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2017年12月 6日 (水)

医療広告、ビフォーアフター禁止など規制強化へ

一般的な医療従事者はあまり意識することのない話題ではあるのかも知れませんが、国民生活には相応に影響を与えそうな話として、先日こんなことが報じられていました。

術前術後の写真、体験談は禁止=医療広告規制、来年6月から-厚労省(2017年11月29日時事ドットコム)

 プチ整形など美容外科をめぐる消費者トラブルが相次ぐ事態を受け、医療機関の広告規制を見直している厚生労働省は29日の有識者会議で、ウェブサイト上などへの術前術後の写真や患者らの治療体験談の掲載を禁じる省令案と新ガイドライン(指針)案を提示し、大筋で了承された。一般の意見を募った上で、来年6月から適用する。

 単に術前術後の写真を掲載した広告は加工や修正の有無にかかわらず禁止し、イラストも対象。ただ、患者の知る権利への配慮から、治療内容や副作用のリスクなど詳細な説明があれば規制の対象から外す。体験談も個人が行う口コミサイトなどは対象外だが、医療機関が広告料を払っていれば規制対象とする。

 具体的な禁止例も明示した。「どんなに難しい症例でも必ず成功します」は虚偽広告、著名人の推薦をうたった宣伝は比較優良広告に当たる。「ただいまキャンペーン実施中」「治療し放題プラン」など費用を強調した広告もできなくなる。

医療広告、「患者体験談」を禁止に、新ガイドライン(2017年11月30日医療維新)

 厚生労働省の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(座長:桐野高明・東京 大学名誉教授)の第7回会合が11月29日に「医療広告に関する省令・ガイドライン(案)」を了承した。患者体験談を使った広告の禁止や、術前術後の写真を掲載する際には「詳細な説明」を加えることなどが定められた。今後、パブリックコメントを実施し、2017年度末までに省令を公布、2018年6月1日から施行することが見込まれる(資料は、厚労省のホームページ)
(略)
 新ガイドラインでは、広告規制の見直しの趣旨を「規制対象を『広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段』に拡大する一方、患者に正確な情報が提供されその選択を支援する観点から、医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合については、幅広い事項の広告を認めることとした」と説明する。現行の「医療機関ホームページガイドライン」は廃止となる。

 新たに盛り込まれた主たる規制は「ビフォーアフター」写真や体験談について。10月4日の第5回検討会で厚労省は「体験談や術前術後(ビフォーアフター)の写真等については、誘引性があるものは原則として、広告禁止事項として省令に規定してはどうか」と提案していたが、10月25日の第6回では(1)誘引性があるものは原則として禁止する、(2)虚偽・誇大なものを禁止する――の2案を提示。
 結果的に省令では「治療等の内容又は効果について、患者等に誤認をさせるおそれがある治療等の前後の写真等を広告してはならないこと」、ガイドラインでは「また、術前術後の写真に通常必要とされる治療等の内容、費用等の詳細な説明を伏した場合についてはこれに当たらないものであること」となり、原則禁止から後退した。
 患者体験談については省令では、「患者等の主観又は伝聞に基づく体験談を広告してはならないこと」と定めた。ガイドラインでは、「なお、個人によるウェブサイトへの口コミなどの掲載については広告に該当しないこと」と記されている。
 厚労省が対応が必要としていた「ランキングサイトの体裁を取りつつも特定の医療機関への誘引の意図が認められるアフィリエイトサイト」などについても、新ガイドラインでは「消費者に広告と気づかれないように行われる、いわゆるステルスマーケティング等についても、医療機関が広告料等の費用を負担等の便宜を図って掲載しているなど、実質的には上記に示したいずれの要件も満たし、同様に広告として取り扱うことが適当である場合があるので十分な留意が必要である」と盛り込まれた。
(略)
 医療法の広告規制では「広告禁止事項」と「広告可能事項」を定めている。「広告可能事項」について、「患者が自ら求めて入手する情報については、適切な情報提供が円滑に行われる必要がある」との考えから、「限定解除の具体的な要件」も示された。以下の(1)―(3)のいずれも満たした場合が広告可能になる。

(1)医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告である場合
(2)表示される情報の内容について、問い合わせ先が記載される等により容易に照会が可能であり、患者等と医療機関等の情報の非対称性の軽減が担保されている場合
(3)自由診療について情報を提供する場合には、あわせて次に掲げる事項を提供する場合
    〔1〕通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項
  〔2〕治療等のリスク、副作用等に関する事項

(略)

およそ美容系クリニックの広告が軒並み全滅しそうな勢いなのですが、今まで医療系広告を請け負ってきた会社にとってはビジネスチャンスとも言え、今後は新規性に対応したHP等々の売り込みが増えそうですよね。
最近ではいわゆる免疫療法と呼ばれてきた免疫細胞療法が、免疫チェックポイント阻害薬など広義の免疫療法の進歩により改めて脚光を浴びるようになったせいか、各方面でひっかかる方も少なくないそうです。
別に代替医療が好きな人は好きで構わないのではないかと言う突き放した考えもありますが、ネットでちょいと検索すれば自由診療クリニックの「使用前、使用後」が出てくるわけで、それは引っかかりもするでしょうね。

ただ患者が自ら求めてアクセスする場合には許容すると言うことですが、ネット上にあふれる医療関連情報なるものも問題が多々ありで、先日も大手の運営する一見真面目な医療情報サイトの内容がトンデモだったと炎上騒動があったばかりですよね。
ある先生の調査ではネット検索で正しい情報が掲載されているのは医療機関でさえ約半数、個人サイトや広告ではほぼ例外なく問題ありだったと言いますが、この一部にはソースロンダリング的な行為もありそうです。
これは社会問題化したホメオパシーなど代替医療で常用される手法で、有効性の根拠とされる文献等を探っていくと同業の身内同士で引用しあっているだけだったり、元文献の内容と真逆な引用を行う行為です。
また記事にもあるステルスマーケッティングのように顧客を誘導することを目的としたヤラセサイトも少なくありませんし、ネット以外に新聞折り込みチラシにもエヴィデンスに乏しい美容整形の広告が含まれていることも周知の通りですね。

いずれも商業主義的な利益最大化を目的とした営業活動で、批判されるべき行為と見なされたことが今回の規制強化につながったわけですが、しかし考えてみるとどこの業界でも当たり前に行われる手法でもあります。
例えば体重減少効果をうたった広告などはまさに今回規制された手法そのものですが、時としてこうしたものを真に受けたがために健康を大いに損なう人もいると言う点で有害性でも劣らないでしょう。
そんな中で医療系広告にだけこれだけ厳重な規制をかけることは職業差別だと言われても不思議ではないはずですが、もともと医療法と言う広告規制を正当化する法律があったからこそとも言えるのでしょうね。
なお一般医療機関への影響がどうかですが、患者の治療体験談などは真っ当な医療機関と患者にとっても意味があったものもあり、文言を文字通り厳密に解釈すると思わぬところに影響するかも知れませんね。

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コメント

自由診療はともかくとして、保険診療オンリーの一般的な医療機関の場合広告の対費用効果ってどれほどのもんなんですかねえ?どうせたいした事は謳えないわけで、新規開業以外ではあんまし意味がない気が…。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年12月 6日 (水) 10時14分

継承開業した先輩がついに看板立てたって聞いた
親は看板一切立てず常連だけ診てたらしい
経営が成り立つならその方がストレスなさそうだけど

投稿: いなかもん | 2017年12月 6日 (水) 12時10分

今回の新ルールは医療機関側への影響よりも、受診先探し等で判断材料を求める一般市民への影響の方が大きいのではないかと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2017年12月 6日 (水) 22時30分

健康食品や痩身器具についても、体験談禁止にしてもらえたらよいですね。

投稿: | 2017年12月12日 (火) 09時20分

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