益が個人所得にならない仕組みとなっており、そうしたことも必要ではないかと指摘した。
(略)

日医と薬剤師の敵対的関係、と言うよりも日医が薬剤師を敵視することは昨日今日の話ではなく、以前から医科や歯科が頭打ちであるのに薬局ばかりが儲けていると厳しい表現で批判してきたことが知られています。
「母屋でお粥をすすっているのに、離れではすき焼きを食べている」ことが悪いのかどうかはともかくとして、近年診療報酬上も調剤関係は集中的に狙い撃たれている印象があり、一部には儲けすぎ批判もあるようです。
日医の立場としては当然離れは重湯でもすすっていれば上等、その分の肉は母屋に回せという立場なのでしょうが、ここで注目したいのは日医が調剤薬局の営利的運営に否定的な見解を示している点です。
そのこと自体はそうした立場もあるだろうとは思うのですが、同じ代議員会で医科に関してはこんな民業優先とも言うべき立場を打ち出していると言うのですから面白いですよね。

地域医療構想「公私の競合なら、公が撤退」、石川常任理事(2018年3月26日医療維新)

 日本医師会常任理事の石川広己氏は、3月25日の第141回日医臨時代議員会で、地域医療構想の実現に当たって、「民間医療機関が、公立・公的医療機関等よりも、先に淘汰される事態が起きてはならない」と強調した。地域医療構想調整会議の協議の方向性と、「新公立病院改革プラン」「公的医療機関等2025プラン」の内容に齟齬が生じた場合には、プランの方を見直すことになっていると説明、「公立・公的医療機関等しか担えない分野に重点化しているかを検証し、公私の医療機関の競合があれば、公の方を撤退させることになる」と述べ、その調整を行う調整会議が非常に大きな役割を担うと説明した。

 この答弁に対し、山口県代議員の弘山直滋氏は、プランは出そろったものの、調整は2018年度に行うと説明した上で、「中には、『自分たちはこれをやるんだ』という感じもあり、今のところ調整に応じるような状況ではない。一方で、調整会議の議長は、郡市区医師会の会長であり、普段お世話になっている公立・公的医療機関等に対して、あまり強く言えないという現状がある」と現状を説明。

 日医副会長の中川俊男氏は、「地域医療構想がうまく進むかどうかは、医療法上で強い権限を持つ地域医療構想調整会議が機能するかどうかに尽きる」と述べ、調整会議の活性化を求めた。その上で、「普段お世話になっている公立・公的医療機関等になかなか物を言えない、というのはまさにその通りかもしれないが、『公的な仕組みとして言う』という形をぜひ作っていただきたい。公立・公的医療機関等よりも先に、中小民間病院が倒れるようなことが、絶対にないような仕組みになりつつある。ぜひ調整会議で、心を鬼にして物を言っていただきたい」と答弁した。
(略)
 石川常任理事はまず、「地域医療構想によって、その地域から医師や病床が減っていくのではない。人口変動等によって、医療ニーズが減少した結果、病床や医療機関、医師が減っていく事態に、どのように対応していくかだ」と基本的考えを説明。地域医療構想を推進していくことは、「各医療機関が病床の必要量や、他院の病床機能報告制度の報告内容も参考にしながら、自主的に自院がその地域でどのような方向性を持つべきかを考えていくこと」に当たるとした。

 その結果、その地域で不足している病床が手当てされていくことになるが、その過程で重要になるのは、医療法上、強い権限を持っている地域医療構想調整会議。「同会議の重要議題として、公私の役割分担がある。これからの超高齢社会、人口減少社会においては、特に地域の中小病院や診療所が重要になる。そうした民間医療機関が、公立・公的医療機関等よりも、先に淘汰される事態が起きてはならない」。

 さらに「新公立病院改革プラン」「公的医療機関等2025プラン」の内容が、調整会議の協議の方向性と齟齬が生じた場合には、プランの方を見直すことになっていると説明。「公立・公的医療機関等がそこしか担えない分野に重点化しているかを検証し、公私の医療機関の競合があれば、公の方を撤退させることになる。したがって、調整会議が非常に大きな役割を担うことになる」。
(略)
 最後に石川常任理事は、「地域包括ケアシステムを構築していく中で、地域に密着した中小病院や診療所は、在宅急変患者受け入れの体制作り、ひいては住民が安心できるこれからの町作りに欠かせない。日医としてその重要性を国に強く主張していく」と述べた。

もちろん地域に密着した中小病院が地域医療に非常に大きな役割を果たしてきたことは否定出来ないのですが、しかしそうは言っても営利を追求せざるを得ない民業であり、赤字続きで経営出来るものではないわけです。
その点でどんなに赤字だろうが営業を続けられる公的病院の方が立場が強く、いわば最後の最後まで地域医療を支えられる可能性があると思いますし、実際僻地に行くほど公的病院だけの地域が多いですよね。
特に医業で赤字を出さないように経営する場合、医学的に必ずしも必要ではない検査や処置を敢えて行うケースも出てくるでしょうが、実際病床数当たりの医業収益は民間病院の方が公立より多いそうです。
国民の保険料、税金、一部負担を無駄に浪費しないためにも、非営利を追求出来る公的病院こそ優先的に生き残らせるべきだと言う考えが成立する余地がありそうに思いますね。

ちなみにこの点に関してアメリカではかなり以前に検討が為されているそうですが、営利病院は非営利病院に対して患者1人当たりコストは高く、かつ収入はそれ以上に高いため利益率が大きいと言う結果だったそうです。
無論何の仕事であれ安定的経営を続けるために適正な利益を追求することは当然ですが、それでも調剤薬局の利益第一主義を断罪する一方で自分達にはずいぶんと甘いのでは、と言う批判は免れないように感じます。
あえて深読みをするならば、普段医師の利益に反するような言動が目立つ日医であるだけに、こうまで自己矛盾するかのような言動を弄しても医師の利益追求をすることに感銘を受けた向きもあるかも知れませんね。

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コメント

高級料亭じゃセレブは離れの特別室に案内されるそうですが。
医師会の先生もあんがい平民ってことですかね。

投稿: ぽん太 | 2018年4月11日 (水) 08時40分

病院の診療報酬が少ないことに文句を言うことはともかく、調剤薬局の診療報酬が多いことに文句をつけるべきではないと個人的には思います。

公立病院が「民間には出来ないことをやるべき云々」ってのはよく聞く話ですが、
公立病院が困窮すると民間には出来ないことから手を引いていくイメージがあります。

投稿: クマ | 2018年4月11日 (水) 09時00分

まだ接待があった頃行った事はありますが離れではなかったですね。>高級料亭
で、その時もったいぶって出されたのがアラカブ(カサゴ)の姿造り。

…喰ったわぁそれオレ昨日釣って喰ったわぁw

>あんがい平民

平会員の当方は天然マグロ、天然タイ、天然ヒラマサ、天然鮎、天然ヤマメ、天然ウナギ、天然スッポン、天然上海蟹(の亜種モクズガニ)等々~を飽食する程度には平民です。

…全部自分で獲ったものですがw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年4月11日 (水) 09時38分

公立私立を問わず明らかな赤字事業からは手を引くのは同じですが、公立の場合補助金という伝家の宝刀で行政のコントロールが効きやすい印象は持っています。

投稿: 管理人nobu | 2018年4月11日 (水) 12時17分

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