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2018年1月29日 (月)

いらないはずのものを必要と言い張っているのは誰か

診療報酬は国が医療をどう誘導したいかが反映されるものですが、先日こんなニュースが出ていました。

「抗菌薬不要の説明」で加算、小児外来で新設(2018年1月26日医療維新)

 厚生労働省は1月26日の中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)に、薬剤耐性(AMR)菌対策として、小児科外来診療料等について「小児抗菌薬適正使用支援加算」を新設するほか、地域包括診療料・加算などかかりつけ医機能を評価する点数の要件として、「抗菌薬の適正使用に関する普及啓発に努める」「抗微生物薬適正使用の手引きに即した治療手順等、抗菌薬の適正使用に資する診療を行う」ことを追加する方針を打ち出した。
(略)
 政府の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」では、「抗微生物薬について、2020年までに、経口セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドの使用量を半減させ、全体の使用量を33%減」が目標。2018年度診療報酬改定でも外来、入院ともにAMR対策を強化する。
 新設の「小児抗菌薬適正使用支援加算」は、小児科外来診療料および小児かかりつけ診療料の加算。「急性上気道感染症または急性下痢症により受診した小児であって、初診の場合に限り、診察の結果、抗菌薬投与の必要性が認められず抗菌薬を使用しないものに対して、抗菌薬の使用が必要でない説明など療養上必要な指導を行った場合」が算定要件だ。

 全国健康保険協会理事の吉森俊和氏は、「医師による療養上の指導が適切に行われ、それにより患者側が抗菌薬の使用が不要であることを理解したかを明確にしておく必要がある」と指摘し、レセプトの摘要欄にその旨を記載するなど、算定要件を満たしているかが分かるようにすべきだと求めた。
 厚労省保険局医療課長の迫井正深氏は、事務負担の軽減も今改定の課題である上、レセプト摘要欄への記載を求めても画一的な内容になることも想定されることなどから、算定要件を満たしているか否かは「診療録で担保する」と回答した。
(略)

上気道炎や下痢で抗菌薬が不要な場合、いらないと患者に説明すれば診療報酬に加算されると言うものなのですが、その前提として抗菌薬がいらないことを説明した場合に算定出来ると言うことです。
別に小児に限らず大人に対しても加算を求めたくなるのですが、しかし逆に考えますと加算を付けたくなるほどに無駄な抗菌薬処方が多く、それを不要であると納得させるのに現場が苦労しているとも言えますね。
この種の医学的に妥当でないと判断されるにも関わらず、患者希望により行われる治療など本来は自由診療になるべきものですが、実際にはそうしたことを説明し納得させる手間を惜しむ先生も少なくなさそうです。
その結果医療費も増え耐性菌も出てくるとなれば結局後で困るのは医療現場だと言うことなのですが、この種の患者側の求めに対して現場が困っている事例としてこの時期多いあの感染症の話題も出ていました。

インフルエンザ治癒証明に意義なし(2018年1月11日日経メディカル)

インフルエンザで出席停止になった後、登校・登園を再開する際に求められる「治癒証明」。しかし、学校保健安全法は治癒証明を必須としておらず、その要否は地域で異なっている。沖縄県は医療機関を疲弊させないためにも「意義なし」とする。

 沖縄県は、県下の教育機関や民間事業所に対し、インフルエンザの治癒証明を求めることは「意義がなく、控えるよう」ホームページ上で呼び掛けている(図1)。同県保健医療部地域保健課の担当者は「県内では医療機関が不足しており、インフルエンザの治癒証明を求めることは医療機関の疲弊につながると考えた」と、この呼び掛けに至った経緯を語る。
(略)
 感染拡大を防ぐ観点から学校や保育所、民間企業などでは治癒証明を求められることが多い。しかし、治癒証明を必須とする法的な規定はなく、その要否は地域ごとに異なる
 学校におけるインフルエンザの出席停止期間を定める学校保健安全法施行規則では、発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまでを出席停止とするが、「出席停止を解除するために医師による治癒証明が必要とする規定はない」(文部科学省スポーツ・青少年局学校保健教育課)。文部省がまとめた『学校において予防すべき感染症の解説』に「症状により学校医又はその他の医師において感染のおそれがないと認めた場合には、登校(園)は可能」とあるため、文科省保健教育課は「これを治癒証明を求めるものと解釈する自治体はあるようだ」とも付け加える。
 一方、厚生労働省が策定した「保育所における感染症対策ガイドライン」は、再登園において「医師が記入した意見書が望ましい感染症」の1つにインフルエンザを挙げている。ただし、「登園するにあたっては一律に届出書を提出する必要はありません。(中略)届出の要否については、個々の保育所で決めるのではなく市区町村の支援の下で地域の医療機関や学校等と十分に検討して、決めることが大切」とする。
 にもかかわらず多くの自治体は、医師が記入した意見書が望ましいとされる感染症を、医師による登園許可証が「必要な」感染症と受け止め、登園を再開する前に治癒証明を求めているようだ。例えば東京都品川区では、区立保育所の園児がインフルエンザと診断された場合は、再登園前に医師による登園許可証の提出を求めている。一方、沖縄県は「保育所でも治癒証明書を求めないようお願いしている」(担当者)。

09年に国が「意義なし」と通知

 沖縄県が学校や民間事業所だけでなく保育所でも「治癒証明は意義なし」とする理由には、新型インフルエンザが猛威を振るった2009年に厚労省と文科省から出された事務連絡もある。同年10月に厚労省は「新型インフルエンザによる外来患者の急速な増加に対する医療体制の確保について」と題する事務連絡で、「再出勤に先立って医療機関を受診させ治癒証明書を取得させる意義はないことについて、周知すること」と通達した。厚労省健康局結核感染症課によるとこれは新型インフルエンザに限ったものだが、「沖縄では県や医師会、専門家などの話し合いの結果、新型インフルエンザで治癒証明に意義がないのであれば、季節性でも同様とのコンセンサスに至った」と高山氏は説明する。
 文科省も厚労省と同じ時期に、「新型インフルエンザに関する対応について(第17報)」という事務連絡を出し、「学校保健安全法第19条の規定に基づく児童生徒等の出席停止を行った場合などでも再出席に先立って治癒証明書を取得させる意義はない」としている。これについて文科省の担当官は、「そもそも学校保健安全法では治癒証明を求めていないが、慣習的に必要とする施設が多かったので、あえて出した」と言う。すなわち文科省の通達は、新型か季節性かを問わず、インフルエンザの治癒証明を求めていないことを念押ししたものだ。

 とはいえ、地域の医療機関の意向を受け、学校などでの治癒証明を必須とし続ける自治体がある。医療機関が林立する都市部のある自治体担当者は、「地元の学校医会や医師会と協議した結果、季節性インフルエンザでは感染拡大防止の観点から医師による治癒証明が必要と結論付けた。区立学校では登校再開前に再度、診察を受けるよう指導している」と言う。そのような現状に対して、「感染拡大予防というよりも再診料目当てではないか」と批判する声も聞かれる。実際その自治体では、学校医を受診した場合に限り治癒証明の発行手数料を自治体が負担しており、行政が学校医を受診するよう患者を誘導しているようにも見える。
(略)

蔓延阻止の観点からはウイルス排泄期間が長く不顕性感染も多いノロウイルスなども対応が厄介かと思うのですが、いずれにせよこの治癒証明と言うものがこの時期何かと話題になりがちです。
記事にもあるように、国の方では特に治癒証明を必要としていないと言っている一方で、各地の自治体の判断によって治癒証明取得が継続されているのですが、その判断根拠になっているのが専門家たる地元医師会の見解であるようです。
実際に治癒報告書は医療機関ではなく保護者が記載するものと書いている医師会もある一方で、主治医または学校医に記載を求める医師会もありで、地域によって見解も統一されていないようですね。

沖縄に限らず各地の医療供給は不足気味であり、特に基幹病院などはいちいち治癒証明など書いていられないと言うのが本音だと思いますが、まして医学的に不要であれば厚労省あたりは何故もっと周知徹底しないのかです。
ちなみに日医は新型インフルエンザ騒動に関連して平成21年に治癒証明不要と周知徹底するよう通達を各地医師会や自治体に出していますが、地元自治会と協議した結果治癒証明の継続を決めた自治体があると言うことです。
地域の医療機関独自の考え方もあるのだと思いますが、国が不要と言い上部組織も不要と言っているものを地域医師会が必要と言うのであれば、その医学的根拠はどこにあるのかとは問われざるを得ないでしょうね。

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コメント

抗生剤のことはべつに小児科だけじゃなくてもいいような?

投稿: ぽん太 | 2018年1月29日 (月) 08時40分

そもそも外来での抗生剤治療なんて多くの場合せいぜい5日程度。べつに健康保険で治療しなくてもよくないか。
大体1回こっきりの治療、外来で数日分の処方、それを全部保険診療の範疇に入れるべきかどうか?

投稿: | 2018年1月29日 (月) 09時12分

>医学的根拠はどこにあるのか
再診りょ…
いや、なんでもないです

投稿: | 2018年1月29日 (月) 10時07分

校医が診断治療から後始末まで首尾一貫して引き受けてくれるのであればそれはそれで筋が通るのですが、一番厄介な夜間時間外の初期対応は丸投げで文書料だけ取ると言うのでは困るでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2018年1月29日 (月) 20時33分

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