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2017年12月25日 (月)

その答えは誰も知らないし、多くの人々は必死に先送りを図っている

医師の働き方改革をどう実現していくかについての議論が進んでいますが、先日こんな面白い記事を見かけました。

「医師の働き方改革」は結局いつから始まるの?(2017年12月21日日経メディカル)

 2017年春、医師にも残業時間の上限規制を設けることが決まり、現在も規制内容についての検討が続いている。流行語大賞2017にもノミネートされ1年を通して話題を振りまいた「働き方改革」だが、いつから始まるのだろうか。

 政府が今年3月末にまとめた「働き方改革実行計画」で、長時間労働の是正のために時間外労働の罰則付き上限規制を設けることなどが示された。
 この中で「医師」の働き方改革については、医師法に基づく応招義務などの特殊性を踏まえた対応が必要とされ、罰則付き上限規制の適用を5年間猶予し、具体的な規制内容は今後検討して2019年3月末までに結論を得るとされた。つまり、医師の時間外労働に上限規制が設けられるのは、早くとも2024年からということになる。その具体的な検討は、今夏から「医師の働き方改革に関する検討会」で行われている(厚労相「医療の質を維持しつつ労働環境改善を」)。

 当初、日本医師会会長の横倉義武氏は、会見で「今回の議論で、多くの患者さんや国民から『医師が労働者であるということは違和感がある』との声をたくさん頂いた。(中略)この機会に、そもそも医師の雇用を労働基準法で規律することが妥当なのかについても、抜本的に考えていきたい」との考えを示したことから、「そもそも医師は労働者か否か」といった議論も巻き起こった。この議論については、検討会の第2回会合で定義が明確化され、勤務医のほとんどは労働基準法上の労働者であることが示された(「一般的な勤務医は労働者」に議論の余地なし)。
 ただし、医師の業務の特殊性から「外科医に、政府が言う『働き方改革』をきちんと適用することは不可能」(外科医が残業をやめたらどうなるか考えてみた)との声も上がっている。医師に時間外労働規制を行うこと自体、現実的ではないのではないか、という指摘だ。

少しでも実効性の高い「働き方改革」にするために
 こうした意見は、検討会に加わる医師からも表明されている。検討会で、非医師系のある委員が「医師の働き方に特殊性はあるが、1人の人間であり労働者であることは紛れもない事実。医師についても労働基準法が適用される対象であることをしっかり確認してから議論すべき」と釘を刺したのに対し、医師の委員から「臨床医は、外来以外にも医学生や市民の教育、研究や自己研鑽、医療機関の経営主体への関与など様々な業務があるため、画一的な労働時間の制限を設けるべきではない」「若い研修医などは長時間労働をしていても元気。人によって働ける量には差があるように感じている」と、医師の特殊性を強調した反対意見が表明される一幕もあった(検討会第1回会合における主な発言)。

 もちろん、今の体制のまま勤務時間だけを一律に規制すれば、医療の質は低下せざるを得ない。それが理解されているからこそ、2019年3月末までの猶予期間が設けられたのであり、少しでも実効性の高い働き方改革とするためには、規制内容を前向きに議論する必要はあるだろう。
 実際、医師が過労死と認定されるケースが発生し、管理者の配慮が求められている状況の中で、「本人が働きたいと言ったから働かせた」と言う抗弁が通るはずがない。今年11月に勤務医労働実態調査2017実行委員会が発表した調査の中間解析でも、当直明けの連続勤務が、医師の集中力や判断力を鈍らせ、診療ミスが増えていることを報告している(当直明けの連続勤務で「診療ミス増」が27%)。

 検討会で今後検討される4項目の2番目は、「勤務環境改善策」だ。ここで、時間規制によって「量」が減った際、いかに「質」を落とさないようにするかの策が練られる。
 具体的には、診療業務を効率化するためのタスクシフティング(業務の移管)やタスクシェアリング(業務の共同化)の推進、AI、ICT、IoTを活用した効率化などが挙げられている。委員からは、従来提唱されてきたタスクシフティングやシェアリングが進んでこなかった実態を踏まえ、「実行に移すには、まず医師の業務を示し、他職種がその各業務にどう関われるのかを具体的に検討すべき」という意見も出ている。
(略)

しかし今さら医師は労働者か否かもないもので、すでに全く無意味な議論であると全否定された考えですが、記事を見ると医師の労働環境改善に対する最大の抵抗勢力が誰なのかがよく判る話ですよね。
ちなみにこの「医師の働き方改革に関する検討会」に参加している医療側メンバーを見ますと、赤星先生ら若手もいらっしゃいますが、やはり所属組織内でトップまたはそれに近い地位にある方々が大多数のようです。
要するに現場の医師達を労基法無視で働かせ大きな利益を得てきた既得権益所持者の方々が、「画一的な労働時間の制限を設けるべきではない」「人によって働ける量には差がある」云々と、必至に抵抗している構図ですね。

他業界で言えば大手広告代理店の新入社員が過労死し対策を検討する場に、大企業のエラい方々を集め「一律の労働規制は日本企業の国際競争力低下ガー」等々と反対意見ばかり語らせているのと同じ構図です。
確かにそれはありがちな現実ではあるのですが、企業トップも社員の一人であり、彼らの意見もすなわち労働者の意見の一つであるとして、労働者は労働環境改善に反対しているかのように取り上げられるのはどうなのかです。
組織のトップには自浄能力が期待出来ないどころか、むしろ一番の抵抗勢力となっている場合には社会的制度的に違反者に罰則を設けるなど規制強化すると言うのが一つのお約束ですが、医療の場合何をどうすべきかですね。
企業が労災を出すと世間的にも大変な騒ぎで、夏場に熱中症で社員が搬送でもされれば担当者が青くなると言いますが、過労死など出すような施設は研修指定取り消しなりのペナルティくらいはあっていいかも知れません。

過重な労働の何が問題であるかと言えば、それが業務の質を低下させ所属組織の不利益に留まらず、結局は顧客の不利益につながるからであって、この点に無自覚でいる人間が組織の管理者側に立つと大変です。
ちなみに先日出ていた興味深い話として、日本の労働生産性がG7と言われる主要先進国の中でも最下位であったと言うのですが、なんとこの状況が1970年以降ずっと続いていると言うのですから驚きます。
面白いのが上位諸国が何をどう対策しているかですが、例えばドイツでは一日10時間を越える労働は禁止され、これに違反すると最大180万円の罰金を企業ではなく上司が自腹で(!)支払わなければならないそうです。
このようなシステムがあればそれはいかに業務を効率化するかに誰しも必死にならざるを得ませんが、少なくとも日本の医療業界が医師業務を効率化することに最大限の努力と工夫をしているようには見えませんね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

100万200万じゃ罰金は払うから変わらず働けと言われかねない気が…

投稿: ぽん太 | 2017年12月25日 (月) 08時47分

「足りぬ足りぬは工夫が足らぬ」とどっかの臨床研修担当の指導医が研修医に言ってましたねえ。
週40時間で労働時間が足りないというのは工夫が足りないと言うことでファイナルアンサーじゃないでしょうか?

私は外科医じゃないのでよく分かりませんけれども、外科医が残業をやめたら何が困るのか、どなたかご教示いただけるとありがたいです。

投稿: クマ | 2017年12月25日 (月) 08時48分

>医療の場合何をどうすべきかですね。

労働ダンピングする奴隷医ドモを縛り首w

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年12月25日 (月) 10時01分

多忙と言われる医師の世界も本当に労働生産性を高めた上で時間不足になるのはどれくらいの割合になるのかですが、少なくともその部分での改善努力はまだまだ足りていないと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2017年12月25日 (月) 21時48分

下手糞外科医が、残業増やしている側面の記事を見たことがないですね。しかも、手術室看護師や麻酔科医は直接巻き込まれ、病棟看護師も間接的に巻き込まれて、被害甚大。

投稿: 麻酔フリーター | 2017年12月29日 (金) 10時28分

でも下手くそ医者の方がもうかるんでしょ?

投稿: | 2017年12月29日 (金) 12時15分

>下手くそ医者の方がもうかるんでしょ?

DPCだと手術が下手なら儲かりにくいような気がしますけれども。

投稿: クマ | 2017年12月29日 (金) 16時17分

DPCだと、下手糞手術はあまり推奨されないのですが、損する訳ではありません。1日当たり入院単価が落ちて、余計な薬剤費が持ち出しになりますが、空床よりかはマシです。スペシャルな外科医がいて、早く患者を返して、それでいて空床にならない位患者が集まる病院が、一番儲かる病院ですが、2番目は下手糞外科医で入院長引いて満床の病院です。手術うまいけど、患者が集まらず空床になってしまう病院が一番儲かりません。だから、下手糞外科医は生き残っているのです。

投稿: 麻酔フリーター | 2017年12月31日 (日) 11時18分

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