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2018年1月22日 (月)

医師の働き方改革、当たり前のことを当たり前に推進

ここまで来ると逆に厳しいと言うべきでしょうか、このところ推進されている働き方改革に関連して、先日海外からこんなニュースが出ていました。

人が健康的に働けるのは週39時間まで(2018年01月19日GigaZiNE)

オーストラリア国立大学の研究によって、人々が健康的に働けるのは週39時間が限界であると示されています。過労は日本だけではなく世界的に問題になっており、近年の科学研究によって、労働時間を削減することが重要であるという証拠の数々が示されています。
(略)
「働き過ぎ」の傾向は世界各国で起こっており、ドイツの金属労働組合であるIG Metallでは、1万5000人もの労働者がワーク・ライフ・バランスを向上させるため週28時間労働を求めてストライキを行いました。2017年2月にオーストラリア国立大学の研究チームは「健康的に働ける限界は週39時間だ」という研究結果を発表していますが、ドイツでストライキを行った労働者らも自分たちの要求について「怠惰ではなく自己防衛」だと説明しています。なお、シリコンバレーのコンサルタントであり起業家&スタンフォード大学客員研究員でもあるAlex Soojung-Kim Pang氏は、現代の労働者がクリエイティブでいられるのは1日4時間までであると主張しています。
さらに、スウェーデンで1日6時間労働を2年間取り入れた結果、労働者は自分たちがより健康的になったことを報告し、また仕事の生産性が組織全体で85%も向上しました。

ただし、これらの研究の多くは「労働時間」という数字的側面に着目したものであり、雇用条件について語るものではありません。例え1日数時間であってもストレスにあふれた労働環境であれば、労働者の自由や創造性は失われてしまう可能性もあります。市場調査会社YouGovの調べによると、イギリスでは全体の3分の1の労働者が自分の仕事は無意味だと考えているとのこと。労働時間とともに労働環境や従業員の士気の改善がなければ、労働時間削減の効果は少なくなってしまう可能性もあるわけです。

さすがに日本で直ちに6時間労働化も難しいのでしょうが、朝から夕方までずっと最善最良の仕事を続けられるかと言えば難しいでしょうから、人間創造的かつ効率的に働ける時間と言うのは案外短いものなのでしょうね。
記事にもあるスウェーデンの6時間労働化の社会実験では数々のメリットもあるものの、あまりにコストが掛かりすぎて持続可能とは思えないと言う大きな問題も指摘されており、実際2年間の完遂も資金的に難しかったそうです。
ちなみにこの実験では医療・介護関係者も数多く参加し、これら時間交代制が可能な職場では良いものの業界によっては全く合っていないと早々に離脱する業種もありで、なかなかに時短も難しいもののようですね。
とは言え過労死水準の労働は今や文明社会において許容されるべきではないのは当然ですが、医師の働き方改革検討会においても時短に関して早急に実施すべき項目が挙げられたと言います。

医師の時短に向け直ちに実施すべき事項を明示(2018年1月16日日経メディカル)

 医師の働き方改革の在り方を検討するために設置された厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」は1月15日、これまでの議論で明らかになった医師の勤務実態を踏まえ、医師の労働時間短縮のために全医療機関が直ちに取り組むべき項目として、尿道カテーテル留置など一部の行為を他職種に業務移管することや、自院の36(サブロク)協定の点検を行うことなど6項目を示した。来月に開催される検討会で再度検討した後に、何らかの形で全医療機関に通知する方針だ。
(略)
 今回示したのは「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み」(骨子案)。具体的には、(1)医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み、(2)36協定の自己点検、(3)既存の産業保健の仕組みの活用、(4)タスク・シフティング(業務の移管)の推進、(5)女性医師などに対する支援、(6)医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取り組み――の6項目を求めている。(1)~(5)については、勤務医を雇用する全医療機関で実施されるべき内容と位置付けられており、(6)については各医療機関が置かれた状況に応じて積極的に検討することを求めている。

 (1)「医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み」では、医師の在院時間について客観的な把握を行うよう求めている。ICカードやタイムカードなどが導入されていない施設であっても出退勤時間の記録を上司が確認するなどして在院時間を的確に把握する。
(略)
 (4)「タスク・シフティング(業務の移管)の推進」では、初療時の予診、検査手順の説明や入院の説明、薬の説明や服薬の指導、静脈採血、静脈注射、静脈ラインの確保、尿道カテーテルの留置、診断書などの代行入力、患者の移動について、医療安全に留意しつつ、原則として医師以外の職種が実施することで医師の負担を軽減する。さらに、労働時間が長い医師については、その業務内容を再検討し、業務分担できるように検討する。また、特定行為研修を修了した看護師を活用してタスク・シフティングをしている医療機関があることから、特定行為研修の受講を推進するとともに、修了した看護師が適切に役割を発揮できるように業務分担を検討するよう求めている。
(略)
 医師法第19条に定める応招義務については、「社会情勢、働き方、テクノロジーが変化している中で、今後の在り方をどのように考えるか、個人ではなく組織としての対応をどう整理するのかといった観点から、諸外国の例を踏まえ、検討してはどうか」という意見を紹介。
 自己研鑽に関しては「一般診療における新たな知識の習得のための学習」「博士の学位を取得するための研究や論文作成」「専門医を取得するための症例研究や論文作成」「手技を向上させるための手術の見学」があることを挙げ、自己研鑽とされているものの労働時間への該当性を判断するための考え方を示す必要があると記載している。
(略)

働き方改革の緊急対策、労働時間管理など5項目は「当然」(2018年1月15日医療維新)

 厚生労働省は1月15日の第6回医師の働き方改革に関する検討会(座長:岩村正彦・東京大学大学院法学政治学研究科教授)に「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み」の骨子案を提案した。(略)
「緊急的な取り組み」は現行法や省令の改正を要しない内容で、厚労省は検討会で了承を得られれば通知などの形で医療機関に実施を求める。同省医政局医事課は会議後、「(1)~(5)は当たり前のことで、原則(医療機関に)やっていただく内容。一方、(6)は難しいものもある」と説明した。
(略)
 骨子案では、労働基準法に規定のある(1)と(2)、労働安全衛生法に定めのある(3)について「現行の労働法制により当然求められる事項も含んでおり、改めて全医療機関において着実に実施されるべきものである」と明記し、強く実施を求めている。
(略)
 (4)のタスク・シフティングについては、2007年12月28日付け厚生労働省医政局長通知などに基づき、「原則医師以外の職種により分担して実施することで、医師の負担を軽減する」として、同通知の「関係職種間で適切に役割分担を図り、業務を行っていく」との記述よりも踏み込んだ表現で推進を強く求める。大学病院は他の病院団体よりもタスク・シフティングが進んでいない実態が明らかになったため、取り組みを一層推進する。
(略)

それはまあ、大学病院ではタスクシフティングも進んではいないのでしょうが(苦笑)、先日も北里大病院が医師の労働時間も定めず労働時間把握もしないまま長時間労働を強いて是正勧告を受けたと言います。
医師に限って管理規定の対象外とした上で、タイムカードを正しく打刻させないよう強要していたそうで、この種の違法行為を平然と行う施設には働き方改革について口を出す資格はないと言うものですね。
また以前から長時間労働の根本原因とも目されている応召義務についても議論されることが決まっているものの、今のところ具体的にどこまで話が進むのかはっきりせず、今後の議論の行方が注目されるところです。
ただ今回の記事を読んでいて気になったのが、(1)の医師労働時間管理に関して在院時間の客観的把握を求め、出退勤時間を記録し確認せよとした上で、これを今後当たり前に行うこととしている点です。

以前から医師の働き方改革に関連して問題になっているのが、院長理事長など管理者側が何かと労働ではなく自己研鑽であると主張し、医師の労働時間を実際よりもはるかに少なく限定しようとしている点でした。
この点で今回労働時間ではなく在院時間を記録し管理すると求められることになったわけで、今後は何が労働時間かと言う神学論争は棚上げにして在院時間短縮と言う視点で議論されることになるのでしょうか。
世間的には仕事が終われば退社するのが当然であり、出社退社の時間に合わせてタイムカードを打刻するのが当たり前で、医師が労働時間外での在院が多いと言うなら残業時間ではなく、労働以外での在院時間を申告させるようにすれば済む話ですね。
まして医療業界には医師の働き方改革に関して自助努力が乏しいどころか、完全な抵抗勢力化している感がありますから、今後は不毛な論争に無駄な時間を浪費することがなくなれば望ましいことです。

ちなみに医師を対象とした調査でもっとも進んでいる働き方改革の取り組みとして労働時間管理の強化が挙げられていますが、それも16%ほどに留まり実際には過半数が何も変わっていないと答えたそうです。
この点からも業界の抵抗勢力化が見えるとも言えますが、基本的に社会保障費は今後も引き続き抑制される中で医師数増加政策が続いているのですから、当然ながら一人当たりの取り分は目減りする宿命です。
その代わりに労働環境が良くなればまだしもなのですが、現状では施設管理者側は今まで同様の利益を上げるためにさらに労働強化を推進しそうな気配が濃厚で、とても働き方改革などと言えそうにはありません。
診療報酬が引き下げられれば一層薄利多売が進み、総労働量が増え医療費も抑制されない制度上の問題もあると言え、今後は働き方改革推進に結びつくような診療報酬のあり方も望まれるところではありますね。

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コメント

過重労働は少子化その他我が国の諸悪の根源、と言っても過言ではない状況ですから、奴隷医ドモを早急に縛り首…<本当にしつこい

安倍内閣は割と本気で過重労働をなんとかしようとしているように思われますので期待したいです。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年1月22日 (月) 09時35分

医師以外に医師の業務割り振ったら点数付けたらいい

投稿: | 2018年1月22日 (月) 11時03分

客観的に医師は働き過ぎだと言うデータが出て、国全体としても働き方改革を進めようと言う時に、当事者の医師から改善を熱望する声が出ないと何なんだと言うことになりかねませんね。
そのために法律なり制度なりが支障になると言うのであれば、何をどう改めることが必要なのかは当事者が声を出すべきで、制度がこうだから無理だと言うのは話が違うと思います。

投稿: 管理人nobu | 2018年1月22日 (月) 22時08分

人手不足の時代とはいえ医師は着実に増えてんですよね。
ほんとだったら全業種の先陣切って改善が進んでそうなもんですけど。

投稿: ぽん太 | 2018年1月23日 (火) 08時31分

医師は着実に増えてますけれども、昔みたいに24時間戦えますか的な医師が減ってますからねえ。
女性の比率もだんだん高くなってますし。
女性医師の労働時間を配慮すると男性医師からも配慮しろと要求される好循環w

応召義務は罰則もない、誰のどういう義務化を法律家も説明できない謎の義務なので、こだわる必要無いと思うんですけどねえ。
紹介状なければ診ないなんてやってる病院が応召義務を語るなと個人的には言いたい。

投稿: クマ | 2018年1月23日 (火) 10時35分

女が働かないってより男が家庭生活放棄しちゃってる方が問題なんだけどね本来

投稿: | 2018年1月23日 (火) 22時21分

亀レスですが、ゆとり世代の使えなさには、みんなスルー。30歳外科系医師の能力ときたら、20年前の2年目程度のとろさ。統計上麻酔科医激増で、未だにフリーターの私があぶれないのは、使えない外科医のおかげ。

投稿: 麻酔フリーター | 2018年1月26日 (金) 09時15分

>紹介状なければ診ないなんてやってる病院が応召義務を語るなと個人的には言いたい。

当地の基幹病院、定期受診してる患者さんでも他科受診が必要な場合一旦開業医なりを受診してそっから紹介、って形にせにゃならんのですがこれってどこでも?院内で廻すと紹介料取れないからかとゲスパーしてるんですが、正直メンドイ…。

>男が家庭生活放棄しちゃってる方が問題

当地九州では、古来より男が威張り腐って家の事はノータッチ、なんですが、奥さんに靴下まで履かせっちゃったりしてるうちに完全にスポイルされちまって奥さんがいないと茫然自失、自分じゃお茶も淹れられないのがザラにいます。私は釣った魚は自分で捌かなきゃならんのでまだマシですが…w

>20年前の2年目程度のとろさ。

つーとまさにバブル世代な若かりし頃のおいどん(正確にはちょっと先輩ですが)なわけで、事実ならそりゃ酷いw。でもそれって古代エジプトの碑文にもあるってゆーアレ、「今時の若いもんは…」って奴な可能性がががw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年1月26日 (金) 11時39分

>定期受診してる患者さんでも他科受診が必要な場合一旦開業医なりを受診してそっから紹介
近所の大きな病院は、そうしている診療科もあるみたいですねえ・・・

私のところは、完全な初診なら診ます。どこかの医者にかかっているならそこの紹介状をもらってくるよう言います。
かかっている医者が「紹介状なんか書かない!」って言う場合は紹介状なしでも診ますw

投稿: クマ | 2018年1月26日 (金) 14時39分

かかりつけがあるのに飛び込み受診するのはDQN率高めな気が

投稿: 気のせいかもだけど | 2018年1月26日 (金) 15時59分

>「今時の若いもんは…」って奴な可能性がががw
もちろん、その感情があるのは否定はしません。しかし、「とろさ」=手術時間 もしくは、一針あたりの時間に関して、20年前の2年より今の5年目の方が長いのは事実です。もちろん、私の目の入る範囲で、Nは二ケタです。手術下手糞病院→麻酔常勤が逃げる→麻酔非常勤が集まる、のバイアスで、全国の病院の傾向じゃなければよいのですが、私の偏見では全国の傾向だと思います。

投稿: 麻酔フリーター | 2018年1月27日 (土) 07時04分

「今どきの若いもん」の今年のエピソードとしては、鉄道が30分程度遅れた時に、堂々と30歳執刀医が30分遅れてきたことでしょうか。非常勤麻酔科の私や看護師は、ちゃんと間にあっているのに、、、。若いもんが遅れて、手術が遅れることは、昔はなかったです。そもそも昔の(ドロッポ師匠によると奴隷)外科医は、7時頃には病院に着いていたので、30分程度の交通の遅れなんか関係なかったのですが。

投稿: 麻酔フリーター | 2018年1月27日 (土) 07時09分

>「とろさ」=手術時間 もしくは、一針あたりの時間に関して、20年前の2年より今の5年目の方が長いのは事実です。

殴られたりしないからかなw?
*まあ私だって殴られたりはしてないですが、ヌルいマイナー科だからなあ…。

>鉄道が30分程度遅れた時に、堂々と30歳執刀医が30分遅れてきたことでしょうか。

すいませんおいどん鉄道とか関係なしにしょっちゅう遅刻してましたっっwwwww


投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年1月27日 (土) 09時56分

社会人失格w

投稿: | 2018年1月27日 (土) 11時53分

多分褒められた!

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年1月27日 (土) 14時25分

麻酔科医に殴られたとか、麻酔科医が蹴ってオペ室のドアを壊したとかの話は昔の病院ならよくある話だったみたいですねえ・・・
外科医が下手かもしれないのは卒後教育をするゆとりが失われているのでしょうか?

>かかりつけがあるのに飛び込み受診するのはDQN率高めな気が
否定はしませんが、一部やむを得ないと思われる患者さんも含まれます。

投稿: クマ | 2018年1月28日 (日) 22時55分

>麻酔科医に殴られたとか、麻酔科医が蹴ってオペ室のドアを壊した

…麻酔科医!?外科医じゃなくて!!??。一体どこの世紀末病院ですかw?

>否定はしませんが、一部やむを得ないと思われる患者さんも含まれます。

それがクマ先生と何の関係があるんだw!?

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2018年1月29日 (月) 09時39分

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