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2017年12月20日 (水)

医師の振る舞いで患者が不満に思うこと

先日面白いなと思ったのがこちらの調査結果なのですが、まずは記事から紹介してみましょう。

患者の満足度が一気に低下するのはどんなとき?米国の家庭医に対する評価結果を分析(2017年12月8日国際医学短信)

 ひと昔前まで、患者は医師の助言であれば仮に歓迎できない内容であっても受け入れるのが当たり前だった。しかし近年、患者は注文の多い医療サービスの消費者となり、要望に応じない医師に対して不満を示すようになりつつあるようだ。特に、新たな薬剤の処方や専門医など他の医師への紹介を要求して断られた場合に患者の満足度が一気に低下することが、米国の家庭医を受診した患者を対象とした研究で示された。詳細は「JAMA Internal Medicine」11月27日オンライン版に掲載された。

 この研究は米カリフォルニア大学デービス校(UCD)のAnthony Jerant氏らが実施したもの。同大学傘下のクリニックの家庭医56人を受診した患者1,141人(平均年齢45.6歳、女性68.4%)に、受診ごとに医師に対する満足度を評価してもらった。受診件数は計1,319件だった。
 その結果、全受診の68.0%(1,319件中897件)で患者から何らかの要求が示され、医師は全ての要求の85.2%に応じていた。要求内容で多かったのは臨床検査の実施(34.0%)、他の医師への紹介(21.1%)、鎮痛薬(20.5%)や新たな薬剤(鎮痛薬や抗菌薬を除く、20.5%)の処方だった。
 どのような要求が断られると患者の満足度が低下するのかについて分析したところ、他の医師への紹介または新たな薬剤を要求して断られた場合に満足度が最も低下し、要求を受け入れられた場合と比べて満足度スコアのパーセンタイル値が平均で約20ポイント低いことが示された。また、鎮痛薬や臨床検査を要求して断られた場合も平均で約10ポイント低下することが分かった。

 Jerant氏は「医師にとって最大の問題は、患者の満足度スコアが医師の賃金に直結するケースが増えていることだ」と指摘。「実際はそれほど役に立たないと分かっていても、患者の要求に従って鎮痛薬を処方したり検査を行ったりしてしまう医師は少なくないだろう。われわれは、患者の満足度スコアを反映させた報酬のあり方について再考すべきだ」としている。
 米国内科学会(ACP)臨床プログラムのCynthia Smith氏は「最近はテレビで新薬の情報を得たり、自分の症状についてインターネットで調べた上で受診する患者が多い。例えば、いとこに脳腫瘍患者がいる頭痛患者の場合、頭痛についてインターネットで検索した時に画像検査で脳腫瘍を発見できるという情報を得れば、その検査を要求するのは不思議ではない」と話す。

 なお、今回の研究では抗菌薬の処方の要求は少なく(8.1%)、またこの要求に応じてもらえなくても満足度スコアは低下しないばかりかわずかに上昇することが示された。この点について、Jerant氏は「抗菌薬の不適切な処方に起因した耐性菌の増加といった問題がようやく認知されてきたことが背景にあるのではないか」と考察。「これは希望の持てる結果であり、鎮痛薬の問題についても広く周知されれば状況は変わってくる可能性もある」と期待を寄せている。
 また、Jerant氏とSmith氏はともに「医師は患者とのコミュニケーション能力を向上させる必要がある」と強調。Smith氏は「薬や検査を求める患者の背景にある気持ちを探り、理解する必要がある」としている。一方、Jerant氏は医師に対し、「患者の要求を全面的に否定するのではなく、お互いの妥協点を見出すよう心掛けるとよい」と助言。患者の不安を認めた上で、正直に「この薬や検査は治療には役立たないと考えている」と伝え、しばらく様子を見ることを提案する“watchful waiting(注意深い経過観察)”のアプローチが有望だとして、今後、臨床試験でこのアプローチの効果を検証したいとの意向を示している。

日本とは医療システムが異なる米国での調査結果で、ドクターフィーがあるなどいわば顧客満足度が収入に直結しやすい環境だからこそと思える部分もありますが、日本でもある程度首肯できるものがありそうですね。
特に顕著な満足度低下を示したものとして他医師への紹介の拒否が挙げられていますが、患者が紹介してくれと言うくらいですから目の前の医師では不足と感じているわけで、断られれば不満も溜まるでしょう。
もう一つ挙げられている新たな薬の要求にしても今の薬で不足していると思っているからこそでしょうから、これらが大幅な満足度低下に直結するのは当然と言えば当然なのですが、興味深いのは抗生剤投与の件です。
世界的に見ても抗生剤好きと言われる日本であれば逆の結果が出るのでは?と言う気もするのですが、医療文化の違いや患者啓蒙活動の結果だとすれば、日本も見習うべき部分がありそうに思います。

この記事を読んで興味深いと思ったのが、世界に名だたる訴訟社会であるアメリカの医師が訴訟リスクよりも、賃金への影響等金銭的な面での不利益を気にして患者の要求を判断しているようにも見える点です。
皆保険制度で比較的コスト意識の低い日本の医療現場において、過剰検査や過剰診療の原因としてしばしば挙げられるのが医療訴訟などトラブルのリスクなのですが、意外とそうした点は気にならないのでしょうか。
とは言え患者の全要求は実に85%までも受け入れているのですから、患者としては何かあっても自己責任と納得出来るのかも知れずで、結果的に医療訴訟のリスクは減らせているのかも知れないですね。
ちなみに日本の場合患者数が諸外国よりも圧倒的に多く、トラブルでもあれば診療が回らないと言う懸念から、時間をかけて検査や薬がいらないことを説明するよりさっさと言われたとおりにすると言う先生も多いようです。

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コメント

イヤなら来るな
患者はいくらでもいる

投稿: | 2017年12月20日 (水) 10時05分

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