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2018年4月23日 (月)

都道府県が勝手に診療報酬を設定する時代が間近に?

このところの医療行政では医師の働き方改革と関連して、医学部定員削減などが議論されてきましたが、その一方でもう一つ興味深いテーマも取り上げられています。

都道府県別に医療費設定 軽度介護の自己負担増 財務省が社会保障改革案(2018年4月10日共同通信)

 財務省がまとめた中長期的な社会保障改革案が10日、分かった。医療費や薬の調剤費として医療機関などに支払う「診療報酬」は全国一律になっているが、都道府県別の設定を推進すると明記した。介護分野は軽度の人の自己負担を増やす。11日の財政制度等審議会分科会に提案し、6月に策定する財政健全化目標に反映させたい考えだ。
 高齢化が一段と進展するのに備え、財政支出の膨張を抑える狙い。医療費には実態として地域差があり、効率的な制度運用が期待できる半面、日本医師会などは経済性優先として反発する可能性もある。改革案は厚生労働省など政府内での調整も残っており、実現に向けては曲折もありそうだ。

 医療では、厚労相や知事が特例で単価を定められる「地域別診療報酬」の全国的な導入を進める。これまで制度はあっても活用例はなかったが、奈良県が実現を目指しているのを機に国が後押しする。医療費の伸びが著しく、住民の国民健康保険料が高くなる地域で報酬単価を下げるといった対応が可能になる。
(略)

「地域別の診療報酬」は慎重意見多数、医療保険部会(2018年4月19日医療維新)

 厚生労働省は4月19日、社会保障審議会医療保険部会(部会長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の会議で、医療保険制度についての4つの「主な論点」を提示。委員の立場を問わず、地域別の診療報酬の設定については、慎重な検討を求める声が相次いだ(資料は、厚労省のホームページ)。
(略)
 医療制度改革については、社保審医療保険部会のほか、財政制度等審議会財政制度分科会、経済財政諮問会議でも議題になっており、3つの会議で並行して議論が続く。6月には経済財政諮問会議が「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針2018)をまとめる予定であり、それ以降は、社保審医療保険部会では同方針に盛り込まれた医療制度改革案を中心に議論を進めることになる見通し。

 厚労省が提示した「主な論点」は、以下の4つ。
(1) 予防・健康づくりの推進(医療保険・介護保険における予防・健康づくりの一体的実施)
(2) 高額薬剤・医療技術への対応
(3) 医療費の動向等に応じて給付率を調整する考え方について
(4) 地域別の診療報酬の設定(具体的な活用メニューの提示)

 (4)の地域別の診療報酬設定は、都道府県が医療費適正化計画を達成するための対応策の一つ。「高齢者の医療の確保に関する法律」で定められており、厚労省は今年3月29日に運用の考え方について通知を出している。保険者・医療関係者が参画する保険者協議会で議論し、国に意見を提出。厚労省で、中医協の諮問・答申を経て検討して、可能になる。日本医師会は反対意見を表明済み(『日医横倉会長、都道府県別の診療報酬に改めて反対』を参照)。
 日本歯科医師会常務理事の遠藤秀樹氏は、「基準が非常に不明瞭。どのような基準だったら、できるのか。また1点10円として制度設計しているので、これを地域ごとに変更するのは慎重な検討が必要ではないか」と指摘。全国知事会社会保障常任委員会委員長(栃木県知事)の福田富一氏の代理出席した委員は、「地域別の診療報酬の設定については、国がその活用を積極的に促すという性格ではなく、都道府県の意見を出発点として議論していくべきもの。その妥当性や医療費適正化にどんな貢献があるかも踏まえ、これまでの議論を踏まえ、慎重な対応が必要」とコメントした。

 (3)の「医療費の動向等に応じて給付率を調整する考え方について」は、詳細が現時点では不明。そのため、佐野氏は「慎重な検討が必要だろう」と指摘した上で、現行は1割の後期高齢者の患者負担の見直しが必要だとした。全国健康保険協会理事長の安藤伸樹氏も、患者負担は3割が原則であるとし、見直しを求めた。
 一方で、兼子氏は「画一的に高齢者に負担を求めるのではなく、負担能力がある人に負担を求めるという観点が必要」、横尾氏は「負担能力の有無をどこかで考えなければいけないのではないか。同じ治療行為を行っても、所得に応じて医療費(患者負担)が変わる仕組みなど、タブー視せずにいろいろな施策を検討していくことが必要ではないか」とそれぞれ述べた。
(略)

地域別の診療報酬設定と言う考え方については、逆に全国各地で現実的に給付される医療内容に差があるにも関わらず、どこでも統一価格で設定されていることに無理があると言う考え方もあります。
この点については国民的皆保険制度の原点であるとして、日医を始め各種団体から統一価格維持を訴える声も根強いようですが、特に地域医療構想と絡めて積極的な価格設定を行えば面白いことも出来そうです。
現時点で地域と言う単位がどの程度の大きさになるのかははっきりしませんが、一例としては医師不足とされる地域に高い診療報酬を設定すれば、新たな医療機関の進出が加速される可能性があります。
場合によっては全く逆の考えで診療報酬格差を設定し、医療リソースの集約化を期すると言うことも可能かとも思うのですが、いずれにせよ地域医療の未来図を明確に描いた上での設定が求められそうですね。

この診療報酬の格差設定自体も、診療報酬の伸びが著しい地域での対策として考えられている面もあるようですが、この点で関連がありそうなのが医療費の動向等に応じて給付率の調整すると言う考え方です。
一例として医療費が増えれば患者負担を増やすと言ったケースが考えられますが、後期高齢者の医療費自己負担が低く据え置かれていることで、病院に入れておくのが一番安上がりと言う状況もこれに該当するのかです。
病院待合が高齢者のサロンと化していると言った批判があるように、自己負担が安いから医療需要が増えると言う側面も確かに否定出来ませんが、確かに必要であるから利用している人もいることは事実でしょう。
一方でワープア化が進む現役世代にしてみれば、高齢者の医療費も負担させられた上に自己負担まで格差をつけられるのは我慢ならんと言うのももっともなので、いつまで特例による優遇措置を継続するのかですね。

今後都道府県が地域毎に格差をつけた診療報酬を設定するにせよ、今まで厚労省からの上意下達でやってきた医療行政にそこまで主体的に関与するには、十分なノウハウを持っている自治体も決して多くないはずです。
この場合自治体がどこに助言を求めるかと考えると、真っ先に想像がつくのが各地域の医師会だと思うのですが、当然ながら医師会として損になるような話に持っていくと言うことは考えにくいところですよね。
むしろ地域毎に価格差を設定すると言うよりも、例えば開業医過剰地域における新規参入を規制すると言った話の方が医師会受けは良さそうなのですが、表向き医療リソースの再配分促進としても通る話ではあります。
地域住民が現在ある身近なクリニックに不満がある場合、それが何十年か後に自主廃業するまで入れ替わりは起きないと言う事態にもなりかねないだけに、利害関係者の意志決定への関与は難しい側面もありそうですね。

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コメント

たとえば東京都の中で地域によって診療報酬に差をつけることが出来るとするのであれば、
自治体病院を厚遇して民間病院を冷遇するような診療報酬も可能ということでしょうか?

投稿: クマ | 2018年4月23日 (月) 11時27分

そんなこと医師会が許しませんとも

投稿: | 2018年4月23日 (月) 12時06分

指定できる範囲がどうなるかによっては、かなり恣意的に運用できる制度になりそうです。

投稿: 管理人nobu | 2018年4月23日 (月) 18時33分

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