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2017年10月18日 (水)

いい加減医師も労働者であることくらい理解しましょう

9月21日に医師の働き方改革に関する検討会の第2回会合が開かれたそうですが、しぶとく医師は労働者ではないと主張する委員が一蹴されるなど、医師にも法規に基づいた労働管理を求める動きが主導的であるようです。

厚生労働省 第2回医師の働き方改革に関する検討会(前編) 「一般的な勤務医は労働者」に議論の余地なし(2017年10月13日日経メディカル)

(略)
 医師の働き方の議論ではこれまで、「医師は労働者か否か」が論点となることがあった。こうした議論を踏まえて厚労省の検討会事務局は検討会の冒頭、労働基準法上の労働者性として、第9条「この法律で、『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下、『事業』という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」という法律上の定義を紹介。実務での判断基準として、「基本的には、事業に使用され、その対償として賃金が支払われている者であるか否かによって判断される」と説明した。指揮監督下の労働にあるかどうかが最も重要な判断基準となる。
(略)
 なお、医師・歯科医師・薬剤師調査に基づく医師の分類とその割合として、以下の図が示され、事務局は「青色部分の医師は一般的に労働者に該当すると考えられる」と説明した。

 続いて、今年1月20日に策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」から、労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと」と定義。判断基準として(1)使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替えなど)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃など)を事業場内において行った時間(2)使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機などしている時間(いわゆる「手持ち時間」)(3)参加することが業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習などを行っていた時間――の3点を例示した。
 これに関連して「医師の宿直」についても、「一般的に外来診療を行っていない時間帯に、医師などが入院患者の病状の変化に対処するため医療機関内に拘束され待機している状態をいい、このような待機時間も一般的には労働基本法上の労働時間となる」と説明した。
(略)
 さらに、第1回会合でも論点となった「自己研鑽」を労働時間とするか否かについても裁判例が紹介された。基本的な考え方として、自己研鑽の時間は、使用者の指示や就業規則上の制裁などの不利益取り扱いによる強制がなく、あくまで研修医が自主的に取り組んだ場合など、使用者の指揮命令下に置かれていると評価されない時間であれば、労働時間には該当しないと考える。
(略)
 この後のディスカッションで、社会医療法人ペガサス理事長の馬場武彦氏が「この労働時間制度の中に、『高度プロフェッショナル制』が挙がっていないのはなぜか? この制度は、医師についても適用の有無を議論する余地はあるか?」と質問した。高度プロフェッショナル制度とは、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(働き方改革関連法案)」要綱に創設が盛り込まれている「特定高度専門業務・成果型労働制」のこと。職務の範囲が明確で、一定の年収(少なくとも1000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とするような業務に従事する場合に、健康確保措置などを講じること、本人の同意や委員会の決議などを要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金などの規定を適用除外するというものだ。
 先ほどの質問に対しては、座長の岩村氏が「高度プロフェッショナル制度はまだ法律になっていないため、事務局が取り上げなかったのではないか。なお、高度プロフェッショナル制度は、業務の特殊性に基づき、労働時間を自分で決められるというところに着目した制度だ。もともと診療時間が決められており、勤務時間中は病院側に決められて診療行為などの業務を提供している一般的な勤務医は、高度プロフェッショナル制度とはそもそもなじまないと考えている。医師の業務がプロフェッショナル性が高いものということは理解しているが、労働時間の議論とは別物だ」と考えを述べた。
(略)
 また、福岡県済生会福岡総合病院名誉院長の岡留健一郎氏が「判例の資料に、『医師が労基法上の労働者であることを前提に』との表現があるが、病院団体としてはその前提は微妙なところだ。勤務医個人も、病院のために働いているという気持ちはなく、地域住民のために医療を提供するという気持ちで働いている」と発言すると、早稲田大学法学学術院教授の島田陽一氏は「勤務医が労働者であることは裁判でも争われない事実。勤務医が労働者かどうかという議論はもう続けられない」と応じた。さらに座長の岩村氏も、「一般的な病院勤務医は疑う余地なく労働者だ。勤務医が感情的に誰を対象に医療を提供しているかは関係なく、明らかに病院に対して業務を提供しているからだ」と付け加えた。

厚生労働省 第2回医師の働き方改革に関する検討会(後編) 医師の働き方改革、今後の論点は大きく4項目(2017年10月13日日経メディカル)

(略)
◆保健医療福祉労働組合協議会事務局次長の工藤豊氏
「宿直業務の扱い」という項目があるが、救急を標榜しているところとしていないところとでは実態が違うので、分けて考える必要がある。また、自己研鑽は医療において重要なので、その中身は十分精査する必要があると考える。例えば、自己研鑽といいながら診療報酬上で評価されるようなものは果たして自己研鑽なのかどうか。論文発表や学会参加は医師だけでなく他の職業でもあることなので、どのくらい医師の特殊性と言えるのか、考えた方がいい。
(略)
◆ハイズ(東京都新宿区)の裴英洙氏
経営者の意識改革はマストだと思う。経営者と話していると、これまで医師の自己犠牲に依存してやってきた部分がかなりあった。これを残業代などで支払うとなると、とても無理だという。しかし、労働の対価を支払うのは当然のこと。経営者の自助努力は必須ではあるが、現実的には原資を経営者の努力だけにかぶせるだけでは進まないと考える。ある程度、診療報酬などでガソリンとなる原資を入れていただけるとありがたい
(略)
◆東京女子医科大学東医療センター救急医の赤星昂己氏
週74時間以上の勤務を望む医師というのはほぼいないと思うが、ゼロにできていない実態があることを考えると、経営する病院側の資金繰りなどにも問題があると思うので、実態を明らかにしてほしい。若手の勤務医としては、書類の作成などでかなりの時間が取られていると感じている。タスクシフティングは昔から言われていることだが、なぜ現場で進んでいないのか、人が雇えないのか、その書類作成には医師の専門性が必須なのかといったことについて踏み込んで議論したい。

◆特定非営利法人架け橋理事長の豊田郁子氏
患者サポートの面からも考えることが重要だと思う。頼んだ書類が遅いなど、患者側が医療機関に不満を持つことがある。医師が休みの日にも診療してほしいという無謀な希望を持つ患者もいる。そこは医師が対応するというよりは、タスクシフティング、シェアリングを進めていくべき点だと思うので、医師の業務を示して、他職種がどう関われるか考えていかなければ進まないと思う。なので、医師の業務内容を具体的に示していただきたい。
(略)

記事前半部分では判例や法解釈に基づいて医師が労働者に相当するかどうかが説明されていますが、図に見られるように施設開設者や法人の代表を除き、勤務医はほぼ例外なく労働者であると言うのは妥当な見解だと思います。
そして労働者であるならば何を以て労働とするかの定義も示されているのですが、使用者の指示によるものと言う大原則を元に、宿直を含めた待機時間や研修時間なども労働時間であると明示されたことは画期的だと言えますね。
宿直業務を労働時間であると認定されると世の多くの医療機関で大変な解釈変更が求められそうなのですが、研修等の自己研鑽として放置されてきた行為をどこまで労働時間と認めるかも解釈が分かれそうです。
この定義によれば院内での勉強会やカンファレンス等は労働時間になりますが、例えば専門医資格を取得しそれが施設認定等に用いられると言ったケースは、必要な研修が労働時間に該当する可能性がありそうですね。
なお高度プロフェッショナル制度に関してはそもそも診療時間など現場医師が自己裁量で決められない以上、その対象とならないとして一蹴されていますが、自己裁量に関する諸条件が満たされる場合であれば検討する余地はあるかとも思います。

しかし特に各委員の発言を見ていると、労働環境改善に対する医療側委員の抵抗は未だに根強いものがありそうだと感じるところですが、抵抗しているのはあくまでも医師を使う側であると言う点にも留意すべきですよね。
この点で特に医療畑以外の委員から、医療の経営環境などにも注目されていることは良い傾向だと思いますが、根本的には公定価格で薄利多売を強いられていることが諸悪の根源であるとは言えるかと思います。
ただその中でも医師でなければ行えない業務以外は他業種に委ねるなど改善の余地はまだ大きいので、今後はそうした労働環境改善の努力を行った施設への診療報酬状の優遇なども検討されるべきでしょうね。
いずれにせよ医療の場合診療報酬一つ取っても岩盤規制が強いられているわけで、現場の改革を促すなら診療報酬改革とも連動しなければ意味がないはずですが、労働省側の議論が厚生省側にどこまで反映されるのかに注目ですね。

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コメント

高度プロフェッショナルにあたらないってちょっと意外かなあ。
合法的に奴隷労働させるおとしどころかなと読んでたのに。

投稿: ぽん太 | 2017年10月18日 (水) 08時36分

ぽん太さまへ
高度プロフェッショナル制度を適応しようとすると「年間104日以上、4週で4日以上の休日」が必要になります。
のんびり働いている私ですら当直のせいで引っかかりそうなのに、奴隷労働レベルでこの基準がクリアできるか疑問です。

投稿: クマ | 2017年10月18日 (水) 08時56分

ご指摘の通りで、平日の勤務制限は緩くなる代わりに休日を確実に取らせる必要のある制度ですので、かなり工夫しなければ医師には使い難いかと思います。
ただ諸条件がクリアでき確実に週休2日が保証されるのであれば、医師にとっても必ずしも悪い制度ではないように思いますけれどもね。

投稿: 管理人nobu | 2017年10月18日 (水) 13時03分

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