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2017年11月13日 (月)

実質的な医師強制配置の方法論に関する議論始まる

今も賛否両論ある医師の計画的配置と言うものについて、新専門医制度がその景気となるのでは等々様々な声がありますが、こちら厚労省が制度的に医師の計画的配置を考えているようだという記事が出ていました。

「医師少数区域」の勤務医師、厚労省が「認定」を検討(2017年11月9日医療維新)

 厚生労働省は11月8日の「医療従事者の需給に関する検討会」の第14回医師需給分科会(座長:片峰茂・長崎大学前学長)で、医師偏在対策として「医師少数区域」での一定期間以上の勤務経験を有する医師を厚労省が認定し、「認定医師であること」を広告可能としたり、地域医療支援病院等、一定の病院の管理者になる際に評価するなど、義務ではなくインセンティブで「医師少数区域」での勤務を促す仕組みを提案した。
 認定自体には異論はなかったものの、インセンティブではなく管理者要件として「医師少数区域」での勤務義務化を求めたり、地域医療支援病院以外にも臨床研修病院や診療所など、対象範囲をどこまで広げるかなどさまざまな意見が出た(資料は、厚労省のホームページ)。

 外来医療については、無床診療所が都市部に偏在する傾向を是正するため、厚労省は地域の疾病構造や患者の受療行動など、外来医療の現状を「見える化」して情報提供することを提案、構成員の了承を得た。
 一方で外来医療における医師偏在対策として、これまでの医師需給分科会では、病床規制と同様に、無床診療所についても開業制限や保険医療機関の指定制限を設けるべきだとの意見が挙がっていた。しかし、厚労省は憲法上の「営業の自由」との関係や、制度導入前の「駆け込み開業」など法制的・政策的な課題をクリアしなければ、制度的に無床診療所の開業制限等を行うのは、「実現は困難」と説明。
 「医師少数区域」での勤務を管理者要件とすることと、外来医療での偏在対策、無床診療所の開業制限等は関連する問題。いずれも強制力をもって進めるか、インセンティブを設けて医師の選択に委ねるかという視点で、構成員の意見は分かれた。
 日本医師会副会長の今村聡氏は、「あくまで医師の自主性を尊重すべきだ」とし、インセンティブを中心とした施策を重視し、仮に開業制限等を導入すれば「駆け込み開業」が起きると懸念した。
 一方で、岩手医科大学理事長の小川彰氏は「強制力を設けないと、実質的に動かない」、全日本病院協会副会長の神野正博氏も「偏在対策には、規制的な手法が必要」とし、「医師少数区域」での勤務を管理者要件にすることは「あり」との見解を示した。
(略)
 認定医師の「医師少数区域」の勤務経験について、厚労省は、臨床研修や専門研修の期間に限らず、診療所開業前など、医師のさまざまなキャリアの時期での勤務を想定している。「どの時期で経験するのかは、まさに医師の選択による。若い時期、あるいはある程度経験を積んだ時期など、どこでも可能という意味」(厚労省医政局総務課長の榎本健太郎氏)。
 主に議論になったのは、「地域医療支援病院等、一定の病院の管理者としての認定医師の評価」の解釈だ。小川氏は、「認定医師でないと管理者になれないという理解でいいのか。『一定の病院』とは何か」と質問。厚労省医政局総務課は、「これまでの議論で、管理者要件として導入すべきとの意見があった一方、医師の自発的な意思に働きかけるべきだという意見もあった」と述べ、「一定の病院」の範囲と併せ、医師需給分科会で議論することを求めた。小川氏は、医療は税金や保険料など公的資金で成り立っているとし、「地域医療支援病院のみではなく、診療所の管理者要件まで入れないと効果はほとんどない」と提案。
 神野氏も、「強い医師偏在対策は必要。管理者要件を医師不足地域での勤務経験で縛ることは、私はありだと思う」と述べ、公的・公立病院、診療所までを対象に含めるかどうかを検討する必要性を指摘した。

 一方で、「管理者要件」とするなど、強制力を持った施策をけん制したのが、今村氏。「医師少数区域」での勤務を評価することには賛成したものの、「あくまで医師の自主性を尊重すべきだ」とし、医師のキャリアの中で、地域医療を知る機会の一端として、この仕組みを活用することが想定されるとした。さらに、強制的な仕組みを入れ、診療所の開設者の要件とすると、要件導入前に「駆け込み開業」が起きる恐れがあるとし、「相当慎重に検討した方がいい。まずはこの仕組みをはじめ、どんな効果があるかを見て、次のステップに進むべきだ」とした。
 国立がん研究センター中央病院呼吸器内科病棟医長の堀之内秀仁氏も、若手医師に「一つの足かせのコースができた」と受け取られるのを懸念し、医師の生涯のキャリアパスの中で、「医師少数区域」での勤務経験を取り入れていくことを求めた。
 ハイズ株式会社代表取締役社長の裴英洙氏は、「『行かされる』のではなく、『行きたい』と思わせることが必要」と指摘し、医師を受け入れる側の地域の体制づくりのほか、インセンティブとして管理者要件だけではなく、「非常に魅力的な学びの場がそこにある」という視点での検討が必要だとした。
 医療法人ゆうの森理事長の永井康徳氏も、「医師が行きたくないのに、行かされたのでは、医師と患者、お互いが不幸になる」とし、「学びの場がある、というメリットがある」を提示する必要性を指摘した。

 外来医療機能の偏在・不足対策については、情報提供の実施は支持されたものの、無床診療所の開業制限については、賛否が分かれた。
 神野氏は、「フリーダムでやっていくのではなく、偏在対策には、規制的な手法が必要」とし、「診療所開業についても、地域の情報を見ながら、地域の医療審議会で、開業の是非を話し合うスキームがあってもいいのではないか。新規開業医の保険医としての活動を規制するのもあり得る話」とコメントした。小川氏も、過去に何度も医師需給に関して議論してきたものの、医師の偏在は悪化しているとし、「強制力のある提言をしないと、問題は解決しない」と指摘。小川氏と神野氏は、「自ら望んだ地域赴任でなくても、実際に経験することにより、地域医療への興味、関心を高めた」という自身の経験も語った。
 これに対し、今村氏は、過去とは異なり、今はエビデンスを基に議論しているとした上で、「医師偏在対策のメニューは多ければ多いほどいいのかもしれないが、(メニューによっては)リスクもある。新規開業については、まず情報提供することが一つの大きな前進」と述べ、「開業制限」的な議論をすると、「医師少数区域」の勤務を管理者要件とする場合と同様に、「駆け込み開業」の懸念があることから、まずは情報提供から開始して様子を見るべきと主張した。永井氏や堀之内氏も、今村氏の考えを支持。
 慶應義塾大学商学部教授の権丈善一氏は、「地域医療を経験した人は、そこに根付いてくれる。『地域医療を、1回経験したらどうか』という機会を、なるべく多くの人に無理強いにならないように提供できる体制を作っていくことが必要ではないか」と語った。

この僻地医療勤務経験の有無を管理者の要件として関連づけると言う話、以前から断続的に出ている話なのですが、今回は厚労省側からの提案として今後の医療政策に反映されるかどうかを決める、かなり具体的な議論が求められる状況だと言えます。
医療系団体の中でも意見が別れていると言う点に注目いただきたいと思いますが、しかしそもそも論と言えば制度改変で影響を受ける当事者たる現場の若手医師を抜きにしてのこうした議論もどうなんだと言う考え方もあるでしょうね。
特に強制配置と言うことには拒否感が根強い以上、管理者に成りたければ自主的に僻地診療に従事しなさいと言うことですが、街の大病院などで院長になるのは一般に大学からの天下り人事などが多かったわけで、実現すれば困ると言う人も出てくるかも知れません。
この場合数年間を名義だけ田舎病院勤務にすると言う手もありますが、週一回だけの名前だけ常勤医であっても勤務経験として認めるべきなのかどうか、言葉の定義についてももう少し議論する必要がありそうに思いますね。

むしろ後段の開業制限の方がいわゆる逃散の結果としての開業を規制すると言う意味合いもありそうですが、偏在是正と言う観点で言えばこれだけ弁護士余りになっても田舎に行った弁護士がいなかったのと同様、やはり収入面で僻地は不利だと言う現実もあるでしょう。
もともと勤務医の世界では多くの他業界の慣例と逆に、田舎や僻地に行くほど給与が高くなると言う傾向があるわけですから、僻地医療従事加算なりを設けて診療報酬を割り増しで支払う等のやり方で僻地への開業誘導のインセンティブとすることも考えられるでしょう。
逆に医師過剰地域では診療報酬を減額し…などと言い出すとさすがに反対意見が圧倒しそうですが、全国何処でも同一料金でサービスを提供すると言う皆保険制度の大前提をどこまで重視するかによって、この辺りの政策上の柔軟性もかなり左右されそうですよね。
今後都道府県が主体となって地域医療計画の実現を目指していく上でも、診療報酬などの面である程度裁量の余地があればかなり地域性豊かな医療も可能になりそうなのですが、やるとしてもまずは特区なりで実験的にやってみてからの話になりそうです。

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コメント

これ期間がどれくらいになるかですね。
1年2年で絶対帰れるなら行く人はいそうな気が。

投稿: ぽん太 | 2017年11月13日 (月) 08時22分

なんと申しますか、世の中には茹でカエル理論なるものも存在するのだとも側聞するところではありますが。

投稿: 管理人nobu | 2017年11月13日 (月) 18時07分

「医師少数区域」と認定されたエリアの中で一番マシなエリアに医者が集まるだけかなと思います。
あと、開業医を減らしたければ新規開業制限とともにクリニックを家族も含め他の人への譲渡を禁止にすべきかなとは思います。

投稿: クマ | 2017年11月14日 (火) 09時15分

しょせん医は算術かw

投稿: | 2017年11月14日 (火) 22時08分

> しょせん医は算術かw

公立病院ですら,国から「黒字経営」を求められていますので.

投稿: 耳鼻科医 | 2017年11月15日 (水) 08時17分

金の介在しない仕事は絶対無責任なものになるからね。仕方ないね。
http://blog.livedoor.jp/qmanews/archives/52129394.html

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年11月15日 (水) 09時36分

いやいや 医も算術だ と、徹底しきれていないから
更に消費税を上げるってな風に、あなたの懐にも手を突っ込まざるを得ないわけで。。。

投稿: | 2017年11月15日 (水) 17時55分

まずは無駄な高給を削って赤字を何とかしろや

投稿: | 2017年11月16日 (木) 21時04分

確かに
「無駄な」高給は削るべきです.
そうしたら,採算の合わない医療機関の淘汰はかなり進められると思います.

投稿: 耳鼻科医 | 2017年11月17日 (金) 08時24分

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